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電子黒板の急成長に賭けるシャープ、成功の鍵は「4K」化

電子黒板の急成長に賭けるシャープ、成功の鍵は「4K」化

2019.04.15

シャープが電子黒板ラインアップの4K化を加速

実は将来にわたり拡大見込まれる有望市場

リーダーの立場を固め、成長の果実を多く取り込む狙い

シャープが、IWB(Interactive Whiteboard=電子黒板)市場で攻勢をかける。その切り口となるのが「4K」だ。5月上旬から、3つの画面サイズで、4K対応したタッチディスプレイ「BIG PAD」の新製品を順次投入する。今年度中には4K比率を約7割にまで一気に引き上げる。今後も成長が見込まれるIWB市場において、トップシェアメーカー自らが4Kシフトをリードし、さらなるビジネス拡大に向けてアクセルを踏み込むことになる。

4K対応したタッチディスプレイ「BIG PAD」の新製品

IWB市場で国内をリードするシャープ

シャープのBIG PADは、同社の液晶ディスプレイ技術を生かしたIWB製品で、2011年12月に投入した70V型/60V型タッチディスプレイ製品「PN-L702B」/「PN-L602B」から、BIGPADの名称を採用。2012年1月には、さらに大型化した80V型のBIGPADも投入している。その後も、基本的な機能を備えるスタンダードモデルに加えて、複数台を並べて設置するのに最適化したフルフラットモデル、PCとの接続が容易なワイヤレスモデル、ハドルミーティングなどに適したミドルサイズモデル、高精細表示を特徴としたフラッグシップ4Kモデルとラインアップを拡大。さらに、教育分野向けの機能を搭載したBIG PAD Campusも製品化するなど、様々なニーズにあわせた製品提案を行ってきた。

左が4Kで右がフルHDの画面

現在、国内IWB市場において、シャープは約6割のシェアを獲得。この分野をリードしている。

市場規模はまだ小さいとされるIWB市場に、シャープがことさら力を注ぐのは、これを成長領域と捉えているからだ。実際にIWB市場は、年々出荷台数が拡大している。

国内のIWB市場は、2018年の出荷台数が1万6,307台だったものが、2019年には1万9,110台と17%増の成長率を見込む。さらに、2022年には3万5,849台の出荷が想定され、年平均成長率は21.8%増と、高成長の予想だ。働き方改革の推進や、教育分野における電子黒板の導入促進といった世の中の流れも、これを後押ししている。

こうした成長は、世界的に見ても同様だ。

グローバルに見た2018年の実績は、155万9,000台と前年比34.5%増という高い成長を記録した。2022年度には197万7,000台の出荷が見込まれている。

なかでも、注目を集めているのが4Kモデルの出荷比率の上昇だ。

顕著な「4K」化の波をつかむために

全世界で2016年に9.5%だった4K比率は、2017年には21.1%に急拡大した。2018年には37.5%と、3台に1台以上にまで広がった。この背景には、IWBの最大市場である中国において、4K化の波が一気に進展していることがあげられる。

この4K化の波が日本に訪れているとは言い難いが、この流れを日本でも仕掛けようとしているのがシャープだ。

2018年における国内IWB市場の4K比率は9.9%。シャープはこれを2020年には約半分に引き上げようとしている。BIGPADの販売台数でいえば、約7割を4Kモデルにするという意欲的な計画だ。

シャープが今回発売した新製品は、高精細4K液晶パネルを搭載し、微細な文字や図表、設計図面を鮮明に表示することができるほか、最大4台までのパソコン画面をマルチ表示することが可能だ。4台接続時であっても、それぞれの画面をフルHDで表示できる。

また、パネルにはInGlass方式のタッチパネルを採用。タッチポイントを検出する赤外線が、液晶パネルに近接した位置を走査する「低ホバー設計」としているため、衣服の袖などに対する不要な反応などがなくなり、誤動作が減るほか、この仕組みにより本体のベゼル厚が抑えられ、スタイリッシュな外観を実現することにもつながっている。

シャープ ビジネスソリシューション事業本部 ビジュアルソリューション事業部 商品企画部の村松佳浩部長は、「赤外線遮断方式を採用している従来製品では、文字を書こうとして近くまでペンを寄せるとその段階で反応してしまい。書きたいと思う場所に文字を書き込めないという課題があった。InGlass方式によって1mm以下の近接状態で文字が書けるため、狙った場所にしっかりと文字が書ける」と説明する。

