「飲料」の記事

“元祖プロゲーマー”の高橋名人が今のeスポーツプレイヤーに期待すること

“元祖プロゲーマー”の高橋名人が今のeスポーツプレイヤーに期待すること

2019.03.27

「アサヒ からだ十六茶」と「高橋名人の16連射」が夢のコラボ

期間限定で「高橋名人の16連ダッシュ全国大会」というゲームを公開

「ハドソン全国キャラバン」やeスポーツについて話を聞いた

「高橋名人の16 連ダッシュ全国大会」のゲーム画面

アサヒ飲料は、「アサヒ からだ十六茶」のリニューアルを記念して、3月26日~4月16日に高橋名人の16連ダッシュ全国大会」(https://karada16cp.jp/)を開催する。3週間限定で配信されるゲームを使って、ゲームのスコアを競うイベントだ。期間中、記録は日々集計され、毎日のスコア1位のプレイヤーと、キャンペーン終了時のスコア上位16名に賞品が贈られる。

ゲームを監修した高橋名人は34年前に、全国40カ所以上の地域でゲームイベント「ハドソン全国キャラバン」を開催したプロゲーマーの先駆けでもある。「1秒間に16回ボタンを押す」という技術により、連射系シューティングゲームを中心に活動した。ハドソンの社員という立場ながら、テレビや雑誌などに多く出演し、自社のゲームだけでなく、ゲーム市場全体の地位向上に寄与したレジェンド的存在だ。

今回、高橋名人に直接話を伺う機会を得たので、コラボのきっかけやeスポーツの先駆けともいえる「ハドソン全国キャラバン」の裏話、そして今のeスポーツに感じていることなどについて伺った。

20年以上を経て実現した「16」つながりのコラボ

――まずは今回「アサヒ からだ十六茶」とコラボしたきっかけを教えてください。

高橋名人(以下名人):単純な話ですよ。いわゆる「16」つながりです。アサヒ飲料のほうは、商品名そのまま「十六」茶。私は代名詞でもある「16」連射です。ただ、十六茶も20年以上前に発売した商品なので、もっと早くコラボの話を持ってきてくれればよかったんですけどね(笑)。20年かかってようやく到達したっていうのも感慨深いですが。

20年越しのコラボが実現した「十六茶」を見つめる高橋名人

――たしかに(笑)。むしろ今までなかったのが不思議ですね。

名人:昔、十六茶を持ってきて、「こんなお茶があるんですけど、名人の許可とっているんですか」って、聞いてきたファンの方がいましたね(笑)。

――名人の16連射は30年以上前に定着したイメージですが、現在においても16から連想される人物で高橋名人を超える人はいないかもしれません。

名人:そうですかね。まあ、ありがたいことですけど、そろそろほかにイメージされる方が出てくれてもいいんじゃないでしょうか。

――16つながりでコラボが実現したということですが、どのような内容のコラボなのでしょうか。

名人:まず、私とのコラボなので「簡単なゲームを作って、みんなで遊んでもらいたい」と思いました。そして、対象商品が「からだ 十六茶」。それらの要素から、ため込んでしまうと身体によくない糖や脂肪などを避けつつ、ときどき現れる「からだ 十六茶」を手に入れるというゲームを考案しました。

糖や脂肪に当たるとダメージを受けて、「からだ 十六茶」をゲットすると体力が回復するというシステムなのですが、体力がなくなってゲームオーバーになっても、1度だけ復活のチャンスがあるんです。「16連射復活」というモードに突入し、そこでみごと16連射を決めればライフポイントが回復します。

――そこで16連射するんですね。ゲーム内で移動した距離を集計して、毎日、賞品を出すと伺いました。

トータルスコア上位16人が受け取ることができるトレーナー

名人:私が昔参加していたゲーム大会「ハドソン全国キャラバン」では、地域ごとに優勝者を決めて賞品を配布していましたが、今回はブラウザゲームなので、地域ではなく日ごとに優勝者を決めるようにしました。

あと、キャンペーンの期間が終了したらトータルでのランキングも集計して、「トップ16」の人にはトレーナーをプレゼントします。これは、私が毛利名人と映画『GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突!大決戦』で対決したときに着ていたトレーナーの復刻盤ですね。高価なものではないかもしれませんが、多くの人に賞品が行きわたってほしかったんです。

――いやいや、これは金額じゃ計れない価値がありますよ。そう思える人は多くいると思います。特にアラフォーとか。

名人:アラフォーばかり参加しちゃうかもしれませんね。

“元祖eスポーツ”は子どもたちの夢の舞台

――ゲームのイベントといえば、高橋名人は「ハドソン全国キャラバン」のイメージが強いと思います。キャラバンはeスポーツの先駆けのような存在ともいえると思いますが、当時はどんな感じだったのでしょうか。

