「放送業界」の記事

NHK受信料「ワンセグ携帯」に支払い義務、最高裁確定で注意すべきこと

NHK受信料「ワンセグ携帯」に支払い義務、最高裁確定で注意すべきこと

2019.03.13

ワンセグもNHK契約義務、初めて最高裁で認められる

テレビと無縁でも契約該当する可能性、心配ならiPhoneを

テレビ離れ進めば、徴収手段もどんどん広がる?

ワンセグ携帯を持っているだけで、NHKと受信契約を結ぶ義務が発生することが確定した。

ワンセグ携帯でのNHK受信契約義務をめぐる訴訟は複数起こされていたが、最高裁は3月13日、そのうちの1件について、契約義務があるとしていたNHKの勝訴を初めて確定した。スマートフォンや携帯電話といった、本来はテレビ視聴を目的としない機器であっても、ワンセグ機能を搭載していればNHKと受信料契約を結ぶ義務が生じると認められた。

NHKは、受信契約義務のある受信機の設置数のうち、「ワンセグ機能付き携帯電話のみを設置されている方の割合は約0.3%と推計しています」と、影響範囲の狭さを説明している。ただしワンセグ機能は、特に国内主要キャリアが近年取り扱った国内メーカー製のスマホ・携帯電話では、ほとんどの機種で標準搭載されてきた。実際には0.3%以上の人に影響が及ぶ恐れもある。

今回の件を受けてワンセグ所持により契約義務が発生した場合、NHKの定める「地上契約」に該当すると考えられ、月額で1,260円から、年額前払い割引でも13,990円の支払いが必要だ。

またNHKは受信料契約について、生計をともにする同一世帯では、受信機器の数にかかわらず1件の世帯ごと契約でかまわないとしているが、単身赴任や、大学生(未成年含む)の子供のひとり暮らし、2世帯家族で生活費が別々などの場合は、家族であっても別途の受信料契約が必要(家族割引あり)になる場合があるとしている。家族の所持するスマホについても、ワンセグ機能の有無を確認しておく必要があるだろう。

NHKの視聴はしないが、スマートフォンは無いと困るという場合は、海外メーカーのスマートフォンであればワンセグ機能を搭載しないモデルを選べることがあり、特にアップル社のiPhoneであれば全機種でワンセグ機能を搭載していない。スマートフォンの細かな機能などを把握できないのであれば、iPhoneを選んでおけば間違いないだろう。

NHKは従来から、「NHKのテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付携帯電話についても、放送法第64条によって規定されている『協会の放送を受信することのできる受信設備』であり、受信契約の対象」と説明してきた。

またNHKは、2019年4月の開始を目指し、テレビ放送のインターネット常時同時配信の準備を進めている。放送法の不備を指摘したい人々の間では「インターネットに接続するだけで契約義務が生じるようになる」と喧伝する声も根強いが、インターネットというネットワークの相互接続で成り立っているインフラを利用する側にいながら、その上でいちコンテンツ提供者以上の何らかの権利を主張できるはずがない。

脱・聴取率競争のTBSラジオ、次の一手はラジコリスナーの“見える化”

脱・聴取率競争のTBSラジオ、次の一手はラジコリスナーの“見える化”

2019.01.29

ラジコリスナーのデータを1分単位で可視化するツールを導入

リスナーをリアルタイムで把握できると何が変わるのか

TBSラジオが目指すのは“データドリブン”なラジオ局

他局との聴取率競争ではなく、“ノンリスナーのリスナー化”に注力したいとの姿勢を鮮明にし、次々に新たな施策を打ち出すTBSラジオ。先日、同局が「スペシャルウィークをやめる」と発表したことは記憶に新しいが、次の一手はラジコリスナーの“見える化”だ。TBSラジオはどんな手法でリスナーを可視化し、そのデータをどのように番組づくりに反映させるのか。三村社長にも話を聞いたので、合わせてお伝えしたい。

