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日本は「5G」に出遅れた? 吉澤社長が語るNTTドコモの5G戦略とは

日本は「5G」に出遅れた? 吉澤社長が語るNTTドコモの5G戦略とは

2019.03.01

5Gで盛り上がる携帯業界、ドコモ社長に成長戦略を聞く

5Gは海外主導に見えるが、日本は本当に出遅れたのか

ドコモは5Gでスマホに依存しないビジネスを模索?

2019年2月25日よりスペイン・バルセロナで開催された携帯電話の総合見本市イベント「MWC 2019」に、日本の携帯電話キャリアとして唯一出展したのがNTTドコモだ。現地では5Gが話題で、日本でも2020年に商用サービスが開始される。そんななか、ドコモは5Gでどのような成長戦略を描こうとしているのだろうか。代表取締役社長の吉澤和弘氏に話を聞いた。

5Gではパートナー企業との連携を重視

通信業界では今、次世代のモバイル通信規格「5G」が大きな盛り上がりを見せている。日本の携帯電話会社も2019年の9月頃からプレ商用サービスを開始し、東京五輪を迎える2020年には本格的な5Gの商用サービスを開始する予定だ。

そうした中で開催されたMWC 2019では、キャリアやネットワークベンダー、スマートフォンメーカーなど各社が5Gへの取り組みをアピールしているが、国内の携帯大手3社の中で唯一、ブースを出展して5Gに対する取り組みを発信しているのがNTTドコモだ。

MWC出展の狙いについて、吉澤氏は「パートナーと連携し、5Gをしっかり活用しながらユースケースを作ってきていることをPRしていきたい」と話す。単に5Gのネットワークを提供するというのでは意味がなく、それをどう活用して社会課題を解決できるかという、具体的な事例を見せることが出展の大きな狙いになっているそうだ。

NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

中でも吉澤氏が重視し、強調していたのがパートナーとの協力関係で、「ドコモだけでできることはほとんどない」と言い切る。遠隔医療やライブ中継など、5Gで実現される要素の多くは、それぞれの事業でノウハウを持つパートナーの協力が欠かせない。そのためNTTドコモとしてはパートナー、そしてNTTグループと密に連携を取りつつをしつつ、AIなどの最新技術を積極活用することで5Gに向けた取り組みを推し進める考えのようだ。

海外で先行する5G、日本は本当に遅れているのか

ただ5Gの動向を見る上で気になるのが、今年のMWCでは「日本は5Gで遅れている」という声が多く聞かれるようになったことだ。実は世界的には2019年が「5G元年」とされており、既にサービスを開始している米国のほか、中国や韓国、そして欧州などでも、2019年に5Gの商用サービス開始を予定するキャリアが増えているのだ。

一方で日本では、先に触れた通り2020年の商用サービス開始を予定しているため、電波の割り当てもこれからという状況だ。5Gの取り組みで諸外国と比べ1年ものブランクが発生してしまうことは、通信事業に関する国際競争を考える上で、非常に懸念されるところだ。

「MWC 2019」のNTTドコモブース。5Gを前面に打ち出しさまざまな取り組みをアピールしているが、商用サービス開始は諸外国より1年遅い2020年から

そうした日本の5Gに対する取り組みの遅れに対して、吉澤氏は「実際にお金を頂いて提供できるサービスがどこまでできるのか。5Gというネットワークを提供するだけでいいのならすぐできるが、それを活用したビジネスができていることの方が重要なのではないか」と話す。

単に5Gの“土管”を用意するのではなく、そのネットワーク上で収益を上げられるサービスとビジネスモデルを構築した上で、商用サービス化を推し進めたいというのがNTTドコモの考え方だと吉澤氏は説明する。テクノロジー面で後れを取っている訳ではないことから、”多少の遅れは気にしない”との考えのようだ。「世界2200のパートナーとサービスを作りこんでいるキャリアは他にいない」と、吉澤氏は5Gでの充実したサービスの実現に強い自信を示している。

5Gではスマートフォンに依存しないビジネスを構築

5Gの新たなサービスを披露する場として現在準備が進められているのが、2019年に日本での開催を予定しているラグビーW杯に合わせた、5Gプレ商用サービスだ。プレサービスということもあり、いくつかの制限はあるものの、商用と同じ5Gの電波を射出してサービスを体験してもらう場を提供する。

