「自動運転」の記事

実用化は近づいた? DeNAと日産が取り組む「無人タクシー」の進捗状況

実用化は近づいた? DeNAと日産が取り組む「無人タクシー」の進捗状況

2019.03.22

DeNAと日産が無人タクシーサービス「イージーライド」を準備中

2度目の実証実験でこだわったのは「サービスの無人化」

本格サービス開始は2020年代? DeNAの先行者利益とは

DeNAと日産自動車は、自動運転車両を用いた無人タクシーサービス「Easy Ride」(イージーライド)の開発を進めている。現在は2度目の実証実験を終えた段階だが、実用化のめどはたったのだろうか。実際に車両に試乗し、DeNAの担当者に話を聞いてきた。

「イージーライド」の実証実験には、日産自動車のコンパクトバン「e-NV200」をベースとする自動運転車両が使用された

路肩のクルマを難なくよけた実験車両

「イージーライド」はスマートフォンのアプリで目的地を入力すると、無人運転車両が迎えに来てくれて、そこまで連れて行ってくれるというサービスだ。実際には「仮想停留所」のような複数の乗降ポイントが設定されていて、目的地と利用者の場所に応じて、人とクルマの“待ち合わせ場所”が指定される。クルマに乗るまでとクルマから降りて目的地に到着するまでには、少し歩く必要がある。そういう意味で、イージーライドはタクシーとバスの中間のような交通サービスだといえるかもしれない。

DeNAと日産は2018年3月、同サービスの実用化を目指して1度目の実証実験を実施した。今回は、2度目の実証実験が終わったタイミングで、イージーライドの進捗状況を知る機会を得た。2019年3月20日のことだ。

スマホアプリで行きたい場所を指定すると、無人運転車両が近くの「仮想停留所」まで迎えに来てくれる

DeNAらは今回、約40組のモニターにアプリを使用する権限を付与し、イージーライドの実証実験を行った。モニターは実験の期間中、営業時間内であればいつでも、何度でもイージーライドを無料で使うことができた。実験の場所としては、神奈川県の横浜駅周辺から中華街、関内などを含むエリアを設定。初回の実証実験も横浜駅の周辺で行ったが、今回の実験では乗降地点が初回の約4倍となる15カ所、ルートの総距離が約7倍の28キロと範囲が拡大している。

実験の結果としては、モニターの約9割が、期間中に1回以上はイージーライドを利用したとのこと。子供の送り迎えに利用する女性など、中には日常的に同サービスを利用したモニターもいたそうだ。

実証実験に参加したモニターと同じように、筆者もイージーライドを使ってみた。日産のグローバル本社(横浜市西区)で目的地「中華街」を設定すると、日産のコンパクトバン「e-NV200」をベースとする実験車両が2~3分で到着。シートベルトを着用して「GO」と書かれたボタンを押すと、スライドドアが自動で閉まってクルマが走り出した。

実験なので運転席に人は座っていたものの、私の見た限り、ドライバーが自らの手でハンドルを切った様子はなかった。右左折はもちろんのこと、少し右側にふくらんで路肩にとまっているクルマをよけるなど、難しそうな運転も自動で難なくこなす。20分ほどの道のりだったが、少なくとも乗員に不安を感じさせるシーンはなかった。移動中、車載モニターとスマホアプリには、周囲にある店舗やイベントなどの情報が表示されていた。

車載モニターには地図、現在地、目的地までのルートと所要時間、周辺の情報などが表示されていた

DeNAが追求する「サービスの無人化」

DeNAが2度目の実証実験で追求したのは「サービスの無人化」だ。例えば、人によるサポートなしで利用者が安全に乗降できるかや、同乗スタッフがいなくても車内の安全は確保できるかといった部分を実験で確かめた。

2018年3月に行った1度目の実証実験では、乗降地点に人員を配置し、利用者の乗り降りをサポートしていた。今回の実験では乗降を有人でサポートしていないが、この点は地味なようで、実は画期的なのだという。

乗降地点の多くは公道の路肩に設定されているので、例えばクルマから降りる時、利用者は歩行者や自転車などとぶつかってしまう危険性がある。これを無人化するには安全性をいやがうえにも高める必要があるが、DeNAでは乗降地点の選定プロセスで徹底的に安全・安心の検証を行ったそうだ。

前回の実証実験で「リーフ」だった実験車両が「e-NV200」に変わった理由の1つは、利用者の安全な乗降に「e-NV200」のスライドドアが適していたからだ。開いたドアが歩行者・自転車にぶつかるリスクは、確かにスライドドアの方が低い。