脱・聴取率競争に舵を切ったTBSラジオは、ラジコリスナーの可視化ツール「リスナーファインダー」(画像右上がモニター)を導入する

ラジコ聴取者を1分単位で把握、データは番組づくりに活用

TBSラジオは今回、「radiko」(ラジコ、スマートフォンのアプリやパソコン=インターネット経由でラジオが聴取できるサービスのこと)の聴取者をリアルタイムで把握し、その情報を番組制作に活用できるデータダッシュボード「リスナーファインダー」を採用し、試験運用を開始した。このツールは電通が開発したもので、TBSラジオが業界で初めて採用する。精度向上のための試験運用は2019年3月末までで、本格運用は4月以降となる見通しだ。

リスナーファインダーを導入することで、TBSラジオでは、ラジコ経由で同局の番組を聴いているリスナーの人数、年代、性別を1分単位で把握できるようになる。ラジコには、ラジオ番組の面白かった場面をSNSでシェアする機能「シェアラジオ」が実装されているが、リスナーファインダーでは将来的に、SNSでシェアされた回数なども確認できるようになるという。TBSラジオでは同ツールを使いながら、どんなデータ・機能が役に立つかを詰めていく「アジャイル開発」の手法を用いて、リスナーファインダーの使い勝手と効果を高めていく方針だ。

スタジオのサブで「リスナーファインダー」を活用している様子。右上のモニターで、制作スタッフはラジコリスナーの人数や年代、性別などをリアルタイムで把握することができる。なお、このモニターには象徴的な意味もあって、同じデータは制作スタッフが各自のPCなどでも確認可能とのことだ

リアルタイムで把握できる情報は上記のとおりだが、このツールは番組放送後の事後分析にも活用可能だ。番組放送の次の日には、より細かいデータを参照・分析できる。例えば聴取者の流出入、ユニークユーザー数、平均聴取分数、聴取者の地域別分布などを確認したり、リスナーが未婚か既婚か、子供はいるか、職業、世帯年収といったデータを参照したりといった使い方ができる。これは、リスナーファインダーが電通の「People Driven DMP」をベースとするツールだから可能となる機能だそうだ。

同ツールの機能で興味深いのは、ラジコリスナーがどんな嗜好を持った人なのかを把握するため、TBSラジオが「アンケートの回答結果」を参照できるという点だ。例えば、ある番組を聴いているリスナーが、「どんなクルマを買いたい」と思っているかといったような情報が、この機能で把握できる。このアンケートは番組に連動したものではなく、リスナーファインダーで集められる(People Driven DMPの)情報に紐付いたデータらしいのだが、こういった情報を番組づくりに役立てる手立てはいくらでもありそうだ。

編成・営業セクションでもリスナーファインダーのデータは確認可能だ

目指すはノンリスナーのリスナー化

TBSラジオはビデオリサーチが調査している「聴取率」で業界トップのラジオ局だが、他局に数字で勝っていても、リスナーの数は「徐々に、一貫して減り続けている」(TBSラジオの三村孝成社長)。重要なのは他局との聴取率争いではなく、ノンリスナー(ラジオを聴いていない人)をリスナー化し、ラジオを聞く人自体を増やすことなのだ。「ラジオ局の敵はラジオ局ではなく、世の中のありとあらゆる新しいメディア」だと三村社長は話す。

ラジオの聴取率とその調査方法についてはこちらの記事で詳説したが、簡単にいうと、ビデオリサーチの調査は1年間のうちの6週間を調査期間に設定し、アンケートで聴取率を調べるというものだ。これを目安にして番組づくりをするよりも、ラジコリスナーの数を毎日、継続して確認し、どんな企画がリスナーに受けたのかをスピーディーに検証して、番組づくりにいかしていく方が、結果的にはリスナーのニーズにも応えられるのではないか。これがTBSラジオの仮説であり、リスナーファインダーを導入して取り組む課題なのである。

リスナーファインダーはラジコリスナーを対象とするツールであり、いわゆるラジオ受信機で聴いている人のデータを取ることはできない。しかし、ラジコの数字が上下すれば、聴取率全体も連動して上下するという実感を三村社長は得ているという。ラジコリスナーを意識して作った番組は、結果として、ラジオ聴取者全体を意識した番組にもなるということなのだろう。

「リスナーファインダー」導入でTBSラジオは変わるのか

では実際に、リスナーファインダーの導入後、TBSラジオの番組はどう変わるのか。例えば、あるゲストが登場してラジコリスナーが急増した場合、そのゲストの出演時間を延長するといったような手法はありうるのかというと、「それはない」というのが三村社長の回答だった。

