「電力自由化」の記事

再生可能エネルギーの元祖、水力発電を見学してきた

再生可能エネルギーの元祖、水力発電を見学してきた

2018.06.06

再生可能エネルギーの重要度が高まっている。LNGや石炭を使った火力発電は高出力だがCO2排出の面で難があるし、原子力発電は事故発生時の対応がきわめて困難だ。2011年の東日本大震災のとき、ヘリコプターからの放水シーンをみて、歯がゆく感じた方もいるだろう。

そうした事情で、再生可能エネルギーの重要性が高まっているのだ。

では、再生可能エネルギーを使った発電にはどのようなものがあるのか。真っ先に思い浮かぶのが太陽光発電。ソーラーパネルが太陽の光を受けそれを電気に変換するのが基本的な仕組みだ。また、風力発電を想像された方も多いだろう。ブレードを風力で回転させ、その力で発電機を稼働し電気を生み出す。だが、ともに大きな問題がある。天候に左右されてしまうのだ。

左:浮島太陽光発電所。右:東伊豆風力発電所(提供:2枚とも東京電力ホールディングス)

しかも、社会的な問題もある。再生可能エネルギーで生じた電力は、電力会社が買い取るというFIT法が施行されたが、この収入を当て込んで太陽光発電に参入した業者のなかには、設備投資が行えず放置状態に陥ったところがかなりある。FITにより買い取った電力の費用が、国民に転嫁されるという不安もある。さらに、風力発電は騒音や振動、景観といった問題で、近隣住民の理解を得られないこともある。

期待されるバイオマス発電

一方、バイオマス発電が注目されている。これは、木材などを燃やすことで水蒸気を発生させ、その水蒸気でガスタービンを稼働させ電気を発生させる方法。原理は火力発電と同じだが、化石燃料を使わないことがポイントとなる。木材を燃やしたときにCO2は発生するが、そもそも空気中のCO2を吸収した植物を燃やしたガスなので、“プラスマイナスゼロ”という考え方、「カーボンニュートラル」に沿っている。

水殿水力発電所(提供:東京電力ホールディングス)

だが、問題もある。木材を乾かしチップ状にするには、コストと手間がかかる。さらに、林業に従事する人材が減少しているという、社会的な問題もある。ただ、再生可能エネルギーを活用した発電は、今後の命題であることには変わりない。

と、かなり前置きが長くなったが、古くから再生可能エネルギーを活用した発電がある。そう、水力発電だ。

群馬県渋川市に位置する佐久発電所

どのくらい古くからあるかというと、明治期に薩摩島津家が運用していたというのだから、相当に歴史がある。そして明治後期になると、数多くの水力発電所が建設された。廃止されたものもあれば、今でも現役で運用されているものもあるので、相当に息が長い。

今回、見学させていただいたのは、東京電力が保有する佐久発電所。昭和3年(1928年)に建設されたということだから、こちらもかなり古い。年齢で表すと90歳とのことだ。東京電力によると、細かい補修などは行われているが、基本的な構造は当時のままだという。

ちなみに、佐久発電所は、長野県の佐久市にあるわけではない。関東水力電気の創設者である浅野総一郎の妻の名、「佐久」からそう名付けられた。彼女は発電所の開設の1年前、昭和2年に亡くなられた。それを悲しんだ浅野が、発電所に佐久の名前を付けたといわれる。なお、佐久発電所は群馬県・渋川市にあり、長野県・佐久市とは無関係だ。

取水用の綾戸ダム

まず案内されたのは、利根川の水を堰き止める綾戸ダム。ダムと呼ばれているが、厳密にはダムではないらしい。日本の河川法では高さ15m以上の堰堤を有するものがダムと呼ばれるが、綾戸ダムは約14mなので厳密には“堰”なのだという。とはいえ、放水される瀑布のような景観は迫力満点。しかも、堰は約120mにわたって利根川を堰き止めている。

