「Xperia」の記事

なぜ国内版「Xpeira 1」のストレージは半分になってしまったのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第39回

なぜ国内版「Xpeira 1」のストレージは半分になってしまったのか

2019.05.27

待望のXperia 1国内投入に、なぜか落胆の声?

原因はストレージのスペックダウン、その背景

価格とスペックの狭間でゆれる国内市場の現状

携帯電話大手3社から夏のスマートフォン新モデルが次々と発表されたが、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia 1」に、ファンから落胆の声が上がっているようだ。それはストレージ容量が海外版の最大128GBではなく、64GBに抑えられてしまったため。そこには販売価格を巡る、メーカーや携帯電話会社の苦悩があるといえそうだ。

値引きが難しい状況下で価格を下げる苦肉の策

大型連休が終わると、携帯電話業界は夏商戦に向けたスマートフォン新製品が次々と発表されるシーズンに入る。今年もその例にもれず、大手メーカーを中心として各社からスマートフォン新製品が次々と発表されている。

だが各社の新製品発表直後、ちょっとした話題となったのが、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia 1」に関してである。Xperia 1は映画が見やすい21:9比率の4K有機ELディスプレイを搭載した同社のフラッグシップモデルで、携帯キャリア大手3社から発売される予定だが、話題となった理由はストレージ容量にある。

Xperia 1のストレージ容量は、グローバルで見ると最上位モデルで128GBだ。だが国内に投入されたXperia 1は、ストレージ容量がその半分となる64GBのモデルのみであった。それゆえ最上位モデルの登場を期待していたファンから、落胆の声が多く上がったのである。

大幅なリニューアルをはかったことで注目されていた「Xperia 1」だが、海外版と比べストレージ容量が減らされていたことに落胆の声を上げるファンが多かったようだ

ではなぜ、Xperia 1のストレージ容量は減ってしまったのだろうか。その理由は国内市場向けの販売価格にあると考えられる。例としてNTTドコモ版のXperia 1の価格を見ると、ドコモオンラインショップで10万3,032円となっている。かなりの高額であるというだけでなく、それより高い機種は、東京五輪限定機種モデルの「Galaxy S10+ Olympic Games Edition SC-05L」(11万4,696円)しかない状況のようだ。もしXpeira 1をグローバル版そのままのスペックで投入した場合、もっと高額な販売価格になってしまったはずだ。

しかもこの夏は、NTTドコモが通信料金と端末代を分離した新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」の投入を発表するなど、携帯電話会社が従来のように、通信料金を原資としてスマートフォンの価格を大幅に値引くことが困難になっている。そうした状況下で端末価格が高騰し過ぎると、販売が大きく落ち込んでしまうことから、スペックを下げたモデルを投入して価格を下げるという判断に至ったのだろう。

なぜストレージ容量の少ないモデルを選んだのかというと、ユーザーに与える影響が最も少ないためと考えられる。チップセットやRAMのスペックを下げるとパフォーマンスに大きな影響が出てしまうが、Xperia 1はmicroSDスロットを備えており、最大で512GBのストレージを追加できることから、そちらでカバーできると判断したのだろう。

海外より安い「P30 Pro」の狙い

もっとも、市場動向や企業戦略などによって端末価格を下げたり、スペックを落とした割安なモデルを投入したりするケースはこれまでにもよく見られたものだ。今回の夏モデルでいうと、ある意味NTTドコモが販売予定のファーウェイ製フラッグシップモデル「P30 Pro」も、そうした戦略を感じさせる内容となっている。

NTTドコモから販売予定の「P30 Pro」。海外版にはないFeliCaにも対応させながら、9万円以下というコストパフォーマンスの高さで話題となった

P30 ProはRAMとストレージの容量によって価格が異なり、最上位モデルはRAMが8GB、ストレージが512GBで、海外での価格は1249ユーロ(約15.3万円)とかなりの高額だ。だが日本に投入されたのは、RAMが6GB、ストレージが128GBの最も安価なモデルであり、価格もドコモオンラインショップで8万9,424円。SIMフリー版として発表された下位モデルの「P30」が7万7,880円であることを考えると、日本でのP30 Proがいかにお得な価格設定となっているかが分かる。