シャープ ビジネスソリシューション事業本部 ビジュアルソリューション事業部 商品企画部の村松佳浩部長

より細い文字を書けることから、同梱のタッチペンは、両端にそれぞれ太さ2mmと4mmの2種類のペン先を備え、1本のペンで細字と太字を簡単に書き分けられるものになった。

細字と太字をかき分けられるタッチペン。3角形の形状は「転がりにくい」という利点がある

さらに、本体の内部部品の発熱に対して放熱構造に工夫を施したことで、通常の横置き設置に加えて、縦置き設置や斜め設置が可能になった。これにより、タッチ機能を活かした大画面サイネージとしての利用のほか、デザイン画や設計図のレビューといった用途にも活用できるようになった。

また、今回の製品の特徴のひとつが、コントローラーを内蔵し、ホワイトボード機能やモバイル機器とのワイヤレス接続機能といった、ミーティングで役立つ機能を標準装備したことだ。

たとえば、ホワイトボード機能は、必要な時にさっと立ち上げ、すぐに書き込め、簡単に書き込んだ内容を保存できるものだ。あわせてミラーキャスト機能により、パソコンやタブレット端末などのモバイル機器をワイヤレスで接続できる。面倒な配線の手間がなく、画面にパソコンなどの内容を表示できるため勝手が良い。

ミラーキャスト機能を利用して、PCの資料を直接表示できる

そのほか、同社が社内でも活用しているクラウド型テレビ会議システム「TeleOffice」と組み合せることで、遠隔地と資料を共有しながらの会議が容易となった。スマートフォンやタブレットと接続して、外出先や在宅勤務の社員とのコミュニケーションも可能だ。

特別だった4K、新製品で一気にスタンダードへ

今回の新製品は85V型の「PN-L851H」、75V型の「PN-L751H」、65V型の「PN-L651H」の3機種をラインアップしており、5月上旬から順次発売する。まずは国内だが、欧米、中国、アジアにも展開していくことになるという。

4K化の促進という狙いを持つことから、機能の大幅な向上を遂げながら、価格も戦略的な設定を行っている。市場想定価格は、85V型が130万円前後、75V型が68万円前後、65V型が50万円弱だ。

これは、主力となる75V型を例に取ると、現在市場にある70V型のフルHDのスタンダードモデルとほぼ同等の価格設定。つまり、4K化を図りながら、画面サイズを5インチ拡大し、さらにコントローラーも内蔵し、それでいて、価格は同じという、まさに戦略的な価格設定となっているのだ。

新製品によって、BIGPADの製品ラインアップ全体にも変化が起こる。

BIGPADは従来も静電容量型の4Kモデルを用意していたが、これを4Kハイエンドとして位置付け直す一方、これまでのフルHDのスタンダードモデル、ワイヤレスモデル、フルフラット画面モデルは今回の新製品へと統合。これを4Kスタンダードモデルとして展開する。BIGPAD全体をフルHDから4Kへと完全にシフトするという宣言だ。

そして、同社は明言していないが、今後は当然、教育分野向けモデルも4K化が進む。2020年までに教育分野へのIWBの導入が加速する情勢は、4K化を後押ししそうだ。

市場をリードしているシャープ自らが、販売台数の7割を4Kで占める意欲的な販売戦略で4K化へシフトするという構図だ。

「IWB市場においても、シャープが4Kの世界に一歩先に踏み出すことで、ビジネスを優位に進めたり、プロモーションでも先進性を発揮できたりする。また、今回の機能強化によって、コントローラーを内蔵したり、独自のIWBランチャーによって4Kコンテンツを利用しやすい環境を整えたりしており、この点でも他社をリードできる。BIGPADにより、4Kを取り巻くエコシステムも構築していきたい」(シャープ・村松部長)と意気込む。

さらに、これまでBIGPADは、サイネージとしての提案はあまり行ってこなかったが、外国人観光客の増加や2020年の東京オリンピック/パラリンピックの開催に向けて、サイネージ需要が拡大しており、タッチ機能を搭載したBIGPADをサイネージ向けに提案する動きも加速する。4K化と価格競争力、豊富なソリューションによって、サイネージ用途をBIGPADの新たな主要ターゲットとして展開していくことになる。

シャープは4K化の”次”に着手している?