スマホでクルマ側のQRコードを読み取るとスライドドアが開く

無人、つまりはスタッフの同乗なしで車内の安全を確保するため、DeNAは遠隔監視のための管制センターを用意している。車内をモニタリングし、不測の事態にも備えているのだ。

「無人運転」について考えると、どうしてもクルマ側の課題である「自動運転技術」が頭に浮かんでしまうが、実際に無人運転タクシーを実用化する際には、サービス面の無人化が欠かせない。せっかく無人で動くクルマが完成しても、サービスを担当する人員の同乗が必要なのでは意味がない。DeNAが「サービスの無人化」にフォーカスして実証実験を行ったのも、それがイージーライドの商用化に必要なプロセスだったからだ。

乗降地点を選定した経験も先行者利益に

DeNAと日産は、2020年代早期にイージーライドの本格サービスを開始するという目標を掲げているが、実際に無人のクルマが日本の道路を走れるようになるのは、いつになるか分からない。法律の整備に加え、完成度の極めて高い自動運転車両が必要になる上、社会受容性の高まり、つまり、無人運転車両が公道を走行することに対する世間の理解が不可欠だからだ。

ただ、DeNAらが実証実験を通じて蓄えた無人タクシーサービスに関する知見には重要な意味がある。それらは、全ての条件が整って無人タクシー事業に乗り出す際、先行者利益として還元されるものだからだ。

例えば、無人タクシーの乗降地点を設定する時に、どんなところに気をつけなければならないか、どんな行政機関と話をしておく必要があるかなどといった知見は、誰かが急に獲得できるものではない。こういった点が実証実験を通じてクリアになってきたことは、将来的に先行者利益の1つになるとDeNAの担当者は話す。確かに、イージーライドを全国展開する時、この知見は役に立つだろう。

横浜駅周辺のように、人もクルマも自転車も多い場所で実証実験を行って得た知見は、将来の全国展開に活用できるはずだ

イージーライドを全国展開する場合は、地域ごとに地元の事業者と手を組む必要があるとDeNAは考えているそうだ。その際の具体的な座組みは決まっていないとのことだが、協業相手としては、人の安心・安全な移動で長年の実績を持つ地域のタクシー会社などが候補になるという。「ドア・ツー・ドア」の有人タクシーは、プレミアムなサービスとして無人タクシーと共存するイメージだ。

そして、気になるのはイージーライドの価格だが、サービス内容からいくと、「タクシーよりは安価に設定する必要がある」というのがDeNA担当者の考え。今回の実証実験では、利用者に「いくらならイージーライドを利用するか」をアプリ上で聞いたそうだが、具体的に、どんな回答が集まったかは教えてもらえなかった。

無人タクシーには、路線バスや鉄道など、地域の足となっていた交通インフラがなくなってしまった地域で高齢者が利用するといったように、社会問題の解決につながる可能性がある。例えば高齢者の利用料は割引くなど、ぜひとも使いやすい価格設定にはこだわってもらいたいところだ。

自動運転時代の自動車保険とは? 損保ジャパン日本興亜の戦略

自動運転時代の自動車保険とは? 損保ジャパン日本興亜の戦略

2019.02.21

自動運転モビリティ導入支援に参入した損保ジャパン日本興亜

自動車保険のディスラプションはすでに進行中

自動運転の実用化・普及で変わる自動車保険の形

各自動車メーカーがこぞって開発に取り組む自動運転技術。一部のクルマにはすでに、自動運転と呼んでも差し支えないような機能が搭載されてもいる。そう遠くない将来、クルマは人の手を借りずに動く乗り物へと姿を変えるかもしれない。

自動運転技術の普及は、自動車にまつわるさまざまなビジネスに変革を促さずにはおかないだろう。その1つが、自動車保険だ。事故のリスクがゼロに近くなっていく時、自動車保険会社がどのようなビジネスモデルを構築するのかには興味があった。

そんな中、大手保険会社の損害保険ジャパン日本興亜(以下、損保ジャパン日本興亜)は2月15日、国内全域の自動運転サービス実証向けとして、ティアフォーおよびアイサンテクノロジーとインシュアテックソリューション「Level IV Discovery」を共同開発すると発表した。保険会社×自動運転で何が生まれるのか、3社の会見を取材してきた。

左から順に、ティアフォー・加藤真平氏、損保ジャパン日本興亜・西澤敬二氏、アイサンテクノロジー・加藤淳氏の3社代表が業務提携書に署名。「Level IV Discovery」の共同開発がスタートした瞬間だ

自治体での自動運転実用化を支援する国内初の事業

自動運転技術は交通事故のない社会の実現や過疎地域における移動手段の確保など、現代社会が抱えるさまざまな課題を解決する技術として注目されているが、実用化に向けた実証実験には多くの時間とコストがかかるので、思うように進んでいないのが現状だ。

