「Xperia」の記事

ソニー渾身の「Xperia 1」は素晴らしいが、日本では苦戦する?

ソニー渾身の「Xperia 1」は素晴らしいが、日本では苦戦する?

2019.02.28

MWC 2019でソニーが新型スマホ「Xperia 1」を発表

機能の先進性、本体デザインの原点回帰が好評

日本市場の変化を受け、「ミッドレンジ戦略」を見直し?

スペイン・バルセロナで開催されたモバイル業界最大の展示会「MWC19 Barcelona」で、ソニーモバイルコミュニケーションズがXperiaシリーズの新製品「Xperia 1」を発表した

Xperia 1

ソニーの技術を結集した「シネマ体験」が売りのハイエンドスマホだが、国内市場ではより手頃な端末の需要が伸びる傾向にある。モバイル事業が苦境に陥っている中、ソニーは新製品で起死回生を図れるのか。

ソニーのプロ用機器の知見をスマホに投入

ソニーが2月1日に発表した2018年度第3四半期決算では、モバイルの苦境が明らかになった。通期での予測は650万台に下方修正し、1350万台を出荷した2017年度から半減する見通しだ。同社はコスト削減により収益改善を図るものの、商品展開にも抜本的な変革が求められていた。

これを受け、MWC19で登場した新製品が「Xperia 1」だ。前モデルのXperia XZ3から製品名を一新し、シリーズで最もシンプルな名前になった。これまでにない縦横比「21:9」の縦長画面を搭載し、ソニーモバイルは「1から生まれ変わった」と自信を見せる。

縦横比「21:9」の画面を搭載

最大の特徴は21:9の4K有機ELディスプレイを中心にした「シネマ体験」だ。テレビや映画の制作現場で使われるプロフェッショナル機器のエッセンスを凝縮しており、シネマ映像やシネマ撮影を楽しめるという。

新たに搭載したディスプレイの色設定機能「クリエイターモード」では、映像制作の現場で使われる「マスターモニター」の技術を投入することで制作者の意図を忠実に再現。

制作者の意図を忠実に再現する「クリエイターモード」

カメラの新機能である「Cinema Pro」では、映画撮影機材と同じカラー設定が用意され、映画のワンシーンのような映像を手軽に撮影できる。誰もがスマホのカメラで写真や動画を撮る時代だが、Xperia 1を手にしたことをきっかけに映画制作に目覚める人が出てきてもおかしくなさそうだ。

映画のような動画を簡単に撮れる「Cinema Pro」

このようにXperia 1は、単にスマホの流行を追うのではなく、ソニーが蓄積してきた強みを投入することで差別化した端末といえる。本体デザインはフラットな一枚板に戻り、全盛期に人気を誇った「パープル」の復活など、基本に立ち戻った仕様はMWC19会場でも好評だった。

だが、2019年の国内スマホ市場は状況が一変しつつある。それが端末販売と回線契約を分けた「分離プラン」の拡大だ。

日本市場の変化で注目される「ミッドレンジ戦略」

Xperia 1は、MWC19で話題の次世代通信「5G」にこそ対応しないものの、最新のSnapdragon 855、世界初の4K有機EL、3眼カメラなどスペックはてんこ盛りで、販売価格は10万円を超えてもおかしくないハイエンドスマホだ。

それでも、大手キャリアの端末購入補助があれば回線契約と引き換えに毎月2000〜3000円が割り引かれ、「実質3万円」程度で買うことができる。だが、総務省が進める「端末と回線の分離」では、端末の割引を制限し、代わりに毎月の通信料金を下げる方向に議論が進んでいる。

総務省の最終的な方針にもよるが、端末の「定価」販売が基本になれば、一括で買いやすい価格帯の端末が重要になってくる。すでにNTTドコモは「docomo with」で4万円以下の端末を揃えており、今後は各キャリアが中低価格の端末ラインアップを厚くしてくる可能性が高い。

そこで注目されるのが、端末メーカーのミッドレンジ戦略だ。これまでソニーモバイルはミッドレンジ製品を海外向けに展開し、日本市場への投入は否定してきたが、MWC19では初めて「日本市場にも導入を検討する」と姿勢を変えてきた。

MWC19で発表したミッドレンジ端末「Xperia 10」
欧州では199ユーロで売られている「Xperia L3」

ミッドレンジの新製品「Xperia 10」の欧州での価格は349ユーロ、「Xperia 10 Plus」は429ユーロと、いずれも魅力的な価格が設定されている。日本においても、大手キャリアやMVNO各社がミッドレンジのXperiaを広く取り扱う日が来るのか注目される。

Xperiaで仕掛けたソニー、世界初4K有機ELの超縦長スマホ

Xperiaで仕掛けたソニー、世界初4K有機ELの超縦長スマホ

2019.02.25

MWC 2019でソニーがスマホ「Xperia」の新型を発表

フラグシップモデルには4K有機ULディスプレイを採用

「Xperia 1」は初夏以降に、「10/10Plus/L3」は本日より発売

モバイルコミュニケーションズは2月25日、スペイン・バルセロナで開幕した「Mobile World Congress(MWC) 2019」で、次世代スマートフォン「Xperia 1」「Xperia 10/10 Plus」「Xperia L3」を発表した。

