「IoT」の記事

「Hey Siri」と言えない日本人は、世界市場から取り残されるのか

「Hey Siri」と言えない日本人は、世界市場から取り残されるのか

2018.12.26

日本人の音声認識機能の利用率は低い

スマートスピーカーの市場は2025年、12.5倍に

「デジタルアシスタント」攻略は生き残りのカギ

SiriにGoogleアシスタント。最近、スマホの音声アシスタントを利用したという方はどれほどいるだろうか。

筆者はiPhoneとGoogle Pixelを併用しているが、「Hey Siri」も「OK Google」も言わないし、Pixelに採用されている「Active Edge」(本体をギュっと握ることでGoogleアシスタントを起動する機能)を使ったのも、Pixelを手にしてからのほんの数日だけだった。

デジタルパフォーマンス・マーケティングエージェンシー iProspectの調べでは、APAC地域における18~50歳の1800人以上のスマホ利用者のうち、過去6カ月以内に音声認識機能(音声検索、音声対応アプリなどを含む)を使った人の割合は62%。この割合は日本では約40%といい、APAC平均にかなり見劣りし、中国(77%)やインド(82%)と比べると半分に過ぎない。

なぜ日本では普及しないのか。調査を発表したiProspect社に実態を取材し、その理由を探ると、スマホ、スマートスピーカーに限らない「音声アシスタント」の現状と未来が見えてきた。もしかすると、音声アシスタントを活用しない国は、世界市場から取り残されてしまうかもしれない。

米iProspectがAPACにおける音声認識機能の使用率を調査。同社のAPAC Head of Innovation & North Asia Commerceのネイト・シュリラ氏(左)、COOの渡辺大吾氏に話を伺った

地域によって「音声認識」への印象は違う

――なぜ日本では音声アシスタントの使用率は低いのでしょうか

渡辺大吾氏(以下、渡辺):文化的な影響はあるでしょう。日本人は、集団の秩序を守る傾向にあります。注目されたくない、恥をかきたくないと思う人が多い。人前で「Hey Siri」と言って、認識されなかったら恥ずかしいですよね。

ネイト・シュリラ氏(以下、シュリラ):反対に、中国やインドなどの地域では音声アシスタントを使用しているのが「格好いい」というイメージを持っている人が多い。そもそも音声認識機能を使えるようなデバイスを持っていることが1つのステータスであり、彼女の前で「OK Google、美味しいレストランを教えて」と言うのが、スマートだという価値観があるのです。

――使っている姿を見られたくない?

渡辺:かつての失敗体験も影響しているでしょうね。2011年にSiriが登場した時、人々は「人間の声を認識して機械が応えてくれるなんて、素晴らしい」と思ったことでしょう。しかし、いざ使ってみると誤認識することが多かった。

その頃のSiriの認識率は77%ほどでした。つまり4分の1ほどの言葉を間違って認識するのです。今では性能はかなり上がり、2017年には(英語で)95%ほどの認識率を達成しました。人間の認識能力と同程度です。しかし、当時の経験がもとになって未だに「大丈夫かな?」と不安になる人も多い。

――地域によって音声アシスタントへの印象が異なるのはなぜなのでしょう

渡辺:頻繁に利用されている地域で共通しているのは、“テクノロジーの変化に慣れている”点。中国やインドは、ここ数年で急激にテクノロジーが成長しており、新たなテクノロジーに触れる機会が多い。しかし、日本はそうではありません。テクノロジーの進化は緩やかに市場に受け入れられてきました。日本は常に最新のテクノロジーに囲まれており、豊かな生活をおくっていました。だからこそ、急激な変化に保守的になってしまうのです。

「音声アシスタント」がもたらす市場への影響

――スマホに限らず、最近は「Google Home」「Amazon Alexa」など、音声認識技術を活用した「スマートスピーカー」が普及しています

渡辺:家では人の目を気にする必要がないこともあり、音楽を聴く、天気情報を確認する、照明やエアコンのオンオフを切り替える、といった用途でスマートスピーカーを使う人が増えてきています。

シュリラ:最近は、メルセデスが音声アシスタントを取り入れたことも話題になりました。人前での音声認識機能の使用に抵抗のある日本人も、車や家などの「クローズな空間」で使用できるスマートスピーカーは、徐々に普及していくことでしょう。そうやって音声認識を使う人が増えてくると、デバイスに声をかけることへのハードルが下がります。

「Pokemon Go」のリリース当時、スマホを見ながら歩き、急に立ち止まるような人を見ると、違和感がありました。しかし、今はそんな人を見ても特に驚きはしません。これは私たちの慣れが原因でしょう。音声認識においても、いつかブレイクスルーのタイミングが来ることでしょう。

――現在のスマートスピーカーの市場規模はどれほど?

