「LTE」の記事

ソフトバンク通信障害、問題の機器を製造したエリクソンが原因を公表

ソフトバンク通信障害、問題の機器を製造したエリクソンが原因を公表

2018.12.10

ソフトバンクの通信障害、問題のエリクソンが会見

原因は機器のデジタル証明書の有効期限切れ

根本原因は調査中で、本格的な対策はこれから

12月10日、ソフトバンクで6日に発生した通信障害について、通信障害の原因となった機器を製造していたエリクソン(本社:スウェーデン)が会見を開いた。

6日午後、ソフトバンク回線が不通に

通信障害の原因とされたのは、LTE通信網のコアネットワーク内で制御信号などのやりとりを行うMME(Mobility Management Entity)内のソフトウェアで、デジタル証明書の期限が切れていたこと。これはエリクソン側のミスだという。同社は現在「根本原因の解析と今後の対策」については精査中と説明している。

LTEのコアネットワークには、さまざまな装置が必要だ。複雑なため概要は記事中の図を参照してほしいが、パケット交換を担当する装置としてEPCがあり、そこにはS/P-GWと今回のMMEが含まれている。S/P-GW側はパケット交換機能を担当しており、いわばルーターのような機能を提供する。MMEは、さらに加入者情報を管理する装置であるHLR/HSSとも接続しており、端末の位置情報も橋渡しするなど、制御系の機能を備えている。なお、今回問題となったエリクソンのMMEはバーチャルMMEだったという。

LTEのコアネットワークには、さまざまな装置が必要だ

今回の不具合では、このMMEの機能を提供するソフトウェアのライセンスを管理しているデジタル証明書の期限が誤って登録されていた。これが期限切れとなったことから、MMEの機能が使えなくなり、ユーザーの加入者情報が参照できなくなるなどの障害が発生し、通話・データ通信の全ての機能が利用できなくなるといった被害につながった。

デジタル証明書の期限が短く設定されていた理由は明らかになっていないが、今回はソフトウェアのバージョンダウンによって障害が収まった。旧バージョンでは長期間の期限が設定されていたからだ。そのため、新バージョンの証明書の期限が短くなっていた事象には人的ミスが疑われる。また、それ以外の装置では同様の問題は発生していないという。

そうした根本的な原因について、エリクソンでは現在調査中として未だ明らかにしていない。世界11カ国の事業者で同様の問題が発生したとしているが、ソフトバンクと英O2以外はキャリア自身が公表していないことを理由に、どの国のどのキャリアで問題が発生したかもエリクソンは明らかにしなかった。

今回は、ソフトバンクがLTE網の全てにエリクソンの装置を導入していたため、全国規模の障害発生につながってしまった。仮に複数のベンダーを採用してネットワークを構成していれば、被害を限定的にすることはできただろう。

エリクソンも「地域ごとにベンダー(製造元)を分けるなど、マルチベンダー化しているキャリアは(海外には)多数ある」としており、今後の障害対策のために、マルチベンダー化によって冗長化することは一つの策になる。

同社は今後も原因解析を進めるとしており、証明書の期限切れが発生した経緯なども明らかになる見通しだ。

その日、ソフトバンクで何が起こったのか? スマホ通信障害の原因と不安

その日、ソフトバンクで何が起こったのか? スマホ通信障害の原因と不安

2018.12.07

ソフトバンクの携帯電話サービスに全国規模の通信障害が発生

原因はエリクソン製の交換機と発表、世界11カ国で同様の被害

同様の「重大事故」は他社でも起こる可能性、自衛も必要か

ソフトバンクの携帯電話サービスで全国規模の障害が発生した。12月6日13時39分頃発生した障害は全国に影響し、同日18時4分頃まで、4時間30分に及んだ。原因と、残された課題を探る。

交換機の不具合で通信障害が発生?

