「試乗記」の記事

アルファロメオ好きに朗報! 「ジュリア」と「ディーゼル」は相性抜群

アルファロメオ好きに朗報! 「ジュリア」と「ディーゼル」は相性抜群

2019.05.23

「ジュリア」のディーゼルエンジン車が日本上陸

まずは価格に注目! お手頃な理由は?

試乗で納得した“スポーツディーゼル”の走り

アルファロメオの「ジュリア」にディーゼルエンジン搭載車が加わったのは大きなニュースである。先にSUVの「ステルヴィオ」に追加されたことで、エンジン自体のインパクトは若干薄れるが、ジュリアの選択肢が増えたことはカスタマー視点で見ても嬉しい。

アルファロメオの「ジュリア」にディーゼルエンジン搭載車が登場(画像はガソリンエンジン搭載車。ディーゼル車の外観はガソリン車の「スーパー」と変わらない)

まずは価格に注目! ガソリン車とほぼ同等?

FCAジャパンは2019年4月、ジュリアのディーゼルエンジン搭載車「2.2 ターボ ディーゼル スーパー」(2.2 TURBO DIESEL SUPER)を発売した。“スポーツディーゼル”の愛称が走りへの期待をあおってくるが、まず注目しておきたいのはプライスだ。「ディーゼル スーパー」の556万円は、ガソリンエンジンを搭載する「スーパー」よりは13万円高いものの、その1クラス上に位置する「ヴォローチェ」よりは31万円安くなる。

「ジュリア」の価格は受注生産のエントリーモデル「2.0 TURBO」が446万円、「2.0 TURBO SUPER」(スーパー)が543万円、「2.2 TURBO DIESEL SUPER」(ディーゼル スーパー)が556万円、「2.0 TURBO VELOCE」(ヴェローチェ)が587万円、「2.0 TURBO Q4 VELOCE」(ヴェローチェQ4)が597万円、「2.9 V6 BI-TURBO QUADRIFOGLIO」(クアドリフォリオ)が1,132万円となる

何が言いたいかというと、ジュリアにおけるディーゼル車のポジショニングに注目して欲しいのだ。通常、ディーゼルエンジン車は開発と生産にお金がかかるため、ガソリン車よりも割高になるパターンが多い。一概に全てのディーゼルエンジン車に当てはまるわけではないが、「コモンレール式」(燃料を噴射する仕組み)のパテント料やEGR(排気ガスを再循環させる装置)、ATS(排出ガス後処理装置)などの追加パーツ代もそこに含まれるからだ。

ドイツ御三家を例に取ってもその傾向は強く、BMWあたりはガソリン車とディーゼル車の価格差が顕著だ。なので、割高のディーゼル車を買う場合は、長く乗ってランニングコストで元を取ろうというような計算をすることになる。

が、ジュリアは違う。ディーゼル車をガソリンの同グレードと比較しても、価格はそれほど変わらない。ちなみに、ステルヴィオのディーゼル車は617万円で、ラインアップの中では最もリーズナブルなモデルとなっている。

ディーゼルエンジン車は割高になりがちだが、「ジュリア」の場合、同グレードのガソリンエンジン車と比較してもそれほど変わらない

もちろん、そこにはインポーターであるFCAジャパンの戦略と世界市場の変動がある。

例えば、その背景にはヨーロッパでのディーゼルエンジン離れが見てとれる。ドイツ系メーカーの環境数値における不正改ざん事件が尾を引き、ヨーロッパの国々でディーゼル人気がガタ落ちしているのだ。また、それを機にヨーロッパ各都市で厳しい規制も始まっている。

昨年、ボルボジャパンがプレゼンテーションで使った資料にその変化が記されていた。ヨーロッパ18カ国のディーゼル比率の減少をまとめたもので、2017年4~6月は市場に対し45%だったものが、2018年4~6月は37%にまで落ち込んでいたのだ。さらにいえば、ピークとされる2011年には56%に達していた年間市場比率は今年、30%台まで減少する見込み。もはや、どこで下げ止まるのかは見通せない状態だ。

そこで、各メーカーはヨーロッパ圏外でのディーゼル車比率を増やす算段を取り始めた。つまり、日本にも好条件でディーゼル車が導入されるようになったのだ。低価格が実現したのは、そんな事情もあってのことだと推測される。

「ジュリア」にディーゼルは…合う!

