「電気自動車」の記事

研究・開発の次期トップが語るホンダの電動化戦略

研究・開発の次期トップが語るホンダの電動化戦略

2019.03.08

自動車販売の3分の2を電動化! 2030年までに達成可能?

本田技術研究所の次期社長が電動化戦略を説明

電動化の核となる独自のハイブリッドシステム「i-MMD」

ホンダは同社独自の2モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」(以下、i-MMD)に関するワークショップを開催した。場所は同社創業の地である静岡県・浜松市。このワークショップには、2019年4月1日付けで本田技術研究所の社長に就任する三部敏宏(みべ・としひろ)氏が出席し、ホンダの電動化戦略についてプレゼンテーションを行った。

「i-MMD」は駆動用と発電用の2つのモーターを持つハイブリッドシステムで、走行シーンによってモーター走行とエンジン走行を切り替えられるのが特徴。発進から街中のクルーズまでをモーター駆動でこなすので、ほとんどの場面でEVのようにトルクが強く、レスポンスのよい走りが味わえる

電動化の進展は「想定以上」に早かった

「ここ数年、電動化の動きは全世界で想定以上に進んでいる」。ホンダの電動化戦略を説明するにあたり、まずは急激に変わりつつある自動車業界の状況に言及した三部氏。ホンダでは当初、「内燃機関(エンジン)の効率を上げつつ、2020年頃まではハイブリッド車(HV)を徐々に増やしていき、プラグインハイブリッド車(PHV)とゼロエミッション車(ZEV、電気自動車や燃料電池自動車などの走行中にCO2を排出しない車両のこと)については、2020年以降に展開しよう」と考えていたそうだが、「現実として(CO2排出量の)規制は強まり続けており、内燃機関の熱効率を改善するだけでは届かないレベルになってきている」という。

本田技術研究所 取締役副社長の三部敏宏氏。2019年4月1日付けで同社社長に就任する

ホンダはクルマのサイズに応じて3種類のハイブリッドシステムを使い分けている。具体的には小型クラス用の軽量・コンパクトな1モーターシステム「i-DCD」、中型クラスに搭載する2モーターの「i-MMD」、大型クラスに搭載する3モーターの「SH-AWD」の3つだ。今後はi-MMDを主力に据え、PHVとZEVも同時に展開していくというのがホンダの戦略だが、「電動車両も、それなりに台数を出していく必要がある。これまでのように技術を開発するだけでなく、事業性との両立を実現したい」というのが三部氏の考えだ。

「i-MMD」を搭載するクルマは現状で6車種。左から「アコード」「クラリティ PHEV」「インサイト」「CR-V」「ステップワゴン」「オデッセイ」

自動車販売の3分の2を「電動車両」に

2030年までに、販売する自動車の3分の2を電動車両にするというのが同社の目標。ちなみに、ホンダが2017年度に販売したクルマの台数は約520万台だ。目標達成時の内訳は、HVとPHVで50%、ZEVで15%を想定する。

ホンダの自動車販売を年間520万台とすると、2030年にはHVおよびPHVで260万台、ZEVで78万台を売らなければ目標は達成できない

EVを普及させる上で、ホンダが注目しているのは「発電段階でのCO2排出量」だ。走行中にCO2を排出しないEVを普及させても、EVの動力源である電力を作る過程で化石燃料に依存しているのでは、トータルで見た場合、CO2削減効果は薄れてしまう。国ごとに発電所の構成比率は異なるので、地域ごとに最適なクルマを投入していきたいというのがホンダの考えだ。

化石由来の燃料による発電量が赤く着色してある。化石燃料に依存する発電の比率は世界平均で約65%だ

例えば、CO2排出規制が急速に厳格化していく見通しの欧州では、i-MMDを搭載するHVを拡販し、欧州で販売するホンダ車全体の環境性能を底上げしつつ、「Honda e」(ホンダイー)などのZEVを投入することで規制に対応していく。「Honda e」を世界初公開したジュネーブモーターショー(会期は2019年3月17日まで)でホンダは、「2025年までに、欧州で販売する四輪商品の全てを電動車両に置き換える」と宣言。「3分の2」よりも踏み込んだ目標を掲げ、クルマの電動化に注力する姿勢を改めて明確にした。欧州向けi-MMD搭載商品としては、2018年にSUVの「CR-V」を市場投入している。

