「5G」の記事

シャープがスマホ動画に「AI編集」、5G時代の強みとなるか

シャープがスマホ動画に「AI編集」、5G時代の強みとなるか

2019.05.14

シャープが新スマホ「AQUOS R3」を発表

注目の新機能「AI編集」とは?

背景にスマホ動画の需要増

シャープは最新スマホ「AQUOS R3」を発表した。同社の最上位に位置するAQUOS Rシリーズとして、最高スペックのカメラやディスプレイを搭載してきた。

「AQUOS R3」

新機能として注目されるのが、スマホで撮った動画をAIが編集してくれる機能だ。5Gの時代に向けて、スマホ動画の需要が増えていく中で、AIによる編集機能はシャープ独自の強みになるだろうか。

スマホに眠る「撮りっぱなし動画」に着目

シャープの国内スマホシェアは、2018年に2位となっている(MM総研調べ)。市場の半数近くを占めるのは依然としてiPhoneを展開するアップルだが、Androidスマホではシャープが2年連続でNo.1を達成している。

シャープは国内Androidスマホで2年連続No.1に

Androidスマホ市場では、ソニーモバイルや富士通がシェアを落とす一方、サムスンやファーウェイが徐々にシェアを広げている。その中でシャープは安定して2位をキープしつつある状況だ。

そのシャープによる最上位モデルが「AQUOS R」シリーズだ。前モデルの「AQUOS R2」では、動画用と静止画用に2つのカメラを搭載したことで、購入者の6割以上の人が動画を投稿・共有する機会が増えたという。

新機種である「AQUOS R3」の開発にあたっても、動画コミュニケーションの拡大を念頭に置いた。着目したのが、「撮りっぱなし動画」問題だ。「スマホで動画を撮る機会は増えているが、8〜9割の動画は再生されないまま放置されている」とシャープの小林氏は指摘する。

「スマホ動画は撮りっぱなし」と指摘するシャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏

その根底には、編集されていない動画は見るに堪えないという問題があるという。これに対してシャープが出してきた答えが、AIが動画を自動的に編集する「AIライブストーリー」機能だ。

シャープが新開発したAIライブストーリー機能は、動画の撮影中に見栄えのいいシーンだけを集め、自動的に編集してくれる機能だ。エフェクトやBGMの付いた約15秒のダイジェスト動画が、撮影が終わると同時に完成する仕組みになっている。

動画を撮影する裏で自動的にダイジェスト動画の編集が進む

これまで、動画編集にはとにかく時間がかかり、専用のツールを使いこなすのも難しかった。そこで最近では、AIなどを駆使して編集を自動化するツールが増えている。シャープの取り組みもこの流れに乗ったものといえそうだ。

さらに静止画撮影では、カメラではなく被写体が動いてしまう「被写体ブレ」にも対策を施してきた。高速連写した写真からブレが少ないものを選び、前後の写真を利用したノイズ処理を組み合わせることで、被写体ブレのない1枚を作り出す機能だ。

AIを活用した「被写体ブレ補正」

スマホカメラの画質向上の背景には、高速なプロセッサーの存在がある。処理能力が上がれば上がるほど、多くの画像処理が可能になり、写真の画質は向上する。このあたりはグローバルのスマホメーカーが競い合っている領域だが、シャープもしっかり追いついている印象だ。

よく動く猫でも、明るく低ノイズで撮れる「被写体ブレ補正」

5Gスマホのプロトタイプも登場

ほかにもシャープは、次世代移動通信「5G」に対応したスマートフォンのプロトタイプを展示した。AQUOS R3をベースとした本体に5G用のアンテナやモデムを追加し、楽天を含む国内4キャリアの周波数に対応。見た目は分厚いが、商品化の際にはもっと薄くできるという。

5Gスマートフォンのプロトタイプ

国内の5Gは、NTTドコモが2019年9月20日にプレサービスを、2020年春には正式サービスを始める予定だ。そこで気になるのが5G対応の端末だが、シャープは「先頭集団」で開発を進めているという。

5Gの普及により動画の活用がさらに進むことは間違いない。その使い勝手を大きく左右するのが、スマホのカメラを支えるハードとソフトの技術だ。シャープはその5G時代に向けて、着々と準備を進めている。

突如として盛り上がり始めた「5G」の理想と現実

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第34回

突如として盛り上がり始めた「5G」の理想と現実

2019.03.22

ここ最近、急に「5G」が盛り上がり始めた理由とは?

