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ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。

フランス発・冷凍食品スーパー「Picard」が都外に初出店 共働き需要つかみ拡大なるか

フランス発・冷凍食品スーパー「Picard」が都外に初出店 共働き需要つかみ拡大なるか

2019.03.18

フランスの冷凍食品専門スーパー「Picard(ピカール)」が横浜に出店

路面店ではなくSC入居、イートイン併設で狙う「使われ方」

高品質な冷凍食品で共働き需要をつかめるか

フランスの冷凍食品専門スーパー・「Picard(ピカール)」が2016年11月に日本に上陸して以来2年あまり。第一号店の青山骨董通り店(東京・港区)を皮切りに都内8店舗、スーパーイオン内に2店舗と着実に拡大を続ける中、3月14日、都内以外で初出店となる「ピカール 横浜ベイクォーター店」(横浜市神奈川区)をオープンした。

横浜駅に隣接する大型商業施設・横浜ベイクォーター3階にオープンした「Picard横浜ベイクォーター店」。営業時間は10時~21時

横浜では商業施設内へ出店、その狙いは

新店舗は、都外への進出のみならず、日本におけるピカールとしては初の試みが多い。まずは、大型商業施設内への出店(※小型店舗「Petit Pocard」除く)。開店前日の報道陣向けの内覧会に出席した、ピカールの運営企業であるイオンサヴール代表取締役社長の小野倫子氏は、出店の理由を「立地はもちろん、駐車場も併設している点が大きい」と説明。ファミリー層を中心に普及拡大を図りたい意向だ。

同店の売れ筋商品として"クロワッサン"を挙げた、イオンサヴール代表取締役社長の小野倫子氏。毎月6の付く日は1袋100円引きとなるプロモーションを各店舗で実施しているという

入居先の横浜ベイクォーターと言えば、2006年8月に横浜駅東口に開業した商業施設。横浜駅前という好立地でありながら、隣接地には超高層オフィスビルとタワーマンションが立ち並び、観光スポットであると同時に住宅エリアでもある。しかも、トレンドの発信地でもあり、情報感度の高い層が集まる場所だ。

これまでは本国・フランス同様に路面店への出店が多かった。横浜店の立地は、近隣住民のみならず、観光客を含めた多くの人にピカールブランドを認知してもらうには格好の場所とも言えるだろう。

フランス本国のピカールでは、2018年11月から店舗デザインを"マルシェ"(市場)をテーマにしたものに刷新しているが、新店舗では日本では初となる木目調であたたかみのあるデザインを採用。従来の店舗に比べると、スーパーというよりもコンビニエンスストアのような、親しみの持てる明るい雰囲気だ。

売場面積は約120平米。木目調のショーケースやディスプレーを採用し、日本における既存の店舗とは趣の異なる親しみやすい雰囲気となっている

さらに、同店ではイートインコーナーを併設。店内に電子レンジを設置して、購入した商品をその場で食べることができる他、既に一部店舗で実験的に導入していた、カフェコーナーも本格的に開始。人気商品であるクロワッサンやデザート、スナックとドリンクを組み合わせたセットメニューを提供し、買い物客が手軽に利用できる飲食需要にも応える。

店内の一角と店舗外に全部で18席の飲食スペースを併設。店内には自由に使える業務用の電子レンジが2台置かれ、購入した商品をその場で食べることができる
店内にあるカフェコーナー。購入した商品と一緒に楽しめるコーヒー、紅茶、オレンジジュースを販売する他、店内で焼き上げたクロワッサンなどとドリンクをセットにした「クロワッサンセット」(税抜278円)など、セットメニューも用意。オレンジジュースは店頭のジューサーでその場で作られる生絞りを提供する

また、ピカールとしては完全初の試みとなる、冷凍用のロッカーを設置。購入した商品を一時保管しておき、他店での買い物への利便性を高める。ロッカーは返却式のコイン型で、21時の営業終了後も23時まで利用できる。80リットル相当の容量のボックスが6つ設けられている。