少し心配なのは、“聴取率狙い”で番組のカラーが変わってしまうケースがあるのではないかという点だ。社会問題やニュースなどを取り扱うワイド番組、例えばTBSラジオであれば「荻上チキ Session-22」のような番組では、何らかのテーマに対し、パーソナリティーや出演者が態度を鮮明にし、自らの考えを話す場面が多い。それがラジオ番組の魅力であったりもするので、リスナーファインダーで明らかになったリアルタイム聴取率を見てリスナーに忖度し、発言内容を左右するようなケースが発生しては自縄自縛といった感じになってしまう。荻上チキさんがそのような忖度をするとは全く思っていないが、念のため、この点についても三村社長に聞いてみると、以下のような回答を得られた。

「番組のスタンスに編成から方針を出すことはないです。(リスナーファインダーで得られる)数字で現場を管理するのではなく、よりクリエイティブなアイデアが制作現場から出てくるきっかけになればと考えて採用を決めました」

三村社長はリスナーファインダーをラジオ番組の「制作支援ツール」と位置づける。他局と聴取率争いを繰り広げて一喜一憂するのではなく、ラジコリスナーの聴取データを参考にして、新規リスナーの開拓に向け、製作現場が多様なアイデアを出すために、このツールを使ってくれればとの考えだ。そんな姿勢を三村社長は、「TBSラジオは“データドリブン”なラジオ局を目指す」との言葉で表現した。

実際のところ、リスナーファインダーでは他局のデータは可視化できないので、戦う相手は他局ではなく「過去の自分」(三村社長)、つまり、過去に放送したTBSラジオの番組ということになる。企画・ゲストによってラジコリスナーがどのように増減したかを検証し、今後の番組づくりに活用するというのが同ツール導入の目的だ。

ただ、リスナーファインダー上でラジコリスナーが増えたとしても、その新規リスナーが他局から流入した人なのか、ノンリスナーがリスナー化した人なのかについては、同ツールで調べることができない。このあたりについて三村社長は、「今までにない企画をやって増えた分については、そのうちのいくばくかはノンリスナーだと思っていきたい」とした。

TBSラジオの三村社長

いまだに葉書でリスナーからのメッセージを受け取ることも多いと聞くし、いい意味でアナログなメディアとしての魅力を持つのがラジオだとは思っていたのだが、業界で最も聴かれているラジオ局が、“データドリブン”という言葉を使って自らの目指すべき姿を語ったのは興味深い。リスナーファインダーの導入でTBSラジオの番組にどのような変化が見られる(聴かれる)のか、ラジオファンとして注目していきたいと思った。

なぜTBSラジオは「スペシャルウィーク」をやめるのか

なぜTBSラジオは「スペシャルウィーク」をやめるのか

2018.12.17

聴取率争いに自ら終止符? TBSラジオの決断

ラジコの普及で重要性を増すリアルタイムの聴取者数

「ノンリスナーのリスナー化」がラジオ業界の至上命題

TBSラジオが「スペシャルウィーク」をやめる――。11月29日(木)深夜の「木曜JUNK おぎやはぎのメガネびいき」(毎週木曜深夜25時からTBSラジオで生放送)でこの件が話題になった時は、初耳だったので驚いた。なぜ、こういう決断に至ったのか。TBSラジオのスペシャルウィークは今後、どうなるのか。TBSラジオの三村孝成社長に聞いた話も交えてお伝えしたい。

TBSラジオは12月8日(土)、AM波を送信している戸田送信所(埼玉県戸田市)の使用電力を再生可能エネルギーに切り替え、「ナイツのちゃきちゃき大放送」(毎週土曜日、朝9時から午後1時までの生ワイド番組)内でセレモニーを実施。この機会を捉え、TBSラジオの三村社長(左端)に話を聞いた

ラジオの「スペシャルウィーク」とは何か

本題に入る前に、まず、ラジオのスペシャルウィークとは何かをおさらいしておきたい。

スペシャルウィークと密接に関係するのがラジオの「聴取率」だ。これはビデオリサーチという会社が調べているもので、調査は首都圏、関西圏、中京圏の3カ所でアンケートを実施して行う。