2019年3月にパリで実施されたP30シリーズの発表会より。P30 Proは国内向けよりスペックが高いRAMが8GBのモデルを中心にアピールしており、その価格も999ユーロ(約12.2万円)からと高額だ

ファーウェイがP30 Proをスペック重視ではなく、安価重視で投入してきたのには、やはりP30 Proの販売数を拡大したい狙いが強いといえる。ファーウェイはSIMフリー市場ではトップシェアを誇るが、それより規模が大きいキャリア大手3社向けの市場に関しては、2018年に再進出を果たしたばかりのため、認知度が低く存在感がまだ薄い。そこで新機種を割安に設定することで、携帯大手からの販売を一気に拡大し、市場での存在感を高めたかったのだろう。

もっともファーウェイは今、日本でのP30 Proの発表直後に米国からの制裁を受けたことで、P30 Proの予約が中止されるなど今後の販売が不透明になるという、別の問題を抱えてしまっている。だがそうした制裁の影響がなければ、コストパフォーマンスの高さによって、NTTドコモでの販売を大きく伸ばしていた可能性も十分考えられただろう。

国内では、スペックよりも価格を重視する消費者が多いという現状があるだけに、今後も各社の戦略によって、スペック重視のユーザーが不満を抱くケースが出てくる可能性は高い。だがあまりにも価格重視でスペックを下げ過ぎてしまうと、今度はスペック重視の消費者から多くの批判を集めて、製品そのものの評判が落ち、それが売り上げに響いてしまう可能性も出てきてしまう。メーカーやキャリア会社にとって今は、そのさじ加減が非常に悩ましい所なのかもしれない。

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ソニーはエレクトロニクス部門の統合でXperiaを立て直せるのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第36回

ソニーはエレクトロニクス部門の統合でXperiaを立て直せるのか

2019.04.15

不振のスマホ部門がテレビ・カメラ部門と統合した理由

新型スマホ「Xperia 1」から見えてくる統合の効果

Xperiaが失った魅力を取り戻せる可能性はあるのか

ソニーは2019年4月1日付けで、スマートフォン部門を、カメラやテレビなどを手掛ける部門と統合し、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業としてスタートする。エレクトロニクス関連部門の統合による連携強化で、赤字続きのスマートフォンを立て直せるのだろうか。

テレビ・カメラ主導の事業再編

ソニーは2019年3月26日、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)、そしてモバイル・コミュニケーション(MC)の3つの事業を統合し、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)事業とすることを発表した。統合は2019年4月1日付けだ。これをもってソニーの持つエレクトロニクス関連3事業が1つに統合されたことになる。

HE&Sはテレビの「BRAVIA」やオーディオ、IP&Sは「CyberShot」「α」などのカメラ、そしてMCはスマートフォン「Xperia」を主に手掛けていた。それら複数のエレクトロニクス事業を統合することで、製品開発や調達などで横の連携を深めるというのが、事業再編の狙いと考えられる。

だが発表内容を細かく見ると、EP&Sを統括するのはIP&Sの石塚茂樹専務で、それを補佐するのはHE&Sの高木一郎専務となっている。つまりIP&SとHE&Sが事業を主導する形となっており、MCが存在感を大きく落としている様子が見えてくる。

もっとも直近の業績を見れば、それはある意味やむを得ない部分もある。ソニーの2018年度第3四半期決算を見ると、HE&Sは475億円、IP&Sは342億円の営業利益を出しており、共に増益を果たしている。一方MCの営業利益はマイナス155億円で、前年同期比でも大幅なマイナスを記録している状況だ。好調が続く他の事業とは対照的に、スマートフォン事業だけが赤字で、その改善の兆しさえ見られない状況が続いている。

今回の統合は不振が続くMCの救済という見方もできるかもしれない。赤字が続くMC事業に関しては、かねてより投資家などから撤退を求める声が挙がっていたし、実際この統合が発表された直後から「スマートフォン事業の赤字隠しではないか」という声も挙がっていた。

