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文具の「銀座 伊東屋」が、横浜元町に新店舗をオープンした本当の理由

文具の「銀座 伊東屋」が、横浜元町に新店舗をオープンした本当の理由

2018.09.28

銀座 伊東屋が横浜元町に路面店をオープン

すでに店舗がある横浜エリアに出店した意図は?

伊東屋は9月19日、横浜元町ショッピングストリートに「銀座 伊東屋 横浜元町」をオープンした。

「銀座 伊東屋 横浜元町」

東京・銀座にある銀座 伊東屋 本店のコンセプトを踏襲した同店がテーマにしているのは「過ごす場所」。3フロアからなる1棟の路面店だ。なぜ元町という地に新たな店舗をオープンしたのか。開店当日の店内で出店の背景と同店の見どころを、同社 広報室に聞いた。

「伊東屋が表現したいと思う店を、自分たちで」

伊東屋は現在、旗艦店である銀座 伊東屋 本店と全国の大型支店8店舗、小規模店のtopdrawerや異業種とのコラボレーション店舗などを展開しており、横浜タカシマヤ内にも支店がある。なぜ今回、横浜元町という地に「銀座 伊東屋」を冠した路面店を出店するに至ったのだろうか。

銀座伊東屋のシンボルであるレッドクリップが、横浜元町店にも。銀座以外の店舗でクリップが設置されたのは初めてという。

「元町という場所は、ご縁でした」と語る担当者。2015年に行った銀座店のリニューアル成功を受けて、テナント出店だけではなく、「自分たちが表現したい店を、自分たちの手で作りたい」という思いが社内に芽生えたのだという。そこで、銀座と同じような路面店を設ける場所を探していたところ、今回の元町のビルで、となった。

通りに面したショーウインドウには、フロア毎にデザインされたエンブレムが掲げられている

「店舗の雰囲気が銀座店に似ているという声を、開店当日からいただいています。また、横浜は明治時代より新しいものが入ってきた街という点でも、銀座と同じなんです。『伊東屋に行きたい』と思ってもらえれば、どの街でもお客様は来てくれるはず。この店舗に“わざわざ”来ていただきたいという思いがあります」(担当者)

店舗内でのBGMは銀座の本店と同じものを流し、棚の雰囲気も近づけているという。オープンしたての店舗を1フロアずつ、案内してもらった。

自分オリジナルのノートを作れる1階

1階のテーマは「DESK お仕事道具」だ。ノートと筆記具、その他の文房具をセレクトして販売している。

表紙やリングを自分好みに選べる「ノートクチュール」

目玉は、自分好みのオリジナルノートを作れる「Note Couture(ノートクチュール)」。サイズや表紙、中紙、パーツを選び、専用のブースで製本してもらうサービスで、同店の他には銀座本店と京都店で展開している。表紙に文字をプリントしたり、綴じボタンをつけたりすることも可能だ。

ノートクチュールの作例。アルファベットやイラストを箔押しすることができる

「ノートとしては決して安くありませんが、日記やレシピ、趣味のことなど、大事なものを書き溜めていくログになります。日付や名前も入れられるので、赤ちゃんのお誕生日のお祝いに、お名前と日付、体重を表紙にプリントし、育児日記用のノートとして贈られた方もいます。ある店舗では、とあるプロジェクトリーダーさんが、メンバー1人ひとりの雰囲気に合わせて、名前を入れたノートを作っていたそうです。お客様から、新しい使い道を教えていただくことも多くあります」(担当者)

ノートの製本は店内で行われる

また、伊東屋オリジナル商品の販売にも力を入れているという。直輸入のノート、コクヨとコラボレーションをした測量野帳のオリジナルカバーシリーズや、魚をモチーフにしたオリジナルノートやピンバッジのシリーズ、同社の包装紙の柄をデザインした風呂敷などが並べられていた。

空港店舗向けの商品として開発された、魚の図柄シリーズ。人気が高く、ノートクチュールにも魚のイラストが展開されている

その場で手紙を出せるポストも

「ROOM 世界の美しいもの」がテーマの2階では、レター用品、ラッピング用品、インテリア用品、バッグ、地球儀などを取り扱っている。買い付け商品である海外製のグリーティングカードは、大人っぽくてシャキッとしたデザインが特徴だという。