シュリラ:ニールセンの調査では、2018年の第2四半期、米国におけるスマートスピーカーの普及率は25%という結果も出ています。それに比べると日本はまだまだ普及が少ないですが、市場規模はこれから多くなっていくでしょうね。2018年、日本のスマートスピーカーの売り上げは46億円だと言われています。2025年にはその12.5倍にもなると言われています。

情報革命の主戦場は「デジタルアシスタント」へ

――今後のグローバル市場における音声アシスタントの役割はどのように変化していくのでしょう?

渡辺:注目すべきは、音声に限らない「IoT化の流れ」と言えるでしょう。音声は、消費者との接触ポイントとして注目すべきことの1つにすぎません。

シュリラ:そういう意味で言うと、音声アシスタントというよりも「デジタルアシスタント」について考えた方が良いでしょう。今は音声アシスタントが徐々に日常に入り込んでいますが、今後はビジュアル面で、ARやVR、ホログラムなどと連携していくことでしょう。

情報革命の主戦場はPCに始まり、モバイルへと続いてきました。その次に来るのが、デジタルアシスタントだと言われています。2017年に公開された映画『ブレードランナー 2049』では、物語の中で主人公は家庭用AIとともに暮らしていました。これは未来に起こり得ることでしょう。デジタルアシスタントはデバイスの壁を越えて、人とより密に接する存在になっていきます。

――パナソニックはIoT家電に舵を切りAmazonもAlexa対応家電を増やことに力を入れているように、スマートホームの普及に合わせて、デジタルアシスタントの存在感は増していくことになりそうです

渡辺:利用者との接触ポイントが増えると、そこで新たなマーケティングのチャンスが生まれます。今のデジタルアシスタントは受動的にしか動きませんが、今後は能動的になってくるでしょう。例えば、冷蔵庫内にカメラやセンサを入れることによって、飲食料品の減少を検知し、「〇〇が少なくなってるので注文しますか?」と購買を促したり。

シュリラ:スマートスピーカーの2台巨頭であるGoogle・Amazonは、デジタルアシスタントを、ありとあらゆる場所で使えるようにしようと考えています。例えば、個人の保有するデバイスに限らず、街の中に「スマートバス停」を作ったり、「スマート案内所」を作ったりすることによって、街全体をスマート化しようという動きを始めています。

自分好みにアシスタントをカスタマイズすることもできるようになるでしょう。Googleは今年、歌手のジョン・レジェンドの声をGoogleアシスタントに搭載すると発表しています。これは、想定されるすべての質問に対する返答を録音したわけではなく、いくつかのセリフを録音し、機械学習技術に基づいて、彼のクセや言葉遣いなどを分析して作られたものです。

【Googleの発表後、ジョン・レジェンドの妻クリッシー・テイゲンは、「もう人間のジョン・レジェンドは必要ないね」とツイート】

デジタルアシスタントは、より人々に受け入れられやすい形に姿を変え、ライフスタイルに寄り添う存在となっていくことでしょう。

企業に求められる「ボイスストラテジー」

――私たちの生活はどう変化していき、企業にはどういった取り組みが求められるのでしょう?

シュリラ:マーケティングの観点から言えば、デジタルアシスタントが利用者の好みを深く理解することによって、“利用者にメリットがない広告を排除する”ようになることが考えられます。例えば、「ナイキが大好きな人」にアディダスが広告を打つ際に、アシスタントが「この人はアディダスの靴は履かないから」とブロックするようになるかもしれません。

私たちはGoogleアシスタントやAlexaを用いたマーケティング手法の研究をしていますが、それぞれのアルゴリズムは異なるため、当然アプローチの仕方は変わってきます。これは難しい作業です。しかし、そこで身を引いてしまったら、これからのデジタルアシスタントが普及する時代に取り残されていくことでしょう。将来のビジネスチャンスを見越して、今のうちにテクノロジーにキャッチアップしていくことが求められるのです。

***

現状の利用率は低いが、『ドラえもん』や『鉄腕アトム』を見て育った日本人に、デジタルアシスタントを受け入れる素地がないとは思えない。Googleがアシスタントにジョン・レジェンドの声をあてたように、日本向けにはドラえもんの声でも使ってくれれば、この現状は変わるのかもしれない。呼びかけるときはもちろん、「Hey」や「OK」といった横文字ではなく、「聞いてよドラえも~ん」なんかだと、楽しそうだ。

