「BMW」の記事

小さなクルマは誰のため? 好調MINIがハッチバック基幹車種を改良

小さなクルマは誰のため? 好調MINIがハッチバック基幹車種を改良

2018.05.19

MINIは基幹車種に位置づける「ハッチバック・モデル」(3ドア/5ドア/コンバーチブル)を改良し、販売を開始した。コアモデルで往年のMINIファンに訴求しつつ、ニューカマーには別のボディタイプで接近するMINIの戦略は奏功しており、販売台数も堅調に推移している。

ソラリス・オレンジの新型「MINI3ドア」。価格は238万円~450万円から。サイズは3車種ともモデルチェンジ前と同じだ

デザインはMINIらしく、英国らしく

MINIはBMWグループのブランドで、クルマとしてはハッチバック・タイプの「MINI」(全3種類)、「やんちゃ」というブランドイメージを大人っぽく成長させたという「MINIクラブマン」、プラグインハイブリッド車(PHV)もラインアップするSUV「MINIクロスオーバー」の5つのボディタイプをそろえる。

今回はハッチバック・タイプの3車種である「3ドア」「5ドア」「コンバーチブル」(屋根が開閉可能)を改良した。MINIのプロダクト・マーケティング・マネージャーを務める生野逸臣(せいの・いつおみ)氏は今回のモデルチェンジを「ぱっと見だと変わらないが、確実に進化した」と表現。主な変更点はデザイン、トランスミッション、コネクテッド機能の3カ所だという。

エメラルド・グレーの新型「MINI5ドア」。価格は271万円~407万円から。3ドアと5ドアの世界観を表現する命名は「The Individualist.」(個人主義者)だ

デザインの面では、まずヘッドライト(昼間でも点灯しているドライビングライト)が完全な丸型になった。これまでの「MINI」は円の一部が途切れていて、そのミッシングリンクの部分はウィンカーになっていたが、今回のモデルチェンジで完全な丸型となった。生野氏によると、「丸型」はミニにとって非常に重要なデザインのモチーフであるとのこと。例えば車内のセンターパネルも丸い形をしている。

スターライト・ブルーの新型「MINIコンバーチブル」。価格は373万円~523万円から。命名は「The Free Spirit.」(自由な精神)

デザインでは他に、ブランドロゴをこれまでの立体的な意匠からトレンドに合わせた平面的なものへと改めたり、テールライトにMINI発祥の地である英国の国旗「ユニオンジャック」をあしらったりしたとのことだ。

前後のライトでMINIらしさ、英国らしさを表現

コネクテッド機能を日本で初採用

走りの面では、MINIのDNAでもある「ゴーカート・フィーリング」への原点回帰を狙ったという。具体的に変わったのはトランスミッションの部分。これまでは「トルクコンバータつきオートマチックAT」だったところ、ガソリンエンジンモデルに「7速ダブル・クラッチ・トランスミッション(DCT)」を採用した。DCTはマニュアル・トランスミッション(MT)のようにギアが噛み合う構造で、操作性としては「よりダイレクトな運転フィール」が感じられて「シフトショックが少ない」ため、運転する楽しさを感じられるというのが生野氏の説明だ。

車載通信モジュールでクルマがネットにつながる「MINI Connected」は、日本では今回のモデルチェンジからの採用となる。具体的には、事故のときにオペレーターと会話できる「SOSコール」や、スマートフォン向けのアプリなどが使えるようになる。

「MINI Connected」で使える機能

アプリでは車両の位置をサーチしたり、ドアロックを開閉したりすることが可能。事前にスマホで調べた目的地情報をクルマのナビに送信しておくこともできる。対応する機種はiPhoneのみで、アプリの配信は7~8月の予定。アプリをスマホのカレンダーと連動させれば、目的地までのクルマでの移動時間を逆算し、出発時刻に通知してくれる機能も使用可能だという。

8年で台数が倍増、MINI好調の要因は

販売台数を8年で2倍以上とするなど、MINIの日本事業は好調だ。MINI本部長のフランソワ・ロカ氏は、豊富なボディタイプやガソリン、ディーゼル、PHVを取りそろえる商品ラインアップに触れつつ、「小型車でこんなにバリエーションがあるのはMINIだけ」とし、その商品力こそ成功の理由の1つと説明した。

