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自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

免許証返納を考えるのは時期尚早? 活用すべきは「自動運転レベル2」

免許証返納を考えるのは時期尚早? 活用すべきは「自動運転レベル2」

2018.12.28

いつ免許証を返納すべき? 募る高齢者ドライバーの不安

「サポカーS」を選べば享受できる先進の安全技術

ACCに自動駐車…充実の運転支援機能

高齢者による交通事故が顕著になるにしたがい、運転免許証の自主返納を促す警察庁などの活動を目にする機会も増えてきた。今年は特に多くなった印象だ。高齢者は免許証を返納すべきという世論が形成されつつあるようにも感じるが、そんな今、改めて「自動運転レベル2」の運転支援機能に注目したい。既存の技術を十分に活用するだけでも、高齢ドライバーの安全運転をサポートできるかもしれないからだ。

最近は軽自動車でも運転支援機能が充実している(画像はダイハツ工業の「ミラ トコット」)

免許証の自主返納は累計42万人に

統計によれば、75歳以上と80歳以上の運転者による交通死亡事故件数は、それぞれ平成19年から29年までの10年間で約半分に減っているのだが、それより下の年齢層と比べると、なお2~3倍ほどの件数となっている。こうしたことから、警察庁では運転免許証の自主返納に関するリーフレットを作るなどして広報に努めている。

リーフレットによると、視野障害や身体機能の低下、筋力の衰えなどによって、高齢者の運転操作にはミスが起こりやすくなる。不適切な運転操作による交通事故の割合は、75歳以上のドバイバーが一般ドライバーの約2倍に及ぶそうだ。いわゆるペダルの踏み間違いや車線の逸脱などが発生していることは、テレビや新聞が報道している通りである。

運転免許証の自主返納制度は平成10年に始まったものだが、その後は周知が進み、特に平成26年以降は件数が急増。平成29年(昨年)には累計42万人を超えた。しかも、その4割ほどは75歳未満の年齢層で占められている。そうした状況からなのか、まだ70歳未満の人から「自分はいつ免許証を返納したらいいのか?」と不安げに問われたこともある。

私自身、老眼の傾向は50歳代から自覚しており、60歳を過ぎてからは、ことに視覚や身体が衰えていることを意識させられる日々だ。夕暮れ時の見にくさや、薄暗いところでの動体視力の低下により、運転には細心の注意を払う毎日である。したがって、いつ運転免許証を返納すればよいかという不安と迷いは、私自身の課題でもある。

見切りのよいクルマに乗っていても、老眼が進めば周囲の状況は確認しづらくなってしまう

一方で、60~70代はまだ生活や仕事を含めて現役であり、家族や親戚などを手助けしたり、あるいは友人・知人とゴルフなどの余暇に出かけるなどで、運転を任される場面も多い。身体能力の衰えを自覚し、不安を覚えながらも、なお運転し続けなければならないし、まだ運転を続けたいという気持ちもある。そこに葛藤があるのだ。

そうした不安を持つ人に私は、最新のクルマに備わる運転支援機能を調べてみるよう助言している。古いクルマを長く大事に乗ることも大切ではあるが、最新の機能を持つクルマは、加齢による身体機能の衰えをある程度は手助けしてくれる。うまく機能を活用すれば、より快適にクルマで出掛けられる。

どのような運転支援装置が、身体機能の衰えを補い、手助けしてくれるのか。いくつかの例を挙げてみよう。

「サポカー」が1つの判断基準に

まず注目したいのが、日本政府が「セーフティ・サポートカー」(サポカー)あるいは「セーフティ・サポートカーS」(サポカーS)と呼ぶクルマだ。こういった車種は、軽自動車および小型車にも増えている。

人気のホンダ「N-BOX」も「サポカーS ワイド」に該当する

サポカーは「自動ブレーキ」を搭載するクルマのこと。自動ブレーキとは、車載のレーダーやカメラを使って前方のクルマや人を検知して、衝突の可能性がある場合には運転者に警告し、それでも危険が続くようであれば自動でブレーキを掛け、衝突を回避したり被害を軽減したりする機能だ。

