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突如として盛り上がり始めた「5G」の理想と現実

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第34回

突如として盛り上がり始めた「5G」の理想と現実

2019.03.22

ここ最近、急に「5G」が盛り上がり始めた理由とは?

世界中が5Gに熱視線、背景に「IoT」への期待

日本の5Gへの取り組み、将来を見据えた冷静さが必要

次世代のモバイル通信規格「5G」が、最近になって急に盛り上がり始めている。突如、話題となった理由はどこにあるのだろうか。そして、5Gは日本では2020年に商用サービス開始を予定しているが、多くの人がイメージするような5Gの環境は、果たしてすぐに実現できるものなのだろうか。

ここ1年で急速に盛り上がりを見せる5G

ここ最近、耳にする機会が急速に増えている「5G」。これは現在のスマートフォン向けの通信サービスなどで利用している「4G」に対して、次の世代となるモバイル通信の新しい規格だ。日本では2020年、ちょうど東京五輪が開催される年に商用サービス化を予定している。

だがこの5G、つい最近まではあまり注目を集めた言葉とは言えなかった。例えばNTTドコモは2015年頃から5Gの標準化を進め、5Gを盛り上げるための取り組みを積極的に実施していたのだが、正直、当時から世間の関心が高まる様子は見られなかった。海外に目を向けるとより深刻で、特に欧州などは4Gの商用サービス展開が遅れたこともあり、新たな設備投資が必要な5Gに、通信キャリア側までもが及び腰だったのだ。

当初は5G導入に関する機運が世界的にあまり盛り上がらなかったことから、NTTドコモは2015年より「5G Tokyo Bay Summit」を開催するなど、5Gを盛り上げるための積極的な取り組みをしていた

ところがここ1年で、そうした状況が劇的に変化したように見える。実際、2019年2月にスペイン・バルセロナで開催された携帯電話の総合見本市イベント「MWC 2019 Barcelona」では、ありとあらゆる企業が5Gに関して積極的に展示とアピールを行っていた。かねてより2019年の商用サービス開始を発表していた中国や韓国だけでなく、欧州などのキャリアも相次いで5Gの商用化を2019年に前倒しするなど、多くの企業が前のめりで5Gに取り組む方針を打ち出したのだ。

2019年の「MWC 2019 Barcelona」は多くの企業が「5G」を前面に打ち出した。これまでとは一転し、5Gに熱心に取り組む企業が劇的に増えているのだ

そうしたことから、5Gの商用サービス開始を東京五輪に合わせたばかりに、もともとは5Gで先端を進んでいたはずの日本はこの波に完全に乗り遅れ、現地では「日本は遅れている」という声が多数聞かれたほどだ。こうした話からも、いかに短期間のうちに、5Gに対する世の中の動向が劇的に変化したかを見て取ることができる。

しかしなぜ、そこまで急激に5Gへの関心が高まったのだろう。端的に言えば、要するに「5Gの使い道が見つかったから」である。携帯電話の通信規格は、増大し続ける通信トラフィックに対処するため、10年おきに新世代へとアップデートする傾向にあった。そのため5Gも4Gの延長線上にあるものと捉えられており、スマートフォンを高速化するという以外の使い道を見出しづらく、ここまで関心が高まることはなかった。

ところが近年、「IoT」(Internet of Things)の概念が急速に広まったことで、あらゆる機器がインターネットに接続するという将来像が見え、5GがそのIoTを支えるネットワークとして有力視されるようになってきたのだ。スマートフォンだけでなく、家電や家、工場、車、そして都市などを丸ごとスマート化する社会インフラとして、5Gが有力視されるようになった。そこに大きなビジネスチャンスが生まれると考える企業が増えたからこそ、5Gに対して熱い視線が集まるようになったといえる。

5Gで注目されているのはIoTを支えるネットワークとしての側面だ。MWC 2019 Barcelonaでも、5Gに関連する展示は都市や工場のスマート化など法人向けの展示が主だ

当初の5Gは期待通りのパフォーマンスを発揮できない?

