「通勤」の記事

着席保証列車「ライナー」の特急化を進めるJR東日本

着席保証列車「ライナー」の特急化を進めるJR東日本

2019.05.28

特急へと置き換わっている「ライナー」

国鉄時代から運用されている古い編成

アナログ的なチケット販売から脱却を目指す

以前の記事で、主に朝夕の通勤時間帯に走る、特別料金を別途収受して着席を保証する列車について紹介した。そして、京王電鉄、東急電鉄など、それまで座席指定制または定員制の列車を運転したことがなかった「新規参入組」では、今後、こうした列車の拡充に積極的になるであろう一方、意外に寿命は短く、居住性にすぐれ経営効率上でも有利な、リクライニングシート装備の「座席指定特急」へと変化するのではないかと考察した。

「着席保証列車」はもう古い?

事実、JR東日本では、2019年3月16日のダイヤ改正で、「ライナー」と総称されてきた通勤客向けの着席保証列車のうち、中央本線の「中央ライナー(東京~高尾間)」「青梅ライナー(東京~青梅間)」を廃止。新たに全車座席指定の特急「はちおうじ」と、特急「おうめ」を設定した。総武本線の「ホームライナー千葉」も廃止となり、代わりに快速列車が増発されている。

運転最終日の「中央ライナー」。常に満席近い需要があった
特急「はちおうじ」「おうめ」に使われるE353系電車。「あずさ」「かいじ」と共通で運用される

後者の場合、利用率の問題から廃止し、前後を走る快速の混雑緩和を図ったとも考えられるが、「ライナー」の特急への置き換えは、これまでほかの線区でも段階的に実施されてきた。高崎線では、2014年3月15日のダイヤ改正で「ホームライナー鴻巣(上野~鴻巣間)」が、特急「あかぎ」と統合の上で、全車座席指定の特急「スワローあかぎ」に置き換えられた。同じ改正では東北本線(宇都宮線)の「ホームライナー古河(上野~古河間)」が廃止されている。常磐線ではさらに早く、1998年には各「ライナー」が特急「フレッシュひたち」(現在の「ときわ」)へと置き換えられた。

一部が高崎線の「ホームライナー鴻巣」の置き換え列車として設定された「スワローあかぎ」

国鉄時代からの歴史がある「ライナー」

朝夕のラッシュ時間帯に通勤客向けの座席指定特急を運転した初期の例としては、1967年に新宿~新原町田(現在の町田)間に設定された小田急ロマンスカーがある。そして東武や京成、西武などにも広まったのだが、いずれの会社も「特急列車の一種」という扱いは崩さず、現在に至っている。

小田急の通勤客向け特急、「ホームウェイ」。国鉄とは違い、あくまで特急として運転され続けてきた

一方、国鉄でもこの施策には注目し、夜間、ターミナル駅から郊外の車両基地まで回送していた特急用車両へ、特急券ではなく、300円の「乗車整理券」を定期券などのほかに購入すれば乗車できるようにした。これが「ホームライナー」で、1984年の上野~大宮間がその第一号であった。そして増収策として全国の都市圏へと広がり、JR各社に引き継がれた。ある意味「国鉄の遺産」でもある。

この乗車整理券とは、本来、年末年始や旧盆などの超繁忙期に、長距離列車の自由席への優先乗車順を指定するために発売されたもので、列車の定員分のみ発行されたことから、「ホームライナー」に転用して「必ず座れる」とした。その後、JR東日本は乗車整理券とは制度上分けて、ライナー券、ライナー料金の制度を整えた。だが、現在に至るまで、特急券とは別の規則に基づいて発売されている。つまり、「ライナー」は基本的に特急用車両を使用し、座席の保証と快適な居住性を提供するものの、あくまで特急とは別の列車として推移してきたのである。

