「新型車」の記事

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

三菱自動車の新型「eK」に試乗! 日産が開発も光る“三菱らしさ”

三菱自動車の新型「eK」に試乗! 日産が開発も光る“三菱らしさ”

2019.05.13

三菱自動車の軽ハイトワゴン「eK」シリーズに試乗

日産「デイズ」とはキャラが違う! 「eKクロス」に注目

1クラス上のコンパクトカーとも勝負できる完成度

三菱自動車工業は2019年3月28日、軽ハイトワゴン「eK」シリーズをフルモデルチェンジした。eKシリーズは4世代目となるが、三菱自動車と日産自動車が提携したことにより、先代から「デイズ」という姉妹車を持つことになった。最新型の「eK」と「デイズ」も姉妹車であることは同様で、同じタイミングで新型へとシフトしている。今回は新しいeKに試乗し、日産デイズでは味わえない“三菱らしさ”を感じてきた。

三菱自動車の新型「eK」シリーズ

日産が開発、三菱が生産する姉妹車

まず、この軽自動車の成り立ちを簡単に説明しよう。三菱自動車と日産は、軽自動車の共同開発を決め、2011年に合弁会社「NMKV」を設立。新会社のNMKVを中心とした共同開発体制を敷き、先代のeK/デイズを2013年に誕生させた。

共同開発モデルの第1世代(eKとしては第3世代、デイズは初代)は、三菱自動車が開発・生産を一手に引き受け、同社の50年以上にわたる軽自動車開発のノウハウをつぎ込んだ。しかし、2代目(eKとしては4代目、デイズは2代目)となる今回の新型車では、この体制を変更。企画・開発を日産、生産を三菱自動車、マネージメントをNMKVと、それぞれの強みをいかした分業体制をとった。

今回のデイズは、日産にとって初の軽自動車開発となった。同社はプラットフォーム、エンジン、トランスミッションを刷新し、自動運転レベル2相当の安全運転支援機能を採用するなど、デイズ/eKを全面的に進化させた。

今回の主役である三菱の新型eKシリーズには、標準車の「eKワゴン」とクロスオーバーモデルの「eKクロス」の2タイプがある。標準車「eKワゴン」は、フロントグリルや一部の装備など異なる点もあるが、基本的には「デイズ」の標準車と同じクルマだ。エンジンが自然吸気仕様のみである点も同様。価格は129万6,000円~150万6,600円となっている。

標準車の「eKワゴン」。基本的には日産「デイズ」と同じクルマだと思っていい

一方の「eKクロス」は、三菱独自仕様の外観を持つモデルだ。「パジェロ」や「アウトランダー」など、同社のSUVと通低するエッセンスを備えたモデルだといえる。こちらのクルマには自然吸気エンジンに加え、ターボエンジンの設定もある。どちらもマイルドハイブリッド仕様となるのも特徴だ。価格は141万4,800円~176万5,800円。

三菱独自仕様の外観を持つ「eKクロス」。SUV風味の全く異なるフロントマスクを採用しており、ヘッドライトはLEDとなる。さらに、オプション設定のルーフレールも専用アイテムだ

ボディサイズはシリーズ共通で、全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,640mm(2WD車)となる。先代比だと全高が20mm高くなっているが、変化はそれだけでなく、ホイールベースが+65mmの2,495mmまで伸びている。これは、エンジンルームのコンパクト化による変更点で、その分を全てキャビンの拡張に使うことにより、先代よりも広々とした車内空間を実現した。また、不足が指摘されていた小物入れを充実させるなど、機能性も高めた。

