「教育ICT」の記事

N高に約4千人もの新入生、「親ブロック」を超えるネット高校の強み

N高に約4千人もの新入生、「親ブロック」を超えるネット高校の強み

2019.04.05

もはや春の風物詩、N高が4度目の入学式を実施

在籍生徒数は約1万人、日本最大級の高校になった

ネットの高校という選択肢が当たり前になりつつある

4月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の入学式が新宿バルト9で開催された。入学式は開校時と同じく、VRデバイスを着用して実施。欠席した新入生向けには「ニコニコ生放送」で入学式の模様が生中継された。

2016年の開校時と同じく「VRゴーグル」を着用したVR入学式が実施。2017年にはMRヘッドセット「HoloLens」を使用した入学式に変化したものの、2018年にはVR入学式に戻り、第4回となる今回もVRデバイスで実施された。この異様な光景はもはや春の風物詩となりつつある

「ネットの高校」として、3年前に設立されたN高。3月には1593名の卒業生を輩出した同校であるが、2019年度の入学者数はそれを大きく上回る4004人にものぼった。2019年4月時点で、同校の在校生は9727人。その数は来年には1万人を超える想定で、入学式に先立って行われた記者会見でドワンゴの夏野剛社長は、「国内最大級の高校になる」と語った。

ドワンゴ 夏野剛社長

3年前、「VR入学式」で強烈なインパクトを残した同校。“奇抜”なこの高校に、なぜこれだけの生徒が集まるのか。入学式、およびそれに先立って行われた記者会見で語られた内容から、その理由を探る。

10代を引き寄せる、イベントのエンタメ性

いわゆる「普通の高校」で行われる入学式は、学校の体育館、もしくは近くにある劇場などを貸切って実施するパターンが多いが、今年のN高の入学式は映画館の「新宿バルト9」で開催された。会場には約50人の新入生が集い、その模様は「ニコニコ生放送」でも生中継された。

ちなみに3月に行われた同校の卒業式の会場は、東京・お台場。参加人数や演出の内容に応じて、柔軟に場所を変えられる、というのは「ネットの高校」をうたうN高ならではだろう。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた。その様子はニコニコ生放送でも配信され、会場のスクリーンにはその視聴者のコメントが流れる仕組みになっていた

入学式では、バーチャル化した奥平博一校長とバーチャルYoutuberの「みみたろう」がスクリーンに登場。バーチャルYoutuberが隆盛した「今っぽい」演出は、デジタルネイティブ世代には馴染み深いものだろう。ちなみに校長は入学式終了時に会場に登場したので、会場近くにいたにも関わらず、わざわざバーチャル化していたことが判明した。

バーチャルYoutuberの「みみたろう」と、バーチャル校長の奥平博一氏が登壇

卒業式の時にも感じたが、N高の演出はなんともユニークで、面白い。生徒はVRゴーグルで目を隠されていても、誰一人として眠気に襲われることはなかっただろう。入学式といえば、生徒にとってはこれから始まる学校生活に期待感を膨らませる一方、時にその退屈さに、睡魔との葛藤を強いられるものでもある、と思う。

N高がわざわざこうした演出にこだわるのは、式をエンターテインメント化してしまって、生徒に楽しんでもらおうという考えがあるためだろう。実際、会場は何度も笑いの渦に包まれていた。

式に限らず、同校が実施するイベントはどれもユニークだ。「遠足」こと『ドラゴンクエストX』を活用したオンライン交流、「文化祭」こと『ニコニコ超会議』でのブース出展、「合唱コンクール」こと『ニコニコ超パーティー』での合唱披露――。

通常の学校であれば、内々で、近隣の住民を巻き込む程度の規模のイベントでも、N高にかかれば、それら一つひとつがマスに向けたプロモーションイベントになる。新入生の中には、過去のそういったイベントを見て、N高に興味を持った人も多いことだろう。もちろん、今回の入学式にも多くのメディア関係者が参加していた。

奇抜なイベントの多いN高

「派手さ」が目立つも、中身は堅実

ここで考えたいのが、今年約4000人もの生徒が入学したということは、その生徒達の保護者が「N高を信用して子どもを入学させた」ということだ。新入生の数パーセントはすでに稼ぎのある大人も含まれているわけだが。

先に紹介したイベントは世間の目を引く一方で、保護者に「なんだか変な学校だ」と評価されかねない。だが、N高にはそうしたイメージを払拭するだけの実績が出つつあるという。以下、いくつか具体的な数値を紹介する。

例えば、卒業生の進路決定率。全日制高校では94.3% の人が進学や就職といった進路を決めている一方、通信制高校の数値は61.5% と少々その数値を落としている。ではN高はどうかというと、その中間の値で、81.8% の生徒が進路決定しているとのことだ。

N高卒業生の進路決定率

また入学時、「元々いた学校で不登校だった」生徒も、N高全体と同じような割合(約77.1% )で進路を決定できているという。これらの結果を踏まえ夏野社長は、「不登校の人にとって『N高』は十分な選択肢となり得ることが実証できたと思っています」と手ごたえを感じているようだ。