しかし、乗車整理券、ライナー券は特急券ではないがゆえ、発売場所がわかりにくくなりがちという欠点があった。乗車駅、下車駅が限定される特殊な列車であるがためで、国鉄~JRの座席指定・発券システム「マルス」にも収納されなかった。

発売場所は、地域や路線によって、まさにまちまち。窓口、自動券売機(設置場所は改札外、改札内と両方のケースがある)、ホームでの係員による手売りもあって、日常的にその路線で通勤している客にしかわからない。常連以外には、いかにも利用しづらい状況が生じていた。また、JR各社サイドからみれば、1日数本の列車のための特別な設備や人手が必要であった。

東京駅の中央線ホームに設置された指定券(特急券)の券売機。以前は「ライナー券」の自動券売機であった

「ネット予約」時代への対応

ところが、特急列車の指定席のインターネット予約、チケットレス乗車が常識となってくるにつれ、事情が変わってきた。アナログ的なライナー券発売方法を採っていた「ライナー」は、勤務先からスマホで予約したいという需要に対し、応えられなくなってきたのだ。「中央ライナー」「青梅ライナー」のように、2002年よりインターネット予約、チケットレス乗車に対応した例(ただしJR東日本系のビューカード決済専用)もあったが、むしろ稀な存在に終わっている。

また、特急の利用促進を図って、短距離の自由席特急料金を引き下げる傾向も国鉄末期から強まってきており、ライナー料金との差が小さい、または同額になるケースが目立っていた。例えば、東京~八王子間47.4kmの自由席特急料金は510円であるが、「中央ライナー」のライナー料金も510円だった。車両は同じで、座席が指定される、されないの違いだけであった。

こうした状況に基づいて、「ライナー」と特急との一本化を図ろうというJR東日本の判断が出てきても、自然なことと思われる。中央本線においては、特急「あずさ」「かいじ」と「中央ライナー」「青梅ライナー」に共通で使われてきたE257系電車が、E353系電車へと全面的に置き換えられるタイミングに合わせて、特急へ変更されたのである。

「『ライナー』の特急への統合」は、「(同じ路線を走る特急と併せて)インターネット予約・チケットレス乗車の導入、および割安なネット予約料金の設定による利用客の誘導」「全車座席指定化、割高な車内料金の設定」と表裏一体の施策である。このJR東日本の方針は「スワローあかぎ」運転開始時から一貫しており、今改正において中央本線へも拡大されたということである。

なお、本論から多少離れるが、全車座席指定化については、国鉄時代から自由席特急券を持たない、「特急への飛び乗り客」への対応に手を焼き、膨大な人手が割かれていたという事情に基づく。実質的な値上げになったとしても、利用客にはあまり同情できない。車内料金の設定も、同様である。

筆者が実見した例では、深夜帰宅時の特急の自由席5両に車掌が5人も乗務して、車内改札と自由席特急券の発売に追われていたというものがある。現代の日本の社会において、人件費が必要経費に占める割合がいかなるものか。それは理解しなければならないところだ。ちなみに、その特急はその後、廃止された。需要はあったであろうが経費がかかりすぎ、収益にはつながらないという、私企業としては常識的な判断が下されたものと思われる。

通勤時間帯の普通・快速列車はきちんと運転されている。特急や「ライナー」はあくまで付加価値として提供されているものだ。

「湘南ライナー」の特急化で完結か

国鉄時代に「通勤5方面」といわれた、東海道、中央、高崎・東北、常磐、総武の各方面のうち、現在「ライナー」が残っているのは東海道本線方面だけである。「湘南ライナー」および新宿発着の「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」は運転本数も多く、今も需要は大きい。

しかし、同じ東海道本線を走る特急「踊り子」「スーパービュー踊り子」は、近い将来の車両取り替えが予定されている。「湘南ライナー」に充当される主力車両は、「踊り子」と同じ185系電車であるから、当然、同時に取り替えられよう。そして、これまでのJR東日本の方針からすれば、やはり全車座席指定の特急に変更されるものと思われる。これで、同社の着席保証列車に対する施策は、特急への統一によって完結をみることになる。