新型「eK」シリーズはホイールベースが伸びた分、車内空間が先代よりも広々としている

パワートレインも新しくなった。新開発の660㏄3気筒DOHCエンジンを搭載しており、自然吸気仕様とターボ仕様の設定がある。自然吸気仕様は最高出力52ps/6,400rpm、最大トルク60Nm/3,600rpmを、ターボ仕様は同64ps/5,600rpm、100Nm/2,400~4,000rpmをそれぞれ発生する。

eKクロスが搭載するマイルドハイブリッドは、2.0kW/40Nmの小型モーターとリチウムイオン電池を組み合わせたもの。減速時にエネルギーを回生し、加速時には最大30秒間、モーターでアシストを行う。トランスミッションは全車CVTとなるが、こちらも新開発。変速のステップ制御を加えることで、加速時のエンジン音を抑え、静粛性を高めている。シリーズ全車で4WDを選べることもお伝えしておきたい。燃費消費率は標準車が1リッターあたり21.2~18.2キロ、eKクロス・ハイブリッドが21.2~18.8キロ、eKクロス・ハイブリッドターボが19.2~16.8キロ(全てWLTCモード値)となる。

「eKクロス」ターボ仕様のパワートレイン。ターボは力強い加速が魅力だが、モーターアシストを組み合わせることで効率も高められている

軽でもニーズの高まる先進の安全運転支援機能も充実した。衝突被害軽減ブレーキ、踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警告および車線逸脱防止支援機能、オートマチックハイビームを含む「e-Assist」は、全車が標準装備。さらに、高速道路同一車線運転支援技術「MI-PILOT」(マイパイロット)をオプションとして設定(エントリーグレードを除く)している。これは、全車速対応ACCと車線中央維持ステアリングアシスト機能を組み合わせた自動運転レベル2の機能で、日産の「プロパイロット」と同等のシステムだ。

フロントガラスの中央上部には、マイパイロットで使う単眼カメラが付いている

試乗では、eKワゴンの上級グレード「G」(2WD車)とeKクロスの「G」(自然吸気エンジン・4WD)および「T」(ターボエンジン・4WD)の3台が用意された。つまり、eKシリーズの主要な仕様に全て触れることができたわけだ。

後席は大人が足を組める広さに

まずはスタンダードなeKワゴンから。すっきりとしたフロントマスクに象徴されるように、万人受けを狙った仕様だ。抑揚あるボディサイドパネルやガラスエリアなど、デザインを工夫することで、シャープさと安定感のある雰囲気に仕上げている。軽自動車の持つチープさが薄まった印象だ。

「eKワゴン」のフロントマスクはすっきりとした印象。ヘッドライトはハロゲン式だ

インテリアはライトグレーを基調とした明るいもの。ダッシュボードは2段式かつ立体的な造形で、見た目の質感も高まっている。シートにはペラペラ感がなく、しっかりとした腰がある。座った時、見た目以上に細部まで気配りをしているなと感じた。

「eKワゴン」のインテリア。ダッシュボードは立体的な造形となっている。中央のナビゲーションシステム(オプション)は9インチのものを装着。軽自動車でもナビの大型化への対応が進むのはイマドキだ

次は、三菱色が強い「eKクロス」の外観を見てみる。新世代の三菱車が取り入れる「ダイナミックシールド」デザインのフロントマスクは、新型「デリカ D:5」と似ているが、よりコンパクトにまとまっている。SUVのような躍動感とスポーティさをより強まった感じだ。見た目は結構カッコよく、そして若々しい。eKワゴンだと全7色のエクステリアカラーも、eKクロスだと2トーンを含む全11色に増える。

「ダイナミックシールド」デザインを取り入れた「eKクロス」のフロントマスク。上部の細長い部分はLEDポジションランプで、中央の縦長の部分がLEDヘッドライト。下部はフォグランプとなる
ちなみに、これが「デリカ D:5」のフロントマスクだ。グリルとライトの配置が共通していることが分かるだろう

車内空間は、ホイールベースが65mm伸びたことにより、後席が格段に広くなった。シートにはリクライニングとスライド機構が備わる。最後方まで席をスライドさせると、前席と後席の間の距離は710mmまで拡大する。なんと、足が組めるくらいの空間が生まれるのだ。この広さは日産の大型セダン「フーガ」に匹敵すると聞いて納得した。しかも、床面がフラットなので、定員の大人2人が座っても十分に快適だ。