実は、シャープのIWB市場の仕掛けはこれだけではない。この分野において、さらに2つの隠し玉がある。

1つは、シャープが得意とする「8K」だ。

シャープは、4月9日から11日の3日間、東京・芝浦のシャープ東京ビルで、新技術および製品の展示会を行なっていた。もともとは社内向けのイベントだが、来日していた鴻海精密工業の郭台銘会長や、広東省の馬興瑞省長をはじめとする広東省の高官なども見学に訪れた。さらに、シャープの戴正呉会長兼社長の提案で、この内容は、一部報道関係者にも公開された。

その会場に展示されていたのが、8Kタッチパネルを応用した新製品だ。

約3318万画素の超高精細技術によりリアルな映像を表示する8Kタッチパネルに、8Kコンテンツビューワーを接続することによって、クラウドを通じて8Kコンテンツを配信する仕組みとなっている。この8K配信の実現には、クラウド型テレビ会議システム「TeleOffice」の基本技術を活用しているという。

これは、まずは美術作品などを鑑賞する用途を想定している。絵画などをタッチ操作によって自由に拡大して鑑賞できる。コンテンツの内部データには、60K相当の高解像度データを使用しているため、拡大しても画質を損なうことなく、鮮明に見ることができ、実際の絵画では見えにくい細かい部分まで拡大して表示することができる。絵画に込められた作者の意図などもより理解しやすくなるだろうとしていた。

この8K化は、BIGPADの次の進化として期待できる技術だ。

新技術および製品の展示会に参考展示された8Kタッチパネル。展示ではピーテル・ブリューゲルによる「バベルの塔」を8Kで表示
タッチしながら拡大すると細かい部分まで鮮明に見ることができる

もう1つは、マイクロソフトが提案している「Windows Collaboration Display」に対応した製品の開発だ。これは、昨年6月に台北で開催されたCOMPUTEX 2018でマイクロソフトが発表したもので、今年の1月には米ラスベガスで開催されたCES 2019において、シャープブースにさっそくWindows Collaboration Display対応製品が参考展示された。

Microsoft 365との連携を最適化しているほか、カメラやセンサーを活用して、会議室の人の動きや温度、湿度、照明などの状況を感知して、会議環境を適切にコントロールできるようにしている。例えば会議室に人がいないことや、新しく入ってきた人を認識し、それによって、会議室の予約をキャンセルしたり、会議に必要な情報を提供したりする。

CES 2019のシャープブースに参考展示されたWindows Collaboration Display対応の製品

参考展示されていた製品の発売時期は未定であり、これがBIGPAD(海外ではAQUOS BORAD)の名称で発売されるかどうかもわからないが、実はBIGPADと同じチームが手掛ける製品に位置づけられており、シャープのIWBの新たな提案のひとつになるのは間違いない。

シャープはIWB市場を成長市場として明確にし、積極的に手札を広げることで、この分野のリーディングカンパニーとしての存在感をさらに強化する考えだ。その始まりの一手が今回の「4Kスタンダードモデル」の投入ということになる。

あくまでプリンター中心に成長描くブラザー、2021年に向け再始動

あくまでプリンター中心に成長描くブラザー、2021年に向け再始動

2019.03.01

ブラザーが次の3年間に向け中期経営計画を発表

改めてプリンティング領域での勝ち残りを目指す

佐々木社長はブラザーらしさを強みとしたいと強調

ブラザーグループは、2021年度を最終年度とする中期経営戦略「CS B2021」を発表した。2021年度に、売上収益で7,500億円(新計画の為替レートを反映した2018年度見通しは6,650億円)、営業利益が750億円(同645億円)、営業利益率は10.0%(同9.7%)を計画する。また、今後3年間に500億円の成長投資枠を設定。産業用領域のさらなる拡大、新規事業の創出および育成などに投資する。