専用のコインロッカー。店舗の外にあるため、21時の営業終了後も23時まで利用できる

商品配置の変更で「わかりやすさ」を向上

フランス発祥のピカールは、現在はイタリア、スイスなどヨーロッパ8カ国で1000店舗以上を展開。パンをはじめ、前菜、野菜など約1000品目を取りそろえるフランスに対して、日本で販売されているのは約360品目ほど。同店では国内の取り扱い品目のうち、ほぼすべてのアイテムを取り揃えるという。

「ラインアップは既存の店舗と同様ですが、すぐに食べられるデリ系の食品を目立つように置くなど、商品の配置を変更しています。野菜がたくさん食べられるメニューも提案していきたいです」(代表取締役社長・小野氏)とのことだ。

約360点ある商品は、野菜、ミート、シーフード、パン、デザートなどカテゴリー別に分類され、日本人にとってもわかりやすい商品展示
"アペリティフ(おつまみ)"や"取り分け料理(大皿料理)"のラインナップが充実しているのは、フランス発祥の冷凍食品スーパーならでは

共働き需要、ピカールの追い風となるか

フランスをはじめとする欧米諸国と同様に、日本でも近年、共働き世帯が増え、数年前についに有職主婦と専業主婦の割合が逆転した。

筆者が10余年前にフランスに在住していた時代から、多くの家庭で親しまれていたピカールの日本上陸は、個人的に大歓迎だった。だが、文化も食生活も大きく異なる日本において、どのように商品が消費者に受け入れられるかは、正直未知数であるという印象を当初持っていた。

聞くところによると、フランス本国においてもピカールは2年ほど前から積極的なイメージの刷新を図っているとのこと。横浜ベイクォーター店は、本国の路線をそのまま辿ったかたちで、"新しいピカール"を日本でいち早く取り入れた店舗ということになる。

アルコール類として、フランスのビールやワインを各種取り揃えているのもフランス発の店舗らしい

共働き世帯の増加に伴い、各家庭において家事の効率化や時短が求められる中、手軽に食べることができ、保存性も高い冷凍食品は有効な手段の1つ。その需要が今後日本においてもますます高まるのは必至だ。

日本のこうした社会構造の変化を追い風に受け、ピカールが日本の食卓にどのように浸透していくか。イオンサヴールの今後の戦略や取り組みに期待と注目が集まる。

乳児用の「液体ミルク」国内販売へ 震災きっかけに開発

乳児用の「液体ミルク」国内販売へ 震災きっかけに開発

2019.03.11

赤ちゃん用「液体ミルク」の国内販売が解禁

先陣を切った江崎グリコ、開発のきっかけは熊本地震

使い勝手は良好、今後の課題は「価格」か

飲用水の確保が難しい災害時にも、赤ちゃんに与えられる「乳児用液体ミルク」(以下、液体ミルク)。育児にかかる労力の簡便化のいち選択肢としても注目されているが、その国産製品の発売が今日、3月11日から始まった。

3月11日より一般発売された江崎グリコ「アイクレオ 赤ちゃんミルク」

粉ミルクよりも簡単に与えられる新たな選択肢として、注目されている液体ミルク。発売同日に都内(ベビーザらス錦糸町店)で開催された「アイクレオ 赤ちゃんミルク(乳児用液体ミルク)」体験会で、ユーザーと開発者の生の声を聞いた。

被災地トラブルで注目された液体ミルク、一般発売へ

「液体ミルク」は、長年市場に流通している乳児用の「粉ミルク」と対比された言葉。2018年9月、北海道胆振東部地震の被災地に支援物資として送られた輸入品の液体ミルクに、「国内での使用例がない」として使用を自粛するような文書が添付されたと報道され議論を呼んだ。