特急「踊り子」や「湘南ライナー」に使われる185系電車。近い将来に別の車両に取り替えられる予定

夕方・夜の下り「湘南ライナー」に乗車するには、現状、東京駅と品川駅にある専用自動券売機でライナー券を購入しなければならない。しかし特急化後は、世の趨勢に合わせてインターネット予約が中心となり、かつ「マルス」でも予約可能となって、全国の「みどりの窓口」でも特急券が購入できるようになる。

例えば、今は仙台から東京まで東北新幹線を利用し、東京駅で「湘南ライナー」に乗り換えて大船まで帰宅したいと思っても、ライナー券が購入できるかどうかは、東京駅に到着し「湘南ライナー」が発車するホームまで行かなければわからない。それが特急化されれば、仙台駅で一括して特急券を購入することもできる。制度ひいては発売システムの統一の効果としては、このようなこともある。

特急型電車のホームドア対応問題に、西武鉄道が出した秀逸な解答

特急型電車のホームドア対応問題に、西武鉄道が出した秀逸な解答

2019.03.08

輸送障害を防ぐためのホームドアが多くの駅に!

ホームドアが駅に設置できないとある事情とは?

通勤車両と異なる特急の乗降扉に対応するための工夫

西武鉄道の新型特急電車「Laview」の斬新な外観

西武鉄道の新型特急電車001系「Laview」は、大胆な外観や内装が驚かれ、このところメディアを賑わしている。斬新な発想に基づいてデザインされた車両であり、もちろん注目が集まるのも自然なことだ。2019年3月16日の営業運転開始が待たれる。

「未来志向」を感じさせる電車ではあるが、ただ単に見た目が素晴らしいというだけの特急ではない。最新型であるからには、現在の鉄道に要求されるあらゆる事項をクリアしていることは当たり前である。

公共交通機関に対して利用客がいちばん求めていることは、もちろん目的地までの安全かつ安定した輸送である。しかしながら首都圏においては、しばしば輸送障害が発生しているのが実情だ。その原因の多くが人身事故である。そのため、対策として「ホームドア」の整備が積極的に進められている。

特急型電車がホームドア整備のネック!?

国土交通省では「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」が繰り返し開催され、中間とりまとめが2016年12月に行われている。それによれば、一日の利用客数が10万人を越える駅に対し、ホームドアを優先的に整備することとしている。「車両の扉位置が一定など」整備条件を満たしている場合は、原則として2020年度までに整備を完了することが目標だ。

ただ、ホームドア整備のいちばんのネックは、実は車両により一致しない扉位置。すべての電車の扉の位置がそろっている東京メトロ・丸ノ内線などでは、比較的早くホームドア整備が完了したのに対し、西武鉄道をはじめ小田急電鉄、東武鉄道、あるいはJR東海道本線などではホームドアの整備が遅れている。それは、特急型電車の存在が大きく影響しているからである。

すべての電車が同じ形式、同じ扉位置のため、ホームドアが速やかに整備できた丸ノ内線

そもそも特急型電車は、長距離旅行向けに乗降扉部分と客室とが分離している構造が一般的であり、乗降扉も車端部に極力寄せて客室を広く取るのが、どの会社でもふつうの設計であった。西武鉄道の「Laview」も例外ではない。しかしそれでは、同じ線路を走り同じホームに発着する、片側に3~4カ所に乗降扉がある通勤型電車と、扉の位置が合うはずがない。

特急型電車の扉位置を合わせる工夫

では、特急型電車を運行している各社は、ホームドア整備に際してどのような対応策を採ったのだろうか。西武鉄道の場合、既存の特急型電車10000系「ニューレッドアロー」が老朽化による取り替え時期を迎え、新型車を投入するこのタイミングで手を打った。