世界中が5Gに熱視線、背景に「IoT」への期待

日本の5Gへの取り組み、将来を見据えた冷静さが必要

次世代のモバイル通信規格「5G」が、最近になって急に盛り上がり始めている。突如、話題となった理由はどこにあるのだろうか。そして、5Gは日本では2020年に商用サービス開始を予定しているが、多くの人がイメージするような5Gの環境は、果たしてすぐに実現できるものなのだろうか。

ここ1年で急速に盛り上がりを見せる5G

ここ最近、耳にする機会が急速に増えている「5G」。これは現在のスマートフォン向けの通信サービスなどで利用している「4G」に対して、次の世代となるモバイル通信の新しい規格だ。日本では2020年、ちょうど東京五輪が開催される年に商用サービス化を予定している。

だがこの5G、つい最近まではあまり注目を集めた言葉とは言えなかった。例えばNTTドコモは2015年頃から5Gの標準化を進め、5Gを盛り上げるための取り組みを積極的に実施していたのだが、正直、当時から世間の関心が高まる様子は見られなかった。海外に目を向けるとより深刻で、特に欧州などは4Gの商用サービス展開が遅れたこともあり、新たな設備投資が必要な5Gに、通信キャリア側までもが及び腰だったのだ。

当初は5G導入に関する機運が世界的にあまり盛り上がらなかったことから、NTTドコモは2015年より「5G Tokyo Bay Summit」を開催するなど、5Gを盛り上げるための積極的な取り組みをしていた

ところがここ1年で、そうした状況が劇的に変化したように見える。実際、2019年2月にスペイン・バルセロナで開催された携帯電話の総合見本市イベント「MWC 2019 Barcelona」では、ありとあらゆる企業が5Gに関して積極的に展示とアピールを行っていた。かねてより2019年の商用サービス開始を発表していた中国や韓国だけでなく、欧州などのキャリアも相次いで5Gの商用化を2019年に前倒しするなど、多くの企業が前のめりで5Gに取り組む方針を打ち出したのだ。

2019年の「MWC 2019 Barcelona」は多くの企業が「5G」を前面に打ち出した。これまでとは一転し、5Gに熱心に取り組む企業が劇的に増えているのだ

そうしたことから、5Gの商用サービス開始を東京五輪に合わせたばかりに、もともとは5Gで先端を進んでいたはずの日本はこの波に完全に乗り遅れ、現地では「日本は遅れている」という声が多数聞かれたほどだ。こうした話からも、いかに短期間のうちに、5Gに対する世の中の動向が劇的に変化したかを見て取ることができる。

しかしなぜ、そこまで急激に5Gへの関心が高まったのだろう。端的に言えば、要するに「5Gの使い道が見つかったから」である。携帯電話の通信規格は、増大し続ける通信トラフィックに対処するため、10年おきに新世代へとアップデートする傾向にあった。そのため5Gも4Gの延長線上にあるものと捉えられており、スマートフォンを高速化するという以外の使い道を見出しづらく、ここまで関心が高まることはなかった。

ところが近年、「IoT」(Internet of Things)の概念が急速に広まったことで、あらゆる機器がインターネットに接続するという将来像が見え、5GがそのIoTを支えるネットワークとして有力視されるようになってきたのだ。スマートフォンだけでなく、家電や家、工場、車、そして都市などを丸ごとスマート化する社会インフラとして、5Gが有力視されるようになった。そこに大きなビジネスチャンスが生まれると考える企業が増えたからこそ、5Gに対して熱い視線が集まるようになったといえる。

5Gで注目されているのはIoTを支えるネットワークとしての側面だ。MWC 2019 Barcelonaでも、5Gに関連する展示は都市や工場のスマート化など法人向けの展示が主だ

当初の5Gは期待通りのパフォーマンスを発揮できない?

そうした世界情勢の急変ぶりに焦りを感じたのか、日本でもキャリア大手3社が2019年秋のラグビーW杯に合わせる形で5Gのプレ商用サービスを提供すると発表した。今後は我が国においても、各所で5Gへの取り組みが急拡大することは間違いない情勢だ。

だが5Gが、そうした人達の期待通りに広まっていくのか? という疑問も少なからずある。その疑問の理由の1つは「周波数帯」だ。5Gは4Gよりも高速大容量通信を実現する必要があるため、まだあまり利用されておらず、かつ帯域幅が広い、より高い周波数帯を利用することが前提とされている。具体的には3~6GHzの「サブ6」と呼ばれる帯域と、30GHzを超える高い周波数の「ミリ波」と呼ばれる帯域だ。