AIでスマートな制御を実現! 伊藤忠が提案する次世代蓄電システム

AIでスマートな制御を実現! 伊藤忠が提案する次世代蓄電システム

2018.10.25

伊藤忠商事がエヌエフ回路社と開発した蓄電システムにAIを搭載

AIを手がけるのはイギリスのスタートアップMoixa

P2Pによる電力売買を実現するプラットフォームの構築を目指す

伊藤忠商事は2018年10月24日、イギリスのMoixa Energy Holdings(以下、Moixa)とエヌエフ回路設計ブロック(以下、エヌエフ回路社)、TRENDEと連携し、AI技術を活用した次世代蓄電システムならびに蓄電池専用電力料金プランの販売を開始すると発表した。本稿では、英国大使館で行われた製品発表会の様子をお伝えする。

AIが各家庭の消費傾向を学び、電力計画を作成

伊藤忠商事は、2013年から一般家庭用蓄電池ビジネスに参入しており、エヌエフ回路社とともに開発・製品化した独自ブランドの蓄電システム「Smart Star L」を販売している。今回、そのSmart Star Lに、MoixaのAIソフトウェア「GridShare Client」を搭載した状態で、11月1日から販売を開始する予定だ。

蓄電システムとは、繰り返し充電して家庭内の電気機器に電気を供給するシステムのこと。屋根などに取り付けた太陽光発電による充電や、電力会社から電気を購入して蓄電システムに電気を蓄える。

太陽光であれば電気を蓄えるためのコストは不要。電力会社から電気を購入して蓄電する場合でも、利用量の少ない夜間に料金が安くなるプランなどを活用することで、コストを抑えることが可能だ。また、蓄電システムがあれば、災害などで地域が停電してしまった場合でも電気を使うことができるため、災害時の対策として導入する家庭も少なくないだろう。

発表会ではまず、伊藤忠商事のSmart Star Lについて、製品の紹介が行われた。

「Smart Star Lの強みは、家をまるごとバックアップできる点、出力の大きさ、太陽光発電の出力という3つ。一般的な蓄電システムでは停電時に特定のコンセントしか利用することができないうえに、出力が100Vまで、太陽光発電の自立運転出力が1.5kWまでに制限されてしまいます。一方、Smart Star Lでは、家のコンセントすべてで使用できるだけでなく、出力が200Vまで、太陽光発電も9kVAまで使用可能です。2018年10月までに出荷累計台数が1万台を突破しました」と伊藤忠商事 工業原料化学品部 無機電子材料課 担当課長の村瀬博章氏は、Smart Star Lの強みと実績に胸を張る。

また、システムを共同で開発しているエヌエフ回路社 代表取締役会長の高橋常夫氏は「我々は、独自のIoTプラットフォームを構築しております。API接続によって、各種システムとスムーズな連携が可能。今回は英国MoixaのAIソフトウェア『GridShare Client』と連携することで、AIが気象予報やユーザーの電力需要・発電予測等を分析・学習し、太陽光ならびに蓄電池の効率的な運用が可能になります」と同社のIoTプラットフォームの接続性の高さを主張した。

伊藤忠商事 工業原料化学品部 無機電子材料課 担当課長の村瀬博章氏
エヌエフ回路社 代表取締役会長の高橋常夫氏

続いて、今回伊藤忠がSmart Star Lに組み込むMoixaの「GridShare」の紹介が行われた。

Moixa CTOのChris Wright氏は「GridShareでは、接続している世帯のデータを集め、機械学習のアルゴリズムを用いて、各家庭の電力消費パターンを学びます。それに加えて天気予報などの情報から、翌日の電気消費量などを予測。世帯ごとの電力消費計画を作成し、時間帯ごとに電力の消費を最適化。また、アプリを通じてエネルギーの流れを確認することもできます」とGridShareの概要を説明した。

Moixa CEOのSimon Daniel氏は「イギリスも日本と同じ島国。国内で使われている電力はほとんどが国内で生み出されたものです。そのため、電力をしっかりと管理しなければなりません。増加が見込まれる電気自動車に対応していく必要もあるでしょう。余剰電力をストレージとして使い、夜間にスマートチャージを行う。これにより効率的な電力消費が可能になります」と、AIを活用した蓄電システムの重要性を述べた。

Moixa CTOのChris Wright氏
Moixa CEOのSimon Daniel氏

これらSmart Star LとGridShareが連携することで、自動で賢い充電と利用が可能になる。例えば、翌日が住民不在の平日で、晴れの予報である場合、日中の太陽光発電による蓄電が期待できるため、通常深夜に電力会社から購入している電力は少なくしておくといった判断をするのだという。