サポカーSは自動ブレーキに加え、「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」「車線逸脱警報」「先進ライト」などを装備する。ただし、サポカーSには「ベーシック」「ベーシック+」「ワイド」の区分があり、それによって装備の搭載内容が異なるので注意が必要だ。

ペダル踏み間違い時加速抑制装置は、発進時や低速走行時にペダルを踏み間違ったとき、レーダー、カメラ、ソナーがクルマの前後の壁や他車を検知すると、アクセルペダルを踏み込んでいてもエンジン出力が抑えられ、急加速を防止できる機能だ。

車線逸脱警報はカメラで車線を認識し、はみ出しそうになったり、実際にはみ出したりすると運転者に警報する。

先進ライトにはいくつかの機能がある。例えばハイビームでの走行中、前を走るクルマや対向車を検知すると、自動的にロービームに切り替わる「自動切替型前照灯」や、ハイビームの照射範囲の中で、前を走るクルマや対向車の部分だけを減光する「自動防眩型前照灯」、ハンドルやウインカーなどの操作に応じて、水平方向の照射範囲を自動制御する「配光可変型前照灯」などだ。

サポカーSのワイドに該当するクルマであれば、ここに挙げた機能が備わっている(先進ライトは、少なくともどれか1つの機能を採用)。ペダルの踏み間違いによる大きな事故や意図しない車線逸脱などは、これらの機能で減らすことができるだろう。夜間の運転でも、不安は軽減できるはずだ。

トヨタ自動車は後づけ可能な「踏み間違い加速抑制システム」を2018年12月5日に発売。「プリウス」「アクア」から販売を開始し、対象車種を広げていくという

「自動運転レベル2」の十分な活用が先決

このほか、近年採用が進んでいるのがドアミラーの「ブラインドスポット」と呼ばれる機能だ。隣の車線の後続車が近づいてくると、ミラーにそのクルマが映りこむ前の段階からランプで表示し、警告してくれる。ランプ点灯が視界に入るだけで、車線変更前にあらかじめ注意を払うことができるので、安全性は高まる。

ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は、クルマに備わっていても、試したことがないという人が意外に多い機能だ。高速道路などでACCをオンにすると、クルマは一定速度で自動走行し、レーダーやカメラによって前を走るクルマとの車間距離を適切に保ってくれる。自動運転と間違われやすいACCだが、これも運転支援機能であり、特にクルマで長距離移動する際の緊張や疲労を軽減してくれる。

駐車支援機能も採用が増え始めているが、注目したいのは日産自動車の電気自動車(EV)「リーフ」で使える「プロパイロット パーキング」だ。同機能では駐車枠を確定した後、ボタンスイッチを押しているだけでクルマを自動的に駐車できる。駐車枠に収まった後にシフトをパーキング(P)に入れ、駐車ブレーキまで掛けてくれる徹底ぶりだ。

ほかにも様々な運転支援機能があるが、それらを活用すれば高齢者が安全に、自らクルマを運転できる期間が延ばせるかもしれない。

「プロパイロット パーキング」で日産「リーフ」を駐車したところ

近年は自動運転が話題だが、今年は各自動車メーカーによる技術競争のほか、タクシーや物流などの移動サービスを手掛ける事業者が、完全自動運転化を模索するというニュースも目に付くようになった。だが、それ以前に、「自動運転レベル2」と呼ばれる現在の運転支援機能を十分に活用することも重要だろう。

運転支援機能には、「運転免許証をいつ返納したらいいのか」と不安に思う高齢者の懸念を和らげたり、払拭したりできるという側面もある。高齢化社会を迎えている日本においては、居住地域の公共交通機関の事情を問わず、「衣食住」に加え「移動」が可能となることで、高齢者が自立した生活を送る道が開けるのである。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。