後席には、ゆったりとしたスペースが広がっていた(写真はシート位置を最後方までスライドさせてある)

後席を最後方までスライドさせると、ラゲッジスペースはコンパクトになってしまうが、それでも奥行きは385mmあり、2Lのペットボトルが入った段ボールを収めることができる。さらに2WD車であれば、ラゲッジスペースの下に収納が確保されているので、床板を外せば、ベビーカーを収めることが可能だ。ファミリーカーとしての使い勝手も十分に考慮されている。

ラゲッジスペースは後席を後方にスライドさせるとコンパクトになるが、ファミリーカーとしての使い勝手は十分に考慮されている。(写真のシート位置は最後方)。また、スライドは左右座面一体となるが、左右の背もたれは独立して倒すことができる

結局のところ、日産のクルマなのか?

皆さんにとって気になるのは、新型eK/デイズでは、企画開発と製造で明確に役割が分かれているところだろう。

開発を担った日産が全てにおいて主導権を持ち、三菱はクルマを製造しただけ。そう考えるのは、実は早合点といえる。日産と三菱は、企画段階で新型車の目標についてじっくりと話し合った上、開発中もさまざまなステップで、三菱サイドが確認を行ったという。三菱では、新型車の開発に充当するはずの人員・コストを抑制できた分、新しいeKのキャラクターやデザインを追求することができた。その中で生まれたのが、全く新しいeKクロスだったのである。

三菱自動車がeKクロスを生み出せたのは、先代eKの経験を踏まえた結果でもあった。先代eKを発売した時に三菱は、軽自動車で人気の高いエアロパーツを装着したカスタム仕様「eKカスタム」を展開。これは日産の「デイズ ハイウェイスター」に相当するモデルだったのだが、ハイウェイスターの人気とは裏腹に、eKカスタムはあまり支持されなかったという経緯がある。そこで三菱は今回、同社らしいデザインのバリエーションを開発しようと考え、SUV風のeKクロスを作り出したのだ。

「eKクロス」からは、日産風のカスタム車ではなく、自分たちらしいクルマを作り出そうとした三菱の意図を感じる

三菱は、ただ単にデザインの異なるeKを投入したのではない。バンパーやグリルに加え、コストの掛かるヘッドライトもeKクロスは専用設計なのだ。特に、大型の縦型LEDヘッドライトの開発には、搭載位置のスペースの関係で苦労したという。ただ、その努力は報われており、新型車の受注の約6割がeKクロスだそうだ。

「ワゴン」と「クロス」、どっちを選ぶ?

実際に「eKワゴン」と「eKクロス」を乗り比べてみると、eKワゴンからは素性のよさを感じた。何より、ボディがしっかりしているのだ。乗り心地もよく、静粛性も高かった。ホンダの新型「N-BOX」のように、イマドキの軽自動車は一皮むけて、リッタークラスのコンパクトカーの脅威となっているが、ekも明らかに、そのラインを狙っているようだ。

次に、モーターアシスト付きの自然吸気エンジンとターボエンジンのeKクロスを比較してみたが、ターボ車でなくとも十分、リッタークラスのコンパクトカーと勝負できそうに思えた。街中で時速60キロくらいまで加速するなら、自然吸気エンジンで十分。ekクロスにはモーターアシストが付いているが、これが割といい仕事をしているようで、加速力には若干の余裕を感じた。

この加速力には、新しいCVTも大いに貢献している。新CVTでは、加速時のエンジン音の抑制を目的に、無段変速のCVTでありながら、わざとATのようなステップ変速制御を行う。つまり、エンジンパワーを最も効率よく引き出すというCVTの魅力を最大限に発揮することをあえてやめているのだが、それは、フルにエンジンパワーを引き出す時に限った話。実は、市街地走行で使う時速60キロくらいの領域であれば、新CVTの方がエンジン回転数をより高くまで使えるので、加速はよくなるというのだ。