ブラザーグループが新中期経営戦略を発表した。会場になったのは愛知県名古屋市のブラザーミュージアム

中長期の計画、改めてプリンティング勝ち残りを打ち出す

ブラザー工業の佐々木一郎社長はCS B2021について、「会社の成長を中長期的に捉え、次の成長に向けた経営基盤に作り直すことが大切だと考えた。それが、今回の中期経営戦略の基本的な考え方になる」と説明する。「TOWARDS THE NEXT LEVEL(次なる成長に向けて)」をテーマに、まずは「プリンティング領域での勝ち残り」、そして「マシナリー・FA領域の成長加速」、「産業用印刷領域の成長基盤構築」、「スピード・コスト競争力のある事業運営基盤の構築」をあわせた計4項目に取り組むとした。

ブラザー工業 代表取締役社長の佐々木一郎氏

佐々木社長はCS B2021の計画にあたり、社員に「ブラザーの強みはなにか」と聞き取りをした。社員の答えは、「時代の変化に対応してきた柔軟性、きめ細かいニーズに対応する小回り力、コストパフォーマンスに優れた製品によるコスト競争力だという声が多かった」というが、一方で、「ブラザーの弱みはなにか」と聞くと、「スピードが落ちてきている。危機感が欠如している」という声があがったという。佐々木社長は、「これまでの強みが、弱みになっている。大企業ではないのに、社内に大企業病がはびこっている。もう一度、巻き直して、本来の強みを研ぎ澄まさないといけない」と危機感を感じたという。

そして、「あれもこれもやるのでなく、大事な課題に絞り、取り組んでいく」という決断をした。具体的には、「事業基盤の整備と、プリンティング事業での勝ち残り戦略をきちっとやっていく」ことを柱に据えた。そして、その先を見据え、「産業用領域を次世代の柱になるように伸ばしていく」ことを盛り込んだ計画とした。

CS B2021の骨子。計4項目に取り組む

プリンティング中心から複合事業企業への転換は?

ブラザーではかねてより、グループ全体に向けて「グローバルビジョン21(GV21)」という経営ビジョンを掲げており、その目標として、「グローバルマインドで優れた価値を提供する高収益体質の企業」、「傑出した固有技術によってたつモノ創り企業」、「“At your side.”な企業文化」の3つを掲げている。

今回発表した「CS B2021」は、同ビジョンの実現に向けたロードマップに位置づけられている。

CS B2021は、ブラザーの経営ビジョン「グローバルビジョン21」の実現に向けたロードマップの役割をはたす

このひとつ前の計画、2018年度を最終年としていた「CS B2018」では、プリンティング領域中心の事業構成から、複合事業企業体への変革を目指していた。それとともに、事業、業務、財務の3つの変革に取り組み、プリンティング領域での大幅な収益改善、産業用領域での売上げ成長を達成している。

CS B2018で掲げていた目標

だが佐々木社長は、「プリンティング事業領域では、デジタル化の進行によって、印刷機会が減少。これからもインク、トナーの純正率の減少が進む。また、所有から利用へと購買行動の変化、サービスニーズの多様化などが変化が見込まれる。産業用領域においても、省人化や自動化、トレーサビリティやカスタマイズ需要が高まっている。GV21の達成のためには、これまでに以上に踏み込んだ改革が不可欠であり、もっとスピードをあげて取り組み必要がある」と、事業環境の変化がいっそう著しいなかで、改革の手を緩める余裕は無いことを強調する。

顧客とつながるブラザーらしいビジネスモデルを提供

CS B2021における「プリンティング領域での勝ち残り」では、「ブラザーらしい新たなビジネスモデルへの転換を加速する」として、「売り切りではなく、顧客とつながるビジネスモデルモデルへの転換」を進めることで、ブラザーらしい価値を提供し続けながら勝ち残りの実現を目指すという。

個人およびSOHO向けには、大容量インク/トナーモデルや、消耗品のバンドルといったTCO(Total Cost of Ownership: 総所有コスト)に優れた製品提案により、本体収益を向上させる。消耗品を手軽に購入できるサービスを拡充することで、顧客が気をつかわずに済む自動発注サービスや、月額定額モデルの導入を推し進める。さらに、プリンターに連携するスマホアプリの充実など、新たな用途提案も行っていくという。

「ファーストタンク」搭載の大容量インクプリンター

また、中小企業向けには、チャネル・パートナーとの緊密な協業により、本体、サービス、消耗品を対象とした契約型ビジネスモデルを強化する。中小企業の顧客が求めるカジュアルなソリューションを提供することで、顧客とのつながりを強化するとした。佐々木社長は、「競合各社が強固な直販体制を敷いており、いまからそこで対抗していく必要はない」という考えから、「パートナーによる販売体制をさらに強化していく」と説明する。