では、この2.2リッター直列4気筒直噴式ターボディーゼルを実際に走らせた印象を少しお伝えしよう。

まず、ディーゼル特有の振動と音だが、振動はほとんど気にならない。軽量化されたクランクケースの剛性は高く、バランスシャフトも最適化されている。それに、エンジンマウントやブラケットも進化しているようだ。よって、かつてのようなトラック然とした振動はなく、実にスマートに吹け上がる。ただ、ディーゼル特有のエンジン音は若干残り、窓を開けるとボンネット越しに耳に入ってくる。もちろん、それでも最近はやりのガソリン3気筒ユニットレベルなので、そこまで気になるものでもない。

ジュリアのディーゼルエンジンは最高出力190ps(3,500rpm)、最大トルク450Nm(1,750rpm)を発生する

走り出しは高トルクが効いていてグイッとクルマを前へ押し出す感じ。トルクが前面にくるので、イメージ以上に大きなエンジンを動かしている気になる。「小さいエンジンを上まで回して……」という昔のアルファの4気筒エンジンとは別路線だが、それでもアクセルに対するレスポンスが良いので、そこは“スポーツディーゼル”と呼ぶにふさわしい仕上がりだ。それに、ハンドリングも軽快である。

そうした高トルク特性は高速道路でキラリと光る。1,500回転付近での高速巡航は快適そのもので、1クラス上の高級車を走らせている感覚。余裕のパワーだ。よって、ドライブモードはエコモード的な「a」で十分。アクセルを深く踏み込まずに、快適&省エネのロングドライブを堪能できる。

高いトルクを発生するディーゼルエンジンの特性は、高速道路を走ると大いに堪能できる

ちなみに、「d」「n」「a」のドライブモードは味付けがハッキリ区別されている。なので、追い越し用の中間加速が必要な時は「d」にすればOK。ギアが落ち、6,000回転マックスの回転計をしっかり使って加速してくれる。

そんなジュリアのグレード別に見た販売(登録)構成比率だが、2018年でみると、「スーパー」が第1位で40%を占めていた。続いて「ヴェローチェ」のFR、「ヴェローチェ」のQ4という順位だ。といっても、ヴェローチェQ4に迫る数の「クアドリフォリオ」の存在も見逃せない。なぜなら、ディーゼルがデビューした2019年3月単月では、ディーゼル比が15%となり、各モデルが横並びに近くなったことで、クアドリフォリオがトップの座に躍り出たからだ。まぁ、この辺はスペシャルなモデルゆえ、デリバリーのタイミングもあるので、一概に1番人気とは言えないのだが……。

それはともかく、ディーゼル車の登場で、ジュリアファンがざわついているのは確かだ。オールドスクールなアルファロメオのイメージから、このクルマの登場に拒否反応を持つ方もいるだろうし、スポーツディーゼルの走りに納得する方もいるだろう。個人的には、後者であることは間違いない。しばらく走らせていると、ディーゼルであることを忘れるほど自然なエンジンフィールに酔いしれる。メーカーも、そこにたどり着いたからこそ発売したのだと思う。クルマづくりではデザイン、サウンド、フィーリングを大事にするイタリアメーカーだけあって、ディーゼルでもしっかりとそこにこだわっている。

ランボルギーニでオフロード? 乗って試した「ウルス」の実力

ランボルギーニでオフロード? 乗って試した「ウルス」の実力

2019.05.14

ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」をオフロードで試乗!

でこぼこ道や曲がりくねった道…「ウルス」なら大丈夫!!