ソニーの2018年度第3四半期決算説明会資料より。8つの事業セグメントで唯一、MC事業だけが赤字を記録しているなど、不振が続いている

「Xperia 1」に見る事業再編の効果

だが事業を統合したからといって、スマートフォンにおける市場環境の厳しさが改善する訳ではない。世界的に多くの人にスマートフォンが行き渡り、なおかつコモディティ化と低価格化が急速に進んでいる現在、どのメーカーにとってもスマートフォンの販売を大きく伸ばすのは難しくなっている状況だ。

実際、最近ではアップルがiPhoneなどの販売台数を非公開にしたことが大きな話題となったし、急成長を遂げてきた中国のスマートフォンメーカーも、いくつかが破たんしたり、買収されたりするなど再編が進みつつある。そうした中にあって、スマートフォンの販売を減少させ続けてきたソニーが復活するのは容易ではない。

では、事業統合したソニーはどうやって、この苦戦しているスマートフォン事業を立て直そうとしているのだろうか。そのヒントは、2019年2月に発表されたソニーモバイルコミュニケーションズの新しいスマートフォン「Xperia 1」から見て取ることができる。

Xperiaシリーズはかねてより、イメージセンサーやディスプレイなど、ソニーグループが持つ技術を結集して開発している所に強みがあった。Xperia 1ではそれをさらに推し進め、プロ向けの映像機器開発を手掛ける、ソニーの厚木テクノロジーセンターに協力を依頼している。映画に合わせた21:9比率のディスプレイを搭載したのに加え、プロ用のマスターモニターの発色に近づけた「クリエイターモード」を搭載し、ソニーピクチャーズの映画製作者に評価してもらうなどして、映像に強いこだわりを持つスマートフォンへと仕上げられているのだ。

21:9のディスプレイを搭載したことで注目された「Xperia 1」。プロが使うマスターモニターの発色を実現する「クリエイターモード」を搭載するなど、映像の視聴に強いこだわりを持って作られている

そもそもXperiaシリーズの評価が大きく落ちたのは、2014年に中国メーカーとの低価格競争に敗れスマートフォンの販売が不振となったことを受け、ソニーモバイルが現在ソニーの代表執行役専務CFOを務める十時裕樹氏の体制に代わるなど、大規模な再編がなされて以降のことだ。実際にXperiaシリーズは2016年を境目に、これまでの最先端技術を重視した「Xperia Z」シリーズから、手ごろさや使い勝手を重視した「Xperia X」へと路線を大きく切り替えている。

だがそれ以降、苦戦していた低価格モデルだけでなく、ハイエンドモデルでも急速に製品の魅力を失い、シェアを激減させていった。「明確な理由がない限り複眼カメラは搭載しない」など特定のこだわりを見せるあまり、消費者ニーズやトレンドから離れた端末しか提供できなくなっていたことが、その要因のひとつといえるだろう。

2016年の「Xperia X」シリーズ以降、Xperiaはハイエンドモデルでも市場ニーズとかけ離れた端末が目立つようになり、急速に魅力を失っていった

それだけに、MC単体では難しくなっていたソニー全体の力を生かしたスマートフォン開発ができるようになる今回の統合は、スマートフォン事業を再建する上でメリットに働く可能性が高いといえる。かねてよりソニーはスマートフォンから「撤退しない」と宣言しているだけに、今回の再編によって魅力あるスマートフォンを生み出し、販売改善を図ってくれることを期待したい。

ソニー渾身の「Xperia 1」は素晴らしいが、日本では苦戦する?

ソニー渾身の「Xperia 1」は素晴らしいが、日本では苦戦する?

2019.02.28

MWC 2019でソニーが新型スマホ「Xperia 1」を発表

機能の先進性、本体デザインの原点回帰が好評

日本市場の変化を受け、「ミッドレンジ戦略」を見直し?