そんな状況の中、自動運転システムを持つティアフォーと高精度な3次元地図データの作成技術を持つアイサンテクノロジーの両社は、これまでに国内外で100カ所を超えるエリアで実証実験を実施している。その実績に加えて、大規模な走行データとノウハウを蓄積できていることも両社の強みだ。

一方、1,300万件の自動車保険契約者を抱える損保ジャパン日本興亜には、交通事故に関する膨大なビッグデータがある。このビッグデータをティアフォーらの自動運転技術と組み合わせてドライブシミュレーターを開発し、高度なデジタルリスクアセスメントを搭載した自動運転実証プラットフォームの構築を目指そうというのが今回の提携だ。

2025年の完全自動運転を見据えたロードマップ

そのほか、本プロジェクトで損保ジャパン日本興亜は、自動運転の実証実験にかかる事故の補償も担当する。具体的には、自動運転車両の走行環境データ分析に基づく専用保険商品の開発および提供を行なっていく。

会見に出席した損保ジャパン日本興亜の西澤社長は、今回の取り組みが「損保ジャパン日本興亜グループが目指す安心・安全・健康のサービスの進化に向けた、モビリティ領域においての大きな挑戦」だと位置づける。

先を見越した損保ジャパン日本興亜の一手

しかし、なぜ保険会社である損保ジャパン日本興亜が、このタイミングで自動運転の実用化に向けた取り組みに加わったのかは疑問だ。自動運転の実用化・普及によって事故が減少した場合、必然的に自動車保険の必要性も下がっていくように感じるからだ。

この疑問に対し、西澤氏からは2つの回答が得られた。まず1つ目が、「自動車保険のディスラプション(破壊)は、すでに始まっているという認識を保険会社は持たなければならない」ということだ。

将来、自動車保険に起こるであろう変革を見据えて語る西澤氏。まるで、自動車保険業界への警鐘を鳴らしているように感じられた

各自動車メーカーからは、すでにレベル2に該当する部分自動運転(加速・操舵・制動のうち、複数の操作をシステムが行う機能のこと)を搭載するクルマが市場投入されている。例えば、カメラやセンサーを使って、前を走るクルマや車線などを感知し、その情報に基づいて加減速、操舵をクルマ側で行う機能などが、レベル2の範疇に入る。

西澤氏によると、レベル2搭載車が登場している現時点において、すでに事故は減少傾向にあり、特に追突事故については激減している状態にあるという。クルマの買い替えが進み、公道を走るレベル2搭載車の割合が増えていけば、比例して事故も減少していくことになる。つまり、自動車保険のディスラプションは、完全自動運転車の登場を待つことなく、現在進行形で進んでいるのだ。

損保ジャパン日本興亜が自動運転に取り組む2つ目の理由は事業領域の拡大だ。“保険の先へ挑む”というコーポレートメッセージを打ち出していることからも分かるとおり、損保ジャパン日本興亜は保険事業にとどまらず、周辺のサービス領域にまで事業を拡大しようとしている。今回の取り組みもその一環であり、自動運転時のさまざまなリスクや、ユーザーが感じる心理的な不安などをケアできるサービスを開発していく考えだという。

クルマを持たない時代に見出す自動車保険の可能性

自動運転が普及すれば、“保険を何に紐づけるのか”という議論も活発化するはずだ。現在、保険はクルマにかけるものだが、自動運転技術を取り入れたカーシェアリングのようなサービスが一般化したとき、保険をクルマにかけるのか、それとも人にかけるのか、あるいは全く別の方法があるのか、現時点では見通しづらい部分がある。

この点について西澤氏は、あくまで個人的な見解と前置きした上で、「もしかしたら、自動車保険そのものが、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の中に組み込まれる時代がいずれは来るのかもしれない」との考えを示した。この見立てが正しかった場合、自動運転実証プラットフォームを構築しようとする今回の取り組みは、同社にとって強みとなる。プラットフォームに参画すれば、その枠組みに損保ジャパン日本興亜のサービスを組み込むことができるからだ。

今後の自動車業界で間違いなく起こる、自動運転を軸とするイノベーション。その中で、自動車保険はどのような役割を担うことになるのか。今回の取り組みは、その答えを考える上で1つの道しるべとなるかもしれない。

2035年、NYの五番街は… ソフトバンク孫社長が語った「ファンド20年戦略」

2035年、NYの五番街は… ソフトバンク孫社長が語った「ファンド20年戦略」

2019.02.08

ソフトバンクGが決算会見、孫社長が90分熱弁した

6000億円の自社株買いで株価はストップ高に

急落したNVIDIA株は全売却「差し引きでほとんど影響なし」

ソフトバンクグループ(SBG)が2019年3月期第3四半期の決算説明会を開いた。通信子会社の「ソフトバンク」(同社内ではソフトバンクKKと呼称)を切り離し、純粋な投資会社になったSBGとしては初の会見だ。