ありえないシチュエーションを体験させるランボルギーニの意図

3,000万円を超えるランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」で、オフロードを走ってみたらどうなるのか。通常では、ほぼ100%使用しないと思われる状況だが、ウルス本来の性能は発揮してみたい。こうした疑問と希望にしっかりと答えてくれるのが、このメーカーの良いところだ。栃木県にある自動車走行試験施設「GKNドライブライン ジャパン プルービンググラウンド」で開催されたウルスのオフロード試乗会に参加し、その実力を探ってみた。

ランボルギーニ「ウルス」のオフロード試乗会に参加!(撮影:原アキラ)

2018年に日本デビューしたウルス。スペインの闘牛に非常に近い外観を持つ大型牛「ウルス」から採られたその車名は、闘牛の世界に由来するという同社の伝統を引き継ぐ。ボディーサイズは全長5,112mm、全幅2,016mm、全高1,638mm、ホイールベース3,003mm、最低地上高158mm~248mmという堂々たる体躯を誇り、乾燥重量は2,200キロに達する。

フロントに搭載する4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、最高出力650ps(478kW)/6,000rpm、最大トルク850Nm/2,250~4,500rpmを発生。8速ATを介して4輪を駆動し、停止状態から時速100キロまではわずか3.6秒で加速する。最高速度は時速305キロ、時速100キロからの制動距離は33.7メートルという高性能車だ。

今回の試乗メニューは、オンロードで加減速やハンドリングをテストした後、オフロードでうねり路、登降路、水路、砂利の一般道走行を行うというもの。スタッフによるインストラクションを終えると、直ちにプログラム開始となった。

まずはオンロード、猛然たる加速と水際立った制動力を堪能

まずは全長1,800メートルの舗装された外周路を使用したオンロードだ。急加速・急減速のテストでは、200メートルほどの直線で時速130キロまで加速し、フルブレーキをかける。重さ2トンを超えるウルスのボディが、わずかなノーズダイブを伴って平然とストップする様は圧巻。前440mm、後370mmという、世界最大級の直径を持つカーボンブレーキがいい仕事をしている。

オンロードでの急加速とブレーキングは、さすがランボルギーニといったところ(撮影:原アキラ)

次は裏手の直線に移動し、ストップ状態からアクセルペダルを床まで踏みつけて全開加速を試した。650psのV8が炸裂し、目の前のデジタルメーターは、スピードを表示する数字が読みきれないほどの速さで増え続けていく。たった500メートルほどの間で時速215キロを超えるという、まさに圧倒的な加速力を確認してブレーキを踏んだ。

続いて走ったのは、18~85R(「R」とは曲率のこと)の大小のコーナーが連続する全長1,036メートルのハンドリング路。講師を務めるレーシングドライバーの高木虎之介氏がスーパースポーツカー「アヴェンタドール SVJ」を駆り、それをウルスで追っかけるという趣向だ。

ハンドリング路では高木虎之介氏が駆る「アヴェンタドール SVJ」を「ウルス」で追いかけた(撮影:原アキラ)

高木氏はこちらの腕を見極めながら車速を調整してくれるものの、かなりのハイペースでグイグイと進んでいく。ここでは、高い着座位置による視界のよさ、低速域からの圧倒的なトルク、カーボンブレーキによる車速コントロールのしやすさ、後輪駆動(4WS)を備えた4WDシステム、ロールをほとんど発生させないアクティブエアサスなどの相乗効果により、スポーツカーに負けない速さを十分に体験できた。

急坂も水路もいとわない超高級車「ウルス」

次は「Tamburo」(タンブーロ、クルマの設定を変更するための装置)で設定を「TERRA」(イタリア語で「大地」の意)に合わせ、オフロードコースに侵入する。高さ15センチメートルのでこぼこが連続するうねり路をウルスは、きしみ音など一切出さずにさらりと通過し、ボディの堅固さをきっちりと示してくれた。

「タンブーロ」で砂利道などに適した走行モード「TERRA」を選び、オフロードへ(撮影:原アキラ)
うねり路をさらりと通過する「ウルス」(画像提供:ランボルギーニ)

次は、滑りやすい土の急坂の上り下りだ。50%勾配(約30度)という壁のような斜面の途中で、一旦停止した後に再スタートするのだが、その際、タイヤは空転することなく、ジワリと車体を押し上げる。また、下りでは「ヒルディセントコントロール」(急坂を下る際、速度を自動で抑制してくれる機能)が効くので、ブレーキを踏むことなく、一定速度を保って降下できた。大きなボンネットのせいで直前の路面が見えなくても、コンソールのボタン1つでフロントカメラが作動する。その画面を見れば、自分の行きたい方向が確認できる。

