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電子レンジにもAlexa―「Echo Show」上陸に見るAmazonの”スマート”な市場戦略

電子レンジにもAlexa―「Echo Show」上陸に見るAmazonの”スマート”な市場戦略

2018.10.16

「Echo Show」が日本上陸、スマートディスプレイ市場を切り拓けるか

従来製品もモデルチェンジし”買い増し需要”を狙うAmazon

狙うは「Alexa」採用製品の増加、独自開発の電子レンジも発表

10月11日、アマゾンジャパンはスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズの最新モデルを国内向けに発表した。注目は、日本に初めて上陸する画面付きモデル「Echo Show」だ。

こうした、スマートスピーカーに画面を付け加えた「スマートディスプレイ」製品には、アマゾン以外にも参入が相次いでいる。日本ではまだまだ馴染みの薄い製品だが、果たして市場を切り開く存在になるのだろうか。

アマゾンが「Echo」シリーズの新製品を国内投入

1部屋に1台、スマートスピーカーという近未来

米国で2017年に登場した初代のEcho Showは、スマートスピーカーに画面を搭載した新しいデバイスだ。見た目はタブレットに似ているが、据え置きで使うのが特徴だ。

料理のレシピのように、読み上げよりも動画で見たほうが一目瞭然という用途において、音声での操作ができ、かつ動画を再生できるスマートディスプレイは非常に便利だ。ではタブレットとは何が違うか、というと、画面表示やタッチ操作は補助的なもので、あくまで音声での操作が主であるという点にある。

第2世代モデルの「Amazon Echo Show」

スマートディスプレイ市場は英語圏を中心に徐々に熱を帯びており、グーグルは2018年1月のCESでサードパーティと組んでスマートディスプレイに参入。さらに10月には自社製の「Google Home Hub」を投入した。Facebookもビデオ通話に特化した「Portal」を発表している。

いずれも英語圏向けの製品だが、アマゾンは7月に小型モデル「Echo Spot」を日本に投入。そして今回、10インチの画面を搭載したEcho Showの第2世代モデルを日本で発売するに至った。

Echo Showでは、新たに決済サービス「Amazon Pay」と連携したことで、音声だけで旅行のチケット手配や出前の注文ができるようになった。スマートホーム向けの機能がエンタメ機器にも対応しており、ソニーや東芝のテレビなどの音声操作も可能だ。

「Amazon Pay」との連携で音声だけで出前を取ることも

また今回、音声で使うアプリともいえる「Alexaスキル」の開発環境も強化。これまでのスマートスピーカーは音声だけで操作をしていたが、画面が加わったことで、開発手順は複雑化している。そこでさまざまな画面サイズに対応できる開発環境が必要になったというわけだ。

異なる画面サイズに対応したスキルを作りやすくなった

従来のスマートスピーカー製品もモデルチェンジし、小型の「Echo Dot」、温度センサーを搭載した「Echo Plus」の新モデルや、低音を楽しむサブウーファー(低音域のみを担当して再生するスピーカー)「Echo Sub」が加わった。複数台のEchoを連携させると、家中で同じ音楽を流すことも可能だ。

音声アシスタントに興味を持つ人はまだそれほど多くないものの、Alexaの便利さを理解した人なら、部屋ごとに1台、さらにはキッチンや洗面台などに置くためにどんどん買い増していけるラインアップといえる。

Amazonはハードウェアを売りたい訳ではない

画面付きのEcho Showが新しいジャンルの製品とはいえ、すでにタブレットやテレビを持っている人にとって、その存在意義は分かりにくいかもしれない。だが、アマゾンはその垣根も取り払おうとしている。

そこで打ち出してきたのが、Echo Showのような製品をサードパーティが作れる「Smart Screen SDK」だ。レノボはこれをAndroidタブレットに、ソニーはスマートTV製品に組み込むことで、タブレットやテレビをEcho Showの代わりに使えるという。

ソニーのスマートTVをEcho Showのように使える

これではEcho Showが売れなくなるように思えるが、アマゾンの目的はEchoというハードウェアを売ることではなく、Alexaを普及させることにある。EchoのライバルとなるようなAlexa対応機器をどんどん作ってもらいたいというわけだ。

「家電にAlexa」という提案、まずは電子レンジから

アマゾンが次に狙うのが、家電メーカーのさらなる取り込みだ。Alexaに関心を持つ家電メーカーは多いものの、家電製品ごとにアマゾンのクラウドと接続する通信機能を組み込むには、開発コストがかかりすぎる。

そこでアマゾンは通信に必要な部品をモジュール化し、容易に組み込めるキットとして売り出した。米国ではアマゾン自身がその活用例として、安価な電子レンジ製品を発表している。

米国でアマゾンが発表した電子レンジ「AmazonBasics Microwave」

アマゾンが描き出すスマートホームの姿は、家庭内のあらゆる機器が音声操作に対応し、Echo ShowやEchoシリーズのスマートスピーカーを通してアクセスできるというものだ。グーグルやLINEも同じビジョンを持っている中で、スマートディスプレイの国内展開ではアマゾンがリードすることになりそうだ。

将来性バツグンもまだ未熟、スマートスピーカーの「落とし穴」

将来性バツグンもまだ未熟、スマートスピーカーの「落とし穴」

2017.11.13

Amazon Echo

スマートスピーカーの本命とも言える「Amazon Echo」がついに日本に上陸した。Amazon Echoという主役が登場したことで、日本でもスマートスピーカー市場が盛り上がりそうな気配があるが、一方で、普及する上で見逃されている「落とし穴」も存在する。