左:綾戸ダムの堰堤。上の通路は一般にも開放されている。右:堰堤から放水口をのぞむ。右端にみえるのは魚道だ

驚いたのは、この堰の上の通路は、関係者以外立ち入り禁止というわけではないこと。というのも、ダムができる前は「あかみち」(道路法が適用されない道。地図上で赤線により記載されるのでこう呼ばれる)だったそうだ。民家とその対岸にあるバス停を結ぶため、一般的な通路として使われている。そのため、通路両サイドの柵は高めに設計してある。

さて、この綾戸ダムで堰き止めた水が佐久発電所の源になる。約150トンの水を放水しているが、そのなかから47トンを取水。国土交通省に定められた水利権により、この量までしか取水できない。また、漁協や用水組合とも協議して放水量を調整している。

取水した47トンの水は約12kmの水圧鉄管(導水管)を通って、真壁調整池(真壁ダム)にためられる。こちらは堰が高さ20m以上あるので間違いなくダムだが、堰堤の大部分が地中に埋められており、高さは感じない。

ただ、野鳥にとっては「サンクチュアリ」ともいえるような環境になっている。こちらは一般人の立ち入りが禁止されており、導水管のうえにたまたまできた小島が、外敵から巣を守る役割も果たしている。調整池の設備は立ち入り禁止だが、至近に「愛宕山ふるさと公園」があり、池の景観や野鳥ウォッチングを楽しめる。なかには心霊スポットと思い込み、夜間に訪れる方もいるらしいのだが……。

左上:真壁調整池。右上:水圧鉄管の上にできた小島は、野鳥保護にもなる。左中:真壁ダムに設けられた水槽。右中:4基の水槽流入門がある。左下:ダムの堰堤。535.560mの長さとなっている。右下:真壁ダムの構造を示す解説図

地元のランドマークでもあるサージタンク

約75mのサージタンク。らせん状階段を歩くメディア陣をみれば、高さが伝わるだろう

さて、この調整池から水がさらに水圧鉄管をとおり、佐久発電所に送られるのだが、この途中に発電所最大の名所がある。それは高さ約75mのサージタンク。サージタンクは急激に水の流量が増えた際に一時保管場所になったり、取水量が低減したときに水を補ったりできる。水力発電の安定運用を担保する重要な施設なのだ。

そして、何よりも圧倒的な景観を生み出す。サージタンク周辺はサクラの名所で、時期になると満開の花と巨大な建造物という異色の組み合わせを楽しむ花見客でにぎわうそうだ。当日は、特別な許可を得て、サージタンクにのぼれるはずだったが、筆者は脚を痛めており見送った。ほかのメディアの方々が、嬉々としてらせん階段をのぼっていくのを下から見上げたのみだった。

左:サージタンクに続く水圧鉄管。両端はサクラの樹だ。右:昭和3年から昭和61年まで使われた水圧鉄管

このサージタンクから、発電所に水が送られる。「条管」と呼ばれる傾斜した導水管を水がとおり、水圧を利用して発電機を稼働。最大出力約76,000kWの発電所として機能している。

左:傾斜のある条管から水を引き込む。右:引き込んだ水で発電機を稼働させる。発電機は計4基

迫力を感じる水力発電所

これまで、火力発電、原子力発電は見学したが、水力発電の規模感は異質に感じた。取水用のダム、調整池、水圧鉄管、巨大なサージタンクといった設備が広範にわたり、それが昭和3年(サージタンクは昭和63年に再建)に造られたというのだから驚きだ。

近年、「ダムマニア」と呼ばれている方が増えていると聞く。「ダムカード」というカードをコレクションしたり、写真撮影を楽しんだりする方も多いそうだ。人がダムという巨大な建造物に魅せられる証だろう。なお、水力発電100%の「アクアエナジー100」という料金プランが設定された。加入者特典としてダム見学会などが行われるので、興味のある方はチェックしてみては。

日本初の大規模「ナッジ」! 環境省とエネルギー5社が実証事業を開始

日本初の大規模「ナッジ」! 環境省とエネルギー5社が実証事業を開始

2017.11.17

2017年11月6日から17日まで、南太平洋の島国フィジーを議長国として、国連気候変動会議「COP23」が開催された。パリ協定のルール作りを焦点に、いかにCO2排出を抑えるか、参加国の姿勢が試される場となった。