プレサービスでの具体的な取り組みとして、吉澤氏はこれまでの実証実験で取り組んできた「ARグラスを活用した多視点でラグビーの試合を楽しめるスタジアム上でのソリューション」を提供するとしているほか、遠隔で試合を楽しんでもらうパブリックビューイングなども計画しているとのこと。またエンタープライズ分野での取り組みとして、やはりこれまでの実証実験で取り組んできた遠隔医療や建設機械の遠隔操作などを、商用サービスに近い環境で実証していくことも明らかにしている。

だが5Gを普及していく上で大きな課題となるのが、特に一般消費者で顕著なのだが、”5Gならではのサービスをイメージしにくい”ことだ。4Gの時はスマートフォンの通信速度が速くなるという明確なメリットがあったが、5Gではそうした明確な進化を体験できる要素が薄い。吉澤氏も「5Gによるデジタルトランスフォーメーションが、企業には理解してもらいやすいのだが、消費者にはイメージしづらい。見える形にしないと伝わらないかもしれない」と話す。

一方で吉澤氏は、5Gだからこそできるサービスは「スマートフォンやタブレットだけでは表現しきれない」と話す。5Gでは4Gまでのように単にスマートフォンを販売し、その上でコンテンツやサービスを提供するというだけにとどまらず、VRやARなどの「xR」と呼ばれる技術や、ウェアラブルデバイスなどさまざまな技術を取り入れて、より臨場感のある音楽やスポーツのライブ体験を提供するなど、5G自体を直接コンテンツやサービスに結び付けたビジネスを展開していく考えを示している。

NTTグループやヤマハらと開発した、5Gの高速大容量や低遅延を生かした遠隔地での音楽セッションを可能にする「NETDUETTO」のデモ。ホログラフを活用しあたかも同じ場所にいるかのような形でライブを実現していることが注目を集めていた

スマートフォンを超えた5Gの体験を提供することで、5Gに対する消費者の理解を高めていきたいというのが、NTTドコモの考えのようだ。そのためにも吉澤氏は「技術でできることは限られてくる。コンテンツを提供する事業者とさらに連携した取り組みを推し進めていく」と話し、コンテンツホルダーとの連携を拡大していく考えを示している。

5Gといえば技術的な側面が注目されがちだが、吉澤氏の発言から、NTTドコモは技術そのものを前面に押し出すのではなく、技術を生かしたユーザー体験に注力することで5Gの普及を促そうとしている様子がうかがえる。

行政が分離プランの導入をキャリアに要求する緊急提言を打ち出し、NTTドコモも4月に分離プランを軸とした新料金プランの導入で対応するなど、スマートフォンを中心とした4Gまでのビジネスが大きな転換期を迎えている。NTTドコモは将来、5Gの時代にはスマートフォンに依存しないビジネスを開拓することで、次の成長を狙っているようだ。

ドコモが2〜4割程度の値下げを明言、減益覚悟も利益回復に自信

ドコモが2〜4割程度の値下げを明言、減益覚悟も利益回復に自信

2018.11.01

ドコモが料金プランを「2~4割程度」値下げする方針を発表

値下げの背景に、料金プランへの不満の声

KDDI、ソフトバンクの料金施策にも期待が集まる

10月31日、NTTドコモは2018年度第2四半期決算説明会において、料金プランを「2〜4割程度」値下げする方針を発表した。新たな料金プランは、2019年第1四半期に発表・提供開始する。

決算説明会で「2〜4割程度の値下げ」を発表したNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

この値下げに伴う契約者への還元額は、1年あたり最大4000億円規模になるという。値下げによる一時的な減益は避けられないものの、5年後の2023年には現在の水準まで利益を回復できると自信を見せるドコモ。ではどうやって実現するのか、カギとなるのは「非通信」サービスの拡大だ。

「2〜4割程度の値下げ」 背景に料金プランへの不満の声

携帯キャリアは儲けすぎとの批判が強まる中、2018年8月の菅義偉官房長官による「携帯料金は4割程度の値下げ余地がある」発言を契機に、値下げへの期待が高まっていた。

その中でドコモは、他キャリアに先んじて値下げへの取り組みを発表。2019年第1四半期に料金プランを大胆に見直し、「2〜4割程度」値下げすることで最大4000億円規模の還元するという計画を明らかにした。

「大胆な料金プランの見直し」を発表

具体的には、端末代金と回線料金を分けた「分離プラン」を軸に検討しているという。ドコモが政府の圧力に屈したという見方もできるが、吉澤氏はあくまで自主的に決めたものとしている。同社の調査で、約5割の客が「料金プランがわかりにくい」と回答していたことが、プランの見直し理由の1つだ。