名人:当然、当時はeスポーツなんて言葉はありませんでした。今のeスポーツとも違う点はあるのですが、全国各地で行ったゲーム大会としてはキャラバンが初めてだったのではないでしょうか。

――ほぼ毎日開催して、名人がそれぞれの会場に訪れていたんですよね。まさにライブの全国ツアーのような感じがします。

名人:どちらかと言うと、プロレスの興行みたいな感じかな。10台のモニターを用意して、250人くらいの参加者で、毎日2回大会を開いていました。予選から本戦まで、大体2時間半で終わるように設定していたんですけど、それでも最後の方はあぶれて参加できない子供たちもいましたね。

キャラバンは、南から北上するチームと北から南下する2チームが同時に行っていたんですが、大阪ではモニターを倍増させました。2回で700人くらい参加したんじゃないかな。たしか、大阪での開催場所は阪急デパートで、待機列がデパートを3周半くらいしていたって聞いています。翌年の開催では、500~700人くらいの参加だったと記憶してますが、3000人くらいの応募がありました。参加するだけでも大変なイベントになりましたね。

――スケジュールもハードですよね。

名人:朝6時に起きて、7時に設営を開始し、10時から大会を始めて、12時半くらいに終わる。30分くらい休んで、2回目が始まって、16時くらいから撤収するんです。そこから、スタッフは機材を運ぶ車で次の開催地に移動。僕はアシスタントと一緒に電車で移動していました。夕飯を食べつつ反省会をして、12時には就寝し、また翌日は6時から活動する感じですね。これを40日間繰り返すんです。

その間、一度だけ3日間のお休みをもらって東京に戻ってきたんですけど、そのうち1日はテレビ番組の『おはスタ』に出演し、もう1日は会社で現状の報告と反省会が入っていて、結局、家に居られたのは1日だけでした。

――南下ルートは高橋名人のライバル的ポジションにいた毛利名人が担当していたんですよね。

名人:そうです。毛利君は当時大学生でした。同人誌でゲームの攻略本を作っていて、僕に見せに来たんですよね。そこで「君、ゲーム好きなんだ、うまいの?」って聞いたら、うまいっていうので、『スターソルジャー』をプレイしてもらったら、本当にうまかった。そこで、「夏休みヒマ?」って聞いたら、ヒマだと言うので巻き込んじゃいました(笑)

――人生変えちゃいましたね。

名人:まあ、僕自身も変えられちゃったんですけどね(笑)。その後もキャラバンは毎年開催し、多くの人に参加していただいたんですけど、そのうち、キャラバン小僧と呼ばれる人たちが出てきました。キャラバンが終わったら、次のキャラバンまでにアルバイトとかしてお金を貯めるんです。そして、キャラバンが始まったら、僕らと一緒にキャラバンについてきて、ほとんどの大会に参加するんですよ。当然スタッフとかとも仲良くなって盛り上がっていくんですけど、どの大会でも彼らが上位に入賞してしまい、現地の子供たちがベスト10に誰も入れない状態になってしまいました。そこで結局、一度入賞した人は「参考記録」にしようという形になりましたね。やはり、その土地でのチャンピオンを決めたかったので、そういう措置をとりました。

88年大会は初めてPCエンジンを使ってキャラバンを行いました。タイトルは野球ゲームの『パワーリーグ』。これまでは大会ごとの優勝者を決めていただけですが、このときは各地の1位選手を東京に集めて全国大会を行ったんです。地方から飛行機で来てもらったのですが、空港からはホテルに直行。ホテルで大会を開催し、終わったらまたすぐ空港に直行ですよ。東京で子どもたちを自由に遊ばせて、何かあったら大変なので、とにかく気を遣いました。

高橋名人は今のeスポーツに何を思う?

――そこまでの規模になると、現在のeスポーツと近いものがありますね。そういう経験を30年以上前に経験した高橋名人にとって、eスポーツはどのように見ていますか。

名人:1つの大会を行うのにも賞金や法律の問題がありますからね。まだまだクリアしないといけないことは多いイメージです。

たとえば、1000万円の優勝賞金の大会を開く場合、少なくとも5000万円くらいの予算が必要になるんですが、メーカー主導だと、プロモーション費と考えてもなかなか出せるものではありません。しかし、プロゲーマーが職業として活動していくためには、このクラスの大会が最低でも月に1回はないとつらいわけです。

海外の場合、参加費や課金キャラクターの代金の数パーセントを賞金に当てるということで、運営できているんですが、日本だと賭博法や景品表示法に抵触してしまうので、そのやり方ではできません。このあたりは早く改正してほしいと思います。