店内に設置されたポスト

その場で購入したはがきや便箋に手紙を書き、ポストに投函することも可能だ。ポストがあるのは銀座店と同店のみで、銀座店の四角いポストに対し、同店のポストは丸い形にしているのだとか。

オリジナルデザインの切手

手紙を書けるスペースでは万年筆を含めたペンの貸出もしており、「ここで万年筆を好きになってもらえたら」と担当者は語る。同社がデザインした店舗オリジナル切手も販売。2階では伊東屋オリジナルデザインのポスターに名前や日付を入れることができる「My Poster」のサービスも展開している。

手紙のためのカウンターには、万年筆のほか、ポストカードにメッセージを浮かび上がらせるエンボッサーも

11月以降、万年筆の新サービスがスタート 

3階のテーマは「TREAT とびきりのご褒美」。万年筆とインク、それらを収める革小物を扱っている。フロア一面に広がったケースには、バイヤーが選んだ多種多様な万年筆が並べられおり、対面式のカウンターよりも気軽に商品を選べるのが特徴だ。座って試し書きをするスペースでは、店員と相談しながら商品を購入することもできる。

3階は「ご褒美」のためのフロア

「万年筆は書きやすいだけではなくて、持っているだけで気分が良くなったり、勇気が出たりする、お守りのような存在にもなるもの。楽しんでほしいと思っています」(担当者)

腰ほどの高さのカウンターに、万年筆がひしめくように陳列されている

また、3階では今後2つのサービスが始まる予定だ。11月にスタートするのは「Custom Mighty」。好きなパーツを組み合わせて自分オリジナルの万年筆を作ることができる。このサービスで、同社オリジナルの万年筆ブランド「Mighty」が復活する。

同社オリジナルの万年筆ブランド「Mighty」。現在はワンカラーでの展開となっている

2019年1月には「Cocktail Ink」も始まる。2000~2009年まで同社が展開していたインクブレンドのサービスを復活させる格好になる。バーでカクテルを頼むかのように、オーダーしてその場でインクを調合してもらうことができる。インクは同社オリジナルのものだという。

年始に、このカウンターで「Cocktail Ink」が始まる予定

スイーツを買う気分で文房具を

「デジタル化が進み、手書きが少し特別なものになりつつあることは実感している」と語る担当者。だが、文房具の可能性の広がりも感じているという。

例えば、銀座店では、ノートの表紙が見えるように陳列を変えたところ、商品の売れ行きも来店者の反応も良くなった。商品と出会えるようにするためのセレクトが大切なことを実感したそうだ。

かつては棚差しが基本だったノートだが、商品の顔である表紙を向けた陳列で、出会いを創出する狙いに変更した

「文房具は『必需品+楽しむもの』であると思います。少し気持ちを切り替えたい時にスイーツを買って帰ると気分が上がるように、文房具を買っていい気分になることもできるんです。手頃な値段のものもありますし、実用品でもありますので、無駄遣いしている気にもなりません」(担当者)

店内は子どもからお年寄りまで幅広い年齢の来店者で賑わい、穏やかな雰囲気のなかで商品を吟味する姿が見られた。仕事で疲れた帰り道、ふらりと寄って、明日へのモチベーションを上げる一品を探す。そんな使い方もできそうだ。

路面店であれば、テナント先の施設のルールや、既存客層などにとらわれず、「伊東屋がやりたいと思う」店を作ることができるだろう。11月以降の万年筆関連の新サービス含め、今後の展開にも注目していきたい。

女子文具に託すキングジムの想いとは? - 新ブランド「HITOTOKI」発足

女子文具に託すキングジムの想いとは? - 新ブランド「HITOTOKI」発足

2017.04.19

昨今の「DIY女子」ブームにより、既製品をそのまま使うのではなく、ひと手間加えて「自分らしさを表現」する、そんな市場が広がっている。また、その作品をインスタグラムなどにアップロードすることで、ユーザー間の交流も盛んになっている。