そうした世界情勢の急変ぶりに焦りを感じたのか、日本でもキャリア大手3社が2019年秋のラグビーW杯に合わせる形で5Gのプレ商用サービスを提供すると発表した。今後は我が国においても、各所で5Gへの取り組みが急拡大することは間違いない情勢だ。

だが5Gが、そうした人達の期待通りに広まっていくのか? という疑問も少なからずある。その疑問の理由の1つは「周波数帯」だ。5Gは4Gよりも高速大容量通信を実現する必要があるため、まだあまり利用されておらず、かつ帯域幅が広い、より高い周波数帯を利用することが前提とされている。具体的には3~6GHzの「サブ6」と呼ばれる帯域と、30GHzを超える高い周波数の「ミリ波」と呼ばれる帯域だ。

だが、そもそも電波は周波数が高ければ高いほど、障害物の裏に回り込みにくく減衰も早いため、遠くに飛びにくいという特性を持つ。そうした周波数帯を用いる5Gのパフォーマンスを十分に発揮するには多数の基地局を設置する必要があるし、その恩恵を得られるのも基地局が設置されたエリア周辺に限られてしまう。きちんとインフラ整備をしていかなければ、かなり使い勝手の悪いネットワークとなってしまう可能性もあるのだ。

ソニーモバイルの5Gスマートフォン試作機による、ミリ波での通信速度測定デモ。ミリ波は遮蔽物に非常に弱いためアンテナ設計が難しいという

もう1つの理由は、多くの国で当初導入される5Gが、既に整備されている4Gのネットワークの中で5Gを一体運用する「ノンスタンドアロン」形式であることだ。ノンスタンドアロン型は低コストで導入できる上、4Gとの併用となるため安定した運用が可能というメリットがある。一方、4Gの性能にひきずられるため5Gのポテンシャルをフルに発揮できない弱点がある。5Gのポテンシャルをフルに発揮するには、ネットワーク全体を5G専用の環境で運用する「スタンドアロン」形式が必要で、その導入にはまだ時間がかかるとされているのだ。

そして現状最も懸念されるのは、5Gのそうした課題が理解されないまま、周囲の期待だけが大きく膨らんでいることである。このままの状態で5Gの商用サービスが拙速に始まり、理想と現実のギャップを目の当たりにしてしまえば、5Gへの失望感が一気に広がり関心が薄れ、それが将来的な市場の形成や技術の進展に悪影響をもたらしてしまうことも考えられる訳だ。

5Gに対する機運が大きく盛り上がってきた今だからこそ、その先を見通す上では冷静な目を持つ必要があることを、覚えておきたい。

「スマホ時代」の終焉、ポストAppleはIoT企業から誕生するという実感

「スマホ時代」の終焉、ポストAppleはIoT企業から誕生するという実感

2019.03.12

5G時代の主役は「スマホ」ではなく「IoT」

スマホはパソコンの歴史を繰り返している

IoTで主導権を握る企業はどこになるのか

毎年、2月下旬に開催される世界最大級のモバイル関連展示会「MWC 19 Barcelona(以下MWC 19)」を取材してきた。

これまでMWCはMobile World Congressの頭文字をとった縮小名だとされてきたが、今回のMWC 19からそれは廃止され、単にMWCというブランド名としてイベントが行なわれることになった。CESがConsumer Electronics Showの略称であることを廃止して単にCESというイベント名を採用したのと同じような取り組みになる。

その背景には、通信業界がこれから迎える大きな変革の波がある。これまでの通信キャリアが提供するセルラー回線は、3G以前はフィーチャーフォンと呼ばれる携帯電話に、そして4GではiPhoneの登場以降急速に普及したスマホ向けの回線として活用されてきた。

5Gでは引き続きスマホの回線として利用されるのはもちろんだが、コネクテッドカーなどのIoT向けの回線とも位置づけられており、今後はそちらが主役になっていく可能性が高い。

今回は多くのブースで5Gのソリューションを展示してアピールするMWCになった

スマホは成長が止まったという認識が強まる

MWCの主催者であるGSMAが設定した今回のスローガンは「Intelligent Connectivity」であった。

MWC 19 Barcelonaのスローガンは「Intelligent Connectivity」

このスローガンが意味するのは、IoTや自動車といった従来は処理能力やネット接続機能をもたないデバイスに、クラウドへの接続を実現して、クラウドの処理能力でAIのような機能をワイヤレスを介して提供していく、ということだ。