このトラブルの背景にあったのは、液体ミルクの認知度の低さ。そもそも、ごく最近まで日本国内では液体ミルクの販売自体が認められておらず、輸入品を利用することもできなかった。2018年8月に厚生労働省が液体ミルクの国内販売を解禁する改正省令を施行したことで、複数の国内メーカーが開発に乗り出した。

発売に関して、先陣を切ったのが江崎グリコ。今夏発売予定だったところを前倒しする格好で、このたび「アイクレオ 赤ちゃんミルク」が発売された。

開発のきっかけは熊本地震

同製品の開発リーダーを務めた江崎グリコ 商品開発研究所 ベビー・育児グループの永富宏氏によれば、開発のきっかけは2016年4月の熊本地震だった。

被災時には母親の母乳が出なくなることもある、飲用水が確保しにくいなどの理由から、「災害でもっとも弱者となるのが赤ちゃん」だと強く認識。フィンランド産の液体ミルクが被災地で活用されたこともあり、「ミルクを扱う企業の一員として液体ミルクを国産で届けられないか」と開発を決意した。

開発には2年を費やし、製品は2018年段階で完成。厚生労働省の承認を受けた特別用途食品の表示を許可され、発売に至った。

江崎グリコ「乳児用液体ミルクに関する調査」(2018年10月)

昨年10月に同社が行った調査では、子育て中の親における液体ミルクの認知度は半数を割っていた。しかし、その存在を知った上で「使いたい」と回答した人は半数を超えたことから、開発の追い風となった

「常温で飲める」液体ミルク、粉ミルクとの違いは

液体ミルクの特徴

液体ミルクと粉ミルクでは対象年齢は変わらず、新生児から飲むことができる。一方、異なるのは飲むときの「温度」だ。

粉ミルクは人肌にさまして与えるよう指導されているが、これはユーザーが扱う工程で70度以上の湯による殺菌が必要となり、それを赤ちゃんが飲める温度まで冷ますめやすとして示されていたもの。そのため、無菌充填された液体ミルクは常温で飲ませることができる。

保存に関しても、常温・未開封で保存期間は半年となっており、緊急時向けの備蓄品としての利用も行える。また、「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は濃縮タイプではないため、お湯などで薄める必要はない。成分としては粉ミルクタイプのアイクレオ製品と同等とのことだ。

使う際は、付属の移し替え用ストローで哺乳瓶に移し替え、赤ちゃんに与える。温度や濃度の調整がいらないため、調乳に不慣れな同居家族・親族でも育児に参加できるツールとして有用に思われた。

粉ミルクは熱湯を使うため一度赤ちゃんから手を離す必要があるが、膝に赤ちゃんを抱えたままでも、液体ミルクの準備はできる。与えたい時にすぐ用意できるメリットは大きい
「アイクレオ 赤ちゃんミルク」には、容器移し替え用のストローが付属。飲用向けではない短いもので、後端に液だれ防止のかえしがついている

飲みのこし問題の一方、「足りない」との声も

1日に頻回、昼夜問わず行う授乳。液体ミルクを導入することで、母乳を中心にした育児であれば母親の睡眠不足、粉ミルクであれば頻回作る手間が解消されるメリットがある。

液体ミルクの発売にあたり、冒頭の災害時対応に加え、こうした育児の負荷軽減に期待する声は大きい。その一方、いわゆる「コスパ」の面でいえば、既存の手段に比べやや分が悪い。

「アイクレオ 赤ちゃんミルク」の容量は125mlで、1本200円(税抜き)。同シリーズの粉ミルク「アイクレオ バランスミルク」スティックタイプは1本あたり100mlのミルクになるためほぼ同様の内容量となるが、スティックは1本あたり約50円前後。液体ミルクの値段はそれと比較すると約4倍だ。出産直後は1日10回近くは授乳することを考えると、粉ミルクを飲める状態にする手間と、4倍の価格のどちらをとるかという話になるだろう。