壁のような斜面で一旦停止後に再スタートしても、タイヤが空転することはなかった(画像提供:ランボルギーニ)

最後は深さ30~40センチメートル、長さ30メートルの水路へ突入する。3,000万円のピカピカの新車でジャブジャブやるのは少し気が引けたが、めったに体験することのできないシチュエーションだ。波を蹴立てて、ウルスはあっという間に走破してしまった。

少し気が引けたが、「ウルス」で水路に突入した(画像提供:ランボルギーニ)

手の込んだ試乗会を開催するランボルギーニの考えとは

その後は施設外の一般道へ移動。イタリア人スタッフたちは、どうしたら面白い試乗ができるのかを常に考えていて、そのルートは近くを流れる思川の堤防道路や、田畑の中を抜けるあぜ道などが用意されていた。普段なら農作業の軽トラックなどが利用するような道路を、土煙を上げながら大型SUVのウルスが編隊を組んで駆け抜けていくのだからたまらない。運転する我々もそうだが、それを見た地元の人たちもびっくりしたはずだ。

一般道でも走りは全く安定していて、不自然な車体の動きは一切感じられなかった。「ここを曲がるの?」とちょっと心配になるような狭い右左折時でも、後輪操舵の4WSが効果を発揮して、一発で曲がり切ってしまうほど小回りが利くのには感心した。

一般道を疾走する「ウルス」。狭い道の右左折時には意外なほど小回りが利いた(画像提供:ランボルギーニ)

走り終えたウルスは当然、ホコリで真っ白け。ボンネットを開けてみると、エンジンルームまでもがそんな状態だった。それを全く気にせず、走りを楽しませてくれたランボルギーニのスタッフには大感謝だ。

オフロード試乗会を終えた「ウルス」のエンジンルーム(撮影:原アキラ)

同社はユーザー向けにこうしたイベントを随時開催している。例えオーナーになったとしても、普段は絶対に走らない今回のような場所を体験すれば、クルマに対する信頼度も一気に高まる。そして、メニューをこなした後は、修了証まで手渡されるのだ。

修了証まで用意してあるのには感心した(撮影:原アキラ)

ウルスの価格はスタンダードで2,779万9,200円。荒れ地を走るための走行モードである「TERRA」や「SABBIA」(イタリア語で「砂」の意)がオプション装備となっているほか、ボディカラーをはじめとするオプション品は数限りない。購入する場合、好みを100%反映すると、車両価格は3,000万円を大きくオーバーするだろう。それでも、ウルスは世界中で人気車種になっている。ランボルギーニは生産拠点のサンタアガタ工場(イタリア)を2倍の16万平方メートルに拡大し、新たに従業員を500人規模で雇い入れたそうだ。

三菱自動車の新型「eK」に試乗! 日産が開発も光る“三菱らしさ”

三菱自動車の新型「eK」に試乗! 日産が開発も光る“三菱らしさ”

2019.05.13

三菱自動車の軽ハイトワゴン「eK」シリーズに試乗

日産「デイズ」とはキャラが違う! 「eKクロス」に注目

1クラス上のコンパクトカーとも勝負できる完成度

三菱自動車工業は2019年3月28日、軽ハイトワゴン「eK」シリーズをフルモデルチェンジした。eKシリーズは4世代目となるが、三菱自動車と日産自動車が提携したことにより、先代から「デイズ」という姉妹車を持つことになった。最新型の「eK」と「デイズ」も姉妹車であることは同様で、同じタイミングで新型へとシフトしている。今回は新しいeKに試乗し、日産デイズでは味わえない“三菱らしさ”を感じてきた。

三菱自動車の新型「eK」シリーズ

日産が開発、三菱が生産する姉妹車

まず、この軽自動車の成り立ちを簡単に説明しよう。三菱自動車と日産は、軽自動車の共同開発を決め、2011年に合弁会社「NMKV」を設立。新会社のNMKVを中心とした共同開発体制を敷き、先代のeK/デイズを2013年に誕生させた。