「Laview」については、筆者は乗降扉の位置に最初から注目していた。ホームドア対策が施されていないはずがないからだ。果たして各号車とも、もっとも車両の端になる車端部には乗降扉を配置していなかった。少し内側に寄せることによって、片側4扉の通勤型電車のいちばん車端部に近い扉に対応するホームドアの開口部に、「Laview」の扉位置を合わせたのだ。

「Laview」の乗降扉は、車端部から離されて配置されている

報道公開の際、筆者は乗降扉が車端部からどのぐらい内側に寄っているか、大まかにではあるが実測してみた。すると、車両の端から約135cmの位置に、乗降扉開口部の外側があった。乗降扉の幅自体は85cmである。

一方、すでに池袋駅に設置されているホームドア(通勤型電車のみが発着するホームにある)では、こちらも電車の車端部からホームドアの開口部まではおおむね120cm。ホームドアの開口部自体の幅は145cmである。

目立たない点ではあるが、これは重要な改良である。この特急が走る西武池袋・秩父線では、所沢駅などで通勤型電車とホームを共用することになる。将来、ホームドアが整備される際、「Laview」の扉位置が妨げになることはない。

乗降扉が内側に寄った分の車内スペースは、曲線状にデザインされた黄色い内壁だけが目立つエントランスとなっている。内壁と外壁の間には機器類が収納されているとのことだが、限られた空間の使い方としては、いささかもったいなく思えるほどだ。これも、ホームドアにより駅ホームの安全を保つために必要なスペースとして、割り切られたのである。

「Laview」では、もったいないとも思えるスペースを設けることで、扉の位置を調節した

各社が工夫をはじめた「ホームドア」設置への条件整備

こうした構造の特急型電車としては、2018年に営業運転を開始した、小田急電鉄70000形「GSE」が先鞭をつけている。この車両も車端部には乗降扉がなく、一部の号車では本来、客室内に設ければ便利なはずの荷物置場を、わざわざ客室外の車端部に置くなど、車内設備の配置を工夫して将来的なホームドア整備に対応している。

小田急の新型特急電車「GSE」も、車端部ではなく車両内側に乗降扉を設けている

東武鉄道の500系「Revaty」は2017年にデビューしたが、この特急型電車は、3両編成を組み合わせて運用することを前提にしていることから、両先頭車は運転台の直後に扉がある。中間車はトイレなどの隣に乗降扉を配して、巧みに車端部への乗降扉設置を避けている。

東武鉄道の「Revaty」も乗降扉の位置を工夫している

では、既存の特急型電車で、まだ取り替え時期に達していないものは、どう対応するのだろうか。より幅広い範囲の乗降扉位置に対応する「ワイドドアタイプ」あるいは、「昇降式(ロープ式)」のホームドアを採用することも一案だ。前者は通勤型電車でも扉の位置や幅が異なるものが走っている東京メトロ東西線、後者は片側3扉車と4扉車が混在している、JR西日本の路線で採用されている。

もっと簡単な解決方法を編み出したのが、東京メトロ・千代田線だ。この線には小田急電鉄から直通の特急ロマンスカー60000形「MSE」が乗り入れてきている。MSEは2008年のデビューと新しく、最近も増備が行われた車両である。だが、「ホームドア対策」は施されておらず、乗降扉もおおむね車端部ぎりぎりにある。

一方、千代田線も混雑が激しい路線であり、ホームドア整備は喫緊の課題だ。そこでどうしたかといえば、特急に限り、普通列車とは停止位置を少しずらして、「ホームドアと場所が一致する乗降扉のみ開ける」ことにしたのだ。一部の乗降扉、およびホームドアのみを開閉させる技術は、まったく難しいものではない。

ホームドアに合う位置の扉だけ開閉することにした、千代田線内の小田急「MSE」

MSEのこの施策は、2018年10月20日より実施された。もちろん、すべての乗降扉を開くことはできないが、通勤型電車に合わせたホームドアを設置した駅でも、10両編成の特急の場合は6カ所で乗降可能となったのである。なお、千代田線内で扉を限定した乗降方法は、乗り入れ当初から行われていた。今回は、乗り降りできる号車が変わったということだ。