文房具メーカーであるキングジムでは4月18日、女子向けの文房具ブランド「HITOTOKI(ヒトトキ)」を発表。同ブランドのコンセプトにマッチする既存製品6品と、同日発表したテーププリンター新版「こはるMP20」を加えた計7製品でスタートする。

女性向け文房具ブランド「HITOTOKI」

キングジムといえばこれまで、「ファイル」や「テプラ」といったオフィスの情報整理用品や、ビジネスシーン向けのデジタルガジェットなどを開発してきた。一方、近年では新しいジャンルとして女性向けの文房具の開発にも力を入れており、すでに複数の製品を販売している。

これらの女性向け文房具の市場成長が見込まれることから、今回さらなる市場開拓とユーザーコミュニケーションの深化を図ることを目的に、新ブランドの立ち上げたを決定したという。

HITOTOKIは、「何気ない日々をもっと好きになる、そのきっかけとなる"ひととき"をつくりだせるような文房具を提供したい」をテーマに、いずれの製品も、「ほんのひとてま加えることで、暮らしが少し豊かになる商品」というコンセプトに基づいて開発している。

キングジムといえば、テプラやポメラなどビジネス向けのイメージが強い

同社によると、近年の市場の動向として、「家事や食事などの日常の物事を丁寧に行う」、「モノはケアやメンテナンスをしながらできる限り長く使う」、「普段使うモノの選び方や空間のしつらえなど日常のディテールにこだわる」など、自分たちの日常生活のなかでの「モノ」や「コト」へこだわりを持つ傾向が強くなっているという。そういった中、カスタマイズ性が高い製品や、コレクター性がある文房具に注目が集まっている。

ラインアップは、筆箱や手帳に入れて持ち運べるマスキングテープ「KITTA(キッタ)」、手帳やノートに日常の暮らしの出来事を記録できるノリ付きメモ「暮らしのキロク」、透明なシートに印刷された枠線に合わせて、マスキングテープを切り貼りしてオリジナルシールが作れる「マスリエ」、シールやマスキングテープを整理・収納できるシール専用ファイル「オトナのシールコレクション」、女性向けのデザインや書体を多く搭載したラベルライター「ガーリー『テプラ』」、専用マスキングテープを使用してオリジナルの手帳用シールが作れる「スケジュールシールプリンター"ひより"」、そして今回発表したテーププリンター「"こはる"MP20」の7製品だ。

ラインアップは全7製品。どれも可愛らしさや手作り感を打ち出している

また、新発表のテーププリンター"こはる"MP20は、専用のマスキングテープやフィルムテープに好きな文字やイラストを印刷して、ラベルを作成できる手のひらサイズのプリンター。インテリア雑貨のような北欧風デザインのおうち型で、煙突に見立てたカットボタンや、窓の形の液晶画面やプリントボタン、ドアの形をした電源ボタンなど、細部まで遊び心のあるデザインにこだわっている。さらに、搭載している絵文字やイラスト、フレームなどのデザインにも北欧風のモチーフを取り入れている。

テーププリンター"こはる"MP20
開発本部長の亀田登信氏

同社開発本部長の亀田登信氏は、「HITOTOKIの初年度売上は、約5億円を目指している。今後は、市場拡大に伴って、10億円を超えるブランドとして育てていきたい」とコメントした。また、新ブランド立ち上げに伴い、インスタグラム公式アカウントを開設。製品情報に加え、使用例や面白ネタまで幅広く投稿している予定だという。

矢野経済研究所の「文具・事務用品市場に関する調査」によると、国内の文具・事務用品の市場規模は、多少の伸び率はあるものの、ほぼ横ばいとなっている。

矢野経済研究所 文具・事務用品市場に関する調査

他社との大きな差別化が難しい市場だが、ターゲットを女性に絞ることにより、市場のさらなる拡大が狙えるだろう。また、インスタグラムを使うことで、ユーザーの投稿自体がブランドのPRになるほか、ユーザーの使用例を製品開発に活かせる狙いもある。今後も、女性向け文房具と同社HITOTOKIブランドに注目していきたい。