実際、今回のMWCでは昨年よりもIoTやコネクテッドカーといったテーマの展示が目立っていた。ドイツの3メーカー(VW、BMW、ダイムラー)はいずれもブースを出して展示していたし、昨年に引き続きトヨタもコネクテッドサービスの展示を行なっていた。

トヨタはAmazon AlexaとSDLとの共存をアピール
BMWブース
メルセデスブース

一方、通信キャリアのブースではほとんどがIoTやそれに付随するソリューションになっており、スマホの展示は年々減っていっている印象だった。

そうなっているのにはスマホ市場が既に成熟し、成長が止まった市場だという認識が共有されていることが影響している。

年や調査により変動はあるものの、トップシェアのサムスン、2位のアップル、そして3位は中国勢が入れ替わり立ち替わりという状況で、現在アップルを抜いて2位になったと考えられているファーウェイも、米中の経済戦争の中で今後どうなっていくかが不透明なぐらいで、基本的に大きな変動はない。市場の配分はほぼ固定されつつある。

パソコンの歴史を繰り返すスマホ市場

製品としてもスマホは既に成熟し、コモディティ化が進んでいる。今回の新製品の目玉が、右へならえのように2画面スマホであったことが、それを象徴する。

考えることはどこのメーカーも同じで、新しいデバイスが登場すると皆が同じような実装をする。これはつまり、新しい「ネタ」がなくなってきており、他社との差別化が年々難しくなっていることを示している。ちなみに昨年のMWCでは多くのメーカーがカメラを訴求していた。

Samsung Electronicsの2画面スマホ、ディスプレイが折れ曲がる仕組み
LG Electronicsの2画面スマホは最初から2つのディスプレイになっている

こうした状況はかつてPCが通ってきた道そのものだ。PCが普及していく段階で、どの製品も同じようなクラムシェル型に集約されていき、他社との差別化が難しくなってくる。すると、2画面を搭載した製品が登場したり、キーボードの代わりにタッチキーボードを採用した製品が登場したりする。

結局製品が成熟していくと、だんだんと重箱の隅をつくようなアップデートを各社とも取り組むが、結局あまり普及しない――、それがPCが経てきた歴史だ。スマホもまさにその歴史を経ようとしている、まさに「歴史は繰り返す」のだ。

14~15億台で頭打ちのスマホ、よりスケールするIoT

スマホ市場では市場の配分(言い換えればマーケットシェアの配分)も終わっており、今後よっぽどの事が無い限りこれが大きく変わることはないだろう。まさにPCの歴史がそれを証明している。

BMWが展示したコネクテッドカー。昨年のショーで発表されたコンセプトカーが展示された

このため、業界の目は次の成長へと向いている。そのタネがIoTであり、コネクテッドカーだ。なぜかと言えば、その市場規模がIoTやコネクテッドカーなどにより広がると考えられているからだ。

IDCが発表した2018年の通期でのグローバルのスマホ出荷台数は14億49万台、前年(2017年)には14億655万台となっていたため若干減っているが、概ねここ数年は年産14~15億台で一定している。おそらくこの数字は今後も大きくは減らないし、大きくは増えないだろう。多少の増減はあるが、年産14~15億台で今後も固定されていくだろう。

それに対して、通信業界が期待しているIoTや自動車などのコネクテッドデバイスの市場規模は、調査会社やアナリストなどによって異なっているが、おそらく桁が1つ違ってくると考えられている。つまり100億台を超える市場にまで成長する可能性があるということだ。

なぜかと言えば、スマホが1人1台までであるのに対してIoTは1人1台は言うまでもなく、今家庭にある家電がみなIoTになる可能性がある。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、コーヒーメーカー…すべてのデバイスが今後IoTになっていく可能性は非常に大きい。

だからこそ、通信キャリアは競ってIoTをアピールするし、自動車メーカーとの提携を進めてコネクテッドカーのソリューションを拡充していく、そうした状況を反映しているのが今回のMWC 19だった。

これまでの4Gの10年が「スマホの時代」だったのに対して、5Gでは「IoTの時代」に突入していくことになる。だから、今回のMWC 19は「スマホ時代の終わり」の始まりなのだ。

IoT時代の「アップル」はどこ?