だが、そもそも電波は周波数が高ければ高いほど、障害物の裏に回り込みにくく減衰も早いため、遠くに飛びにくいという特性を持つ。そうした周波数帯を用いる5Gのパフォーマンスを十分に発揮するには多数の基地局を設置する必要があるし、その恩恵を得られるのも基地局が設置されたエリア周辺に限られてしまう。きちんとインフラ整備をしていかなければ、かなり使い勝手の悪いネットワークとなってしまう可能性もあるのだ。

ソニーモバイルの5Gスマートフォン試作機による、ミリ波での通信速度測定デモ。ミリ波は遮蔽物に非常に弱いためアンテナ設計が難しいという

もう1つの理由は、多くの国で当初導入される5Gが、既に整備されている4Gのネットワークの中で5Gを一体運用する「ノンスタンドアロン」形式であることだ。ノンスタンドアロン型は低コストで導入できる上、4Gとの併用となるため安定した運用が可能というメリットがある。一方、4Gの性能にひきずられるため5Gのポテンシャルをフルに発揮できない弱点がある。5Gのポテンシャルをフルに発揮するには、ネットワーク全体を5G専用の環境で運用する「スタンドアロン」形式が必要で、その導入にはまだ時間がかかるとされているのだ。

そして現状最も懸念されるのは、5Gのそうした課題が理解されないまま、周囲の期待だけが大きく膨らんでいることである。このままの状態で5Gの商用サービスが拙速に始まり、理想と現実のギャップを目の当たりにしてしまえば、5Gへの失望感が一気に広がり関心が薄れ、それが将来的な市場の形成や技術の進展に悪影響をもたらしてしまうことも考えられる訳だ。

5Gに対する機運が大きく盛り上がってきた今だからこそ、その先を見通す上では冷静な目を持つ必要があることを、覚えておきたい。

「スマホ時代」の終焉、ポストAppleはIoT企業から誕生するという実感

「スマホ時代」の終焉、ポストAppleはIoT企業から誕生するという実感

2019.03.12

5G時代の主役は「スマホ」ではなく「IoT」

スマホはパソコンの歴史を繰り返している

IoTで主導権を握る企業はどこになるのか

毎年、2月下旬に開催される世界最大級のモバイル関連展示会「MWC 19 Barcelona(以下MWC 19)」を取材してきた。

これまでMWCはMobile World Congressの頭文字をとった縮小名だとされてきたが、今回のMWC 19からそれは廃止され、単にMWCというブランド名としてイベントが行なわれることになった。CESがConsumer Electronics Showの略称であることを廃止して単にCESというイベント名を採用したのと同じような取り組みになる。

その背景には、通信業界がこれから迎える大きな変革の波がある。これまでの通信キャリアが提供するセルラー回線は、3G以前はフィーチャーフォンと呼ばれる携帯電話に、そして4GではiPhoneの登場以降急速に普及したスマホ向けの回線として活用されてきた。

5Gでは引き続きスマホの回線として利用されるのはもちろんだが、コネクテッドカーなどのIoT向けの回線とも位置づけられており、今後はそちらが主役になっていく可能性が高い。

今回は多くのブースで5Gのソリューションを展示してアピールするMWCになった

スマホは成長が止まったという認識が強まる

MWCの主催者であるGSMAが設定した今回のスローガンは「Intelligent Connectivity」であった。

MWC 19 Barcelonaのスローガンは「Intelligent Connectivity」

このスローガンが意味するのは、IoTや自動車といった従来は処理能力やネット接続機能をもたないデバイスに、クラウドへの接続を実現して、クラウドの処理能力でAIのような機能をワイヤレスを介して提供していく、ということだ。

実際、今回のMWCでは昨年よりもIoTやコネクテッドカーといったテーマの展示が目立っていた。ドイツの3メーカー(VW、BMW、ダイムラー)はいずれもブースを出して展示していたし、昨年に引き続きトヨタもコネクテッドサービスの展示を行なっていた。

トヨタはAmazon AlexaとSDLとの共存をアピール
BMWブース
メルセデスブース

一方、通信キャリアのブースではほとんどがIoTやそれに付随するソリューションになっており、スマホの展示は年々減っていっている印象だった。

そうなっているのにはスマホ市場が既に成熟し、成長が止まった市場だという認識が共有されていることが影響している。

年や調査により変動はあるものの、トップシェアのサムスン、2位のアップル、そして3位は中国勢が入れ替わり立ち替わりという状況で、現在アップルを抜いて2位になったと考えられているファーウェイも、米中の経済戦争の中で今後どうなっていくかが不透明なぐらいで、基本的に大きな変動はない。市場の配分はほぼ固定されつつある。