シンプルなシャープペンが3000円? - 技術で付加価値を追求するぺんてるの挑戦

シンプルなシャープペンが3000円? - 技術で付加価値を追求するぺんてるの挑戦

2017.02.20

国内のシャープペンシルの販売規模は年々増加しており、製図用を中心とする1000円以上の高価格帯な製品も人気が高まっているという。そんな中、ぺんてるは価格3000円のシャープペンシル「オレンズ ネロ」を市場に投入した。

ぺんてるといえば、1960年に世界初のノック式シャープペンシルを生み出し、その後も芯径0.3mmの製図用シャープペンシルを開発するなど、革新的な製品を世に送り出している企業だ。

技術を結集したフラグシップモデル「オレンズ ネロ」

今回発表した「オレンズ ネロ」は、同社が培った技術を結集した、フラグシップモデルとなる。芯の減り具合に合わせて、ペン先のパイプがスライドする「オレンズシステム」を搭載。パイプで芯を守りながら書くので、極細芯でも折れにくい。また、ペン先を離すたびに芯が出てくる「自動芯出し機構」を、芯径が細い0.2mm・0.3mm用としては世界で初めて搭載した。 搭載。

ぺんてる オレンズ ネロ

自動芯出し機構は、筆記によって芯が磨耗すると、先端のパイプも後退する。その状態で、紙面からペン先を離すと、先端パイプは「先端スプリング」によって、元の長さに戻る。この時、芯も一緒に引き出される仕組みだ。そのため、1ノックで芯が無くなるまで書き続けられる。

ペン先を離すたびに芯が出る「自動芯出し機構」と、芯を保護して折れにくくする「オレンズシステム」により、「ノック1回で芯が無くなるまで、折れずに書き続けられる」を具現化した。

「自動芯出し機構」と「オレンズシステム」により、ノック1回で書き続けられる仕組みを実現
約1万字の「走れメロス」全文をノック1回で書いた原稿用紙

シャープペンシルが3000円になる理由

多くの高機能シャープペンシルが1000円程度で販売されている中、オレンズ ネロの価格は3000円と遙かに高価格だ。その理由はどこにあるのだろうか。

ところで、シャープペンシルのメインユーザーといえば、中高生である。今回の3000円という価格を見る限り、それよりも上の世代が購買層になると推測できる。同社に訪ねたところ、フラグシップモデルとして、ぺんてるが持つ高い技術を形にすることを目指したため、特定の販売ターゲットは定めていないそうだ。あえて言うならば、「時計やカメラなど"道具"に強いこだわりを持つユーザー」と表現していた。

そのため、デザインもラグジュアリーさを追求するのではなく、質実剛健で実用性の高いデザインを採用。ボディーには、樹脂と金属粉を混ぜ合わせた特殊素材を使用し、持った時にずっしりとした重みを感じる低重心にした。コスト増にはなるが、書き心地も追求した結果だ。

デザインは、「グラフ1000」や、「スマッシュ」「ぺんてるメカニカ」など、ぺんてるを代表する高性能シャープペンシルのDNAを受け継いでいる

また、同社の製品のほとんどは、機械生産に頼らずに手作りで作られている。通常のシャープペンシルは10部品なのに比べ、オレンズ ネロは22部品と数が多いため、手間が掛かっている。大量生産は難しく、初回販売店舗は600店ほどに絞っており、各店舗の初回出荷数も数本ずつとなる。

一般的なシャープペンシルの部品数は10点ほど
オレンズ ネロは22部品と、多くの部品で構成されている

無駄を省いてコスト削減に走らず書き心地を追求し、特殊素材、複雑な機構、手間の掛かる製造など、コストを掛けた結果が、3000円のシャープペンシルとなったのだ。

価格の秘密は「所有感」?

オレンズ ネロは、ユーザーの所有感を持たしてくれる「メカニック感」や、芯が折れずにずっと書き続けられるという「安心感」など、機能による付加価値を追求することで、シャープペンシルを高級筆記具へ押し上げようと狙っている。オレンズ ネロの出荷は始まったばかり、そろそろ店頭にも並ぶ頃だろう。国内で高価格帯のシャープペンシル市場が盛り上がる中、機能性を追求した堅実なオレンズ ネロがどの程度認められるのか注目したい。