AI蓄電システムに合わせて、専用の料金プランもスタート

また、同蓄電システムでは、TRENDEが提供する専用の時間帯別電力料金プラン「あいでんき」を活用することができる。「あいでんき」は午前1時から午前5時までの深夜帯(蓄電タイム)と、それ以外の時間帯で料金が設定されているプラン。条件やエリアによって価格は異なるが、東京エリアの蓄電タイムでは19.5円/kwh、それ以外の時間が31円/kwhだ。

TRENDE 代表取締役の妹尾賢俊氏は「再生可能エネルギーを積極的に活用した社会を実現するというミッションのもとで事業を展開しています。今回のあいでんきで蓄電システムの導入を促進し、最終的にはP2Pの電力取引を実現するためのプラットフォームの構築を目指したいと考えています」とビジョンを述べた。

TRENDE 代表取締役の妹尾賢俊氏
あいでんきの概要

Smart Star Lの希望小売価格は285万円(税別・工事費別)で、GridShareは月額料金が1200円(税別)。AIがある場合とない場合を比較した経済効果は、約1500円/月だと試算されているという。また、「あいでんき」の対象エリアは東北・東京・中部・関西・中国・九州の電力エリア管轄内に限られる。

グリッドシェアプラットフォームを活用した将来のビジネス展開図(イメージ)。ゆくゆくは、家庭間で電力のやり取りを行える環境の構築を目指す

昨今、相次いだ自然災害。電気を止めることが許されない病院などは、おそらくすでに自家発電システムなどを導入しているだろうが、より効率的に蓄電・電力消費・売電できるシステムが構築されていけば、“停電のない社会”の実現もあり得るかもしれない。

また、2009年に始まった太陽光発電の固定価格買取制度は、2019年10月より順次終了していく予定であり、今後は太陽光で発電した電気を自宅で使う流れが拡大していくだろう。その際、自動で効率化してくれるAI蓄電システムは、大いに活躍してくれるはずだ。

「IoT後進国日本」攻略への一手 - ソフトバンクが元アリババの起業家と提携

「IoT後進国日本」攻略への一手 - ソフトバンクが元アリババの起業家と提携

2018.10.19

スマートホーム市場で世界に後れを取る日本

ソフトバンクがIoTソリューション提供の中国企業と提携

自社ブランド「+Style」で先行事例の3製品を発表

日本でのスマートホーム市場がイマイチ盛り上がらない。

ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンク C&S) 上席執行役員 コンシューマ事業本部長 瀧進太郎氏は、同社が開催した記者会見にて「スマートスピーカーの所有率は、ほかの先進国に比べてはるかに低い」と現状を嘆き、それを打破するための攻めの一手を発表した。

「国内トップクラスのディストリビュータ企業として、中国・Tuya Globalとパートナーシップを結ぶことで、日本におけるIoT製品の普及を促進させ、スマートホーム市場を拡大させていく」(瀧氏)

Tuya Global VP of Strategy and InvestmentのMengda Zhao氏(左)、ソフトバンク C&S 上席執行役員コンシューマ事業本部長の瀧進太郎氏(中)、プラススタイル 取締役社長の近藤正充氏(右)

Amazonが日本向けにスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズの最新モデルを発表するなど、米国を中心に、日本におけるスマートホーム市場の開拓を狙う企業が増えている中で、ソフトバンク C&Sは、国内から市場の成長促進を目指す。

パートナーは元アリババのやり手起業家

ソフトバンク C&Sの記者発表会の要旨は以下の2点。

・ソフトバンク C&Sは、中国Tuya Globalとパートナー契約を締結。Tuya Globalが手掛ける”製品のIoT化ソリューション”「Tuya Smart」の国内販売を開始する

・Tuya Smartを用いたIoT製品の先行事例として、ソフトバンクのIoT製品販売プラットフォーム「+Style」から、オリジナルのスマート家電3製品を発売する

「Tuya Global」とは聞き慣れない企業だが、CEOの王学集氏は、かつてIT巨人・アリババで事業責任者を務めた人物。2014年に設立されたTuya Globalは、わずか数年ですでに中国、米国にオフィスを、中国、米国、ドイツにデータセンタを構え、200以上の国へとその販売網を伸ばしている。また2018年7月にはオーストラリアのベンチャーキャピタルなどから約2億ドルを調達するなど、現在急成長を遂げている企業だ。

