「携帯電話」の記事

首相や官房長官までが携帯値下げに言及する背景と影響

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第24回

首相や官房長官までが携帯値下げに言及する背景と影響

2018.11.19

政府の「4割引き下げ」発言の背景を改めて考える

日本の携帯料金は本当に高いのか?

携帯料金の引き下げがインフラ投資に影響

2018年8月に菅義偉官房長官が、携帯電話の料金は4割下げる余地があると発言したことが大きな波紋を呼んだ。それを受けて携帯各社が立場を表明せざるをえなくなったりと、いまだに余波は続いている。なぜ国を仕切るような人達が、携帯電話料金の引き下げにこだわったのだろう。

発端は菅官房長官の「4割引き下げ」発言

2018年8月21日、菅義偉官房長官の「携帯電話の料金は4割程度引き下げる余地がある」という発言が、携帯電話業界にとても大きな波紋を呼んだ。

この発言の背景には、スマートフォンの普及によって、携帯電話料金が家計に占める割合が年々高まっていることにあるようだ。菅官房長官は発言の根拠として、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、日本の携帯電話料金が平均の約2倍であるなど諸外国と比べ携帯電話料金が高いこと、2019年に携帯電話事業への参入を予定している楽天が、既存事業者よりも安い料金で参入する方針であることなどを挙げている。

4割引き下げ発言の余波はその後も続いた。実際、2018年9月に実施された沖縄県知事選において、政権与党である自民党らが応援する候補が、携帯電話料金の4割削減を目指すことを、公約の1つとして掲げて選挙運動をした。各種報道を見るに、この公約は若者から支持を得るための目玉の1つとなっていたようだ。

ここ最近携帯電話業界の競争促進のため市場ルールの見直しを進めてきた総務省や公正取引委員会なども、発言を受けて再び携帯電話の料金などに関する議論を活発にしていくと見られる。このように、官房長官の携帯電話料金4割引き下げ発言は、携帯電話業界に非常に大きな影響を与えているのだが、実は政府関係者が携帯電話料金の引き下げに言及するのは、今回が初めてではない。

記憶に新しい所では、2015年に安倍晋三首相も携帯電話料金の引き下げに言及している。これを受けて総務省のICTサービス安心・安全研究会が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を実施し、その結果、スマートフォンの「実質0円」販売に代表される、端末価格を過度に値引いて販売することが事実上禁止されるなど、市場に大きな影響が及んだ。

2015年の安倍晋三首相の携帯電話料金引き下げ発言に端を発して実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」。その結果は携帯電話業界の商習慣に大きな影響を与えた

大手3社は「競争せず儲けすぎ」は本当?

しかしなぜ、首相や官房長官など、国を仕切る人物が、相次いで携帯電話料金の引き下げを求める発言をしているのだろうか。その理由は、携帯電話会社が比較的国内に限られた事業を展開していながら、長期にわたり高い利益を上げ続けていたことが要因として考えられる。

2017年度の各社の通期営業利益を見ても、NTTドコモが9,733億円、KDDIが9,627億円と、いずれも1兆円に迫る規模だ。ソフトバンクはまだ上場していないが、その親会社であるソフトバンクグループの営業利益は1兆3,038億円で、うちソフトバンクを主体とした国内通信事業の利益は6,829億円と、半分近くを占めていることが分かる。

携帯大手3社は好調な決算を継続しており、2017年にはソフトバンクグループが1兆円超え、NTTドコモやKDDIも1兆円に迫る営業利益を出している

2017年度の通期決算で1兆円規模の利益を出している日本企業は、他にNTTドコモの親会社である日本電信電話(NTT)と、トヨタ自動車くらいしかなく、それに続くのも自動車会社が主。だが自動車会社は国内だけでなく海外でも利益を上げているが、通信会社、特に携帯電話会社は利益の多くを国内で稼ぎ出している。

また自らインフラを敷設する携帯電話会社は、20年にわたる再編を経てNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3グループに集約され、競争停滞が続いている。首相や官房長官はその競争停滞が通信料金の高止まりにつながり、携帯電話会社が儲けすぎていると見て、国民からの支持を得るべく料金引き下げに言及するようになったといえそうだ。

だがそもそも、政治家が民間企業が提供するサービスの料金に対して言及すること自体、民事介入であり好ましいものではないし、日本の携帯電話料金が本当に高いのか? ということに疑問を持つ専門家もいる。また確かに大手携帯キャリア同士の直接的な競争は停滞しているが、「ワイモバイル」など大手キャリアのサブブランドや、低価格サービスを提供するMVNOらによる競争は激化の一途をたどっており、実は携帯電話料金を安く抑える選択肢は大幅に増えている。

低価格サービスに関する競争は激しさを増しており、2018年8月にはソフトバンクのワイモバイルブランドが、料金据え置きで通信容量を増量することを発表している

また大手キャリアは高い利益を得ている一方で、携帯電話のネットワークインフラ改善に向けた投資には毎年数千億円規模の金額を費やしている。それが世界有数の充実した携帯電話ネットワークを作り上げていることも事実だ。もし利益が急速に落ちてしまえば、そのしわ寄せとして地方を中心にインフラ面で大きなデメリットが生まれることも考慮すべきだろう。筆者はといえば、携帯電話市場に関する多角的な評価なくして、国が携帯電話料金引き下げに言及するのは、やはりナンセンスではないかと感じている。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。