体験会に子供と参加した彌重江理さんは、「液体ミルクを授乳室に置いた自販機で販売する予定は?」など、江崎グリコ側に意欲的に問いを投げかけていた。だが、すでに使用している粉ミルクと比較して値段が高いことを挙げ、「使うのは緊急時やお出かけの時だけになると思います」とも語った。

体験会で使われたのは、殺菌済みの使い捨て哺乳瓶。液体ミルクそのものが割高な状況では、日常の授乳に毎度用いるのはあまり現実的ではなく、緊急時・外出時の利用が現状ではスタンダードなのかもしれない

解禁の報せを受け、SNSなどでは「もったいないからと飲み残しを再度与えることになりかねないのでは」と憂う声もあった。江崎グリコの製品説明では「飲み残しは廃棄」とされている。やはり抵抗力の低い新生児には雑菌感染のリスクがあるため非推奨という。

飲み残しと言っても、赤ちゃんが口をつけてない、パックに残ったものであれば、牛乳のように冷蔵庫に入れて…ということも考えられるかもしれないが、パックに残ったものについても再利用は非推奨となる。

「冷蔵庫の中にも菌は存在します。紙パックはキャップがないので、一度開栓したら残りも保存せず使い切るようお願いいたします」(江崎グリコ 永富氏)

一方、体験会に足を運んだ、いわゆる「首のすわった」赤ちゃんを育てている母親・父親からは、「125mlでは足りないかもしれない」「1パック200mlくらいあれば」という声もあった。

成長すれば飲む量も増えるため、個包装の量についてはメーカーも試行錯誤が必要と思われるが、永富氏からは「不足する場合は粉ミルクなどを追加であげるか、液体ミルクを2本開封してあげてください」という説明がなされていた。

今後、別の容器で販売する可能性は?

諸外国の液体ミルクには、ペット容器入りで飲み口を付けてそのまま与えられるタイプも多くあるが、今回発売された「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は哺乳瓶への移し替えを前提とした紙パックタイプ。この形態になったのは、「世界的に一番実績があり、ゴミの処理がしやすい」(江崎グリコ 永富氏)ためという。

被災地等での利用にはニップル(吸い口)つきでそのまま使える容器がより便利と思われるが、先述の飲み残しを与えてしまうリスクから、その形態は見送ったということだ。今後、液体ミルクの認知度が国内で上昇し、当たり前になってからであれば、こうした容器の新製品が出てくるのかもしれない。

体験会の場に展示されていた売り場の設営イメージ。地方自治体の被災時向け物資としては、10パックがまとまった箱(棚上段左側)での納入がされているという

また、今回の小容量タイプだけでなく、諸外国にはもっと大きな容量でパッキングされた再栓可能な製品もあり、一定時間であれば蓋をして冷蔵保存、再利用ができるものもあるという。そうした形態の製品は今後拡充するかと尋ねたところ、「保育園や病院など、一度に大量に用いる施設でそういったニーズがあるのは把握しており、社内で検討している」(江崎グリコ 永富氏)とのことだった。

「完母」信仰の強い日本、液体ミルクは広がるか

近年、母乳のもつ赤ちゃんへの効能が注目され、一切市販のミルクを使用しない「完全母乳育児(通称:完母)」が推奨される風潮が加速している。しかしながら、体質や体調、就労状況など、さまざまな要因で母乳だけでの育児が難しい人もおり、そうした人に「完母」を強いるのは強いストレスとなることが問題視されている。つい最近、厚労省が母乳の効果を再検討し、アレルギー疾患予防効果は「なかった」と指針を更新。ミルクを選択する保護者を尊重すべきとの方針を示した。

液体ミルクに関して言えば、昼夜問わず行う授乳の手間を簡便化するメリットは非常に大きい。価格面と認知度の低さがネックになっているものの、後者の解決は徐々に進んで行きそうだ。価格面についても、ニーズが確立し、流通量が増えれば、値段が低下する可能性も見えてくるかもしれない。

個人差を尊重した多様な育児環境の醸成に、液体ミルクが一役買うのか。その動向を注視していきたい。