――キャラバンなどのイベントが「元祖eスポーツ」だとすると、名人は元祖eスポーツプレイヤーとなるわけですが、プレイヤーとして選手に対して思うところはありますか。

名人:僕は結局、会社員で、宣伝することが仕事でした。たとえば、会社にとってみれば15秒のCMには莫大なお金がかかりますが、10分のテレビ番組に出演できればCM40本分の価値があるわけです。なので、僕はどちらかというと、腕前を競うよりも、見せ方がうまくなるように考えていました。そのため、僕はゲームの腕がそこそこでも良かったんですけど、今のプロプレイヤーはそこそこではダメなので大変ですよね。

先ほども言いましたが賞金額が上がってきているとはいえ、大会の回数は少ないので、一部の人しか稼げていないわけです。ゴルフのように大会数も多く、さらにコーチの仕事もあるという状態になっていかないと、多くのプロは生活できないでしょう。

賞金総額3000万円くらいの大会が、月に1回あるといいでしょうね。平均100万円ずつでも獲得できれば、年間1200万円になるので、最低でもそれくらいはないと。

――プロプレイヤーになると、大会の結果だけでなくタレント性も求められますが、そのあたりはいかがでしょうか。

名人:僕が当時、気をつけていたのは、子どもたちに好かれる以上に、お母さんに好かれることです。家計を握っているのはお母さんですし、しつけをするのもお母さんでしたから。僕が言っていた「ゲームは1日1時間」というセリフも、子どもたちに向けているようで、6割くらいはお母さんに向けていたんですよね。「高橋名人が1時間って言っているでしょ」って子どもに言ってくれたらそれでもう目的は果たせているわけです。

また、僕を理由にしてくれることで、もし、子どもが新しいゲームを欲しくなったとき、「高橋名人が推しているのであればしょうがないな」ってなりがちですからね。

そうやって、ゲームをやる人だけじゃなく、その周りの人に好かれて、気になってもらえる存在になってほしいと思います。僕のころも「名人」と呼ばれる人はたくさんいましたが、現状で名人と呼ばれる人が今どれくらい残っているか考えれば、どのようなやり方が正しかったのかわかるでしょう。

今、eスポーツやゲームを取り扱う番組が増えてきて、ゲームプレイヤーも多く出演していますが、ゲームとは関係のない番組にも呼ばれるようになってほしいです。そして、たとえば、野球のイチロー選手のように、有名になればなるほど、子どもたちの中により入りこんでいって、一層強い憧れを抱かれるような選手になってくれればうれしいですね。

――高橋名人は、eスポーツを運営する側でもありましたが、運営側に対して感じることはありますか?

名人:今は注目されているので、eスポーツに関することをすれば儲かるって思っている人も多いでしょう。でも、現状では簡単に儲けることは難しい。2~3年は、先行投資として、宣伝のためと思って大会を運営してもらい、長期スパンで考えてほしいなと思います。

――最後に、今回の「高橋名人の16連ダッシュ全国大会」は、1度ゲームオーバーになると復活するために連射をする必要がありますが、現在でも16連射はいけるのでしょうか。

名人:今は無理ですねー(笑)。たぶん12連射くらいがいいところじゃないですか。キャラバンのように5分間プレイするとなると、平均8~10連射くらいになってしまうかもしれないです。連射のピークは27歳のころだったんですよ。当時、連射の様子を撮影してもらったことがあるのですが、10秒間で174発撃っていたのが確認されました。17.4連射ですね。

――常人は5分間連射し続けることがすでに無理なので、まさに名人健在って感じですね。ありがとうございました!

実際に連射を見せてもらった。謙遜していたが、そのスピードはまさに“名人”だった
特典でシニア世代の取り込みを目指すKDDIのユニーク戦略

特典でシニア世代の取り込みを目指すKDDIのユニーク戦略

2019.03.25

スマホに残された最後の市場ともいえるシニア層

KDDIはシニア層取り込みのためにいくつかの施策を実施

なかには4酒蔵を巡るというお酒好きにはたまらない企画も

「ガラケー最後の利用世代」と認識されていた、60歳以上のシニア層もスマホへシフトしている。2018年には、60代のスマホ所有者数が初めてガラケー所有者数を上回り、今後もその傾向は加速するとみられている。

現在、スマホに移行していないシニア層は3,000万人との報告もある。この数字が確かならば、携帯キャリアにとっては「最後の開拓地」ともいえる。

実はスマホは、シニア世代と親和性が高いという分析がある。ガラケーに比べ画面が大きく文字が読みやすい、アプリのアイコン化によって直感的に操作しやすいというのがその理由だ。そうした需要を見越してか、携帯大手のシニア層取り込みが、激化し始めている。そんななか、auを運営するKDDIがある取り組みを実施した。