値下げにより4000億円を還元することで減益は避けられないが、2021年度には営業収益5兆円、2023年度の営業利益は現在の水準である9900億円に回復する見通しだという。ドコモがその根拠に挙げたのが、スマートライフや法人ビジネスなど通信以外のビジネスの拡大だ。

スマートライフ領域や法人ビジネスの拡大で減益を補う見通し

ドコモが拡大を狙う「非通信」サービスとは

NTTドコモの事業は、大きく分けて携帯やスマホの「通信事業」と、それ以外の「スマートライフ領域事業」に分かれている。スマートライフ領域とは、「あんしん系サポート」や「コンテンツ・コマース」、「金融・決済」、「法人ソリューション」などが占める。

例えば、「dカード」や「d払い」など金融・決済サービスの取扱高は、前年上期から22%増の1兆8300億円に、dカード契約数は同6%増の1941万件と順調に伸びている。dポイントの利用は1年で1.5倍、dポイントが使える店舗は2.1倍に増えるなど、さらなる成長が見込める領域だ。

ただし、ドコモの軸足はあくまで通信事業にある。2018年度上期の営業利益6105億円のうち、通信事業は5245億円で約86%を占める。一方のスマートライフ領域は約14%の860億円に過ぎない。値下げによる減益をカバーするには、スマートライフ領域の大幅なてこ入れが必要となる。

そこでドコモの中期経営戦略では、「会員基盤」からの収益拡大を目指すという。たとえばドコモの回線契約がなくとも、無料のIDである「dアカウント」に登録すれば、dポイントを貯めたりdマガジンを購読したりできる。

こうした会員を2021年度に7800万人、将来的には1億人にまで拡大する。パートナー企業も2021年度に5000社に増やすことで、両者をドコモの5GやAI、dポイントなどで結びつける「+d」構想を拡大。そこから収益につなげようという戦略だ。

ドコモの会員基盤とパートナー企業を結びつける

次世代ネットワーク「5G」についても、2019年から2023年度の累計で1兆円を投資することを発表。2019年のラグビーワールドカップで先行して5G体験を提供し、2020年春の商用サービスを目指すとした。

5Gインフラ構築に5年間で1兆円を投資

このようにドコモは「2〜4割値下げ」を打ち出しつつも、減益を5年程度でカバーできる見通しを出してきた。その中で、2019年第1四半期という提供タイミングについては、下半期の「新規事業者の参入」も意識したという。携帯電話事業事業に参入する楽天を牽制する構えだ。

携帯料金値下げの議論で政府からも期待される楽天だが、ドコモが先んじて「4割値下げ」を実現すれば、KDDIとソフトバンクも何らかの形で追従せざるを得なくなり、楽天参入のインパクトは弱まることになる。年明けから来春にかけて、各キャリアがどのような料金施策を打ち出してくるか、目が離せない展開になりそうだ。

5G実装まで1年、CEATECで未来を先取りしてきた

5G実装まで1年、CEATECで未来を先取りしてきた

2018.10.19

5Gの実装が1年前倒しされることに

「CEATECH」で5G技術を体験してきた

恐竜ハントや建機の遠隔操作などの技術を紹介

「5Gで世の中が大きく変わる」とは、ここ数年で聞き飽きた言葉だ。同時に、変わる未来に期待を持たされるのも確かである。

5Gとは第5世代移動通信システムの略。あらゆる物がインターネットに繋がるようになったIoT時代をさらに次の次元へと導く技術であり、世界中で研究開発が進められている。もっとも身近な存在であるスマホはもちろん、遠隔医療や自動運転などへの活用も期待されている。

さまざまな業界から社会実装が待ち望まれる5Gであるが、数年前から語られていた「2020年の実用化」を目前にして、「実用化を1年前倒しする」との報道がなされた。まず大手キャリア3社は、5G対応端末の貸与で限定的なサービスを開始し、2020年からユーザー所有のスマートフォンで使えるようにするとのことだ。

では具体的に、5Gの登場によって世の中がどう変わるのか? 2018年10月16日~19日にかけて千葉県・幕張メッセにて開催されている「CEATEC JAPAN 2018」における携帯キャリア各社の展示から、変わる未来の一部を覗いてきた。