共同開発モデルの第1世代(eKとしては第3世代、デイズは初代)は、三菱自動車が開発・生産を一手に引き受け、同社の50年以上にわたる軽自動車開発のノウハウをつぎ込んだ。しかし、2代目(eKとしては4代目、デイズは2代目)となる今回の新型車では、この体制を変更。企画・開発を日産、生産を三菱自動車、マネージメントをNMKVと、それぞれの強みをいかした分業体制をとった。

今回のデイズは、日産にとって初の軽自動車開発となった。同社はプラットフォーム、エンジン、トランスミッションを刷新し、自動運転レベル2相当の安全運転支援機能を採用するなど、デイズ/eKを全面的に進化させた。

今回の主役である三菱の新型eKシリーズには、標準車の「eKワゴン」とクロスオーバーモデルの「eKクロス」の2タイプがある。標準車「eKワゴン」は、フロントグリルや一部の装備など異なる点もあるが、基本的には「デイズ」の標準車と同じクルマだ。エンジンが自然吸気仕様のみである点も同様。価格は129万6,000円~150万6,600円となっている。

標準車の「eKワゴン」。基本的には日産「デイズ」と同じクルマだと思っていい

一方の「eKクロス」は、三菱独自仕様の外観を持つモデルだ。「パジェロ」や「アウトランダー」など、同社のSUVと通低するエッセンスを備えたモデルだといえる。こちらのクルマには自然吸気エンジンに加え、ターボエンジンの設定もある。どちらもマイルドハイブリッド仕様となるのも特徴だ。価格は141万4,800円~176万5,800円。

三菱独自仕様の外観を持つ「eKクロス」。SUV風味の全く異なるフロントマスクを採用しており、ヘッドライトはLEDとなる。さらに、オプション設定のルーフレールも専用アイテムだ

ボディサイズはシリーズ共通で、全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,640mm(2WD車)となる。先代比だと全高が20mm高くなっているが、変化はそれだけでなく、ホイールベースが+65mmの2,495mmまで伸びている。これは、エンジンルームのコンパクト化による変更点で、その分を全てキャビンの拡張に使うことにより、先代よりも広々とした車内空間を実現した。また、不足が指摘されていた小物入れを充実させるなど、機能性も高めた。

新型「eK」シリーズはホイールベースが伸びた分、車内空間が先代よりも広々としている

パワートレインも新しくなった。新開発の660㏄3気筒DOHCエンジンを搭載しており、自然吸気仕様とターボ仕様の設定がある。自然吸気仕様は最高出力52ps/6,400rpm、最大トルク60Nm/3,600rpmを、ターボ仕様は同64ps/5,600rpm、100Nm/2,400~4,000rpmをそれぞれ発生する。

eKクロスが搭載するマイルドハイブリッドは、2.0kW/40Nmの小型モーターとリチウムイオン電池を組み合わせたもの。減速時にエネルギーを回生し、加速時には最大30秒間、モーターでアシストを行う。トランスミッションは全車CVTとなるが、こちらも新開発。変速のステップ制御を加えることで、加速時のエンジン音を抑え、静粛性を高めている。シリーズ全車で4WDを選べることもお伝えしておきたい。燃費消費率は標準車が1リッターあたり21.2~18.2キロ、eKクロス・ハイブリッドが21.2~18.8キロ、eKクロス・ハイブリッドターボが19.2~16.8キロ(全てWLTCモード値)となる。

「eKクロス」ターボ仕様のパワートレイン。ターボは力強い加速が魅力だが、モーターアシストを組み合わせることで効率も高められている

軽でもニーズの高まる先進の安全運転支援機能も充実した。衝突被害軽減ブレーキ、踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警告および車線逸脱防止支援機能、オートマチックハイビームを含む「e-Assist」は、全車が標準装備。さらに、高速道路同一車線運転支援技術「MI-PILOT」(マイパイロット)をオプションとして設定(エントリーグレードを除く)している。これは、全車速対応ACCと車線中央維持ステアリングアシスト機能を組み合わせた自動運転レベル2の機能で、日産の「プロパイロット」と同等のシステムだ。

フロントガラスの中央上部には、マイパイロットで使う単眼カメラが付いている

試乗では、eKワゴンの上級グレード「G」(2WD車)とeKクロスの「G」(自然吸気エンジン・4WD)および「T」(ターボエンジン・4WD)の3台が用意された。つまり、eKシリーズの主要な仕様に全て触れることができたわけだ。