今回の障害は、LTEに関わる交換機の不具合によるものという。この不具合は、コアネットワーク(基幹通信網)内のSGSN-MME(Serving GPRS Support Node-Mobility Management Entity)という2つのノードで発生した。問題の交換機を製造したのはエリクソンで、現時点では「交換機のソフトウェア証明書のバージョン齟齬」が不具合の原因だったと発表されている。

スウェーデンに本拠を置くエリクソンは、グローバル市場にコアネットワーク向け製品を提供していたことから、イギリス大手のO2をはじめ、世界11カ国の携帯電話キャリアでソフトバンクと同様の障害が発生した。

音声・データ通信ともにつながらない状態が続いた

この交換機の不具合により、ソフトバンクの4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともにまったくつながらない(圏外になる)、またはつながりにくい状況になった。その影響で、3G網には通信が集中して輻輳が発生したため、スマートフォンでの通信がまったく行えない、というユーザーが全国で発生した。

同様に固定電話サービス「おうちのでんわ」、自宅用無線LANサービスの「SoftBank Air」もまったく使えない、または使いづらい状況に陥った。サブブランドのY!mobileも同様で、さらにはMVNOでソフトバンク回線を使うLINEモバイルなどにも影響した。

交換機のソフトウェアのバージョンを古いものに戻して復旧を図った結果、同日18時4分頃には障害が解消。当初は通信集中による輻輳も見られたが、翌7日の14時時点では、それも解消して通常通りの利用ができている、という。

「重大事故」に強い是正義務

電気通信事業法では、119番などの緊急通報を行う音声サービスの障害が1時間以上継続し、影響が3万人以上に及んだ場合に「重大事故」として、総務省への速やかな報告を求めている。現時点で、ソフトバンクは影響人数を「調査中」としているが、全国で発生した障害のため、重大事故に該当するのは間違いなく、今後30日以内に原因などを明確に報告する義務がある。

今のところ、これまで9カ月間にわたって使ってきたソフトウェアが、なぜこのタイミングで障害を起こしたのかは分かっていない。証明書の期限が切れたから、という可能性もあるが、現時点ではソフトバンクは「調査中」としている。

とにかく、コアネットワーク内の装置のソフトウェア的な問題による障害だった、ということは明らかになっている。キャリアは、災害時の通信をバックアップするために重要施設を分散化して二重化するなどの対策を取っているが、今回の障害では、ソフトバンクが東京・大阪に置くすべての重要な設備が障害を起こした結果、全国規模での障害となってしまった。

LTE化も影響拡大の背景、他社は他人事ではない

影響が大きくなった背景には、LTE網への移行が進んでいる点も挙げられる。有限の周波数を使っている関係上、キャリアはより効率的なLTEへの移行を推進してきた。3G網で利用する周波数を減らしてLTEに移行した結果、3Gで通信できる容量が限られてしまうため、LTEの障害で3Gしかつなげられなくなったときに、接続できないユーザーが大量に発生したのだ。

音声通話でもLTEを使ったVoLTEが一般化しており、4G LTEが全て影響を受けたため、音声通話にも影響が及び、問題が拡大した。

これに関してはドコモもKDDIも同様で、同じように障害が発生した場合に、「逃げ場」がなくなるという問題がある。とはいえ、3Gはもはや終了を前提としており、バックアップのためだけに残すには無駄が多すぎる。

昨今の通信網はネットワーク構成が複雑化し、どのような障害が発生して、どこまで通信に影響するか分かりづらくなっている。冗長化によってマルチベンダー化することも一つの手段だろうが、重要設備であるため、そのコストも馬鹿にならない。ユーザーの通信料削減のためのコスト削減が求められている現在のキャリアにその余力はないだろう。

もともと、これまでも各社は「重大事故」を起こして対策を整えてきており、災害における対策も重点的に取り組んできた。今回の詳細な原因が明らかになっていないため、キャリア側の対策と今後の取り組みはまだ判断がつけられないが、同じことが起きないような対策が望まれる。

対策の一つとなりうるキャリアの設置する公衆無線LANサービスは、回線に携帯網を使っている例もあり、こうした障害時に使えなくなる危険性もある。キャリアは固定回線化を進めることも必要だろう。

無線LANを使って音声通話を行うWi-Fi Callingという仕組みもあるが、日本のキャリアはサービス提供に及び腰だ。とはいえ、こうした場合の対策としては有効でもあるため、これもキャリアの対応を促したいところだ。

