NTTドコモの新料金プランはなぜ「分かりにくい」と感じるのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第37回

NTTドコモの新料金プランはなぜ「分かりにくい」と感じるのか

2019.05.05

NTTドコモの新料金プランが分かりにくい?

従来プランから仕組みを大きく変えたことで混乱

端末購入代の補助が不透明なことも一因

NTTドコモは2019年4月15日、新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表した。通信料と端末代を分離する「分離プラン」を採用して料金を引き下げ、なおかつ基本料やデータ通信料などをひとまとめにして2つのプランに絞るなど、分かりやすさを重視した内容となっているのだが、発表直後から「分かりにくい」という声が相次いだ。一体なぜだろうか。

複雑な要素をなくした「ギガホ」と「ギガライト」

2018年より、通信料と端末代を分離する「分離プラン」を軸としとした、利用スタイルによって2~4割程度の料金値下げを実現する新料金プランの投入を明らかにしていたNTTドコモ。その新料金プランの内容が、2019年4月15日についに明らかにされた。

NTTドコモが2019年4月15日に発表した新料金プラン「ギガホ」と「ギガライト」。いずれも2019年6月1日より提供開始される

その内容を簡単に振り返ると、新しい料金プランの1つは大容量通信を利用する人向けの「ギガホ」(2年定期契約ありで月額6,980円)で、毎月30GBの高速通信が利用できるが、それを使い切った場合も最大1Mbpsと、多くのネットサービスを実用的に利用できる速度が維持されるというのが大きなポイントとなる。

そしてもう1つは「ギガライト」で、こちらは毎月使用したデータ通信量に応じて、1~7GBまでの4段階に料金が変化する段階制のプラン。2年定期契約ありの場合、月当り1GBまでの「ステップ1」で月額2,980円、7GBまでの「ステップ4」で5,980円となることから、主としてライトユーザー向けに位置付けられるものだ。

これらはいずれも、従来バラバラに選ぶ仕組みとなっていた、音声通話をするための「基本プラン」と、インターネットを利用するための「サービスプロバイダー料金」(NTTドコモの場合は「spモード」)、そしてデータ通信をしやすくするための「パケット定額サービス」の3つをセットにしている。通話定額、あるいは5分間の通話定額が必要な場合は別途オプションを追加する必要があるものの、基本的にはギガホとギガライトのどちらかを選べばよく、以前よりもシンプルに選びやすくなったことは確かだろう。

「ギガホ」はヘビーユーザー向け、「ギガライト」はライトユーザー向けのプランとなるが、どちらも基本料やデータ通信料をセットにし、分かりやすい仕組みとなっている

だがそれにもかかわらず、新料金プランが発表された後、SNSなどでは「安くならないのでは」「分かりにくい」という声が多く見られた。NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏も、2019年4月26日に実施した決算説明会で「PRをもっとやらないといけない」と話すなど、消費者への説明対応に追われている様子がうかがえる。

分かりにくさは変化の大きさと端末代の不透明感にあり

なぜ、新料金プランが分かりにくく見えてしまったのだろうか。先の決算における吉澤氏の説明によると、理由の1つは新料金プランの仕組みを大きく変えたことにあるようだ。消費者は基本プランとspモード、パケット定額サービスを組み合わせて選ぶことに馴染んでいるため、ギガホやギガライトがパケット定額サービスの1つに見え、「別途基本料が必要なのではないか」と勘違いしている人が多くいたようだ。

2つ目は、新料金プランに係る新しい割引サービス「みんなドコモ割」と「ドコモ光セット割」の存在だ。これらの割引は、3親等以内の契約者同士であれば組むことができる「ファミリー割引」のグループに入っている人に対して適用されるもので、全て適用されれば最大で月額2,000円の値引きが受けられるのだが、この仕組みを伝わりにくいものにしているのが「シェア」の存在である。