上記のような新規ビジネスモデルによるプリンター販売台数の比率は、2018年度には15%ほどというが、これを3年間で倍増させて、2021年には30%に高める考えだ。

新ビジネスモデルの割合を倍増させる計画だ

そのほか、高付加価値を持った上位機種へのシフトも促す。A4が主力のプリンターメーカーというユニークなポジションを最大限に活用したOEM供給も拡大する。さらに、通信・電気配線用マーキングや製造業向けラベルプリンター事業の拡大など、特殊業務用途へのビジネスにも拡大の余地があるという。売上増加施策を出す一方で、事業コストを削減するため、生産設備の自動化を推進し製造原価を低減するとともに、生産拠点を最適化し、加えてバックオフィス業務の効率化にも取り組むとした。

ところで2021年度のプリンティング領域の売上収益は、計画では3,880億円を目指している。ただ2018年度の見通しが既に3,820億円であり、つまり売上規模では大きな成長を見込んでいない。これについて佐々木社長は、「いまのプリンティング事業は出来すぎている。プリントボリュームの減少や、互換インクの広がりを考えると、これ以上の増益は見込めない」と説明する。通信・プリンティング機器の市場が縮小するなか、売上規模は維持したい考えだ。ラベルプリンターなどの電子文具は、高いプリントボリュームの業務用途が見込まれることから「売上拡大を目指す」としている。

2021年度計画、プリンティング以外の3領域は?

「マシナリー・FA領域の成長加速」では、自動車や一般機械市場の強化による産業機器分野の大幅な成長と、省人化や自動化ニーズを捉えたFA領域の拡大を目指す。

「ボラタリティの高いIT市場では大きな成長を見込まず、自動車および一般機械市場で高い成長を見込む。ここでは、リソース増強や拠点拡充を計画している」(佐々木社長)という。

2018年度見通しでは550億円の売上収益を、2021年度には810億円に拡大させたい考えだ。

「産業用印刷領域の成長基盤構築」でも成長を再加速する。ブラザーはこの領域の事業に参入するため、ペットボトルやワインボトルなどのラベル印刷などに実績を持つ、産業用印刷の英国ドミノ社を買収、子会社化している。ドミノ社の製品およびサービスでの競合優位性を最大限生かし、新製品の投入と販売やサービスの強化、チャネル投資の強化を行い、大幅な成長を目指す。

英ドミノのインクジェットプリンター

特に、食品の賞味期限などを印刷するモノクロプリンティングのC&M(コーディング&マーキング)は、既存顧客とのつながりを基盤に、市場全体の成長を上回る伸びを目指す。物流分野でも、荷物に貼付するラベルを高速で印刷するといったニーズが広がっているほか、ダンボールへの直接印字や、印刷したラベルの自動貼付といった二次梱包領域でのニーズも生まれているという。

産業用印刷の市場規模は巨大で、成長にかける期待も大きい

一方で佐々木社長は、「ドミノでの開発が遅れているのが実態」という懸念もあるというが、「ブラザーとのシナジーによる開発体制の強化によって、開発スピードを向上させるほか、顧客のもとに出向いて、ニーズに則した開発を行うブラザーの手法も導入していく」と改善を目指す方針だ。

2018年度には680億円だったドミノ事業の売上収益は、2021年度には880億円を目指す。

そして最後に「スピード・コスト競争力のある事業運営基盤の構築」では、グループ全体の業務プロセスを抜本的に見直し、業務を効率化させるとした。RPAやAIの活用により、定型業務の自動化も進めるという。佐々木社長は、「より少ない人数で、短期間に、低コストで開発できるようにする。これにより人員を最適化し、新たな領域への人員を捻出していく。業務生産性を10%向上させ、総業務時間の10%にあたる約70万時間の創出を目標とする。これは原点回帰の取り組みとして重要なものになる」話している。

また、収益管理を強化し、きめ細やかにテコ入れや立て直し施策を実行していく姿勢もみせた。「利益が出ていないビジネスは、利益が出ているビジネスに隠れてしまって見えない。サブ事業単位で損益管理をすることで、不採算事業や低収益事業の収益改善につなげ、80億円の営業利益改善を目指す」とした。