ビー・エム・ダブリューのフランソワ・ロカMINI本部長は、MINI好調の理由の1つとして豊富な商品ラインアップを挙げた。右は日本におけるMINIの販売台数の推移を示したスライド

MINIの顧客分布についてロカ氏は、「『3ドア』や『5ドア』といったコアモデルには既納客、コアファンが多い。新規客はもっと大きいボディサイズの『クラブマン』や『クロスオーバー』にいく」と解説した。このあたりについて、生野氏に少し詳しく聞いてみた。

「クルマのポジショニングとして、今までのMINIのエリアじゃないところに『クロスオーバー』と『クラブマン』は登場した。だから、例えば輸入車の、『Cクラス』(メルセデス・ベンツ)とか『3シリーズ』(BMW)に乗っていた人で『そこまでガチガチのセダンじゃなくてもいいけど、ちょっといいクルマに乗りたい』という考えを持つ方が、少しサイズを落としながらMINIに乗り換える、みたいなことが起きた」(以下、発言は生野氏)

「そういう方は、今までのMINIのお客様とは少し違う。今までのコアファンは「MINIが欲しい」という人が多かったが、そういう風に輸入車から乗り換えてくる方は、そこまでMINIのブランドに強いこだわりがあるわけではないが、いいモノが欲しいというケースが多い」

これが「MINIクロスオーバー」のPHVだ

ボディタイプで異なる顧客分布、MINI独特の立ち位置

これが新規客の傾向だが、今回モデルチェンジしたハッチバックについては、どのような顧客を想定しているのだろうか。「今回のモデルは、前の世代に乗っている人の乗り換えとか、あとは過去に、現行モデルより少しサイズが小さかったクロスオーバーを買った人が、そのサイズ感で5ドアに乗り換えるとか」というのが、生野氏の想定する購入客のイメージだ。

MINIの強みは「スモール・プレミアム」としての独特な立ち位置と生野氏は解説する。「コンパクトなクルマの方が運転しやすいというニーズは一定量あって、その中で、プレミアムなものが欲しいという方がいる。『スモール・プレミアム』といったりするけど、MINIはそういうポジショニングを取るブランドだ。こういうブランドは過去にいなかったので、MINIの個性も含めて、確固たるポジションを築いてきたのがこれまでの経緯。引き続き、そういうものを求める人にアプローチしていきたい」。これがMINIの販売戦略であり、日本で成功している理由なのだろう。

狙い通り売れる? 続々と登場の“若き成功者”向けコンパクトSUV

狙い通り売れる? 続々と登場の“若き成功者”向けコンパクトSUV

2018.05.16

プレミアムでコンパクトなクロスオーバーSUVは増える一方だ。直近でもボルボ「XC40」、BMW「X2」、ジャガー「E-PACE」といった具合で新顔が日本に登場しており、選択肢の充実ぶりが際立っている。ここで疑問に感じるのは、これらのクルマが一様に全く同じ人、つまり“若き成功者”をターゲット顧客に据えているように見えるところ。これではシェアの奪い合いになりそうだし、そもそも若い成功者がそんなにたくさんいるものなのかも気になる。

クロスオーバーSUVのブームに端を発する昨今の状況

いまのクロスオーバーSUVのブームは2000年あたりから、米国を中心に始まった。

もともと、オフロードでの走破性が高いSUVは、トラックと同じ「ラダーフレーム構造」だったが、1990年代にトヨタ自動車「RAV4」やホンダ「CR-V」が乗用車と同じ「モノコック構造」のSUVをリリース。オフロード性能は少し落ちるかもしれないが、オンロードでの乗り心地や安定性が高いモノコック構造のSUVは、一般ユーザーに評判が良く、それぞれ想定以上のスマッシュヒットとなった。

トヨタがクロスオーバーSUVのパイオニアと紹介する「RAV4」は近く、5代目(画像)へとフルモデルチェンジする。米国では2018年末頃、日本では2019年春頃に発売の予定だ(画像提供:トヨタ自動車)

その後、乗用車とSUVのいいとこどりをしたクロスオーバーに、さらに高級という概念をくわえて登場したトヨタ「ハリアー」は、SUVなのに高級ホテルのエントランスに乗りつけても様になるのが新鮮だった。