このようにスマホは5Gでは主役の座を降りることになるが、かといってスマホが今後減っていくとかそういうことではない。90年から00年代にデジタルの主役だったPCは、スマホにその座を譲った後も、年産3億台という市場規模は維持して増えもしないが減りもしないという状況になっている。それと同じように、スマホも年産14~15億台という市場規模は今後も変わらず増えもしないが減りもしないという状況になるだろう。

つまり今後も今までとは何も変わらないが、もはや成長市場ではなくなったが、今日の状況が固定されるそういうことだ。

ドイツの通信キャリアT-Mobileのブース
フランスの通信キャリアOrangeではロボットをアピール、今年のMWCではロボットの展示が多かった

それに対してIoTはこれから市場が成長していく。誰がそこで主導権をとるのか、まだ見えていない状況だ。だからこそ、通信キャリアも、アマゾン、グーグル、マイクロソフトのようなプラットフォーマーも競うように投資しており、そこで主導権を握った企業が次の時代のアップルになっていくのではないだろうか。

ファーウェイの米政府提訴、落しどころが無い? 混乱に拍車

ファーウェイの米政府提訴、落しどころが無い? 混乱に拍車

2019.03.08

ファーウェイが米政府を提訴、要旨をまとめる

5G時代を主導するファーウェイを排除できるのか

対立は収束の目途立たず、鍵を握るのはトランプ大統領?

中国Huawei TechnologiesとHuawei Technologies USA(以下、ファーウェイ)が、米国政府を相手取って、米連邦地裁に訴えを起こした。

米国市場でのファーウェイ製品排除を定めた米国防権限法が、米合衆国憲法に違反しているとの訴えで、該当する条項の撤回を求めている。昨年から続く米政府とファーウェイの係争は新たな局面を迎えたことになる。

ファーウェイ取締役副会長兼輪番会長 郭平氏(左から5番目)、同 上級副社長兼最高法務責任者 宋柳平氏(左から4番目)

提訴の要旨とファーウェイの主張

ファーウェイが提訴したのは、米連邦議会が国防予算のために策定する国防権限法の2019年度版(NDAA2019)の889条だ。これは、米政府機関において、中国ハイテク企業からの調達禁止などを定めており、この条項がファーウェイを狙い撃ちにしていて憲法違反というのが提訴の理由だ。

特に同社は、米政府機関が直接ファーウェイ製品を調達した場合だけでなく、ファーウェイ製品を導入している企業が政府機関と契約を結ぶことすらも禁止する点を問題視。仮に米政府と関係のない取引であっても制限される可能性があることから、「不当な攻撃であり、懲罰的」とファーウェイの最高法務責任者である宋柳平氏は訴える。

そもそも、889条を「多くの誤り、検証や証明を経ていない主張にもとづいて定められている」と批判している。889条の適用に当たり、裏付けとなる具体的な証拠が何一つ提示されていないことを問題視し、法ではなく政治的な意図があるのではないかと疑念の目を向ける。

米議会で同法適用を採決する際に、議員からファーウェイを攻撃する発言があったことに対しても、「意図的で懲罰的で、ファーウェイの名誉を損ね、弁明の機会も与えられていない」と批判する。

「他国が(ファーウェイ製品によって)高度な5G技術を使い、米国を追い越すことが心配なのだろうか。もしかしたら、ファーウェイを封じ込めることで何らかの利益が得られると誤った認識を持っているのではないか」(ファーウェイ 取締役副会長兼輪番会長 郭平氏)。

米政府が懸念する中国政府との関係について、「ファーウェイが中国政府の影響を受けており、安全保障上の懸念がある」としているのは、「中傷である」と切って捨てる。同社は「まったく事実に反しており、ファーウェイは中国政府が所有するわけではなく、支配や影響も受けていない」という立場を強調する。