こうした各社のホームドア対策を観察してみると、やはり西武「Laview」の設計が後発だけに、スマートに思えてくる。鉄道会社の看板である特急型電車と通勤型電車の共存方法は、まだこれから各社の大きな課題となってくるだろう。

少子高齢化と東京膨張の狭間で、東京メトロが輸送力増強「総仕上げ」へ

少子高齢化と東京膨張の狭間で、東京メトロが輸送力増強「総仕上げ」へ

2019.01.15

巨大な鉄道網、東京メトロの大規模開発は一段落

方南町駅を6両編成に対応させ都心直結を便利に

10両編成の乗り入れで利用客増を見込む北綾瀬駅

東京メトロは巨大都市東京の大動脈であり、1日平均の輸送人員数は約742万人(2017年度)にも達している。これは、埼玉県の総人口に匹敵する。そのため、電車の編成も長大で、JR・大手私鉄の路線と相互直通運転を実施している路線の多くでは、20m級車両の10両編成で朝夕の混雑に対応している。保有車両数は、JR各社を除く私鉄では日本最多となる2,728両にも及ぶ。

西武線内を走る10000系。東京メトロは東京近郊のJR、私鉄の多くと相互直通運転も実施し、莫大な数の利用客を日々輸送している

ただし、2013年に副都心線と東急東横線の相互直通運転が始まり、2016年に有楽町線小竹向原~千川間の連絡線建設というビッグプロジェクトが完成して以来、新線の建設や編成の長大化といった、大規模な施設改良は一段落した。輸送人員数はまだ増加傾向だが、高度経済成長期のような急激な増加はもはや昔語り。むしろ「安定期」に入った感もある。 

今後、少子高齢化が進むことは間違いない状況にあって、いまだ膨張を続ける東京とはいえ、長期的には人口減少、ひいては輸送人員が減少へ転じることを見据えた経営計画が必要となるだろう。朝夕の混雑緩和を図る、ホーム増設などの工事は随所で続いているが、一方で新線建設の要望や構想は存在するものの、しばらくは具体的な着工に至ることもないと思われる。

方南町駅の改良工事が完成間近

全長200mにも達する電車が地下を行き交い、どの時間帯に乗っても混雑しているような印象がある東京メトロだが、実はわずか3両編成で運転されている線区もある。丸ノ内線中野坂上~方南町間の支線(以下、方南町支線)と、千代田線の末端区間、綾瀬~北綾瀬間(以下、北綾瀬支線)だ。

これらの線区は長年、短い編成での折り返し運転が行われてきた。東京都内であるから、決して利用客数は少なくないものの、池袋~荻窪間や綾瀬~代々木上原間(以下:本線)と比べれば、のんびりとした雰囲気がある。

しかし現在、この2線区においても本線と同じ長い編成で運転できるよう、改良工事が進捗しており、2019年に完成予定となっている。東京メトロとしては、輸送力増強のための駅改良工事は、これで当面一段落するといえよう。

方南町支線には、中野坂上・中野新橋・中野富士見町・方南町の4駅があるが、前者3駅は丸の内線本線と同じ6両編成列車の発着が可能。問題は終点となる方南町駅で、3両編成しか発着できないホームとなっている。そのため、都心部へ向かうには中野坂上駅での乗り換えが必要だった。ただ、中野富士見町~方南町の間には、東京メトロの中野車両基地が存在しており、丸ノ内線用車両の拠点となっている。この拠点を生かし、朝夕のラッシュ時のみ、中野富士見町駅発着の新宿・池袋方面直通列車を設定していた。

