米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2019」では、主要各社から「8K」テレビが展示されたが、日系メーカー3社の8K戦略には大きな差が出た。

個人向け8Kビデオカメラも投入し、積極的なシャープ

世界初の8Kテレビを2018年11月から日本で発売しているシャープは、CES 2019の展示においても、自らが8K分野のリーディングカンパニーであると改めて訴求する。

8Kディスプレイを一堂に展示したシャープブースの様子
シャープは8Kエコシステムを前面に打ち出した
シャープの石田佳久副社長

4年ぶりにCESのメイン会場であるセントラルホールに出展したシャープの石田佳久副社長は、当日の会見で「シャープは、中期経営計画において、『8KとAIoTで世界を変える』ことを掲げている」と話す。ブース内に数多くのBtoB向け8Kディスプレイを並べた一方、5Gによる8K画像の配信提案や、サードパーティーによる8Kデータ管理サーバーなども展示。ほかにも、8Kテレビの心臓部となるイメージプロセッシングSoCも参考展示していた。8Kの技術や製品、パートナーシップにおいても先行していると強調した内容だ。

8Kテレビの心臓部となるイメージプロセッシングSoCも参考展示
シャープがパートナーシップ戦略のもとに展示した8Kデータ管理サーバー

中でも特に注目を集めたのが、参考展示したコンシューマ向け8Kビデオカメラである。

「8Kの映像を手軽に撮影する提案が重要になる。今回、プロフェッショナル用の8Kカメラに加えて、プロシューマ向けのカメラを新たに用意した」とする。形状はデジカメのようだが、8K動画の撮影に対応。2019年上期には発売する予定だという。価格は3,000~4,000ドル程度を想定している。

石田副社長は、「将来的には、8K映像もスマホで撮影するようになり、そこまでくれば、8Kが幅広く認知されることになる。だが、そこに至るまでにはまだ時間がかかる。シャープは、8Kを普及させるために、8Kに関して、様々な製品を用意して行く考えであり、今回の8Kビデオカメラもそのひとつ。多くの人に使ってもらいたい」と説明する。

シャープが参考展示した8Kビデオカメラ

また同氏は、「シャープは8Kにおけるリーダーとして、8Kディスプレイテクノロジーによりデジタルエクスペリエンスを向上させ、エンターテインメント、放送、教育、ヘルスケア、セキュリティ、製造業など、広範に8Kの価値を提供することになる。8Kエコシステムを通じて、パートナーとともに8Kの価値を十分に引き出した提案を行っていきたい」と述べた。

シャープはCES 2019会期中の1月11日(現地時間)に、マレーシアでASEAN市場初のコンシューマ向け8Kテレビも発表している。画面サイズが大きめの60型、70型、80型の3つの製品を投入し、マレーシアで行われた会見では、「ASEAN市場においても、AQUOS 8Kワールドの幕開けを宣言する」とコメントした。

ただ、主力となる北米市場における8Kテレビ戦略には懸念材料がある。シャープは鴻海グループ傘下に入る前に、北米市場におけるシャープブランドのコンシューマ向け液晶テレビの販売に関して、中国ハイセンスにライセンスを供与している。シャープは、北米でAQUOSブランドのテレビを販売できない。

石田副社長は、「北米には8Kテレビの市場ポテンシャルがあると考えている。いい技術といい製品が完成している。これを米国で販売できないのは残念。できるだけ早く販売を再開したい」と話している。北米市場での今後の協議の行方は注目だろう。

大画面に絞り、8Kテレビを初めて投入するソニー

ソニーはCES 2019において、同社初となる8Kテレビ「Z9Gシリーズ」を出展してみせた。販売地域や価格については追って今春に発表する予定だという。

ソニーの8Kテレビ「8Kテレビ「Z9Gシリーズ」
ソニーの高木一郎専務

ソニーのホームエンタテインメント&サウンド事業担当の高木一郎専務は、このタイミングでの8Kテレビ投入を、「ソニーは、顧客に対する”感動価値”を感じてもらえる製品ができあがったら、8Kテレビをしっかり提案すると話してきた。他社が発売しているような8Kテレビのレベルでは、感動価値を与えられず、製品として出せないと考えていた。今回、ソニーのBRAVIAとして発売できる水準まで到達した」と説明する。

日本では、NHKが8Kの衛星放送を開始しているが、まだまだ8Kコンテンツは少ないのが現状だ。だが、そこにソニーがいう感動価値を提案できるという言葉の背景がある。

「8Kのコンテンツがないという現状で、8Kの感動価値を実現するには、4Kや2Kを8Kにアップスケールできる技術が肝になってくる。それを実現するアルゴリズムとデジタルプロセッシングが完成したことで、他社には実現できない感動価値を提供できることができた」(高木専務)とする。

Z9Gシリーズでは、次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」に、8K超解像アルゴリズム用の専用データベースを内蔵する。これにより、あらゆるコンテンツを8K解像度にアップコンバートする「8K X-Reality PRO」を実現できたという。

また、8Kテレビの画面サイズを98型および85型の大型モデルに絞った。高木専務は「8Kテレビは、大画面こそが魅力を発揮すると考えている。北米や中国では、大画面の価値が高まっており、そこに8Kテレビを訴求していくことになる」と話す。

技術の有用性は認めるも、パナソニックは8Kに慎重

一方、パナソニックは、8Kテレビの投入には慎重な姿勢をみせる。

パナソニックの津賀一宏社長

パナソニックの津賀一宏社長は、CES 2019で行った会見で、「8Kテレビは、パネルを買ってきて、回路をつければ製品化できる。だが、放送のソースが限られているなかで、そのソースだけで商売をすることはできない。いまは意味がないと考えており、様子見である」とする。

また、「チューナーを搭載しない8Kモニターは、プロフェッショナル向けやBtoB向けにマーケットが存在するが、ここはニッチなマーケットであり、パナソニックが直接それをやることはない」と、この分野においても、製品投入の可能性を否定する。

しかし津賀社長は、「8Kそのものは使い方によっては、いい技術になると考えている」と話しており、「8Kは、大画面で、多くの人が見られる点にメリットがあると考えている。ここにおけるパナソニックの強みは、高輝度プロジェクターである。高輝度プロジェクターを8K対応していくことは重要視している。東京オリンピック/パラリンピックのパブリックビューイングなどでの活用が想定され、パナソニックは、そこを、がんばる領域に位置づけている」とする。

自らパネルを生産し、8Kの世界を積極的に広げようとしているシャープ。今回のCES 2019では、「クリエイティブエンタテインメントカンパニー」という新たなメッセージを打ち出し、ソニー・ピクチャーズなどが持つコンテンツを最大限に楽しむことを目的に8K戦略を推進するソニー。そして、テレビやモニターでの8Kビジネスには消極的だが、プロジェクターによるBtoB提案に活路を見いだそうとするパナソニック。CES 2019で見せた8K戦略は、三者三様となった。