パソコンの歴史を繰り返すスマホ市場

製品としてもスマホは既に成熟し、コモディティ化が進んでいる。今回の新製品の目玉が、右へならえのように2画面スマホであったことが、それを象徴する。

考えることはどこのメーカーも同じで、新しいデバイスが登場すると皆が同じような実装をする。これはつまり、新しい「ネタ」がなくなってきており、他社との差別化が年々難しくなっていることを示している。ちなみに昨年のMWCでは多くのメーカーがカメラを訴求していた。

Samsung Electronicsの2画面スマホ、ディスプレイが折れ曲がる仕組み
LG Electronicsの2画面スマホは最初から2つのディスプレイになっている

こうした状況はかつてPCが通ってきた道そのものだ。PCが普及していく段階で、どの製品も同じようなクラムシェル型に集約されていき、他社との差別化が難しくなってくる。すると、2画面を搭載した製品が登場したり、キーボードの代わりにタッチキーボードを採用した製品が登場したりする。

結局製品が成熟していくと、だんだんと重箱の隅をつくようなアップデートを各社とも取り組むが、結局あまり普及しない――、それがPCが経てきた歴史だ。スマホもまさにその歴史を経ようとしている、まさに「歴史は繰り返す」のだ。

14~15億台で頭打ちのスマホ、よりスケールするIoT

スマホ市場では市場の配分(言い換えればマーケットシェアの配分)も終わっており、今後よっぽどの事が無い限りこれが大きく変わることはないだろう。まさにPCの歴史がそれを証明している。

BMWが展示したコネクテッドカー。昨年のショーで発表されたコンセプトカーが展示された

このため、業界の目は次の成長へと向いている。そのタネがIoTであり、コネクテッドカーだ。なぜかと言えば、その市場規模がIoTやコネクテッドカーなどにより広がると考えられているからだ。

IDCが発表した2018年の通期でのグローバルのスマホ出荷台数は14億49万台、前年(2017年)には14億655万台となっていたため若干減っているが、概ねここ数年は年産14~15億台で一定している。おそらくこの数字は今後も大きくは減らないし、大きくは増えないだろう。多少の増減はあるが、年産14~15億台で今後も固定されていくだろう。

それに対して、通信業界が期待しているIoTや自動車などのコネクテッドデバイスの市場規模は、調査会社やアナリストなどによって異なっているが、おそらく桁が1つ違ってくると考えられている。つまり100億台を超える市場にまで成長する可能性があるということだ。

なぜかと言えば、スマホが1人1台までであるのに対してIoTは1人1台は言うまでもなく、今家庭にある家電がみなIoTになる可能性がある。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、コーヒーメーカー…すべてのデバイスが今後IoTになっていく可能性は非常に大きい。

だからこそ、通信キャリアは競ってIoTをアピールするし、自動車メーカーとの提携を進めてコネクテッドカーのソリューションを拡充していく、そうした状況を反映しているのが今回のMWC 19だった。

これまでの4Gの10年が「スマホの時代」だったのに対して、5Gでは「IoTの時代」に突入していくことになる。だから、今回のMWC 19は「スマホ時代の終わり」の始まりなのだ。

IoT時代の「アップル」はどこ?

このようにスマホは5Gでは主役の座を降りることになるが、かといってスマホが今後減っていくとかそういうことではない。90年から00年代にデジタルの主役だったPCは、スマホにその座を譲った後も、年産3億台という市場規模は維持して増えもしないが減りもしないという状況になっている。それと同じように、スマホも年産14~15億台という市場規模は今後も変わらず増えもしないが減りもしないという状況になるだろう。

つまり今後も今までとは何も変わらないが、もはや成長市場ではなくなったが、今日の状況が固定されるそういうことだ。

ドイツの通信キャリアT-Mobileのブース
フランスの通信キャリアOrangeではロボットをアピール、今年のMWCではロボットの展示が多かった

それに対してIoTはこれから市場が成長していく。誰がそこで主導権をとるのか、まだ見えていない状況だ。だからこそ、通信キャリアも、アマゾン、グーグル、マイクロソフトのようなプラットフォーマーも競うように投資しており、そこで主導権を握った企業が次の時代のアップルになっていくのではないだろうか。