丸ノ内線の「本線」と方南町支線が接続する中野坂上駅。支線から本線列車にホーム対面で乗り換えでき利便性は高いが、直通列車には敵わない

方南町駅も3両編成がぎりぎりという訳ではなく、現在より多少の延長をすれば6両編成が発着できそうなホームの長さであった。そのため、方南町駅の改良工事を行い、完了すれば終点駅(方南町)から新宿、赤坂見附、銀座といった都心部へ乗り換え不要でアクセスできるようになる。

ホーム延伸が完成間近の方南町駅。1月26日までは2本の線路のうち1本を閉鎖して工事が行われている

新型車両の投入が方南町駅改良の契機

そして、方南町駅改良には新型車両2000系の投入が大きく関係していると思われる。2000系は既存の02系(1988~1996年製)をすべて置き換える新製車で、2018年度中の営業運転開始が予定されている。

方南町支線専用の3両編成も02系であるが、6両編成とは仕様が若干異なり、2本連結して本線で使うという訳にはいかない。そのため、定期検査や故障などに備えた予備車も3両編成、6両編成それぞれに準備する必要がある。方南町支線専用の3両編成は6本あり、これは1996年製の最終増備車。そのため、廃車時期はまだ先とも考えられるが、新型車両の投入が本線と支線の編成を統一する最良のタイミング。これにともない、6両編成に対応した駅に改修され、支線専用の3両編成は廃止となる。

3両から10両へ「増結」される北綾瀬支線

一方、北綾瀬支線は、わずか2駅2.1kmの路線。もとは綾瀬車両基地へ出入りする引き込み線を旅客線へ転用したもので、1979年に開業した。末端区間であるため、本線区間のような需要が見込めないとのことで、こちらも3両の専用編成(現在は東西線から改造転用された05系4本)が用意され、綾瀬~北綾瀬間の折り返し運転にだけ使われている。

綾瀬駅に停車中の北綾瀬行き。東西線から転用された3両編成によるワンマン運転が実施されている

広大な車両基地用地のため、北綾瀬駅開業当初、駅周辺は都市化がさほど進んでいなかった。だが、それだけ開発余地が残っていたということになり、しかも支線のもう一方の起点、綾瀬駅は千代田線の始発列車が多いこともあって、次第に大規模マンションなどが建った。それにともない、北綾瀬支線の利用客も右肩上がりで増えていった。

この利用客増に対応するため、本線用の10両編成列車に北綾瀬~綾瀬間の輸送も担ってもらおうという着想で、北綾瀬駅の10両編成対応工事が開始された。3月16日の千代田線ダイヤ改正と同時に10両編成運転が始まる予定だ。

10両編成への対応工事が進む北綾瀬駅。一部の改装は完了している
ホーム延伸のほか、改札口の増設工事も行われている。ホームが長くなることへの対応だ

ただ、綾瀬駅を始発終着にしている10両編成列車がすべて北綾瀬駅発着になるわけではない。現在、朝のラッシュ時間帯(7~8時台)の綾瀬駅始発は13本あるが、そのうち5本が北綾瀬駅始発に変更されるとのことだ。なお、もっとも通勤需要が高い平日朝の7時台には、北綾瀬駅始発が7本設定されている。北綾瀬支線は複線なので、もう少し本数を増やせそうだが、車両基地から綾瀬駅始発として回送される列車と共用となるため、ままならないという側面もある。

また、方南町支線とは異なり3両編成列車が廃止されるわけではない。こちらは従来通り3両での北綾瀬~綾瀬間の折り返しがそのままとなる。車両面では、新型製造といった大きな変更はなさそうである。

ただ、将来的には輸送力を強化する必要性はあるだろう。北綾瀬周辺は住宅地としての人気が高まっていているし、都心方面への始発駅として北綾瀬駅の価値は上がることになる。JR常磐線亀有駅、つくばエクスプレス青井駅、六町駅を利用している層の一部が北綾瀬へ流れる可能性も考えられる。都市開発の面でも、注目のエリアとなることは間違いなさそうだ。