2019年夏に欧州の一部の国でホンダが発売する新型EV「Honda e」

中国では昨年、同国専用EVの「理念」を発表。2018年12月には量産を開始しており、2019年は順次、販売を拡大していくという。中国では現地のリソースを有効に活用し、競争力のあるEVを展開していく考えだ。

ホンダの中国専用EV「理念」

「i-MMD」シフトへの準備は整った

地域によって戦略は異なるものの、ホンダの電動車両開発にとって「i-MMD」が核となるのは間違いない。モーターによる走行領域が広いi-MMDは、PHVやEVを開発する上でもベースとなる技術だからだ。三部氏は「モーター、バッテリー、IPU(バッテリーと制御装置が一体になったパーツ)といった各構成要素の技術革新により、i-MMDにシフトしていく準備は整った。今後はi-MMDをホンダHVの中核に据え、さらなる高効率化とバリエーション展開を図っていく」とする。

「i-MMD」で使うモーター

国内外でのi-MMDの本格展開に向けては、「協業を含め、生産規模の拡張に手を打ち始めた」と三部氏。「i-MMDの世界展開に向けては、浜松工場の生産能力を上げるとともに、モーターの現地調達が必要不可欠になってくる。そこで、日立オートモーティブと合弁会社を立ち上げた。ホンダの独自技術と日立オートモーティブの生産技術を組み合わせることで、高性能かつ低廉なモーターの提供を目指したい。今は日本と中国で生産準備を進めているところだ」と話していた。

今回のワークショップでは、ホンダのトランスミッション製造部 浜松工場を見学した。この工場では自動車用の多段変速機(AT)、無段変速機(CVT)に加え、i-MMDの重要な構成要素であるモーターも生産している(画像はモーターの生産ライン)。現在は5本目のモーター生産ラインを増設しているところだ

i-MMDを核とする電動化戦略の推進に向けて、準備は整ったとした三部氏だが、電動車両販売の数値目標については、「ホンダが勝手に数字を決めても、最終的にはお客様に買ってもらわないと達成できない」と指摘。i-MMDを搭載するクルマに商品としての魅力がなければ、目標達成は難しいとの認識を示した。

「ハイブリッドだからといって、燃費がいいだけではつまらない。i-MMDでは走りにも強くこだわった」。三部氏はi-MMDについて、燃費と走りを両立したホンダらしい技術だと強調する。この技術を市場がどう評価するかが、ホンダの今後の電動化戦略を左右しそうだ。

欧州市場に不可欠? ホンダが新型電気自動車「Honda e」を世界初公開

欧州市場に不可欠? ホンダが新型電気自動車「Honda e」を世界初公開

2019.03.05

ジュネーブショーで「Honda e」が世界デビュー

ホンダらしいコンパクトカー、航続距離は200キロ以上

ハイブリッドだけでは難しい? 欧州市場の電動化戦略

ホンダは開催中のジュネーブモーターショーで新型電気自動車(EV)「Honda e」(ホンダ イー)のプロトタイプを世界初公開した。このクルマが日本や米国ではなく、欧州で世界デビューを果たしたのには理由がありそうだ。

ホンダがジュネーブモーターショーで世界初公開した「Honda e」プロトタイプ(「Honda e」の画像提供:ホンダ)

ホンダが提案したコンパクトEV

「Honda e」は、ホンダが2017年のフランクフルトモーターショーで発表したコンセプトカー「Honda Urban EV Concept」(アーバンイーブイコンセプト)をベースに作った市販モデルだ。いかにもホンダのスモールカーらしい見た目でありつつ、ポップアップ式のドアハンドルや「サイドカメラミラーシステム」(サイドミラーの役割を果たすカメラ)といった先進機能を取り入れることで、シームレスなボディーラインを際立たせている。