もちろん、加速のよさや高速巡行時の静粛性はターボが1枚上手だが、自然吸気エンジンも十分に作り込まれている。軽自動車の特性をしっかりと押さえたクルマ作りだ。最も魅力的なのは、真っすぐ走らせやすいところだろう。これは、新開発の骨格によりボディ剛性が高まった恩恵といえる。さらに、電動パワーステアリングには、センター位置に戻る制御などの改良を加えてあるそうだ。

ボディ剛性の向上や電動パワーステアリングの改良などにより、「eK」はまっすぐ走らせやすいクルマに仕上がっている(画像は「eKクロス」)

もちろん、先進運転支援機能のマイパイロットも高速道路で試した。この機能を起動すると、クルマは同一車線内を設定した速度内で走行し、前走車に合わせて、加減速および停車まで行ってくれる。軽自動車には贅沢な装備といえるが、ボディから鍛えてあることもあり車線内の中央維持走行は安定していて、試乗区間で機能が停止したのも、大きなカーブの1カ所だけ。しかも、機能停止から復帰まではスムーズだった。これなら、緩いカーブと直線を中心とする高速道路であれば活躍してくれそうだ。もちろん、速度の低い渋滞時なら、問題なく前車を追従してくれるだろう。軽自動車でも、たまに遠出をする人なら選ぶ価値はありそうだ。

eKシリーズの全体的な評価としては、軽自動車を開発したことのない日産が、かえって軽自動車の常識にとらわれず、1クラス上のコンパクトカーまで意識した作り込みを行った恩恵が、随所に感じられるクルマに仕上がっていた。軽ハイトワゴンを検討するなら、候補に入れたくなる1台だ。

オススメは、やはりeKクロス。SUV風で、最低地上高もeKワゴンと変わらず、「なんちゃって」ではあるものの遊び心があるアクティブなスタイルは、乗る人を元気にしてくれ、所有欲も満たしてくれるだろう。基本的な安全運転支援機能は標準装備として付いてくる。あとは先進のマイパイロットを付けるかどうかだが、そこは自身の乗り方を念頭に置いて検討すべきだろう。

50周年の「GT-R」と「フェアレディZ」で考える、日産スポーツカーの今と未来

50周年の「GT-R」と「フェアレディZ」で考える、日産スポーツカーの今と未来

2019.05.10

日産スポーツカーの2枚看板は誕生から半世紀が経過

「GT-R」は高性能に、「Z」は名作をオマージュ?

なかなか登場しない新型モデル…次は電動化の可能性も

日産自動車は先頃、スポーツカーの2枚看板である「GT-R」と「フェアレディZ」の生誕50周年記念モデルを発表した。近年は電気自動車(EV)と運転支援システムに注力している印象の日産だが、同社にとって重要なヘリテージでもあるスポーツカーを今後、どのように取り扱っていくのか。これを機に考えてみたい。

日産は4月17日、同社の情報発信拠点である東京・銀座の「NISSAN CROSSING」(ニッサン クロッシング)にて、「GT-R」「GT-R NISMO」の2020年モデルと「GT-R」「フェアレディZ」の50周年記念モデルを報道陣にお披露目した(手前が「GT-R」、奥が「フェアレディZ」の50周年記念モデル、撮影:原アキラ)

レースの知見で高性能化を果たした「GT-R NISMO」

発表会場でアンベールされたのは、ホワイトカラーに身を包んだ高性能な「GT-R NISMO」。最新モデルで日産は、レースの現場からのフィードバックを反映し、ターボの改良、カーボンパーツの拡大、カーボンブレーキの導入という3点の改良を行った。

レースで磨いた技術を応用した「GT-R NISMO」の2020年モデル

新型のターボチャージャーは、日産がGT3のレースカーで使用しているもの。どんな車速でも、より素早く加速できるエンジンレスポンスを実現することを目指して採用した。具体的には、タービンの羽根の枚数を11枚から10枚に減らして慣性重量を抑えるとともに、流体力学のシミュレーションにより羽の形状を変更することで、流量の減少を防ぐことにも成功したそうだ。