というのも、NTTドコモが現在提供している料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」では、基本的に家族の代表者1人が「シェアパック」と呼ばれる家族全員分のデータ通信容量を契約し、それを家族でシェアする仕組みを採っている。だがデータ通信量をシェアできるグループは、必ずしもファミリー割引グループの契約回線全員という訳ではない。

新料金プラン向けの「みんなドコモ割」「ドコモ光セット割」は、「ファミリー割引」のグループ内回線全員に適用され、従来のシェアパックとは仕組みが大きく異なる

それゆえ現在はファミリー割引グループの存在自体がやや希薄になっており、それが「パケットをシェアしている人達同士でしか割引が適用されない」という誤解を生んでしまったといえる。こうした点は吉澤氏も認めており、改めてファミリー割引グループ自体の認知を高める活動をしていきたいとしている。

だがもう1つ、筆者が新料金プランを分かりにくく感じさせている要因と見ているのが、端末料金に関する施策がまだ明らかにされていないことだ。新料金が採用している分離プランでは、従来の「月々サポート」「端末購入サポート」のように、毎月の通信料を原資として端末価格を値引くことができなくなり、基本的にはスマートフォンを値引きなしで購入する必要がある。高額なスマートフォンを購入する人は、かえって割高になる可能性があるのだ。

しかしそれでは、最近増えつつある10万円を超えるようなハイエンドモデルの販売が難しくなることから、従来とは異なる形で何らかの値引き施策も求められている。NTTドコモも新しい形での端末購入補助を提供する考えは示しているのだが、新料金プラン発表時点ではその内容が明らかにされなかった。

それゆえ現時点では非常に中途半端な状態にあり、通信料と端末代を合計した場合、従来のプランと比べて毎月の料金が本当に安くなるのかどうかが判断できないのである。新たな端末購入補助の仕組みは夏商戦の新端末発表時点で公表されると見られているが、同時に発表した方が消費者には内容がが伝わりやすかったのではないかと、筆者は考えている。

NTTドコモが提示する事例では多くの人が2~4割安くなるとされているが、端末料金に対する施策が公表されておらず、価格を含めた場合の比較は現時点ではできない状況だ
ドコモが最大4割値下げの新プラン、「値下げ合戦」のトリガーとなるか

ドコモが最大4割値下げの新プラン、「値下げ合戦」のトリガーとなるか

2019.04.16

NTTドコモが新料金プランを発表

30GBで通信量超過後も高速通信可能な「ギガホ」が便利そう

通信量値下げに踏み切ったドコモ、他社はどう続く?

NTTドコモは4月15日、従来よりも割安をうたう新携帯料金プランを発表した。新プランは5月22日より予約申し込みを受け付け、6月1日より開始する。

NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏

同社は兼ねてより、「2019年第1四半期に、携帯料金を2~4割下げる新プランを発表・提供開始する」と予告していたため、今回の発表内容は携帯業界関係者にとって非常に注目の高いものであった。

実際に登場したのは「ギガホ」「ギガライト」という2つの新プラン。どのようなもので、さらには今後の携帯業界にどのような影響を与えるのか。

「シンプルでおトク」な新プラン

新プランは、同社が掲げる「従来よりもシンプルでおトク」というメッセージを強く意識したものであった。これまでの料金プランが複雑で理解できないという声に応えるべく、わかりやすいもの目指した工夫がみられる。

従来の同社のプランはやはり複雑だった。契約者は1か月に使用するデータ通信量に合わせて「パケットプラン」を選択し、さらには電話の使用頻度に応じて「基本プラン」を選択する。さらにパケットパックを家族で使う場合や、月々サポートの適用まで考慮すると、組み合わせは膨大になる。

それが今回の新プランでは、「データ通信量がいくらあっても足りない」という人は「ギガホ」に、「SNSのチェックやLINEを使う程度」という人は「ギガライト」に、と2つのプランから選ぶだけでよい。