ソフトバンクグループの決算会見に登壇した代表取締役会長兼社長の孫正義氏

この会見では孫正義社長がビジョンファンドを中心とした投資戦略について熱弁を振るい、大規模な自社株買いも発表した。会見の翌日、2月7日の東京株式市場ではSBGの株価はストップ高となった。果たして孫社長は次の20年をどのように描いて見せたのだろうか。

6,000億円の自社株買いを実施へ、翌日はストップ高に

企業の決算会見では、売上高や営業利益といった数字に関心が集まりがち。SBGの業績を見ると、第1〜第3四半期累計で売上高が5%増、営業利益が62%増となっている。ソフトバンク創業以来、最大となる営業利益を達成している点など、十分な内容の決算だ。しかし、孫社長は「細かい数字は重要ではない」と言い切る。

2018年度第1〜第3四半期の連結業績

孫社長が数字を重視しないと言い切るのはなぜか。その理由として、通信子会社のソフトバンクKKが上場したことにより、SBGの立ち位置が変わったことを指摘したい。この件によりSBGは、複数の事業会社を傘下に保有する純粋持ち株会社としての性格を強めたのだ。

純粋持ち株会社のSBGと、保有する株式

ここで孫社長が改めて示したのが、SBGの純有利子負債だ。ソフトバンクは17兆円の借金を抱えているように見えるが、約6兆円の現預金と子会社の負債約7兆円を差し引くとSBGの負債は約4兆円(3.6兆円)に過ぎないと主張する。一方で、SBGが保有する株式は約25兆円なのに対し、時価総額は約9兆円にとどまる。

SBGの純有利子負債は約4兆円と主張

孫社長は「SBGの株価は安すぎる」と再び主張し、自社株買いを発表。ソフトバンクKKのIPOで調達した資金の3分の1にあたる6,000億円をSBG株の購入に充てるという。ソフトバンクKKの株価は公募価格の1,500円を割り込んでいる状態が続いていることから、こうした手法には会見でも疑問の声が上がった。

これに対して孫社長はソフトバンクKKの潤沢なキャッシュフローや今後の増配を挙げ、「利回りは上場会社で最も高い水準だ」と反論した。これを受けた翌2月7日にSBGの株価は急騰し、その日のストップ高を付けた。株式市場からの賛同は得られた形となった。

NVIDIA株は全売却、続く「AI群戦略」

こうして純粋な投資会社になったSBGが、次の20年のビジョンとして描くのが「AI群戦略」だ。「AI」をインターネットに続くパラダイムシフトとして位置付け、世界中のベンチャーに出資。過半数を取るのではなく20〜40%の出資により筆頭株主になることで、強い群れを作る戦略だ。

有望なAIベンチャーの群れを作る「AI群戦略」

孫社長は、たとえば自動車では、かつてニューヨーク5番街を通る馬車がT型フォードに置き換わったように、2035年にはAIによる自動運転車が主流になると予想する。高価な自動運転車を真っ先に買うのはタクシーやライドシェア事業者になると見て、UberやDiDiなどに出資している。すでにSBGの出資先は世界のライドシェア客の90%をカバーしているという。

AI自動運転時代を見据え、ライドシェア企業に出資

出資後はアリババのように長期保有する株式がある一方で、手仕舞いする一面も見せた。

その例として挙げたのが2018年末に281ドルから134ドルまで株価を下げた「NVIDIA株」だ。SBGにも多大な損失が予想されたが、実際にはオプションを組み合わせたデリバティブ取引で株価下落リスクをヘッジし、218ドルで決済している。差し引きでほとんど影響はなかったという。

下落したNVIDIA株はデリバティブ取引でヘッジしていた

69歳まで社長、その後は「うるさい会長」に?

こうした取引の詳細にも踏み込みながら、孫社長は90分にわたって熱弁を振るい、司会者の制止も振り切って質疑応答の時間を延長。都合の悪い質問はうまくかわしつつも、数字を交えて即答していくスタイルは健在だった。果たしていつまで社長を続けられるのか、今回の会見でも孫社長の健康問題に話題が及んだ。

現在61歳の孫社長は至って健康で、60代で引退するとの公約通り「69歳までは社長を続ける」と語った。純粋な投資会社になったことで忙しさは減る傾向にあり、引退後も「うるさい会長になるかもしれない。医療も発達しており、まだまだ元気一杯、夢一杯」と院政を示唆するなど、衰えを見せない様子だった。