事業者の責任は重いが、ユーザーも自衛すべきか

これに対して、ユーザー側に取れる対策はあるだろうか。今回は、公衆電話を使ったというネットの声もあったが、これも一つの手ではある。とはいえ、急激に数を減らす公衆電話は、いざという時に見つけられるかは分からない。

前述のキャリアの公衆無線LANサービスも利用できる。LINEなどのSNSサービスでの音声通話なら無線LAN環境でも利用できる場合もあるため、ある程度の代替にはなる。キャリア以外の有料の公衆無線LANサービスもあるので、いざという時には一時的な契約もありだろう。サービス間のローミングの仕組みもあれば、追加料金を支払わずに済むので、サービス提供者同士の連携があっても良さそうだ。

筆者は複数キャリアの回線を所有しているが、こうしたバックアップは万人に勧められるものではない。とはいえ、最近のMVNOは、プリペイドカードからすぐに利用開始できるので、こうしたSIMカードを買っておくというのもいいかもしれない。

iPhone Xsのように、eSIMを採用した端末も有効だろう。無線LAN環境があれば、通信プランをインターネット経由で購入してすぐに利用開始できるため、一時的な障害時に購入して使うことができる。物理的なSIMカードのように事前に購入しておく必要がないというのもメリットだ。ただ、国内キャリアが提供していないと、いざという時のバックアップにならないので、各社の対応を期待したい。

障害時にキャリア間でローミングをする仕組みも考えられるが、現状の仕組みではさすがに難しいだろう。複雑化したネットワークは、安易な対策ではカバーしきれなくなっているため、完全に障害を発生させないことは難しい。

ソフトバンクとエリクソンのさらなる究明・対策の公表が待たれるところだが、他のキャリアも他山の石として、設備の検証や対策の検討は必要だろう。

IoTで注目される「LPWA」、KDDIが富士山で「見える化」したモノとは

IoTで注目される「LPWA」、KDDIが富士山で「見える化」したモノとは

2017.08.17

モノのインターネット、いわゆるIoT(Internet of Things)の事例が増えるなか、ここのところ注目されているのが「LPWA(Low Power, Wide Area)」だ。IoTデバイスの多くはWi-FiやBluetoothを使うもの、というイメージがあるなか、名前の通り「低消費電力で広範囲な通信」で支持されつつある。

LPWAには、周波数帯域の利用に免許が必要なライセンスバンドを用いる「LTE Cat.NB1(NB-IoT)」や「Cat.M1」と、免許が必要ないアンライセンスバンドを利用する「LoRaWAN」や「Sigfox」が存在する。ライセンスバンドの規格は昨年に標準化が完了し、今後各携帯キャリアによる環境整備が見込まれている。

一方で、いち早く企業による活用が進むのがLoRaWAN。前述の通りアンライセンスバンドを利用することで導入の敷居が低く、さまざまな通信事業者がソリューションを提供し、実証実験も多数行われている。中でも、B2BのMVNOで急成長したベンチャー「ソラコム」の動きは大きな注目を集めた。

ソラコムはかねてからIoTに関連するさまざまなソリューションを提供してきた。MVNOとして、帯域をあまり利用しない用途に応じたサービスを提供してきたほか、代表取締役社長の玉川 憲氏がかつてエバンジェリストを務めていたAWSなどのクラウドへのデータ送信、接続性の担保など、大手企業のクライアントも多数抱えるまでに成長した。

PoCキットで用意されているArduino開発シールド

LPWAについても同社はいち早く取り組んでおり、2016年7月「LoRaWAN PoCキット」を試験リリース、今年2月には正式なサービスとしてスタートした。PoCキットでは、ゲートウェイとArduino開発シールドを用意し、デバイスで収集したデータをそのままソラコムプラットフォームに送信する仕組みを構築。企業はLPWAの恩恵を受けつつも、通信部分をソラコムに任せることで、アプリケーション開発に注力できることになる。

ソラコムといえば、先日発表されたKDDIによる買収が大きな話題となったが、そのKDDIも「LoRa PoCキット」を昨年末にリリースしている。とは言ってもソラコムのキットに共通する部分も多く、バックエンドにSORACOM vConnec Coreを活用した「KDDI IoT コネクト Air」を利用。ほかにLoRa端末が10台、半年分の通信費、サポート費用などを含めた総額120万円の検証実験キットとなる。