そうやって泥くささを払拭し、都会的なイメージを身につけたクロスオーバーSUVの火がチラホラと見え始めていたところに、油を注ぐかたちとなったのが2000年登場のBMW「X5」。新しいモノに敏感なお金持ちがこぞって飛びつき、一気にブームに火がついたのだ。以降、様々なフォロワーが出現したが、単なる流行モノではなく、一大ジャンルになることを決定付けたのはポルシェ「カイエン」だろう。

2017年10月の東京モーターショーに展示された新型「カイエン」

ミレニアル世代がメインターゲット

最初は比較的、大きなサイズのプレミアム・カーから普及していったが、時とともにあらゆるジャンルに波及してきた。最近ではプレミアム・ブランドを超えたハイ・ブランド、その逆の大衆ブランドでもサイズにかかわらずクロスオーバーSUVのラインアップを取りそろえており、一過性のブームではなく、完全に乗用車のメインストリームになってきている。

そんな中、いま最も盛り上がっているのが、プレミアム・ブランドのコンパクトサイズ。いわゆるCセグメント(フォルクスワーゲン「ゴルフ」を代表とする大きさのクラス)のクロスオーバーSUVが続々と登場しているのだ。直近ではBMW「X2」にボルボ「XC40」、ジャガー「E-PACE」といった新規車種がそろって日本市場に上陸してきた。

CセグメントのSUVが充実してきている(画像はジャガー「E-PACE」)

高級感があって都市部で使いやすいサイズのモデル達は、道路や駐車場の事情にあまり恵まれていない日本では持てはやされることだろう。サイズ以外にも共通点はあるのだが、それはメインとするターゲット・カスタマーが「ミレニアル世代」だということだ。そこでマイナビニュース編集部から上がった疑問が「そんなにたくさん車種が、同じ客層をターゲットとしてそれぞれ売れていくものなのか? 若い世代でプレミアム・ブランドを買えるようなお金持ちが日本にそんなにいるのか?」ということ。なるほど、それは他人事ながら心配ではある。

ユーザーの高齢化に悩む自動車メーカー

ミレニアル世代とは、1980~1990年代に生まれ、2000年代に成人する人たちを指す、主に米国で使われているマーケティング用語で、たしかにプレミアム・ブランドの自動車でも最近は頻繁に使われている。少し前までは「ジェネレーションY」の方がよく耳にしたものだが、そう大きく世代に違いがあるわけではないようだ。

ミレニアル世代はデジタルネイティブであるとともに、リーマンショックで景気が悪いときに育っているなどの特徴があり、消費行動が変わってきているのでマーケティングの世界では大いに研究がなされている。ウインドーショッピングなんて面倒なことはせず、オンラインで買えるならそのまま買い、店頭にいくにしてもネットで調べてシビアに売価を見極め、一目散に決めた店に行くだけ。それ以上に賢いシェアリング・エコノミーへも移行しつつある。それは売る側にとっては脅威でもあるだろう。

米国や欧州、それに日本といった自動車成熟国の自動車メーカーは、常にユーザーの高齢化という課題を抱えている。日本でもだいぶ前から若者のクルマ離れが叫ばれており、トヨタ「クラウン」などは最たるモデル。平均ユーザーは60代超えで、次の次あたりのモデルチェンジでは免許返納の年齢に達してしまうのではないかと戦々恐々としているとも聞く。

2018年のフルモデルチェンジを予定するトヨタ「クラウン」でもユーザーは高齢化している(画像は2017年10月の東京モーターショーに展示された「クラウン コンセプト」)

近年ではメルセデス・ベンツが、ユーザーの高齢化に対応するため、コンサバだったイメージから大変革を図った。攻めのデザインにスポーティな走り、それにコンパクトカーのラインアップを充実させて見事に販売台数を増やした。

ユーザーの年齢層を下げることにも成功しているが、それ以上に、従来の高齢なユーザーにもウケがいいのがポイントでもある。今どきの50代、60代は身体が元気なだけではなく気持ちも若く、若者と同じ感覚のモノを求めているのだ。だから、ミレニアル世代がターゲットとは言いつつも、本当のヤングだけではなく「ヤング・アット・ハート」な人たち全般が対象なわけで、Cセグのプレミアム・コンパクトSUV達もそういった売れ方をしていくだろう。

ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、「XC40」(画像)でターゲットとする顧客を「ヤング・アット・ハート」な人たちと表現していた

ミレニアル世代に直撃するクルマはあるのか

だいたいにして、ミレニアル世代のハートを鷲づかみにするようなクルマは、まだ現れていないような気がする。デジタルネイティブを意識してコネクテッドなどにも力を入れてはいるが、劇的に何かが変わるほどのインパクトはない。渋滞情報とリンクしたカーナビが賢いとか、周辺の美味しいレストランを案内してくれるなどは、以前からある機能の延長線上。せいぜい新しいのが、同乗者に喜ばれる“クルマのWi-Fiスポット化”あたりだが、日本はSIMの料金が高いので一部に限られる。それだったら、手持ちのスマホやタブレットをきっちり装着できるホルダーが付いているぐらいでもいいのでは? と思ってしまう。

フォルクスワーゲンが「ID BUZZ」のコンセプトカーで見せていたように、「ポケモンGO」的にARを活用し、フロントウインドーの現実風景に矢印などを映しこんだカーナビ機能、あるいはAIロボティクスぐらいまで行くと、ガラリと話が変わってくるだろう。

ただ、ライドシェアの成長をみれば、クルマを買うということ自体が廃れることもありえる。日本では規制があって、まだ守られてはいるが。

競合ひしめくコンパクトSUV市場

「日本に若者の成功者がそんなにいるのか?」という疑問に関しては、絶対的に自信のある答えは持っていない。アベノミクスが始まってから、金融緩和と財政出動が上手く機能していた2013年は、想定以上のペースでデフレ脱却方向にいったが、翌年の消費税増税がこれまた想定以上で逆に冷や水を浴びせかけることになり、個人消費が落ち込んだ。その後、財政は緊縮気味ではあるものの、景気はなんとか持ち直しの傾向で、雇用統計や給与総額などではかなりいい数値が出てきている。これで2019年の消費増税がなければ、デフレからの好ましい脱却も夢ではないというのが全体の傾向だ。

成功者となると、日本はベンチャーに優しくないのが現状なので生まれにくいのは確かだろう。金利が安い今は大チャンスだが、銀行も斜陽気味なので実績のない者には貸さない状況のようだ。

だから、若くして成功する者が続出するということにあまり期待はできないが、プレミアム・コンパクト・クロスオーバーSUVはそこまで高価ではないので、基本的には順調に売れていきそうだ。エントリー価格は400万円程度で中心が500万円前後。これはDセグメントのセダン、BMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」あたりと同等であり、日本でもそれなりにボリュームがある。ここが食われる可能性はあるだろう。

ただし、ジャンル全体としては大きく成長することが期待できるが、これだけ車種が増えてくると過当競争になるおそれはある。前述の新規3車種以外でも、メルセデス・ベンツ「GLA」は大人気だし、アウディ「Q3」ももうすぐフルモデルチェンジで手強い存在だ。リーズナブルなところではプジョー「3008」なども手が出しやすい。

プレミアム・コンパクト・クロスオーバーSUV市場が拡大するのは間違いなさそうだが過当競争のおそれもある(画像はメルセデス・ベンツ「GLA」)

結局のところ勝ち残るには、機能的には優秀な日本車を超える魅力がどれだけあるかどうかに尽きる。

新顔SUV3車種の評価は?

BMW「X2」はハードウェアのクオリティが期待通りに高く、FFながらハンドリングも楽しい。BMWには同セグメントの「X1」があり、そのクーペバージョンでプレミアム度をさらに増した「X2」は本来ならばニッチで販売台数は多くを望めないところだが、想像しているよりも後席の空間がしっかり確保されていて、利便性でのネガは少ない。さらに、クーペとして車体を低くしたおかげで全高は1,550mm以下。つまり、立体駐車場に入るサイズとなっており、これは都市部での購入動機に直結するから意外と人気になりそうだ。

「X2」の発表会ではBMWのブランド・フレンドに就任した香取慎吾さんが登場。若者世代へのアピールのためなのか、今までと違ってなんだかくだけた感じだなと思ったが、乗ってみればBMWらしい骨太なモデルだったことに個人的には安心している。