例えば、無人島で恐竜を狩れる

まずはauのブースから紹介する。ブース内でもっとも目を引いたのは、森をモチーフにした大きな展示とそこに吊るされた大きなモニター、そして何やら楽し気にしている高校生。気になって近づいてみると、なぜか大きな銃を手渡された。

ブースに入ると、大きな銃を渡された

「CEATEC会場内に恐竜が侵入しました…! おちおちブース見学なんてしてられませんよ!」(auブースの説明員)

ただならぬ緊張感が漂うauブース……。もちろんブース内に恐竜なんていない。銃をよく見てみるとそこにはスマホが搭載されており、『ジュラシックアイランド』という表記が。

スマホを覗くと『ジュラシックアイランド』と表示されている

数秒経つと、スマホがカメラモードに切り替わり、恐竜の足跡が表示された。その足跡を辿って銃先を向けると、スマホ越しにCEATEC会場を歩き回るティラノサウルスを見つけた。

登場したティラノサウルス(のイメージ)。筆者が片手で銃を持ち、画面を撮影していたところ「銃は重いので両手で持ってください」と注意されたので、実際のプレイ画像は撮れなかった

実はコレ、長崎のハウステンボスですでに実装されているもので、一世を風靡した『Pokemon Go』よろしく、AR技術を用いて現実世界で遊ぶことのできるゲームだ。

現状、このアトラクションは4Gにて提供されているそうだが、5Gを使用することで、より多くの人数でプレイができたり、恐竜の出現位置を共通化させたりできるようになるそう。筆者が体験したのも4Gを用いたものであったが、ティラノサウルスのほか、『ジュラシック・ワールド』で活躍したヴェロキラプトルなども登場して、思いのほか楽しめた。

「5Gによって大量のデータを迅速に端末に送信できるようになれば、従来モバイル側で行っていたデータ処理を、クラウド側で担当し、それをモバイルに送信することができるようになります。現在はハウステンボス内の特定のエリアにいるユーザーがプレイできるこのゲームですが、この技術を応用することで、将来的には遠隔地にいる人同士でも同じ恐竜を狩ることができるようになるでしょう」(技術説明員)

例えば、空を飛べる

次に目を引いたのは、大きな半球体のスクリーンに映された綺麗な映像だった。

「半球体スクリーンによる非日常体験」と題された展示。auブース内でもっとも行列が長かったのがこの展示だった

これは、エアレースやドローン、もしくはSUPER GTのマシンで撮った映像を、リアルタイムでスクリーンに映して体験できるというもの。ブースで実際に使用されていたのはすでに撮影された映像であったが、それでも雄大な映像を見ながらまるで自分が飛んでいるかのような体験ができるため、多くの人たちが並んでいた。

例えば、建機を遠隔地から動かせる

次はKDDIブースへ移動。こちらでは、同社がコマツと共同実験を進めている「5G活用による建設機械の遠隔制御」などの展示が行われている。

少子高齢化が進み、かつ職種が徐々に増えている今、人手不足に悩まされる業界は多い。建設業界もその1つであり、その問題を解決しようと開発されているのが同システムである。

遠隔操作コクピット。実際の建機と同じような操縦感で操作することが可能
遠隔で動く建機側で撮った映像を、リアルタイムで確認することができる

「これによって、例えば東京にいる建機の操縦者が、地方の建機を動かせるようになります。建機を操縦するタイミングは、ほかの工程との兼ね合いによって決まるため、デッドタイムが多いという問題がありました。しかし、このシステムを用いることによって、人が1カ所に留まりながら複数の場所で建機を動かせるようになります」(技術説明員)

ほかにもau、NTTドコモブースでは、好きな場所からスポーツを観戦できるシステムや、遠隔でのロボット操縦を実現するシステムなど、数多くの展示を行っており、そのどれもがどこか未来を感じさせるようなものであった。

5G実装まで1年

CEATECでは、紹介した2ブースのほかにも多くの企業が5Gに向けた取り組みを展示していた。それらを見ていると、「5Gで何ができる?」という疑問に対して「なんでもできる」と解答したくなるほど、どの技術も、仕事や日常生活がより便利に、より楽しくなりそう、と思えるものばかりであった。

なお、NTTドコモはラグビーワールドカップが開幕する2019年9月に「プレサービス」を始め、2020年春から「商用サービス」をスタートする予定だとしている。つまり、5Gの実装まで残り1年を切ったこととなる。

CEATECで体験したいくつもの技術が社会実装される日は近い。5Gという、どこか未来的な技術の足音が、もうすぐそこまで迫ってきている。