KDDIがスマホ金融を強化、QR決済で出遅れても勝算を見出したワケ

KDDIがスマホ金融を強化、QR決済で出遅れても勝算を見出したワケ

2019.02.14

KDDIが発表した金融強化策「スマートマネー構想」とは?

しがらみなく「スマホ中心」貫けることがKDDIの強み

群雄割拠のスマホ決済に遅れて参戦、勝算は?

「スマートマネー構想」を打ち出したKDDIの高橋誠代表取締役社長

2月12日、KDDIは決済・金融事業における「スマートマネー構想」を打ち出し、4月に開始するQRコード決済「au PAY」を含むサービス強化のビジョンを語った。

スマートマネー構想では、2,000万人の「au WALLET」会員基盤を軸に、スマホ中心の決済・金融サービスを強化し、「au経済圏」の拡大を図る。QRコード決済では後発になるauだが、勝算はあるのだろうか。

余計なしがらみなく「スマホ中心」で突き進む

国内大手3キャリアの一角として、これまでもKDDIはさまざまな決済・金融サービスを展開してきた。2008年には「じぶん銀行」、2010年には「auかんたん決済」、2014年には「au WALLET」を開始。以後も生保や損保、iDeCoなどに拡大している。

これらに共通する特徴として、スマホから預金やローン、年金から保険などあらゆる金融商品を扱えるようにする「スマホ・セントリック」が挙げられる。じぶん銀行は取引の9割がスマホ経由になっており、そういった事例に、海外のキャリアからも「勉強したい」との声が相次いでいるという。

国内の銀行各社も金融商品の多様化やスマホ対応は進めているが、実店舗との兼ね合いもあり、歩みは遅くなりがちだ。だがauにはそうした”しがらみ”がない。今回のスマートマネー構想でも、スマホを中心とした決済・金融体験の実現に向けて、一直線に突き進むとの意向を示している。

「スマホ・セントリック」を合い言葉に決済や金融サービスを展開

決済・金融サービスのブランド統一は、スマートマネー構想の目玉の一つだ。新たに持ち株会社として「auフィナンシャルサービス」を設立し、じぶん銀行など関連5社を傘下に置く。会社名は「auじぶん銀行」などauブランドに統一し、ポイント投資、おつり投資、少額ローンなど新サービスを矢継ぎ早に投入する構えだ。

新体制のもとでサービスを拡充

長年の課題にも着手する。これまでMNPで他キャリアに移ると、auのサービスが使えなくなる問題があった。この制限を取り払い、au契約者以外にもサービスを開放する「キャリアフリー」化を進めることを発表した。

筆者自身もかつてはau WALLETの会員だったが、MNPで使えなくなり、キャリアフリーのdポイントや楽天ポイントに乗り換えた経緯がある。同様にauから「捨てられた」ユーザーを呼び戻すのは容易ではなさそうだが、少なくとも、これからサブブランドやMVNOに乗り換えるユーザーをauの経済圏につなぎとめる効果はありそうだ。

後発でも勝算を見出したいくつかの理由

ところで、KDDIがいう「au経済圏」とは具体的にどれくらいの規模なのか。auのサービス利用に必要な「au ID」登録者は4,000万人、au WALLETポイントの会員は2,000万人、ポイント残高は1,000億円超で、auかんたん決済などを含めた流通総額は2.5兆円規模というのが現在地だ。

au WALLETのポイント残高は1,000億円超

単純計算では1人あたり5,000ポイントの残高がある。このポイント残高を背景に、スマホ決済市場に殴り込みをかけるのが「au PAY」だ。QRコード決済で先行する楽天ペイ、LINE Pay、PayPayなどに比べて後発となるau PAYだが、勝算はあるのか。

KDDIは、「QRコード決済は急速に広まったように見えて、取引件数はまだそれほど増えていない」と主張する。実利用ベースでは、遅れは取っていないというわけだ。対応店舗数についても、楽天ペイと提携し、非接触決済の「QUICPay」を含め、国内100万箇所に展開する構えだ。

さらにauが有利な点として、「ポイントが自然にたまる」ことを挙げる。auユーザーは、毎月の携帯電話料金を支払うたびにau WALLETポイントがたまっていく。銀行口座などから残高をチャージし続ける必要のある事業者に比べて、ハードルは低い。

KDDIはこの特徴を最大限に活かし、ポイントを確認できる「au WALLETアプリ」にあらゆる金融サービスを集約するワンストップ化を進める。「毎月たまるポイントを有効活用したい」という動機を起点に、au経済圏への動線を作ろうというわけだ。

au WALLETアプリに金融サービスを集約

アプリへの機能集約はLINEが得意としてきたが、楽天も追従。楽天ペイや楽天Edy、楽天スーパーポイントなどをひとつのアプリに統合することを発表している。各社が繰り広げる、スマホを中心とした決済・金融サービス競争の最前線に、目論見通りauは躍り出ることができるのか、まずは注目したい。