ブラザーらしさへの原点回帰、成長につながるかに注目

2021年度の成長計画を発表する一方で、売上収益では約600億円の未達に終わった2018年度までのCS B2018を、佐々木社長は次のように総括する。

「600億円の未達は、為替影響でマイナス400億円、事業の落ち込みでマイナス150億円、会計制度の変更の影響でマイナス50億円という要因があった。プリンティング事業、産業機器事業、ドミノ事業は計画を上回ったが、他の事業により下回った」

「CS B2018では、できたこともあるが、積み残したこともある。積み残したことは、産業領域での成長加速、新規事業の仕込み、事業の選択と集中の徹底のほか、抜本的な業務プロセスの変革によるスヒード、コスト面での競争優位の確立だ。さらには、育成や成長機会の提供を通じたグループ全体での人材の底上げ、全社的な筋肉質化に向けた組織横断での最適人材体制の実現などもあげられる」

これらを新たな中期経営戦略のなかで解決していくことになる。

佐々木社長は、「新たな中期経営戦略は、成長を中長期的に考え、この3年間は、次の成長のために会社を強くしていく期間だと捉えている。そのためには、改革を、もっと早く、もっと踏み込んで進めていきたい」と意気込む。

ブラザーを取り巻く環境が厳しいのは確かだが、それを生き抜くためのCS B2021の中身は、ブラザーらしさへの原点回帰が柱だ。

基盤強化を前面に打ち出した中期経営戦略ではあるものの、売上収益および営業利益は3年間で2桁増を見込む、高い成長目標を組み込んだものになっている。果たして成長と基盤強化を同時に進めることができるかが、この3年間の注目点になりそうだ。

PlayStation Vitaが近日中に出荷完了、ソニー携帯ゲーム機に幕

PlayStation Vitaが近日中に出荷完了、ソニー携帯ゲーム機に幕

2019.02.20

PlayStation Vitaの製品出荷が近日中に終了する

もともと国内生産は2019年中に終了とされていた

後継機の情報が無い現状、ソニー携帯ゲーム機の歴史途切れる?

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の携帯ゲーム機「PlayStation Vita(PS Vita)」が、近日中に国内出荷を完了することがわかった。現在のところ後継機の計画などは発表されておらず、「PlayStation Portable(PSP)」から続いたソニーの携帯ゲーム機の歴史が途切れることになる。

PS Vita

PS Vitaは、2004年に登場したPSPの後を継ぐ形で、2011年12月17日に発売された携帯ゲーム機だ。幾度かのマイナーモデルチェンジをしながら現在まで販売を続け、途中には「PlayStation Vita TV」といった派生製品も製品化された。現行モデルのPCH-2000シリーズは2013年から販売されていたが、2019年中に国内出荷を完了することになった。ちなみに、従来機のPSPが国内出荷を完了したのは2014年で、その2年後にネットワークサービスを打ち切っている。

発売当時には、無線LANに加え3Gにも対応したオンライン機能、高画質な有機ELタッチパネル、据え置きゲーム機「Playstation 3」相当のゲームタイトルが遊べるなど、性能志向の携帯ゲーム機として話題を呼んだ。同じ年には任天堂から裸眼立体視による3D体験を特徴とした「ニンテンドー3DS」が登場しており、携帯ゲーム機市場の覇権を争うライバル関係であった。

携帯ゲームの主流がスマートフォンに移り変わって久しいが、当時のスマートフォンはアップルで言えば「iPhone 4S」で、Xperiaは「Acro」、GALAXYは「S II」といったあたりが最新機種であった。ゲームタイトルも「アングリーバード」などが流行っていた時代だ。ゲームタイトルの購入方法も、メモリーメディアや光学メディアに収録されたパッケージ製品を店頭で買う時代から、オンラインでデータを購入することが一般的な時代へと移り変わった。

プレイステーションのゲームが遊べるスマートフォン「Xperia PLAY」なども

PS Vitaが終了する一方、周辺では、PS5などとしてPlayStation 4の後継機の開発が進んでいるという観測が頻繁に流れはじめた。また、今年3月のゲーム開発者会議「GDC」ではGoogleがゲーム関連の発表を予定しており、その中身が家庭用ゲーム機のハードウェアではないかという噂も聞こえてきている。