そのうち、首都圏の調査を取り上げて中身を詳しく見ていきたい。まず、調査の対象エリアは東京駅を中心とする半径35キロ圏内となっている。対象者は12歳~69歳の男女個人、標本数はおよそ3,000人。調査回数は1年に6回(偶数月)で、その調査月のうち1週間を「聴取率調査週間」に設定し、「その期間中にラジオを聴いたか」「どんな番組を聴いたか」といったことをアンケートで調べて聴取率を算出する。

つまり、ラジオの聴取率というのは、首都圏でいえば、年に6回の「聴取率調査週間」の間に、アンケート調査を受けた人が、ラジオを聴いていたかどうかによって決まる。1分ごとの数字をはじき出すテレビの「視聴率」とは、かなり性格の違う指標だということが分かる。

こういう調査方法であることから、ラジオ局は聴取率調査週間に合わせて、通常放送とは違う企画、通常放送とは違うパーソナリティーの起用、リスナーへのプレゼント企画、豪華ゲストの起用といった特別な施策を実施する。これがスペシャルウィークだ。

約150mのアンテナがそびえ立つTBSラジオ戸田送信所。1,900万戸にAM波を届けるTBSラジオの基幹送信所で、使用電力は月間11万キロワットだ。再生可能エネルギーは「みんな電力株式会社」が供給する。電力は新潟県上越市の小規模水力発電施設などから調達する

ラジオ局によって呼称は異なるかもしれないが、聴取率調査週間をスペシャルウィークと位置づけ、特別なキャンペーンを展開したり、番組の内容を変えたりする手法は業界では一般的だ。

そんな中、TBSラジオは、この調査期間をスペシャルウィークと呼称することをやめると宣言した。その期間中に、局を挙げて特別なキャンペーンを打つことも、今後はしないという。つまり、聴取率を上げるために調査週間を狙って特別企画を展開するのはやめて、今後は時期を自ら考えて特別な取り組みを行うという態度を鮮明にしたのだ。

なぜ、こういう決断をしたのか。TBSラジオは17年4カ月の間、聴取率で業界トップを走り続けているにも関わらずだ。

聴取率トップでも放送収入が上がらない現状

決断の背景として、まず注目したいのは、聴取率で業界トップのTBSラジオでさえ放送収入が上がっていないというラジオ業界の現状だ。業界全体で見ても、広告収入は25年間、ずっと下がり続けている。

それに、ラジオの聴取率も過去に比べれば低迷している。前述したビデオリサーチの調査によれば、2018年10月の首都圏の「全局個人聴取率」(12~69歳、男女、週平均)は5.2%。この数字、1990年代には9%くらいあったそうだ。

スペシャルウィークに注力した結果、聴取率で業界トップに輝いたとしても、収入は上がらないし、ラジオを聞く人も増えない。それならば、慣習に固執する必要もない。これがTBSラジオの判断なのだろう。

確かに、普段はラジオを聴かない人(ノンリスナー)が、スペシャルウィークをきっかけに聴くように(リスナーに)なるかどうかは疑問だ。

もとからのラジオリスナーであれば、何らかの特別企画やキャンペーンに興味を持った時、ラジオをつけるなり「ラジコ」(radiko、スマホアプリやPCでラジオが聴ける)を使うなりして、番組を聴くかもしれない。しかし、ノンリスナーであり、ラジオの受信デバイスすら持っていないような人たちが、これを機にラジオをわざわざ買うかどうかは微妙だ。ラジコならハードルは低そうだが、三村社長は「今の時代って、アプリをダウンロードしてもらうのもすごく大変じゃないですか」と話す。

キャンペーンは時期が大事! 今後のTBSラジオは独自展開

スペシャルウィークに他局と足並みをそろえ、聴取率争いのために力を使うのではなく、ノンリスナーをリスナー化するために知恵を絞りたい。それがTBSラジオの考えらしい。

ラジオ業界の至上命題は「ノンリスナーのリスナー化」と語ったTBSラジオの三村社長

特別なキャンペーンを展開するにしても、聴取率調査週間より効果的なタイミングは確かにあるかもしれない。三村社長の考えはこうだ。

「ラジオを聴かなくなる理由には、例えば引越しや転勤などがあります。住む場所が変わって好きな番組が聴けなくなったり、ライフスタイルが変わってしまったりして、聴かなくなるパターンです。例えば、大学生で時間に余裕のあった人が、社会人になるとか。引越しとかライフスタイルの変化が多い時期というのは、ある程度は決まっていますから、そういう時にこそ、キャンペーンを張るという方法はあるのかなと思っています」