スペイン・バルセロナで開催されたモバイル業界最大の展示会「MWC19 Barcelona」で、ソニーモバイルコミュニケーションズがXperiaシリーズの新製品「Xperia 1」を発表した

Xperia 1

ソニーの技術を結集した「シネマ体験」が売りのハイエンドスマホだが、国内市場ではより手頃な端末の需要が伸びる傾向にある。モバイル事業が苦境に陥っている中、ソニーは新製品で起死回生を図れるのか。

ソニーのプロ用機器の知見をスマホに投入

ソニーが2月1日に発表した2018年度第3四半期決算では、モバイルの苦境が明らかになった。通期での予測は650万台に下方修正し、1350万台を出荷した2017年度から半減する見通しだ。同社はコスト削減により収益改善を図るものの、商品展開にも抜本的な変革が求められていた。

これを受け、MWC19で登場した新製品が「Xperia 1」だ。前モデルのXperia XZ3から製品名を一新し、シリーズで最もシンプルな名前になった。これまでにない縦横比「21:9」の縦長画面を搭載し、ソニーモバイルは「1から生まれ変わった」と自信を見せる。

縦横比「21:9」の画面を搭載

最大の特徴は21:9の4K有機ELディスプレイを中心にした「シネマ体験」だ。テレビや映画の制作現場で使われるプロフェッショナル機器のエッセンスを凝縮しており、シネマ映像やシネマ撮影を楽しめるという。

新たに搭載したディスプレイの色設定機能「クリエイターモード」では、映像制作の現場で使われる「マスターモニター」の技術を投入することで制作者の意図を忠実に再現。

制作者の意図を忠実に再現する「クリエイターモード」

カメラの新機能である「Cinema Pro」では、映画撮影機材と同じカラー設定が用意され、映画のワンシーンのような映像を手軽に撮影できる。誰もがスマホのカメラで写真や動画を撮る時代だが、Xperia 1を手にしたことをきっかけに映画制作に目覚める人が出てきてもおかしくなさそうだ。

映画のような動画を簡単に撮れる「Cinema Pro」

このようにXperia 1は、単にスマホの流行を追うのではなく、ソニーが蓄積してきた強みを投入することで差別化した端末といえる。本体デザインはフラットな一枚板に戻り、全盛期に人気を誇った「パープル」の復活など、基本に立ち戻った仕様はMWC19会場でも好評だった。

だが、2019年の国内スマホ市場は状況が一変しつつある。それが端末販売と回線契約を分けた「分離プラン」の拡大だ。

日本市場の変化で注目される「ミッドレンジ戦略」

Xperia 1は、MWC19で話題の次世代通信「5G」にこそ対応しないものの、最新のSnapdragon 855、世界初の4K有機EL、3眼カメラなどスペックはてんこ盛りで、販売価格は10万円を超えてもおかしくないハイエンドスマホだ。

それでも、大手キャリアの端末購入補助があれば回線契約と引き換えに毎月2000〜3000円が割り引かれ、「実質3万円」程度で買うことができる。だが、総務省が進める「端末と回線の分離」では、端末の割引を制限し、代わりに毎月の通信料金を下げる方向に議論が進んでいる。

総務省の最終的な方針にもよるが、端末の「定価」販売が基本になれば、一括で買いやすい価格帯の端末が重要になってくる。すでにNTTドコモは「docomo with」で4万円以下の端末を揃えており、今後は各キャリアが中低価格の端末ラインアップを厚くしてくる可能性が高い。

そこで注目されるのが、端末メーカーのミッドレンジ戦略だ。これまでソニーモバイルはミッドレンジ製品を海外向けに展開し、日本市場への投入は否定してきたが、MWC19では初めて「日本市場にも導入を検討する」と姿勢を変えてきた。

MWC19で発表したミッドレンジ端末「Xperia 10」
欧州では199ユーロで売られている「Xperia L3」

ミッドレンジの新製品「Xperia 10」の欧州での価格は349ユーロ、「Xperia 10 Plus」は429ユーロと、いずれも魅力的な価格が設定されている。日本においても、大手キャリアやMVNO各社がミッドレンジのXperiaを広く取り扱う日が来るのか注目される。