アマゾンはEcho発売に合わせるかたちで、4000万曲以上の音楽を聴ける「Music unlimited」をEchoユーザー向けに月額380円で提供すると発表。こうしたアマゾンが従来から得意としている「コンテンツの安さ」という武器で勝負を挑むが、Echoにはもう一つ「スキル」という売りがある。スマホでいえばアプリのような存在で、Echoに新しい機能・サービスを追加できる。

日本上陸に合わせて、アマゾンでは250以上のスキルを用意。ニュースサイトやradiko、占い、銀行など、幅広いラインナップとなっている。

音声コントロールの課題は「呼び出し」

一方、日本市場におけるスマートスピーカーの販売で1カ月ほど先行したグーグルは、アマゾン・Echoの上陸を相当、意識していたようで、アマゾンが発表会を開いた翌日、スキルと同様にコンテンツ提供会社などがGoogle アシススタントに機能を追加できる「Action on Google」の説明会を開催した。

直接的な比較を嫌がったのか、Action on Googleで提供されているコンテンツの数は公表されなかった。グーグルではAction on Googleに加えて、自然な日本語で発話できる点などをアピールしていた。

この「自然な日本語を話す」というのは、スマートスピーカーにとって生命線ともいえる重要なポイントだ。

実際、アマゾンも日本語の会話には、相当な時間をかけて開発してきたという。日本語には、同じ言葉でも違った意味を持ったり、イントネーションが微妙に違ったりするものが多々ある。ユーザーの指令を正しく聞き取り、最適なイントネーションで発話するのには、かなりの技術力が必要となってくる。

スキルの多さが注目されているAmazon Echoだが、これまでアメリカ版を海外で試用してきた経験からすると、スマートスピーカーならではの課題が見えてくる。Amazon Echoの場合、スキルはスマホのアプリ上から追加していくのだが、しばらくすると、そもそもスキルを追加したこと自体を忘れてしまいがちなのだ。

Amazon Echoを最初に試したタイミングでは、スキルをインストールしてどんな答えが返ってくるのかを楽しむものの、数日も経てばスキルを入れたことすら忘れてしまう。仮に覚えていたとしても、「どんな言葉で話しかければ、スキルが呼び出せるか」ということすら思い出せなかったりする。

また、スキルが思った以上に使い勝手が悪く、頼りにならないことがわかると、1回呼び出しただけで使わなくなったりもする。つまり、日々の生活で必要不可欠なスキルでないと、継続して使われない傾向があるのだ。実際、アマゾンもその「忘れ去られてしまうスキル」については課題としてとらえているようで、ユーザーに対して週に1回、新しいスキルや、どんな言葉をかければ良いかをメールで送りつけ、なんとかスキルを継続的に使ってもらおうとしている。

スマートフォンも、最初のころはアプリをたくさん入れて楽しんだものだが、いつしかアイコンが画面上に並んでいても、使わなくなっていくアプリが増えていった。アップルやグーグルはアプリストアに並ぶアプリの多さを競ったものだが、ユーザーはもはや、新しいアプリを入れようとしない。生活に必要不可欠なアプリだけを厳選して使うようになったのではないか。

特にスキルは、目で確認する機会がAmazon Alexaの設定アプリ上しかない。そのため思い出すきっかけが少なく、すぐに使われなくなるものが増えていきそうだ。

もちろん、グーグルも同じ問題を抱えている。Action on Googleで提供されているコンテンツの一覧が、まとまって掲載されていないのだ。グーグルの徳生裕人製品開発本部長は「見やすいリストを公開するように準備を進めている。理想としては、ユーザーがやりたいことに対して、自然な会話でActions on Googleの機能を呼び出せるようにしていきたい」と語る。

Actions on Googleの発表会では「ピカチュウトーク」が一つの目玉として紹介された

そもそも、ユーザーはActions on Googleによってどういった機能が追加され、「何ができるか」を知らない。「ユーザーにActions on Googleでどういった機能が提供されているか」を認知してもらう努力が必要となってきそうだ。また、スマートスピーカーのスキルで見逃されているのが、「話し言葉と書き言葉の違い」だ。今回、アマゾンのスキルのなかには、ニュースサイトの記事を読み上げるものがかなり存在する。

しかし、ネットに上がっている記事をそのまま読み上げると、ユーザーとしては違和感を抱くのではないか。こうしたネット記事は「書き言葉」で執筆されており、しかも「だ」、「である」調で終わるものも多い。記事を目で読むのと、耳で聞くのでは大きな違いがあるはずだ。

新聞記事を紹介するラジオ番組などがあるが、もちろん、新聞の記事をそのまま朗読しているわけではなく、きちんと話し言葉に直して、読み上げているところがほとんどだ。また、単に話し言葉にするだけでなく、耳で聞いて理解しやすい文章に構成し直したりもしている。

Google Homeでも、NHKラジオニュースや日経電子版NEWSは、アナウンサーがニュースを読み上げているので、とても聞きやすいが、ほかのコンテンツでは、記事をそのまま人工音声で読み上げているだけのものもあるようで、書き言葉のせいか、若干、違和感のあるものも目立つ。

アマゾンとしては、自然に日本語を話せるように開発を進め、さらにスキルの数を稼ごうと、数多くのニュースサイトなどに協力を仰いだのだろうが、肝心な原稿が話し言葉になっていないのが盲点となってきそうだ。いずれにしても、アマゾンもグーグルも日本のユーザーが使うことで鍛えられていくことだろう。そのフォードバックを生かして、すぐに製品やサービスを改善できるかが、勝負のポイントとなっていくだろう。