ターボチャージャーはレースカーと共用する

また、エンジンフードとフェンダー、ルーフはカーボン製とし、車両の重心位置から遠い位置にあるパーツを軽くすることで、ハンドルの動きに対する車体の反応を向上させた。この改良により、コーナーでのスピードが向上。合計で10.5キロの軽量化も達成した。

新開発のカーボンセラミックブレーキは、世界最大級の直径410mmを誇る。1,000度の高温にも耐えられるイエローカラーの高剛性キャリパーも新たに採用した。エクステリアでは、フロントフェンダー左右にエアアウトレット(空気の排出口)を設けることで、時速250~300キロという超高速域でのダウンフォース(車体を下向きに押さえる力)を増やし、タイヤのグリップと接地感を向上させている。

フェンダーにあるサメのエラのようなものがエアアウトレット。イエローのブレーキキャリパーがアクセントになっている

このように、さらなる高性能化を果たした「GT-R NISMO」の2020年モデル。先行予約は2019年5月に始まる。価格は未発表だ。

新色「ワンガンブルー」をまとう「GT-R」

一方の基準車(NISMOではないGT-R)は、匠が1台ずつ手で組み上げる排気量3.8リッターのV型6気筒ツインターボエンジンに、NISMOモデルで使用してきた「アブレダブルシール」を採用したターボチャージャーを搭載。吸入した空気の漏れを最小限にすることで、ドライバーの加速意図に即座に応えるレスポンスを実現した。また、コーナリング中のシフトスケジュールをさらにアグレッシブに設定したほか、確かなブレーキの効きを感じるよう、ブースターの特性をチューニングしたという。

「GT-R」の2020年モデル(画像提供:日産自動車)

青く輝くチタン製のエキゾーストフィニッシャー(マフラー)は、職人が1つずつ手作りで加工する。ホイールには新デザインを採用。ボディカラーには青色の透明ベースに光干渉顔料を追加し、ベイエリアでの日没の余韻を感じさせる新しいボディカラー「ワンガンブルー」を設定した。

職人が1つずつ手作りで加工するエキゾーストフィニッシャー

「GT-R」の2020年モデルは2019年6月に発売となる。価格は1,063万1,520円~1,253万9,880円だ。

「GT-R」のルーツとなった“伝説のクルマ”

GT-Rのルーツといえば、プリンス自動車が日産と合併する前にデビューさせた、あの“伝説”のモデルから話を始めないといけない。それは、1964年の第2回「日本グランプリ」に登場した「スカイラインGT」だ。

プリンスは、「S50型」という1.5リッターの4気筒エンジンを搭載していた標準モデルのボンネットを約20センチ延長し、そこに上級モデル「グロリア」の2.0リッター直列6気筒エンジンを無理やり押し込み、レース用モデルとして「スカイラインGT」を生み出した。グランプリでのライバルは、絶対性能に優れる独ポルシェのスポーツカー「904」。結果的にレースでは敗れたものの、その周回中に1周だけ、生沢徹がドライブするスカイラインGTが先頭を奪い、ポルシェを従えて走った姿は、鈴鹿サーキットに詰め掛けた大観衆を沸かせた。それが、“スカG”伝説の始まりというわけだ。

スカイラインは1969年にフルモデルチェンジし、そのトップモデルとしてデビューしたのが初代「スカイラインGT-R」(PGC10型)だった。このクルマは、日産が純レーシングカー「R380」用のGR8型エンジンを市販車向けに改良したS20型2.0リッター直列6気筒エンジン(最大出力:210ps)を搭載し、数々のレースに参戦。わずか2年10カ月のうちに50勝という“GT-R”伝説を作り上げた。雨中のレースとなった1972年の「富士300キロスピードレース」では、白×青、白×赤ボディのGT-Rが水煙を上げながら、富士スピードウェイの第1コーナー「30度バンク」を時速200キロで駆け抜けたが、このシーンは発表会場のスクリーンにも映し出されていた。