入学時、「不登校」と回答した生徒の進路決定率

これらの数字から、派手さが目立つ一方で堅実な教育を実施していることがうかがえる。こうしたデータを知れば、保護者も安心してN高に子どもを送り出せることだろう。

実際、同校が在校生の保護者に対して実施したアンケートでは、約8割が「満足した」と回答した。さらに、その割合は2016年度より年々増えている。

N高が実施した在校生の保護者へのアンケート結果

「ネットの高校への進学」は当たり前の選択肢に

在籍生徒数が年々増加していることからも、N高が多くの人に受け入れられつつあることがわかる。

その傾向は夏野社長の身の回りでも感じられたそうで、「実は私の娘も、かなりN高に興味を持っていたんです。結局違う高校に進学することにはなりましたが、周囲の友人ともN高の話をしていたと聞き、進学の選択肢の中にN高が当たり前のように上がってきていることを実感しました」とコメントした。

N高在籍生徒数の推移

今後も在校生、および卒業生がもっと増えていくと、その評判は口コミで広がっていくことだろう。

魅力的な学校イベントや、自由度の高い学習環境に魅力を感じた生徒が進学・編入を志し、実績に見る堅実なカリキュラムが保護者の信頼を生む。今年、N高に約4000人もの新入生が集まったのは、同校の魅力が世の中に浸透した結果だと言えそうだ。

集合写真。画像真ん中が奥平博一校長
メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を輩出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

デジタルホワイトボードにグーグルが参入、独自の強みとは?

デジタルホワイトボードにグーグルが参入、独自の強みとは?

2018.09.04

ライバルひしめくホワイトボード市場に巨人が挑む

グーグルが指摘するホワイトボードの問題とは何か

独自機能やAI技術の投入でライバルに対し差を生む

8月にグーグルがデジタルホワイトボード「Jamboard」の国内発売を発表した。タッチに対応した大型のディスプレイで、オフィスの会議室などに置くことを想定した製品だ。

グーグルの「Jamboard」と、Google Cloud 日本代表の阿部伸一氏

このデジタルホワイトボードは、教育市場では電子黒板とも呼ばれており、マイクロソフトなど多数の競合製品がひしめいている。日本では後発となるグーグルだが、その強みはどこにあるのだろうか。

ホワイトボードの課題を解決し、遠隔地とコラボ

働き方改革によるワークスタイルの多様化に伴い、課題として持ち上がってきたのが複数の拠点をまたぐコミュニケーションだ。地方の支社やサテライトオフィス、在宅勤務など、さまざまな拠点から会議に参加する場面が増えている。

だが、多拠点の会議でも「ホワイトボードを使い始めると、問題が起きる」とGoogle Cloud 日本代表の阿部伸一氏は指摘する。ホワイトボードを写真として共有するなどの手段はあるものの、微妙なタイムラグから距離感が生まれ、対等な議論が進まなくなるというわけだ。

そこでグーグルが開発したデジタルホワイトボードが「Jamboard」だ。2017年5月に米国で発売後、Dow JonesやNetflix、Whirlpool、Spotifyなどが続々と導入。世界展開において、日本は14カ国目の発売になるという。

本体は55インチのタッチ対応ディスプレイとなっており、素手による手書きや付属のペン、消しゴムを用いた操作にも対応する。壁掛け用マウントやオプションのスタンドで設置し、実際の導入作業も有償のサービスとして提供するという。

素手や付属のペン型デバイスで自由に書き込める

特徴は、グーグルが企業や教育機関に向けて提供するクラウドサービス「G Suite」との連携だ。Googleドキュメントやスプレッドシートの文書を呼び出せるのはもちろん、検索やGoogleマップといったサービスとも連携するという。

多拠点での利用時には、複数のJamboardを連携したコラボにも対応。スマホやタブレットのアプリを用いることで、Jamboardがない拠点や在宅勤務でもリアルタイムに内容を共有できる仕組みだ。

スマホやタブレットからも会議に参加できる

グーグルのクラウド連携や価格に強み

調査会社のリサーチステーションによれば、2018年時点でのデジタルホワイトボードや電子黒板の市場規模は世界で43億1000万ドル。2023年には51億3000万ドルにまで伸びる見通しだという。

日本市場では、グーグルの直接のライバルとしてはマイクロソフトが「Surface Hub」を投入しているほか、総合電機メーカー、黒板メーカーなどがさまざまな製品を展開している。

その中でグーグルは、Jamboardの強みとしてG Suiteとの連携や人工知能(AI)技術、価格を挙げている。

たとえば書き込みの内容はGoogleドライブに自動的に保存される。企業の会議室ではホワイトボードの消し忘れがセキュリティ上の問題になりがちだが、Jamboardならクラウドに保存し、会議を再開したいときには簡単に復元できるというわけだ。

書き込んだ内容はGoogleドライブに自動保存される

また、グーグルが一般向けに提供するインターネットサービスとも連携できる。グーグル検索でヒットした画像の取り組みや、誰もが見慣れたGoogleマップの地図を貼り付けられるのは、グーグルならではの強みといえる。

グーグルのAI技術も活用されている。日本語に対応した文字認識機能では、ペンで手書きした文字を認識し、キーボードから入力したものと同じテキストとして扱える。手書き文字がテキストになれば検索にヒットするので、後から参照しやすい。

本体価格は64万円(税別)で、マイクロソフトの55型モデルが100万円を超えていることを考えれば大幅に安い。米国の4999ドルよりは高いものの、これは日本の商流を考慮したものだという。

国内では法人市場に強いNTTドコモやソフトバンクなど7社が販売パートナーとなっており、関連したサービスやソリューションとのセット導入で値引きを期待できそうだ。