それは、「auスマートパスプレミアム」の特典としてシニア世代を集め、4カ所の酒蔵を巡るというものだった。筆者は、この企画に同行させていただいた。

4カ所の酒蔵を巡る「お酒好き」にはたまらない旅

朝7:30、新宿西口の明治安田生命ビル横のはとバス停留所に20人ほどのシニアが集まっていた。全員がそろったところで、黄色い車体の「はとバス」に乗り込み、ツアーがスタート。実はこの酒蔵巡りツアー、はとバスのなかでも人気企画で、月に何回か催されている。それが今回、KDDIのシニア加入者向けにチャーターされたカタチだ。

新宿西口のはとバス停留所。バスの横には「呑助さん乾杯!」の案内が掲げられていた

目指す先は栃木県。福島県や新潟県、長野県なども酒の産地として有名だが、そうした地域よりも近いというのが、この地が選択されたポイントなのかもしれない。

ツアーはまず、「外池酒造」へ。栃木県益子町にある酒蔵で、清酒のほか焼酎、コスメなどを扱っている。「酒蔵なのにコスメ!?」という声も聞こえてきそうだが、実はワケがある。昔から「杜氏」と呼ばれている職人の手は白くてツルツルしているといわれているが、それは酒粕に含まれる天然のビタミン群、ミネラル、アミノ酸の効果によるものだという。それをコスメに役立てたということだ。ここでは3種類の清酒の利き酒が行われた。

外池酒造のメインブランドは「燦爛」という清酒だ

続いて向かったのは「島崎酒造・洞窟酒造」。ここはインパクトがあった。洞窟酒造という名のとおり、山裾にある洞窟で清酒を貯蔵しているのだ。ただ、この洞窟は天然のものではない。旧日本軍が戦車を秘密裏に製造するために掘られた洞窟なのだ。年間をとおして10度前後と気温に変化がなく、それが清酒の貯蔵に向いているという。お酒を持ち込むことも可能で、こどもが産まれたときにお酒の貯蔵を洞窟酒造に依頼し、20年後、こどもが成人した際に、長年熟成させた清酒をお祝いに贈るという方が多いらしい。

「洞窟酒」のラベルが貼られた「熟露枯」(左)。ユーザーからお酒を預かり、洞窟内で保管しておくスペース(右)

さらに「片山酒造」を見学した。この酒蔵は少量生産のため、商品を流通させておらず、蔵元の店舗や直送でのみ入手可能。そのぶん、若干高価だが、製法にもこだわっており、「佐瀬式」と呼ばれる昔ながらの機材で、4日ほどかけて清酒を圧搾する。

左が佐瀬式という圧搾機。60年間は使っている(代替わりがある)。カラフルでワイヤー保釈式という日本酒では珍しいボトル

最後は「渡邊佐平商店」へ。この酒蔵は清酒と焼酎を製造しているが、印象的だったのは焼酎を蒸留する樽が“ウイスキー樽”のようなものだったこと。以前、埼玉県・秩父にあるディスティラリー「イチローズモルト」を見学したことがあるが、今や木樽の入手は難しくなってきていると聞いた憶えがある。それでも木樽による製造を行うのは、こだわっている証拠なのだろう。

「日光誉」という清酒がメインブランド。木樽が重ねられた様子は、まるでディスティラリーだ

シニア層取り込みの一環

ここまで見学した酒蔵を紹介したが、なぜこのような企画をKDDIが行ったのだろうか。冒頭で述べたとおり、それはシニア世代の取り込みにある。だが、取り扱い端末に大きな差はないため、性能面を訴求しても意味はない。ならば「auスマートパスプレミアム」をシニア世代へ認知してもらって活用してもらおう、というところがねらいなのだと思う。

そのため、シニア向けのスマホ活用冊子「大人にイイコト」を、今回のツアー参加者に配布していた。駅に置いたり、ダイレクト便で郵送しても、冊子が読まれるとは限らない。だが、こうしたツアーの復路で冊子が配られれば、東京までの移動中の暇つぶしとしてペラペラめくることになるだろう。事実、バス内で冊子を読んでいる方を多数お見かけした。

シニア向けのスマホ活用冊子「大人にイイコト」

実はKDDIは、スマホによるシニア取り込みに積極的だ。今回は、酒蔵巡りだったが、スマホ購入前のシニアに、スマホの使い方を啓蒙する講座なども開いている。講座自体は1回最大20名程度と小規模だが、繰り返すことが大切という判断に至っているようだ。

スマホはすでに飽和状態だが、まだ市場開拓の余地があるシニア世代。こうした世代の取り込みのために、今後も携帯キャリアがさまざまな手を打ってくるのは想像に難くない。

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。