つまり、聴取率調査週間を気にしなければ、キャンペーンや特別企画が流動的に実施できるということだ。例えば、3月は奇数月で聴取率調査はないが、ノンリスナーに訴求するには適した時期かもしれない。

また、特別企画や豪華ゲスト起用のタイミングは個別の番組で決めてもいい。「私も、企画をやっちゃいけないといっているわけではないんですよ(笑)。効果が出そうな時に、どんどん企画をやってもらいたい。それが、たまたま聴取率調査週間なのであれば、その時にやってもいいわけだし」というのが三村社長の考えだ。

TBSラジオは機を見て特別企画を仕掛ける流動性を手に入れた

TBSラジオはスペシャルウィークだけを特別視するのではなく、「毎日がスペシャル」の気持ちで通常放送に取り組みつつ、ノンリスナーをリスナー化するための施策を打ち出していく。そういう方針を明確にしたわけだ。

重視するのは「ラジコ」のリアルタイム情報

とはいえ、聴取率はラジオ局にとって、ほぼ唯一の指標だったはずだ。これからTBSラジオは、何を参考にして番組づくりに取り組むのか。三村社長はラジコのデータを重要視する。

「聴取率を調査する目的は2つあって、1つは番組編成を考えるのに使うマーケティングデータを得るためです。番組の編成が、ちゃんと効果を出しているかどうか、リスナーに受け入れられているかどうか、それぞれの番組の企画や演出が、リスナーに評価されているかどうか。それらを測る指標が聴取率でした」

「ただ、その点に関しては、マーケティングデータといいながら、52週(1年間)のうち6週間しか調査していない数字ですし、調査週から約1カ月遅れて結果が分かるというのが実情でした。一方、ラジコのデータは毎日、リアルタイムで確認することができます」

おそらく、世の中でラジオを聴いている人の割合でいえば、ラジコよりもラジオ受信機を使っている人の方がまだまだ多い。しかし、ラジコであればラジオ局側は、リアルタイムでリスナーの実数が把握できる。このデータの方が、マーケティングデータとしては有用だと判断したようだ。

「もう、ラジコも始まって9年目です。ラジコの数字が動けば、聴取率も動くというのは体感しています。ラジコの聴取人数が増えれば、基本的には聴取率も上がるんです」

ラジコで毎日、リアルタイムで聴取人数が把握できて、そのデータを重視するというのであれば、スペシャルウィークに的を絞った番組づくりをしていていいはずがない。通常放送がいかに面白く、リスナーをひきつけているかの方がはるかに重要になる。実際のところ、TBSラジオの番組製作陣も、すでにラジコの数字を参考にしているらしい。

ラジコの聴取人数と聴取率はほぼ連動しているというのがTBSラジオの読みだ

聴取率を測るもう1つの目的は、営業データとして利用するためだという。

「分かりやすくいうと、広告主が宣伝費を出しますよね、その費用対効果を測るために聴取率を使うんです。これはテレビの視聴率と似ています。この点については今後、今のままでいいのかどうか、業界で議論していこうと思ってます」

リスナーの奪い合いはもはや無意味?

スペシャルウィークをやめるというTBSラジオの決断には、賛否両論があるかもしれない。しかし、スペシャルウィークで各局がゲストの豪華さや企画の面白さを競い合い、ライバル局のリスナーを奪い合うという従来の構図だと、既存のラジオリスナーが各局の間を移動するだけで、新規リスナーの数は増えないのだとすれば、納得できる部分は大いにある。

また、ラジオ局同士が聴取率争いをする必然性は、ラジコで「タイムフリー」というサービスが始まった今、かなり薄れているような気もする。この機能を使うと、全てのラジオ番組を、放送後1週間以内であれば、後からさかのぼって聴くことができるからだ。

例えば、放送時間が重なっているTBSラジオの「JUNK」とニッポン放送の「オールナイトニッポン」を両方とも聴くことは、今となってはとても簡単なことだ。録音機材を用意する必要すらない。どちらかをリアルタイムで聴いて、もう一方を後からタイムフリーで聴いてもいいし、どちらもタイムフリーで後から聴いたって問題ないわけだ。この点を踏まえると、もはやラジオ業界には、「裏番組」という概念すらなくなっているようにも思えてくる。