ここのところ取材でよく聞くのが「IoTをやれと言われて、とりあえずIoTに類する何か」をやろうとする企業が多いという話。こうしたPoCキットは、その取っ掛かりとして"とりあえず"にちょうど良いものかもしれないが、それなりのコストがかかるため、「やって終わり」では済まされない。

「日本企業はとにかく事例を求める」とは、あるクラウドベンダーの取材中に言われた言葉だが、確かに類似事例がないことには上司への説得にもならないのだろう。そうした事例作りという裏の狙いもあるのだろうか、KDDIは8月10日から9月までLoRa PoCキットを活用して、御殿場市と共同で富士山の御殿場口における登下山者数の"見える化"を始めた。

赤外線と超音波で通行人を把握

これまでは人力で、御殿場市職員などがカウンターを持って通行者の人数を確認し、多大な労力を割いていた。もちろん、開山期間中すべての人数把握などできるはずもなく、人件費などを考慮すればキットによる自動化の仕組みは願ったり叶ったりだろう。

見える化の仕組みは、赤外線センサーと超音波センサーを組み合わせて人の移動を検知する。赤外線センサーで人の移動を検知したあと、超音波センサーが3方向に超音波を発し、人の移動方向を感知する。これによって、登山しているのか、下山しているのか判断する。

登下山道にセンサーを設置。写真右、箱の横にある丸い穴の下で赤外線を出して人を検知、すぐに上の穴から超音波を出して人の動きの向きを測定する

登下山の方向を判断する理由は、登下山道であっても途中で引き返すケースや、御殿場口付近にはハイキングコースが設置されている実態の把握。KDDIが「富士山登山状況見える化プロジェクト」というサイトを公開しており、実際の数字を確認できる。

データの送信頻度は30分に1回で、通過時刻などのタイムスタンプは保持せず、30分間にどちらの方向に通過したかの人数データをそのまま数字で送信する。今回は御殿場口付近の5箇所、数百メートル圏にデバイスを設置したが、KDDIの調査によれば5km以上離れた富士山頂の剣ヶ峰でも電波を確認できたという。これこそがWi-FiやBluetoothでは実現できないLPWAの強みだ。

LoRaゲートウェイ(左)と、LTEルーター(右)

唯一の課題はバッテリーだろうか。2万6800mAhの大容量モバイルバッテリーをセンサーデバイスに備え付けているが、(余裕を持って)2週間に1回はバッテリーの交換が必要だという。担当者の話によれば、30分に1回だけデータを送信するLoRaWANモジュールよりも、赤外線センサーと超音波センサーの電力消費が大きいようだ。

開山期間が2カ月程度の富士山であれば交換する負荷はあまりかからないとみられるが、より定常的にセンサーを利用するケースでは、有線による電力の確保や太陽光パネルの設置といった対策が必要になりそうだ。

当日はあいにくの雨で登山者も少なかった
市販の大容量モバイルバッテリーを利用しているが、2週間おきの交換が必要だという
御殿場市 産業スポーツ部 部長 勝俣 昇氏

御殿場市 産業スポーツ部 部長の勝俣 昇氏は、「多くの観光客に来ていただいているにも関わらず、その実態を把握できていなかった」と現状を語る。この実証実験を通して、富士登下山道の利便性向上や、ツーリズムの基礎資料に役立てるという。

御殿場口は、規模の大きい施設がある富士吉田口や、山頂までの距離が短い富士宮口と比較して利用者が少なく、"ツウ好み"なスポット。それだけに御殿場市としても、冬季以外は通年楽しめるハイキングコースなどのアピールを行い、御殿場市中心地からの循環を目指したいところだろう。

現状の把握と目指す目的地がはっきりと定まっている場合は、こうしたPoCキットは有効だろう。しかし目的が「IoTをやる」だけでは目的と手段が入れ替わってしまい、本来達成すべきゴールを見失う。またLPWAの有効性も、前述のバッテリー問題のように「理想」と「現実」に開きがある可能性がある。

本番稼働ありきで検証するのではなく、ある程度の失敗やナレッジの蓄積を念頭に、目標を設定することが吉と言えそうだ。