後席は大人が足を組める広さに

まずはスタンダードなeKワゴンから。すっきりとしたフロントマスクに象徴されるように、万人受けを狙った仕様だ。抑揚あるボディサイドパネルやガラスエリアなど、デザインを工夫することで、シャープさと安定感のある雰囲気に仕上げている。軽自動車の持つチープさが薄まった印象だ。

「eKワゴン」のフロントマスクはすっきりとした印象。ヘッドライトはハロゲン式だ

インテリアはライトグレーを基調とした明るいもの。ダッシュボードは2段式かつ立体的な造形で、見た目の質感も高まっている。シートにはペラペラ感がなく、しっかりとした腰がある。座った時、見た目以上に細部まで気配りをしているなと感じた。

「eKワゴン」のインテリア。ダッシュボードは立体的な造形となっている。中央のナビゲーションシステム(オプション)は9インチのものを装着。軽自動車でもナビの大型化への対応が進むのはイマドキだ

次は、三菱色が強い「eKクロス」の外観を見てみる。新世代の三菱車が取り入れる「ダイナミックシールド」デザインのフロントマスクは、新型「デリカ D:5」と似ているが、よりコンパクトにまとまっている。SUVのような躍動感とスポーティさをより強まった感じだ。見た目は結構カッコよく、そして若々しい。eKワゴンだと全7色のエクステリアカラーも、eKクロスだと2トーンを含む全11色に増える。

「ダイナミックシールド」デザインを取り入れた「eKクロス」のフロントマスク。上部の細長い部分はLEDポジションランプで、中央の縦長の部分がLEDヘッドライト。下部はフォグランプとなる
ちなみに、これが「デリカ D:5」のフロントマスクだ。グリルとライトの配置が共通していることが分かるだろう

車内空間は、ホイールベースが65mm伸びたことにより、後席が格段に広くなった。シートにはリクライニングとスライド機構が備わる。最後方まで席をスライドさせると、前席と後席の間の距離は710mmまで拡大する。なんと、足が組めるくらいの空間が生まれるのだ。この広さは日産の大型セダン「フーガ」に匹敵すると聞いて納得した。しかも、床面がフラットなので、定員の大人2人が座っても十分に快適だ。

後席には、ゆったりとしたスペースが広がっていた(写真はシート位置を最後方までスライドさせてある)

後席を最後方までスライドさせると、ラゲッジスペースはコンパクトになってしまうが、それでも奥行きは385mmあり、2Lのペットボトルが入った段ボールを収めることができる。さらに2WD車であれば、ラゲッジスペースの下に収納が確保されているので、床板を外せば、ベビーカーを収めることが可能だ。ファミリーカーとしての使い勝手も十分に考慮されている。

ラゲッジスペースは後席を後方にスライドさせるとコンパクトになるが、ファミリーカーとしての使い勝手は十分に考慮されている。(写真のシート位置は最後方)。また、スライドは左右座面一体となるが、左右の背もたれは独立して倒すことができる

結局のところ、日産のクルマなのか?

皆さんにとって気になるのは、新型eK/デイズでは、企画開発と製造で明確に役割が分かれているところだろう。

開発を担った日産が全てにおいて主導権を持ち、三菱はクルマを製造しただけ。そう考えるのは、実は早合点といえる。日産と三菱は、企画段階で新型車の目標についてじっくりと話し合った上、開発中もさまざまなステップで、三菱サイドが確認を行ったという。三菱では、新型車の開発に充当するはずの人員・コストを抑制できた分、新しいeKのキャラクターやデザインを追求することができた。その中で生まれたのが、全く新しいeKクロスだったのである。

三菱自動車がeKクロスを生み出せたのは、先代eKの経験を踏まえた結果でもあった。先代eKを発売した時に三菱は、軽自動車で人気の高いエアロパーツを装着したカスタム仕様「eKカスタム」を展開。これは日産の「デイズ ハイウェイスター」に相当するモデルだったのだが、ハイウェイスターの人気とは裏腹に、eKカスタムはあまり支持されなかったという経緯がある。そこで三菱は今回、同社らしいデザインのバリエーションを開発しようと考え、SUV風のeKクロスを作り出したのだ。