世界初の4K有機ELの採用や、最新のトリプルカメラなど性能面で目新しさを出したほか、今回の新製品からモデル名の名称ルールを変更し、ブランドイメージの巻き返しも図る。

「Xperia 1」

「Xperia 1」は2019年初夏以降に日本を含む各国・地域にて発売予定、「Xperia 10」「Xperia 10 Plus」「Xperia L3」の3機種は本日より発売する。

Xperiaのモデル名称は、これまでフラグシップが「Xperia XZ(1~3)」などと続いており、新モデルはXZ4になると見られていたが、今回の製品からはこれを一新。フラグシップモデルの名称が「Xperia 1」(エクスペリア ワン)、ミッドレンジが「Xperia 10」(エクスペリア テン)と、新たな名称ルールが採用されている。

「Xperia 1」。iPhoneが「9」を飛び越えて「X(テン)」に変わったときには、画面上部にノッチ(切り欠き)が登場し、ホームボタンが消えるという大きな変更があった。今回のソニーの名称変更でも、従来のXperiaから色々と変化した部分が目立つ

世界初の4K OLED、デザインは先祖返り?

Xperia 1の最大の特徴は、世界で初めて「4K有機EL」(3840×1644ピクセル)をスマホのディスプレイとして採用したことだ。

画面比率も他に類を見ない「21:9」の"超縦長”になった。それにより本体の形状もかなり変化しており、Xperia XZ3が6.0インチ、アスペクト比が「18:9」で本体幅が「73mm」であったのに対し、Xperia 1は6.5インチ画面ながら本体幅は「72mm」と逆に狭くなった。

Xperia 1は「縦長」の特徴的な形に

Xperia 1の6.5インチというサイズは「iPhone XS Max」と同等であるにも関わらず、その横幅はXS Maxが横幅77.4mm、Xperia 1は72mmと結構違う。ちなみに「iPhone X(およびXS)」の横幅は70.9mmであるため、実際に手に取ってみると、数値以上に「これまでになかった感」が際立ちそうだ。

そして、21:9という新たなアスペクト比を活かすための工夫もなされている。ソニー独自のUIで最適化することで、動画を視聴しながら、SNSを閲覧したり、メッセージをやり取りをしたりといった「二画面同時表示」での使い勝手が良くなっている。

独自のUIによって、21:9のアスペクト比ならではの分割画面の使いやすさを実現

カメラ機能も待望のトリプルレンズカメラに進化した。また、瞳を検出してオートフォーカスする「瞳AF」にスマホとして世界で初めて対応した。有効画素数が各1200万画素の26mm(F1.6)・52mm(F2.4)・16mm(F2.4)レンズを標準・望遠・広角と自在に切り替えることができる。光学ズームは2倍で、暗所撮影に強く、背景ぼけ撮影にも対応する。

デザインも大きく変わった。XZ3から本体幅を維持したまま薄型化し、縦長になっただけではなく、過去のXperiaで評価の高かったスレート状のデザインに回帰している。Xperia 1の湾曲していないガラス背面は、昔からのXperiaユーザーには特に美しく見えるだろう。

ほか主な仕様は、プラットフォームがクアルコムの「Snapdragon 855」。メモリは6GBで、ストレージはmicroSDXC(最大512GB)をサポート。

本体サイズは縦167mm×横72mm×厚さ8.2mm。画面サイズは6.5インチ4K HDR OLED(3840×1644ピクセル)。重量は約180グラム。バッテリ容量は3330mAh。IP65/IP68の防塵・防水性能に対応。指紋認証センサは本体右側面。

カラバリはブラック、ホワイト、グレーのほか、Xperiaでは馴染みのあるパープルが復活しており、4色展開。

ミドルレンジ端末も「21:9」対応

「Xperia 10」と、「Xperia 10 Plus(エクスペリア テン プラス)」も、フラグシップモデル同様に21:9の縦長画面を備える。

「Xperia 10」(左)、「Xperia 10 Plus」(右)

10と10 Plusの最大の違いは画面サイズで、前者が6インチ、後者は6.5インチ。解像度はともにFull HD+。

Xperia 10の幅は68mm。約6.0インチで13MP/5MPのデュアルカメラを搭載しているほか、クアルコムの「Snapdragon 630」を採用。

Xperia 10 Plusは幅73mm。約6.5インチで、こちらはデュアルカメラが光学2倍ズームに対応する。プロセッサはクアルコムの「Snapdragon 636」。

スペックを抑えたローエンド端末も登場

「Xperia L3」(エクスペリア エルスリー)は、「Xperia L2」の後継機にあたる。

「Xperia L3」

なお、今回の新製品でXperia L3のみアスペクト比は18:9。5.7インチのHD+液晶を搭載。13MP/2Mのデュアルカメラ、プロセッサにMediaTek製の「Helio P22(MT6762)」を採用している。