BMWらしく骨太なクルマに仕上がっていた「X2」

ボルボは一昨年からハードウェアもデザインも大幅に進化。中国のジーリーホールディングスの傘下になって資金力を得たことで成功を収めつつあるのだが、「XC40」も気合いが入っている。その昔のボルボといえば、安全ではあるものの、走りには面白みがないイメージが強かったが、今では全く違う。ターボエンジンはパワフルで十二分に速く、シャシー性能もハイクオリティだ。

面白いのは、いたずらにスポーティに振りすぎていないこと。自動車はスポーティとうたった方が全体的にウケがいいので、猫も杓子もそっち方向にいきがちだが、「XC40」は素直でコントローラブル。スポーティに走らせようと思えばきちんとついてくるが、普段はリラックスして走れる特性なのが、日常生活では嬉しい。

ボルボ「XC40」は素直でコントローラブルだが、スポーティーに走らせようとすればきちんとついてくる

ジャガー「E-PACE」はそれとは逆で、スポーツカー・ブランドとして只者ではない雰囲気を走りからも放っている。エンジンは高性能であるだけではなく、アクセルをちょっと踏んだだけでもグワッと加速していくような勢いがある。ハンドリングも然りで、ステアリング操作に俊敏に反応。好みは分かれるところかもしれないが、その個性の強さに勝機がある。ちなみに、現在のジャガーはインドのタタの傘下。ボルボもジャガーも、ついでにいえばマツダも元はフォード傘下だったが、リーマンショックでそれぞれ離れてからのほうが、クルマの魅力が増しているのは興味深いところだ。

ジャガー「E-PACE」はスポーツカーとしての個性を前面に押し出す

結論として、ここであげた新規3車種は、ブランドで1番の販売台数になるぐらいに魅力があり、成功を収めるポテンシャルは間違いなくある。ユーザー年齢層がどれぐらいに収まるかにも注目していきたい。

ブームは分かるけど…なぜ同一ブランドがSUVを多品種展開するのか

ブームは分かるけど…なぜ同一ブランドがSUVを多品種展開するのか

2018.05.09

自動車業界ではSUVブームだが、BMWの「X」やアウディの「Q」など、同じメーカーが何種類ものSUVをラインアップするのはなぜなのか。サイズの問題であれば「大」「中」「小」くらいで済みそうなものだが、BMWらが取りそろえる品種はもっと多く、正直に言って、街で見かけても車名を判別するのが難しいほどだ。そうなる理由をモータージャーナリストの清水和夫さんに以下で解説してもらう。

アウディのSUVには「Q2(画像左)」「Q3」「Q5(画像右)」「Q7」というモデルがあり、まだ種類は増える可能性があるようだ

多品種少量生産が流行する最近のドイツ車

その理由はいくつか思い浮かぶが、まず、高級車が売れるマーケットが増えたことが影響しているだろう。中国だけでなく、ASEANやインドなどでも富裕層が増え、そういった人たちが人とは違うクルマを欲しがるようになった。セダンとクーペの中間のような「4ドアクーペ」が登場してきているのも、そのあたりが理由かもしれない。

もう1つの理由は、世界的なSUVブームが、大きなクルマからフォルクスワーゲン(VW)の「ポロ」クラスまで伸びたこと。背が高いクルマは不安定とされてきたが、電子制御の安全機能(ESC:エレクトリック・スタビリティ・コントロール)のおかげもあり、背が高くても安全性が飛躍的に高まったことが要因だ。

BMWではSUVタイプのクルマを「SAC」(スポーツ・アクティビティ・クーペ)あるいは「SAV」(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と呼び、車名は「X」の後に数字が付く。現時点でラインアップは「X1」~「X6」まである。画像は左が「X2」、右が「X3」だ

多品種生産は日本のお家芸だったが…

また、同じ生産ラインで多品種が作れるようになったことも重要なポイントだ。コンピューターで部品を管理する工場は「デジタルファクトリー」と呼ばれ、多くの種類の部品を扱うことが可能となった。試作品も3Dのデジタルで納品され、バーチャルなサイバー空間で試作生産が行われている。これが、ドイツが主導している「インダストリー4.0」のメリットだろう。

昔を思い起こすと、1980~1990年代は日本が多品種生産を得意とし、フレキシブルな生産ラインは日本のお家芸だった。器用な日本人は手作業で多品種を生産していたが、それに対し、欧米人はコンピューターというツールを使うことに真剣だったのだ。