「eKクロス」からは、日産風のカスタム車ではなく、自分たちらしいクルマを作り出そうとした三菱の意図を感じる

三菱は、ただ単にデザインの異なるeKを投入したのではない。バンパーやグリルに加え、コストの掛かるヘッドライトもeKクロスは専用設計なのだ。特に、大型の縦型LEDヘッドライトの開発には、搭載位置のスペースの関係で苦労したという。ただ、その努力は報われており、新型車の受注の約6割がeKクロスだそうだ。

「ワゴン」と「クロス」、どっちを選ぶ?

実際に「eKワゴン」と「eKクロス」を乗り比べてみると、eKワゴンからは素性のよさを感じた。何より、ボディがしっかりしているのだ。乗り心地もよく、静粛性も高かった。ホンダの新型「N-BOX」のように、イマドキの軽自動車は一皮むけて、リッタークラスのコンパクトカーの脅威となっているが、ekも明らかに、そのラインを狙っているようだ。

次に、モーターアシスト付きの自然吸気エンジンとターボエンジンのeKクロスを比較してみたが、ターボ車でなくとも十分、リッタークラスのコンパクトカーと勝負できそうに思えた。街中で時速60キロくらいまで加速するなら、自然吸気エンジンで十分。ekクロスにはモーターアシストが付いているが、これが割といい仕事をしているようで、加速力には若干の余裕を感じた。

この加速力には、新しいCVTも大いに貢献している。新CVTでは、加速時のエンジン音の抑制を目的に、無段変速のCVTでありながら、わざとATのようなステップ変速制御を行う。つまり、エンジンパワーを最も効率よく引き出すというCVTの魅力を最大限に発揮することをあえてやめているのだが、それは、フルにエンジンパワーを引き出す時に限った話。実は、市街地走行で使う時速60キロくらいの領域であれば、新CVTの方がエンジン回転数をより高くまで使えるので、加速はよくなるというのだ。

もちろん、加速のよさや高速巡行時の静粛性はターボが1枚上手だが、自然吸気エンジンも十分に作り込まれている。軽自動車の特性をしっかりと押さえたクルマ作りだ。最も魅力的なのは、真っすぐ走らせやすいところだろう。これは、新開発の骨格によりボディ剛性が高まった恩恵といえる。さらに、電動パワーステアリングには、センター位置に戻る制御などの改良を加えてあるそうだ。

ボディ剛性の向上や電動パワーステアリングの改良などにより、「eK」はまっすぐ走らせやすいクルマに仕上がっている(画像は「eKクロス」)

もちろん、先進運転支援機能のマイパイロットも高速道路で試した。この機能を起動すると、クルマは同一車線内を設定した速度内で走行し、前走車に合わせて、加減速および停車まで行ってくれる。軽自動車には贅沢な装備といえるが、ボディから鍛えてあることもあり車線内の中央維持走行は安定していて、試乗区間で機能が停止したのも、大きなカーブの1カ所だけ。しかも、機能停止から復帰まではスムーズだった。これなら、緩いカーブと直線を中心とする高速道路であれば活躍してくれそうだ。もちろん、速度の低い渋滞時なら、問題なく前車を追従してくれるだろう。軽自動車でも、たまに遠出をする人なら選ぶ価値はありそうだ。

eKシリーズの全体的な評価としては、軽自動車を開発したことのない日産が、かえって軽自動車の常識にとらわれず、1クラス上のコンパクトカーまで意識した作り込みを行った恩恵が、随所に感じられるクルマに仕上がっていた。軽ハイトワゴンを検討するなら、候補に入れたくなる1台だ。

オススメは、やはりeKクロス。SUV風で、最低地上高もeKワゴンと変わらず、「なんちゃって」ではあるものの遊び心があるアクティブなスタイルは、乗る人を元気にしてくれ、所有欲も満たしてくれるだろう。基本的な安全運転支援機能は標準装備として付いてくる。あとは先進のマイパイロットを付けるかどうかだが、そこは自身の乗り方を念頭に置いて検討すべきだろう。