Xperiaが危ない、ソニー決算で苦境鮮明に

Xperiaが危ない、ソニー決算で苦境鮮明に

2019.02.06

ソニーの直近決算、スマートフォン事業の不調が目立つ

もはや先進的ではない? 世界の中のXperiaの現実

MWC 2019が開催間近、Xperiaは新たな価値を示せるか

ソニーが2月1日に発表した2018年度第3四半期決算は、売上高は前年同期比10%減の2兆4,018億円、営業利益は同7%増の3,770億円の減収増益だった。金融ビジネスの不調が足を引っ張った形だが、それをのぞいても同3%減の減収となっている。さらに増益もEMIの連結子会社化にともなう再評価益が含まれ、一時益を除けば同25%減の2,601億円となっており、根は深いのかもしれない。

ソニーの第3四半期決算

その中で、不振が鮮明に現れているのがモバイル・コミニュケーション分野だ。スマートフォンの「Xperia」が主力のセグメントだが、販売台数減がたたって売上高で同37%減、営業損失は前年同期から313億円悪化して155億円のマイナスとなった。

セグメント別の業績。モバイル・コミュニケーション分野は為替影響もそれほど大きくなく、日本が主力なことが伺えるが、それでも大幅な減収減益

スマートフォンの販売台数は180万台で、同220万台減という減少幅。半分以下だ。日本、欧州、中南米の販売台数減少が響いたとしている。その結果、通期の売上高予測は200億円減となる4,900億円へと下方修正。スマートフォンの販売台数予測も50万台減の650万台とした。営業損失は950億円のマイナスで従来予測を据え置くが、これはオペレーションコストを2020年度には半減(2017年度比)させるという計画を前提としたものだ。

通期ではさらなる減収を見込む

技術、ブランドを再度点検するべき

スマートフォン事業は、世界で競争が激しい。シェアトップはSamsungだが、長くトップに君臨していたNokiaを逆転したのが2012年ごろ。それ以来、多少の変動はあったもののおおむねトップを維持しているが、そのSamsungも販売に陰りが見えはじめていて予断を許さない。

2位にはSamsungと争っていたAppleがいたが、2018年になって2四半期連続でHuaweiが2位に躍り出ている。通期の結果は出ていないが、世界出荷台数が2億台を突破して順調だ。Huaweiを含めて中国勢の攻勢は今も続いている。米中の貿易紛争は懸念材料だが、米国でのシェアがほとんどないHuaweiが世界2位に位置するという強さを見せており、Samsungの背後に迫る勢いだ。

とはいえ、スマートフォン市場自体が世界規模でやや弱含みな状況なのは確かだ。何とかしようと、カメラ機能や折りたたみ、全画面といったさまざまな特徴を盛り込もうと各社工夫を凝らしている。そうした中、Xperiaが新技術へのキャッチアップで遅れている感は否めない。

市場を席巻したデュアルカメラへの対応遅れをはじめとして、市場のブームに乗りきれなかったことは元より、それをカバーできるような市場を牽引する新しい技術や機能も打ち出せなかった。

ハイエンド端末に注力して低価格端末から撤退したことも響いた。グローバルメーカーの多くはハイエンドを技術アピール、実際の販売をミドルクラス以下の端末に頼っており、Appleでさえも比較的安価な端末を用意して中国市場などの要望に応えようとしていた。

iPhoneのように、「いつかは欲しい端末」というブランドイメージが作れていなかったXperiaが低価格端末から手を引いたことで、安価な端末からハイエンドにステップアップする新興国ユーザーが離れ、選択肢の増えた先進国でもユーザー層の確保に繋げられなかった。

現行のフラッグシップモデル「Xperia XZ3」

2月下旬に重要イベント、期待に応えられるか

これはスマートフォン市場の変化だけでは片付けられない事態だろう。端末のバリエーションや技術的先進性、そしてデザインの先鋭性でアピールして、市場での存在感をひろく高める方向ではなく、ハイエンド端末のみで勝負を挑んだことで、全体の縮小に繋がってしまった。

日本では、分離プラン導入やMVNOの伸長でミドルレンジ以下の端末の売れ行きが伸びている。グローバル的にも、主力はミドルレンジ以下となるため、こうした領域への進出を考え直す必要があるのではないか。

ソニーのXperiaは、現時点でも世界的に競争力のあるブランド力自体は維持している。そのブランド力を生かす製品開発に期待する声も残っている。今月下旬には、世界最大といわれる携帯通信見本市「モバイル・ワールド・コングレス」(MWC Barcelona 2019)がスペイン・バルセロナで開催され、ソニーもそこで新製品の発表を予定している。新しい価値を携えたXperiaや、現状をくつがえす新戦略は見ることができるのか、ここは正念場かもしれない。