IoT製品開発コストを削減する「Tuya Smart」

ではソフトバンク C&Sが目を付けたTuya Smartとはいったい何なのか。

Tuya Smartは、製品のIoT化に必要な通信モジュール、およびクラウド環境の構築、スマホアプリの開発をワンストップで提供するソリューション。これにより、Tuya Smartの導入企業はIoT化にかかる開発期間を最短15日まで短縮できるほか、開発コストの削減も実現できるという。

「日本のメーカーは、スマート家電に興味こそ持っているものの、『売れるかわからない』という理由で、イマイチ開発に力を入れられていない現状にある。また、ユーザーは『すでに今の家電が便利だから、スマート家電への魅力を感じない』という状況にあるようで、なかなか市場が活性化しない。この状況を打破するのがTuya Smartだと確信している」(瀧氏)

「Tuya Smart」モジュール

具体的に、Tuya Smartを導入する企業については説明できないとのことだったが、現在は住宅メーカーや家電メーカーなどとの話し合いを進めている状況だという。

「Tuya Smart」で供給を、「+Style」で需要をつくる

またソフトバンク C&Sは、Tuya Smartを利用した先行事例として、「+Style」から、オリジナルのスマート家電「スマートロボット掃除機」「スマート加湿器」「スマートアロマミストポッド」の3製品を発売。+StyleとAmazon、Yahoo JAPANショッピングにて予約を開始した。

左から「スマートロボット掃除機」(18,800円)、「スマート加湿器」(5,800円)、「スマートアロマミストポッド」(4,500円)

これら製品の特徴の1つは、価格だ。どの製品もインターネットにつながることを前提にしたスマート家電にありがちな「割高」な価格設定ではなく、比較的買い求めやすい値段となっている。そこにはソフトバンク C&S、+Styleの狙いがある。

「まず製品が出回らないことには、ユーザーからのフィードバックを得ることができない。多くのユーザーに使ってもらえれば、メーカーは多くのデータを得ることができ、『どのボタンが多く使われているか』『どのくらいの頻度で使われているか』ということがわかる。その後、ディープラーニングを用いてその原因を突き止めることも可能だ」(瀧氏)

続けて+Style取締役社長の近藤正充氏もコメント。

「これまで当社では、100を超えるIoT製品を販売してきた。しかし、まだまだITリテラシーの高い人にしか広まっていないのが現状。そこで『これ、IoT商品ですよ』と売るのではなく、買ってみて『あ、これIoT商品なんだ』と思ってもらえるような製品を作ろうと考えた」(近藤氏)

つまり、今回発表された3製品は、今までよりも多くのユーザーにスマート家電を手にしてもらうことを目的として販売するもの。ITリテラシーの高い「アーリーアダプター」ではなく、その先のマジョリティ層を狙う考えだ。比較的安価な価格設定も、まずは製品を手に取るユーザーを増やすことが目的だろう。

なお、今年中にスマート家電をさらに15製品以上発売する予定であるといい、徹底的に新たな客層を狙おうという同社の考えが窺える。

+StyleでIoT商品を売ることで市場を成長させ、Tuya Smartというソリューションをメーカーに訴求する。この2つの相乗効果によって、日本におけるスマート家電市場を成長させていくというわけだ。

IoT先進国への遅れを取り戻せるか

「日本におけるIoTの流行りはほかの先進国と比べて、3~4年遅れているのが現状」(瀧氏)

スマート家電やスマートスピーカーの認知こそあるものの、普及が遅れているのは、日本人のニーズに合った家電がまだまだ少ないことが原因だ。しかし、この状況が進まないままでは、他国に市場を荒らされてしまうのは目に見えている。

現にAmazonはすでに、スマートホームの中枢を担う「Alexa」の普及を図るために、同社のクラウドとの接続に必要な部品をモジュール化し、容易に組み込めるキットとして売り出し始めている。これは、家電メーカーに「早くAlexaに対応した家電を作ってくれ」という圧力とも考えられ、今後Alexaに対応したスマート家電が大量に登場することを予測させる。

残念ながら、日本企業からは世界に打って出れるようなスマートスピーカーは誕生していない。これからの成長が見込まれるスマートホーム市場の波に上手に乗るためには、メーカー各社が少しでも早くスマート家電の開発に力を入れることが求められることだろう。

日本でのスマートホーム市場の盛り上がりを測る上で、「Tuya Smartの導入企業がどれだけ増えていくか」は1つの判断材料となりそうだ。

今回発表された3製品はCEATEC JAPAN 2018でも展示された