フィジーには大きな会議場がなく、代わりにドイツ・ボンで行われたCOP23は、正念場を迎えている。というのも、中国に次ぎ二酸化炭素排出量が多いアメリカが、会議を脱退しているからだ。会議参加国は、いかにパリ協定のルールを守るのか、その姿勢が試される。

そんななか、日本で注目のプロジェクトが発表された。それは、日本初の大規模「ナッジ」の実証事業による温室効果ガスの削減。このナッジとは「そっと後押しをする」という意味の英単語で、行動経済学の理論を活用し、社会・環境・自身にとって、よりよい行動を促すことを指す。

ちなみに、日本の目標は、2013年度を基準に2030年度までに26%の温室効果ガスを削減するというもの。2013年度に排出した温室効果ガスの1/4以上を削減するという、かなりハードルの高い目標だ。

では、この大規模ナッジはどのようなものなのか。まず、参加企業・団体は以下のとおり。環境省を筆頭に、住環境計画研究所、北海道ガス、東北電力、北陸電力、関西電力、沖縄電力、そして日本オラクルといった陣容だ。何よりもエネルギー5社が参加していることが心強く、温室効果ガス削減の目標達成に、現実味を帯びてくる。

ただ、ナッジは前述したとおり、消費者の背中をそっと後押しするというもの。CO2排出量が多い火力発電所を廃止するといった、エネルギーの根本を覆すようなものではない。生活者の行動変容やライフスタイルの変革を促すことで、持続的なCO2削減を図っていくものだ。ただ、多くの生活者が意識をして、エネルギーの消費低減を進めていけば、これに勝る省エネはほかにない。

エネルギー各社の取り組み

エネルギー5社。左から北海道ガス 前谷氏、東北電力 阿部氏、北陸電力 尾島氏、関西電力 彌園氏、沖縄電力 仲里氏

では、エネルギー5社の取り組みは、いかなるものか。

北海道ガスは、それぞれの地域事情に合わせたエネルギーマネジメントが重要とする。積雪寒冷地なので、エネルギー消費が多く、いかに家庭用の省エネ研究・開発を進めていくのがカギという。

東北電力は、やはり寒冷地なので効率的な暖房と給湯を考えるとしている。寒冷地仕様の「ヒートポンプ」の普及に努めたいと話す。北陸電力は、電気使用量の見える化や、直接家庭にうかがってアドバイスすることが大切とした。関西電力は、スマートメーターで先行しているので、それをさらに進めたいという。沖縄電力は、CO2排出係数が高いのを是正したいと語る。石炭に比べ、CO2排出量が比較的に少ないLNG火力発電の建設が急がれる。

環境省の水谷好洋氏は、「温暖化対策待ったなしといえる状況。温暖化対策の技術を開発するほか、生活者のライフスタイルを変えて、エネルギー消費を抑えなくてはならない」と警笛を鳴らす。

住環境計画研究所の中上英俊氏は、「44年間にわたってエネルギーの研究をしてきた。日本は相対的にみれば、暖房によるエネルギー消費は少ないが、家電製品に使われるエネルギー消費が多大」と指摘する。また、もっともCO2排出量が多いであろう東京電力、名古屋圏を主とする中部電力が今回のプロジェクトに名を連ねていないことを中上氏にたずねると、「両社とも、現在は準備段階。体制が整えば、このプロジェクトに参加する計画だ」と話す。

さて、環境省やエネルギー5社、住環境計画研究所といった企業・団体が今回のナッジ計画に参加するのはわかる。だが、なぜ日本オラクルが参加しているのだろうか。

実は、オラクルは2007年以降、世界10カ国、100社以上の電力会社に省エネ面で協力してきた。ユーティリティ事業部という部署が公共事業向けの技術を開発し、それを提供しており、約1,200万トンのCO2削減に貢献したという。日本オラクル 取締役 執行役 最高経営責任者 フランク・オーバーマイヤー氏は、「2030年に向けた日本の目標達成に協力したい」と意欲をみせる。