メルカリのスマホ決済「メルペイ」始動、まずは「iD」加盟店で利用可能に

メルカリのスマホ決済「メルペイ」始動、まずは「iD」加盟店で利用可能に

2019.02.13

メルカリのスマホ決済サービスがついに提供開始に

三井住友カードと提携し全国90万カ所の「iD」加盟店で使える

iOS版のメルカリアプリで提供し、Android版は後日対応へ

メルカリのスマホ決済がついに始動した。フリマアプリ「メルカリ」において、本日13日より、スマホ決済サービス「メルペイ」が使えるようになる。まずは三井住友カードとの事業連携を通じ、非接触決済サービス「iD」に対応した。

メルカリは昨年11月、100%子会社として株式会社メルペイを設立し、金融関連の新規事業の実施を目指していた。メルペイのスマホ決済サービスは、メルカリでの売上金をそのまま支払いに使えるという特徴がある。メルカリ内での商品購入のほか、非接触決済サービス「iD」に対応したコンビニエンスストアやファーストフード店など、全国約90万カ所のiD加盟店で利用できる。

iD対応により全国90万カ所の加盟店で利用可能に

なお、当初利用できるのはiOS版のみで、App Storeでメルカリアプリを最新バージョン(4.0.0)にアップデートすればすぐに利用を開始できる。Android向けには後日提供を予定。

メルカリの下部メニューに「メルペイ」機能が追加されている
メルカリの売上金/ポイントも「メルペイ」で管理できる

PayPayやLINE Payが先行して話題となり、出遅れた感もあるメルペイだが、膨大な顧客数と決済金額を誇るフリマアプリとのシナジーを武器に、これらを追撃するかっこうだ。さらに同社はメルペイで、「将来的には決済手段の提供に留まらず、新たな信用を生みだし、様々な金融サービスを提供していくことを目指す」と説明している。

KDDIがスマートマネー構想で大勝負へ、6兆円規模のau経済圏が実現か

KDDIがスマートマネー構想で大勝負へ、6兆円規模のau経済圏が実現か

2019.02.13

KDDIはスマホ金融を促進し、通信との融合を目指す

グループ金融サービス会社のブランドを「au」に統一

スマホ決済強化に、au IDのキャリアフリー化も進める

KDDIの高橋誠社長が12日、「スマートマネー構想」として金融・決済サービスをさらに強化する戦略を発表した。今年4月に新たに中間金融持ち株会社を設立して、グループ内の金融サービス事業者を集約し、金融・決済サービスを促進していく。高橋社長は「スマートフォン・セントリックな金融、スマホ金融が今後重要になる」と指摘し、スマートフォンをベースにして通信・金融・決済の融合を目指していく考えだ。

KDDIの高橋誠社長

金融持ち株会社を新設しブランドを統一

新たに設立されるのはauフィナンシャルホールディングス。傘下には銀行としてじぶん銀行、決済としてKDDIフィナンシャルサービス、ウェブマネー、投資運用としてKDDIアセットマネジメント、再保険のKDDI Reinsuranceをそれぞれ移管する。同時に、従来は三菱UFJ銀行と折半していたじぶん銀行の出資比率を63.78%まで引き上げ、KDDIの連結子会社化する。カブドットコム証券も公開買付によって子会社化する。

じぶん銀行の連結子会社化などを含めて、金融・決済サービスを「整理整頓」(高橋社長)して金融持ち株会社に移管する
カブドットコム証券を含めた金融・決済サービス各社のブランドを統一する

損害保険のau損保とカブドットコム証券はauフィナンシャルホールディングスの傘下ではないが、auフィナンシャルホールディングス傘下の5社にこの2社を含めた7社は、auブランドを冠した社名に変更する。じぶん銀行はauじぶん銀行、KDDIフィナンシャルサービスはauフィナンシャルサービス、ウェブマネーはau PAY、カブドットコム証券はauカブコム証券などとなり、auブランドをさらに押し出す。

元来、金融サービスに積極的だったKDDI

KDDIは、従来から金融サービスを重視してきた。2008年にはじぶん銀行を設立し、決済サービスでは2010年のauかんたん決済を開始。2014年にはau WALLET構想を打ち出し、サービスの強化を図った。

これまでの同社の金融・決済サービス

au WALLET構想では、「グッバイ・おサイフ!」というスローガンで決済サービスを提供。ポイントサービスの強化、プリペイドカードの提供、じぶん銀行との連携などを進めてきたが、2018年にはau WALLET会員が2,000万を突破。この2,000万の会員が全て決済用口座を所有していることになり、高橋社長は「これが大事なこと」と強調する。

