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一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

間もなく本格始動! CESの展示から5Gスマホの動向を予測

間もなく本格始動! CESの展示から5Gスマホの動向を予測

2019.01.15

「CES 2019」の5G関連展示に注目

サムスンがリリースを予告した「Galaxy S10」に5G対応の可能性も

2019年は、5Gスマホの先行導入を目論む各社の動きが活性化?

2019年、次世代移動通信システム「5G」のサービス開始が見えてくる中、ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」には5Gに関する展示が多数登場した。

あらゆるモノがネットにつながる時代において、5Gは重要なインフラとして注目されている。その中でも、誰もが持ち歩く情報端末として身近な存在である「スマホ」の5G対応はどう進んでいるのか。CES 2019の展示から、5Gの最新動向を見ていこう。

CES 2019では出展各社が「5G」をアピール

インテル「クラウドゲーミング」でPCゲームがより身近に

日本においても2019年の先行サービス開始が予定されている5Gだが、そのメリットは単なる「通信の高速化」に限らない。例えば、多くの人が同時に通信できるようになることで、満員のスタジアムや都市部の通勤電車でも快適に通信を利用できるというメリットもある。

インテルのブースでは、5Gを利用した「クラウドゲーミング」を実演。「応答速度の向上」という5Gのメリットを活かし、クラウド上の強力なCPUやGPUを使ってゲームをすることで、一般的なノートPCでもゲーミングPC並みの快適さで遊べることを示した。本格的なPCゲームをスマホでプレイできる時代もいずれ来ることだろう。

インテルによる5Gを利用したクラウドゲーミングのデモ

相次ぐ5Gスマホの登場、「Galaxy S10」に期待

5Gスマホの姿も明らかになってきた。サムスンは5GスマートフォンのプロトタイプをCES 2019のブースに展示。本体にはケースが装着されていたものの、これまでのスマホと大きく変わらないデザインに見える。

サムスンによる5Gスマートフォンのプロトタイプ

さらに同社は、「Galaxy S10」に相当する新製品を、2月20日にサンフランシスコで発表すると予告。新製品の5Gへの対応は明言されていないものの、翌週にはバルセロナでモバイル業界最大の展示会「Mobile World Congress(MWC)」が予定されていることから、他社に先駆けた5Gへの言及が期待される。

サムスンは「Galaxy S10」とみられる新製品を2月20日に発表する

米国では、大手キャリアのベライゾンがサムスンと組み、2019年前半に5Gスマートフォンを投入することも発表されている。米中摩擦によりファーウェイが米国市場から排除されている中、サムスンが米国キャリアと組み、5G市場でリードを築けるかどうかは注目ポイントと言えるだろう。

5Gスマホに必要なモデムやアンテナモジュールを供給するクアルコムのブースには、中国メーカーによる中国市場向けの5Gスマホが展示された。

クアルコムブースに並んだ中国メーカーの5Gスマホ

クアルコムによれば、2019年には同社のモバイル向けプロセッサ「Snapdragon 855」を採用した30機種以上の5G対応デバイスが登場する見込みであるとのことだ。

まずは特定キャリア向けに登場か?

徐々にその姿を現してきた5Gスマホであるが、5G対応には一筋縄ではいかない部分も多い。その理由の1つに、周波数帯の問題がある。5Gの周波数帯には6GHz未満の「Sub6」と28GHz帯などの「ミリ波」の2種類があり、その細かい仕様は国やキャリアによって異なる。

現行のLTEにもこうした差はあり、幅広いバンドに対応するiPhoneでも地域ごとに複数のモデルを展開している。5Gスマホも同様に、まずは特定のキャリアに最適化されたモデルとして出てくる可能性が高い。

モトローラによる5G対応の拡張モジュールはベライゾン向けとなっている

日本における5Gは、大手キャリア向けの周波数割り当てが2019年3月に予定されており、ドコモは2019年9月にプレサービスを、KDDIやソフトバンクは2019年に一部エリアでサービスを開始するという。

ただし、5Gサービスが始まってもすぐに全国で5Gがつながるというわけではなく、まずはLTEを補完する形で提供すると見られている。このことから、5G対応のスマホが登場しても、5Gをフルに活用できる状況は限定的になることだろう。

他にも、アップルや毎年春にフラッグシップを発表してきたファーウェイの動向も注目される。各国で5Gが本格始動する2020年に向けて、2019年は端末メーカーやキャリアによる「先行導入」の動きが加速しそうだ。