なぜ業界トップのTBSラジオが率先して変わるのか

TBSラジオは長年の間、聴取率で業界トップを走ってきたリーディングカンパニーだ。そのTBSラジオが、「スペシャルウィークをやめる」「ナイター中継をやめ、同時間帯を通常の番組(新番組を含む)に充てる」「ポッドキャスト配信TBSラジオクラウドでの配信に切り替える」など、率先して新しいことに挑戦するのはなぜなのか。賛否両論があるのは分かりきっているにも関わらず、こういった決断をできる理由が知りたかったので、三村社長に聞いてみた。

「前任の入江(TBSラジオの前の社長で、現在は会長の入江清彦さん)の時から、数々の改革をスタートさせていました。改革といっても、単に変えればいいという話ではなくて、一番の目的は新規リスナーを獲得することであり、パイ(ラジオリスナー自体の数)を大きくすることです。そのためには、リーディングカンパニーが率先して変わらなければ、業界も変わらないと思うんです」

「(パイが大きくなった時に)TBSラジオだけを聞く人が増えるということはありません。ラジオ受信機もラジコも、コミュニティFMをのぞけば、NHKを含め全ての局が聴けるわけですから。ラジオメディアそのものとして、ノンリスナーをリスナー化するのが最も大事なことですし、メディアビジネスとしては、自分達だけ得をしようというのはありえません。ただ、パイが大きくなれば、シェアが変わらなかったとしても、結果としてTBSラジオリスナーは増えますよね」

ノンリスナーのリスナー化は難題だが、これを成し遂げられなければラジオ業界に明るい未来はない。これを成し遂げるため、TBSラジオは挑戦するし、変わってもいくということなのだろう。

賛否両論が予想される決断を率先して下すのは、TBSラジオにリーティングカンパニーとしての自負があるからだ

最後に、リスナーとして気になるのは、TBSラジオのスペシャルウィークで楽しみにしていた各番組の特別企画が、今後、聴けなくなる(あるいは、頻度が少なくなる)のではないか、という点だ。この懸念をぶつけてみると、TBSラジオ編成局の野上知弘さんからは「これまでもそうだったんですけど、いいゲストはいつでも入れればいいということなんです」との答えが返ってきた。年に6回かどうかは別にしても、特別な企画やゲストの起用は今後も続くとみて間違いなさそうだ。

ちなみに、2018年12月10日~16日までの聴取率調査週間で、他局がスペシャルウィークを展開する中、TBSラジオの各番組はどんな放送を行っていたのだろうか。自分が聴いた番組のごく一部を振り返ってみると、例えば「火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ」(毎週火曜日、深夜25時~27時)には漫才コンビのミキが、「水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論」(毎週水曜日、深夜25時~27時)には相方のしずちゃんがそれぞれ出演していた。これらの番組は、「スペシャルウィーク」という言葉こそ使っていなかったものの、普段とは一味違う内容になっていた。

「月曜JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力」(毎週月曜日、深夜25時~27時)は従来(少なくともここ10年くらいは)、スペシャルウィークでも通常放送(フリートークとレギュラーコーナー)を行うスタンスを貫いてきたが、今回の発表を受け、12月10日の放送では冒頭にラジオコントを放送。その後は2018年のフリートークを振り返る「特別企画」を実施した。なんとも伊集院さんらしい対応だ。番組の最後に伊集院さんは、スペシャルウィークをやめるというTBSラジオの決定について「基本的には賛成」との考えを示していた。

「メガネびいき」では従来、12月のスペシャルウィークに実施していた毎年恒例の企画「ダイナマイトエクスタシー」を12月20日(木)に放送すると発表している。こちらは、聴取率調査週間とは時期をずらして特別な企画を打つという点で、新しい取り組みだといえるだろう。

もちろん、これらのTBSラジオの番組は、放送後1週間以内であればラジコのタイムフリーで後からさかのぼって聴ける。世界の主要メディアも注目しているとか、していないとかいう噂のダイナマイトエクスタシーは、今週木曜日の深夜に開催の運びとなる。