2017年の東京モーターショーでも展示されていた「Honda Urban EV Concept」

新開発のEV専用プラットフォームを採用した「Honda e」は、コンパクトなボディーを持ちながら、長いホイールベースと短いオーバーハングを兼ね備えているのが特徴。ホンダによると、このクルマでは街中での取り回しの良さと優れた走行性能を両立しながら、力強いモーターと後輪駆動により、走りの楽しさを実現したという。1回の充電で走行可能な航続距離は200キロ以上(WLTPモード)だ。

ホンダのコンパクトカーらしい外見の「Honda e」プロトタイプ

ホンダは2030年までに自動車販売の3分の2を「電動車両」にする目標を掲げている。この電動車両という言葉は、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、EV、燃料電池自動車(FCV)を含む幅の広い概念だが、ホンダとしては電動車両のベースとなるHVの販売強化と性能向上を進めながら、PHVとEVのラインアップを拡充していきたい考えだ。

ただ、地域により環境規制の内容も違えば市場のニーズも異なるので、電動車両の販売戦略も地域に合わせた立案が必要になる。例えば、日本はHVのシェアが高い市場だが、その背景には充実した補助金や減税制度、渋滞が多くクルマの平均速度が相対的に遅いという道路状況、高速道路での移動が欧米に比べ短いという交通事情などがある。日本におけるホンダ車(登録車)の販売は、実に56%がHVだというが、日本のHV人気は世界的にみれば特殊な状況なのだ。

一方、これはホンダ車に限った話ではないのだが、欧州では日本ほどHVが売れない。さらに、CO2排出量の規制は今後も強まっていく見通しなので、自動車メーカーとしては、欧州で電動車両、中でも走行中にCO2を排出しないEVの販売を増やしていくことは急務となっている。

「Honda e」プロトタイプのインテリア

ホンダは同社独自の2モーターハイブリッドシステム「i-MMD」を搭載するSUV「CR-V」を欧州に投入し、同地域でHVの訴求を強めているところだが、ここにEVの「Honda e」を追加し、欧州での電動車両比率を高める考えだ。「Honda e」の発売時期は、欧州の一部の国で2019年夏、日本では2020年を予定している。

テスラとフォード、メルセデスが注目する「SparkCharge」の

テスラとフォード、メルセデスが注目する「SparkCharge」の"EV未来予想図”

2019.03.04

ポータブルEV充電ユニットを開発する米SparkCharge

自動車メーカーやロードサービスと組み、「どこでも充電」へ

Uberやドローンの活用も視野に入れ、EV普及促進図る

砂漠のど真ん中で、EV(電気自動車)の充電が切れる。アプリを開いてしばらく待つと、ドローンが高速充電ユニットを持ってきてくれる。数十分で充電が完了し、また車を走らせる――。

「なぜ砂漠でEVを走らせているのか」という疑問はさておき、米スタートアップのSparkCharge(スパークチャージ)が目指すのは、そんな世界だ。

スパークチャージは2014年、ニューヨーク・シラキュース大学の寮の一室で生まれた。それからわずか5年、同社はフォード・モーターやテスラ、メルセデス・ベンツといった自動車業界の雄から熱い視線を送られるようになる。それはいったいなぜか。

米国テキサス州・ダラスにて行われたダッソーシステムズ主催の3次元CADイベント「SOLIDWORKS World 2019(ソリッドワークス ワールド)」に参加していた同社の創業者であり現CEOのJoshua Aviv(ジョシュア・アビブ)氏と、同社CTOのChristopher Ellis(クリストファー・エリス)氏に、スパークチャージのユニークな事業と戦略について聞いた。

スパークチャージの創業者、兼CEO(最高経営責任者)のJoshua Aviv(ジョシュア・アビブ)氏(左)、CTO(最高技術責任者)のChristopher Ellis(クリストファー・エリス)氏(右)

「SOLIDWORKS World 2019」

2019年2月11日~13日まで米国テキサス州ダラスで行われた、世界最大級の3次元CADイベント。ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(以下、ソリッドワークス)の年次ユーザーイベントであり、世界中のソリッドワークスユーザー、代理店、パートナー企業、ソリッドワークス社員など、合計7000人以上の来場者が一堂に会した。