伸び率は低下しているが、すでに2,000万会員を獲得しているau WALLET
約4,000万のauユーザーが利用することで、ポイントを含めてすでに1,000億円以上の残高があるという

多くの企業がQRコード決済をリリースして話題になっているが、この決済サービスに紐付く決済口座が必要で、これに2,000万口座を活用するというのが同社の戦略だ。すでにプリペイドカードのau WALLETカードに現金をチャージしたり、ポイントを貯めたりしている分で、この2,000万口座に「控えめに言って」(高橋社長)1,000億円以上が貯められているという。

「これをベースにして、金融の循環をどうしてもらうかが課題」と高橋社長。実店舗での決済、オンライン決済などでau WALLET口座から決済してもらい、同社サービスなどで構築された「au経済圏」の拡大を図る。

金融商品やeコマースなど、auユーザーを中心としたau経済圏は2.5兆円規模に達している

鍵握る「スマホ金融」、キャリアフリー化してでも拡大

この戦略の鍵となるのが「スマホ金融」だ。まずはスマートフォン決済の強化として、QRコード決済の「au PAY」を4月に開始。従来のau WALLETカードなども継続するが、中小型店舗への導入に適したQRコード決済を提供することで、au経済圏の拡大を図る。19年度早々には、おサイフケータイ、非接触決済のQUICPay、QRコード決済といったスマートフォン決済全体で100万カ所の対応店へ拡大する。

スマートフォンだけで完結する金融商品を強化することで、au経済圏をさらに拡大する

KDDIの営業による加盟店開拓を行うほか、楽天との協業によって楽天ペイ対応店への拡大に加え、食べログとも連携し、飲食店への加盟店開拓を強化していく。「すでに100万カ所(の加盟店拡大)は見えている。QRコード決済(対応店)だけで数十万カ所はできるのでは」と高橋社長。同様の加盟店数は、例えばLINE Payも100万カ所を達成しており、大型店以外にどれだけ拡大できるかが鍵になるだろう。

決済ではすでにクレジットカードやプリペイドカードもあるが、QRコード決済で中小店舗にも拡大する
食べログとの連携では、加盟店への送客などでも貢献したい考え

こうした戦略において、会員IDのau IDがキャリア限定となっている点も課題で、今夏にもキャリアフリー化を実施する。同時に、決済、ポイントの各サービスもキャリアフリー化し、誰でも会員となり、決済/ポイントサービスが利用できるようになる。長く携帯電話のauユーザー向けのサービスとしていただけに、「我々にとっては一大イベント」と高橋社長は力を込める。

ID、決済、ポイントをauユーザー以外にも開放する

中心となるのはスマートフォンで、従来のau WALLETアプリを拡張して主力に据える。預金・送金、カード、投資、ローン、保険などの契約が、全てau WALLETアプリ経由でスマートフォンから行えるようにする。

スマートフォンで完結する決済・金融サービスをau WALLETアプリを中心に提供する

au WALLETアプリではポイントやチャージした残高が確認でき、そこからQR決済やeコマース、各種の金融商品へ誘導することで、経済圏での利用を促進する。じぶん銀行による個人間送金や残高の払い出しが可能なほか、出金・送金機能はさらに拡充する。auのiDeCo、ポイント運用、お釣り投資、少額ローンといったサービス拡充も続ける。

au WALLETアプリの例
すでに対応しているサービス以外にも、今後ポイント運用などのサービスを随時提供していく

KDDIの柱と位置づけ、6兆円規模の金融サービスへ

KDDIは、「通信とライフデザインの融合」を戦略の柱としてきた。中心となるのはユーザーと通信であることには変わりないが、ライフスタイルをデザインするサービスを提供することで、ユーザーとの繋がりを強化し、通信の長期利用に繋げるという戦略だ。

au WALLETから一連の金融・決済サービスへと拡大する戦略

その中で金融・決済サービスは重要な位置づけだ。通信会社として「これだけ金融関係のサービスを準備しているのはKDDIだけ」であり、固定・携帯の通信サービスを使えば自動的に貯まるポイントを活用できる仕組みは「通信会社ならでは」だ。そしてauユーザー4,000万という顧客基盤があり、しかもすべてのユーザーが通信料金を支払っているという意味で「口座がアクティブに生きている」。この3点を強みとして、2021年度には決済・金融取扱高を6兆円規模まで拡大することを狙う。

同じ通信事業者としては、新たに携帯事業に参入する楽天も多くの顧客基盤と巨大な経済圏を抱えていて、銀行業参入が近づくLINEも同様だ。こうした中、QR決済としては後発のKDDIが、いかに利用拡大に繋げられるか。今後の舵取りに注目したい。