キャラクターで省エネを推進

CO2削減行動を促す空気の精霊「そらたん」

具体的な取り組みだが、以下の3つが主軸になるという。「日本の強いキャラクター文化」「高いモバイル使用率」「地域密着型の電力会社」だ。まずは、キャラクターになじみやすい文化に着目し、「そらたん」というキャラを生み出した。空気の精霊という設定で、省エネが成功したときには笑ったり、逆に失敗したときには怒ったりするキャラになるという。

まずは30万世帯の協力を求めるが、はたして、キャラを使った省エネ啓蒙がどこまで浸透するのか……。その取り組みを見守り、何か動きがあれば、それをまたレポートしたい。

矢継ぎ早に新事業に参入する東電が今度は“スマートホーム”領域へ

矢継ぎ早に新事業に参入する東電が今度は“スマートホーム”領域へ

2017.08.09

東京電力の動きがあわただしい。地図大手ゼンリンと手を組んだ「ドローンハイウェイ」構想や、大日本印刷、朝日新聞との共同によるデジタルサイネージなど(いずれも実証実験中)、電力供給以外の分野への進出が加速している。そして次は“スマートホーム”だ。

東京電力によるスマートホームのコンセプトは2種類。「おうちの安心プラン」と「遠くても安心プラン」だ。前者は東京電力エナジーパートナー(EP)とソニーモバイルによるもの。後者は東京電力EP単独によるサービス提供になる。

遠くても安心プランのスマホ画面。右は電力モニタリング機器を取り付けた配電盤

ザッと両サービスを説明すると、前者はIoTデバイスを用いて家族の帰宅や外出を検知。それをスマホアプリで確認できるというもの。後者は分電盤にエネルギーセンサーを組み込み、遠方で暮らす家族の家電使用状況をスマホに伝えるというサービスだ

イメージとしては“おうちの~”は、家を留守にしていても、子どもや家族がちゃんと帰宅したのか、あるいはいつ外出したのかをスマホでチェックできる。家族以外の人物によるドアの開閉、つまり犯罪のチェックにも役立ちそうだ。

一方、“遠くても~”のほうは、離れて暮らす家族の電力使用状況を確認できる。故郷の両親の家電使用状況をモニタリングし、「何かいつもと様子が異なる」と感じたら、TEPCOのスタッフに訪問確認を依頼することも可能だ。

新事業に参入する東電のねらい

このように、東京電力は本来の役割である電力供給以外のサービスに積極的に進出している。ただ、これらの新規事業にはある特徴がみられる。それは、ほとんどの新規事業でパートナー企業が存在するということ。

たとえば、ドローンハイウェイでは、地図データを豊富に持つゼンリンと組んだ。デジタルサイネージでは、コンテンツ産業である朝日新聞や大日本印刷とタッグ。そして、スマートホーム分野では、スマートフォンの実績で国内屈指のソニーモバイルがパートナーになった。単独での新規事業参入ではなく、その事業に知見のある企業と積極的にコラボしている。

そしてもうひとつ、これらの新規事業では、大がかりなインフラ整備が不要なものが多い。ドローンハイウェイでは、すでにある鉄塔を道しるべにするし、デジタルサイネージでは配電池上機器を活用する。今回のスマートホームは、各家庭にセンサーを取り付けるぐらいで、大がかりなインフラ整備は不要。スマホアプリについても、ソニーモバイルの領分である。

さて、東京電力がこれほど新規事業に積極的になっているのは、“福島への責任”という土台がある。電力供給は、確かに桁違いの売り上げが見込める事業だが、人口減という局面にあり、需要減が容易に想像できる。東京電力が仕掛ける新規事業は、ひとつひとつは小さくても、電力需要減を補うためには重要な役割を果たすかもしれない。福島復興のために、今後どのような新規事業が出てくるのか、注目したい。