建前上の争点となっているセキュリティ上の懸念については、ここ数年のデータとして、セキュリティホールが最も多い企業10社のうち、9社が米国企業だったことや、WannaCry(ランサムウェア)問題、Intel、AMD、ARMのCPUに発生した脆弱性も例に挙げつつ、「こうした問題でファーウェイと関係のあったものは一つもない」と反論。

そしてファーウェイはセキュリティを重視する企業だと改めて強調し、「170以上の国や地域で事業を行い、30年の間、セキュリティ上の問題を起こしたことはない。今までも、これからも、ファーウェイ製品にバッグドアを設けることはない」と、セキュリティ面を強調した。

ファーウェイ排除は業界全体に打撃?

そもそも、「ファーウェイ製品」と言っても、グローバル化したサプライチェーンにおいては、さまざまな国の部品やサービスから成り立っている。同社は「通常、ファーウェイの製品に使われているファーウェイ製の部品は30%しかない」と説明しており、実際、2018年の日本からの部品調達額などは60億ドルにも上ったという。

また逆に、「欧米メーカーの製品」であっても、その内部には中国企業の部品が多く使われていたり、生産工場が中国だったりする。例えば、2016年でのAppleサプライヤーは766社あり、そのうちの約半数、実に364社は中国にある会社であったという。iPhoneの半分は中国製なのだ。

ファーウェイの最新スマホ「Mate X」。5Gに対応し、本体を折りたたむこともできる

同社は、「より重要なのは、ファーウェイの顧客に損害を与えた点。米政府と取引を行う企業が、先進的なファーウェイの技術を利用できなくなることで、米国の消費者も最先端の技術が利用できなくなる」と主張する。

5G時代の影響が懸念されることからも、ファーウェイは譲らない。同社は5Gの研究開発で世界をリードしており、関連する基礎特許の取得数は2570件を超えた。2019年には、50以上の国や地域で5G電波の割り当てが行われるが、そのうち1/3は同社がカバーするという。同社はすでに30以上の5G商用契約を結び、4万局以上の5G基地局を出荷する世界最大の5Gベンダーになってしまっている。

同社は「ファーウェイがいなくなれば、米国民は5Gネットワークの本来不要だったコストを負担することになる」と訴えている。

ついに明確な対立が始まり、落しどころ見えず

米中の経済摩擦に端を発して、中国の代表的ハイテク企業であるファーウェイに対する締め付けが緩む気配は無い。かつての日本がそうだったように、米政府は経済的な摩擦の問題に対して、規制を強めることで対処する傾向がある。一方の中国は中国で、いまでも企業に対する国家による統制が根強く、信頼が高いとは言えない。

ファーウェイはこれまで、中国政府とは無関係であり、グローバルでビジネスを展開していても問題がなかったと主張する程度で、積極的に対応措置をとるほどには動いていなかった。今回は同社の郭平副会長が「これまでできる限りの努力をしてきたが、法廷で争うしか選択肢がない」と話すところまで追い込まれており、全面的に米政府と対決する意向を示した。

米政府は貿易摩擦に不満を持つ米国民の世論を味方にファーウェイ排除を進めてきたが、ファーウェイ側も889条によって米国民に損害が出るという点を強調することで米世論に訴え、法廷を有利に進めたいという思惑が透ける。

ファーウェイは現時点で5Gネットワークを先導する立場であり、排除は米国の不利益に繋がるというロジックだが、排除が米国以外にも拡大すれば、5Gを主導する立場さえも揺るぎかねないという危機感がある。このタイミングで訴えを起こすことで、これ以上の排除拡大を防ぎたい狙いもありそうだ。

今後の行方はまったく不透明だ。少なくとも物事の正当性だけで決まる単純な争いにはならない。ファーウェイは米議会の889条決定について、「トランプ大統領も米議会の越権行為を懸念する表明をしていた」と指摘するが、表明云々とは裏腹に、現実としてトランプ大統領はすでに署名を済ませ889条を承認してしまっている。ファーウェイの訴訟に対して改めて「あの大統領」がどう動くかなどは、だれにも分からない。行方を見守るしかない状況だ。