「スカイラインGT-R」のPGC10型(画像提供:日産自動車)

GT-Rの生誕50周年を記念した今回の「GT-R 50th Anniversary」は、そのレーシングカーをモチーフとしたツートンカラーが特徴だ。ベースとなっているのは、「GT-R」2020年モデルのプレミアムエディション。新色のワンガンブルーに高品質ホワイトステッカーを組み合わせたモデルは、ボディカラーとコーディネートしたブルースポークホイールを標準装備し、走行中は全体が青く見えるという。ボディカラーはこのほか、ブリリアントホワイトパール×レッドステッカー、アルティメットシルバー×ホワイトステッカーの組み合わせを用意する。

ワンガンブルーにホワイトステッカーを組み合わせた「GT-R 50th Anniversary」

リアには「GT-R 50th Anniversary」の文字をあしらったバッジとステッカーを装着。インテリアは上品なミディアムグレーの専用内装色とし、センターコンソールやメーター、シートなどに50周年を記念するロゴが入る。

「GT-R 50th Anniversary」の発売は2019年6月。2020年3月末までの期間限定モデルとなる。価格は1,319万2,200円~1,351万6,200円だ。

リアには50周年記念モデルであることを表すバッジとステッカーを装着

「フェアレディZ 50th Anniversary」は、伝説のレースカーデザイナーである米国のピート・ブロック率いるBRE(ブロック レーシング エンタープライズ)が製造した1970年の「Datsun 240Z BRE」を彷彿させるモデルだ。

エクステリアはブリリアントホワイト×バイブラントレッド、ブリリアントシルバー×ダイヤモンドブラックの組み合わせとし、50周年を記念するフロントフェンダーのステッカー、リアのバッジ、ホイールリムにレッドラインが加えられた19インチアルミホイールなどを装備する。

ブリリアントホワイト×バイブラントレッドの「フェアレディZ 50th Anniversary」

インテリアを見ると、センターストライプ入りアルカンターラ表皮のステアリングホイールがレーシングカーをイメージさせる。このほか、専用カラーのシフトノブ、キッキングプレート、ステッチが配されたシートやドアトリムを採用。シートやシフトノブ周り、メーター内には50周年のロゴが入る。

「フェアレディZ 50th Anniversary」の発売は2019年夏頃。こちらも2020年3月末までの期間限定モデルだ。価格は未定となっている。

アルカンターラ表皮のステアリングホイールがレーシングカーを想起させる

モデルチェンジから10年超、待たれる次世代モデル

発表会で車両の概要を説明したGT-R 2020年モデルの田沼謹一開発主管は、「GT-RもフェアレディZも、日産自動車のブランドシンボルであり、技術の日産の証です。半世紀もの長い間、多くの皆様にご支持いただいているこのブランドの、新たな歴史を積み上げたいと考えています」とコメント。また、あいさつのため登壇した日産の星野朝子専務執行役員は、「若い頃、GT-R(R32モデル)が買いたくて買いたくて、貯金通帳を散々にらんだ結果、残念ながら買えなかったんです」というエピソードを披露しつつ、GT-RとフェアレディZの2台は日産の情熱の極みであり、世界が憧れる存在だと胸を張った。

日産の星野専務(左)と「GT-R」2020モデルの田沼開発主管

ただし、現行のGT-Rは登場からすでに12年、フェアレディZは11年が経過している。インテリアのデザインなどを見ると、ひと時代前のモデルであることは明白な事実で、次世代モデルの登場が待たれることはいうまでもない。会場から質問のあったGT-Rの電動化について、田沼氏が「あらゆる可能性を探っている」と答えたのに対し、星野氏は「大いにありうる」と答えていたのは印象的だった。