「マイ充電ステーション」でEV普及へ

地球温暖化をはじめとする環境問題、および世界のエネルギー問題を見越し、自動車メーカーは相次いでEVに参入。出荷台数も年々増加している。各メーカーの努力によって年々航続距離が伸び、より実用的になってきている一方、まだまだ「充電インフラの不足」がネックになっている。

その問題の解決し、EV普及を促進することがスパークチャージのミッションだ。

「大学在学時、EVを所有していた私は、充電インフラが不足していること、そしてその充電スピードに問題を感じました。アメリカのハイウェイには約40マイルごとに1つ、充電ステーションが用意されているのですが、充電には何時間もかかってしまう、非常に効率の悪いインフラだったんです」(アビブ氏)

ジョシュア・アビブ氏

「迅速に充電ができ、かつ車のトランクに収まるようなものがあれば、いつでもどこでも充電できるのではないか」。そう考えたアビブ氏は、「マイ充電ステーション」というアイデアを思いつき、充電ユニットの開発に取りかかる。その製品はすぐに注目を浴び、出資者・メンターが集まったところで、スパークチャージが誕生した。

【SparkChargeの高速充電ユニット使用イメージ】

優秀なエンジニアとの出会いも、同社の成長につながった。開発担当者のクリストファー・エリス(Christopher Ellis)氏は、元々NASAで衛星に使われる電源システムの開発に携わっていたそう。そのノウハウを活用し、より小さくて軽いユニットで、より急速な充電を行えるようにした。

「元々、充電ステーションは『冷蔵庫』ほどの大きさが一般的でした。私たちの製品ではそれを、『機内持ち込み手荷物』くらいのサイズに小型化することに成功したんです。詳述は避けますが、これまで製造業の現場で利用されていたようなモジュール化技術を用いたバッテリ容量のコントロール、およびNASAで学んだ電力系統技術などを活用している点が、他社との差別化ポイントです」(エリス氏)

5月よりアメリカで導入、今後も広がる可能性

「マイ充電ステーション」に着想を得た同社の目指すところは、コンシューマー向けの充電ユニットの販売だ。ただ、直近で行うのはBtoB向けへの展開であるという。例えば、アプリからの注文で充電ユニットを運び届けるサービスや、自動車ディーラー/ロードサービス事業者への販売、さらにはセブンイレブンなどの店舗への設置も検討中だそうだ。

すでに6~7社が導入を検討しており、2019年5月から各社が事業を展開していくめども立っている。また、2019年末までには米国内で約10社がスパークチャージの製品を使用した事業を展開する見込み。

こうした同社の技術やビジネスモデルに惚れ込み、スパークチャージとパートナーシップを結んでいる企業の中には、テスラやフォード・モーター、メルセデス・ベンツといった、自動車業界の雄たちもある。

ほかにも、自動車保険ビジネスを展開する「Agero」、「AAA(全米自動車協会)」、エネルギー関連事業の「BP」などともパートナーシップを締結している

同社の事業は、ソリッドワークスワールド2019にて行われた、ダッソー製品群のライセンスを獲得できる「3D EXPERIENCE Pitch」でも高い評価を受けた。ダッソー・システムズのCEOであるベルナール・シャーレス(Bernard Charles)氏やグローバルデザイン誌「CORE77」、STEM教育「BASE11」のトップからなる審査員、およびイベント参加者の投票の結果、見事優勝を果たした。

ピッチの様子

アビブ氏は今後の展望について、「あくまで可能性の話」と前置きしたうえで、ドローンを用いた遠隔地への充電ユニットの配送、「Uber」や「Lyft」などのライドシェアサービスとの連携も検討しているという。

まだまだ成長段階のスパークチャージであるが、そのポテンシャルは高そうだ。大手自動車メーカーが注目する、SparkChargeの描く「EVの未来予想図」は、今後どのような形で実を結ぶことになるのだろうか。