新プランは、現行の「基本プラン」「パケットパック」を一体化させ、よりシンプルなものにした

次に、「おトク」という点について。同社は新たに、「家族でドコモを使っている」ユーザー向けの「みんなドコモ割」を提供する。これは、家族がドコモユーザーであれば、その回線数に応じて「ギガホ」「ギガライト」の月額料金を割引をするというもので、2回線で500円、3回線で1,000円引きとなる。

「みんなドコモ割」で、家族・親族の人数に応じた割引が適応される

同社の利用者のうち、約7割が「家族で3回線以上」のユーザーであるということから、新プランの料金は「みんなドコモ割(3回線利用)」で1,000円を引いた額をベースに紹介された。

実質通信制限の「ギガホ」、割引幅の大きい「ギガライト」

新プランの1つである「ギガホ」では、毎月30GBのデータ通信を利用できる。「外出先でもよくスマホを使う」「動画視聴、SNSに画像や動画をアップすることが多い」「データ量を気にせず使いたい」といった利用者を想定して用意された。

「ギガホ」の特徴は、容量を超過して通信制限にかかったとしても、通信速度が1Mbpsにしか下がらない点だ。これは従来の128kbpsに比べると、約8倍の速度であり、この数字についてドコモの吉澤和弘 代表取締役社長は「ストレスなく動画視聴、SNS利用できるスピード」と説明する。通信制限に苦い思いをした経験のある人にとっては嬉しいサービスだ。

筆者自身、よくモバイルデータ通信で動画視聴をしてしまうために、データ容量を超過してしまって「Yahoo! 乗り換え案内」や「グーグルマップ」を使えなくなり、泣く泣く1,000円を払って1GBを購入する、ということがよくある。

1Mbpsという速度は、それらのアプリを利用するのに不足なく、推奨速度が0.5Mbpsの「Youtubeを標準画質で視聴する」のにも十分なスピードだ。

通信容量を超過しても、dTVやYoutubeなどの動画配信サービス、TwitterやFacebookなどのSNSなどをストレスなく利用できる

30GBのデータ通信量は、従来は月額8,480円で提供していたウルトラデータLLパックに相当するが、新プランでは月額6,980円で利用できる。さらにこの価格は「みんなドコモ割(3回線)」に当てはまるユーザーであれば5,980円にまで下げられるため、ドコモとしてはこのプランで「約3割値下げした」という認識だ。

30GBの大容量からなる「ギガホ」プラン。標準価格は月額6,980円だが、2019年9月30日までに「ギガホ」に加入すると、「ギガホ割」が適用され、最大6か月間、1000円引きの月額5,980円で利用できる

一方の「ギガライト」は、KDDI(au)の「ピタットプラン」に似た、毎月利用したデータ量により料金が段階的に適用されるプラン。「動画はあまり見ない」「メールやSNSのチェックが多い」「自宅ではWi-Fiを使っている」といった利用者を想定したもので、このプランでは最大4割値下げの恩恵を受けられるユーザーもいる。

こちらの標準価格は、月額2,980円から。ここでも「みんなドコモ割(3回線)」を当てはめると、1GB以下の利用の場合は月額1,980円となり、従来の同社の「ベーシックシェアパック」での最安値である3,480円と比べると、約4割安くなる計算だ。

利用したデータ量に応じて料金が積み上げられる「ギガライト」

新プランはキャリア各社の「値下げ合戦」のトリガーに?

吉澤社長は、このタイミングで今回の新プランを発表した理由について、「今年は新規の事業者(楽天)も参入し、市場環境の変化が予測される。それに先んじて競争力を強化するのが狙い。マーケットリーダーとして、早めに(携帯料金の値下げを)実行に移した」と説明した。

NTTドコモが他社に先駆けて新プランを発表したことで、今後他社はこのプランを意識した新たな料金体系を検討することになるだろう。また、今年の10月にサービスを開始する予定の楽天の動きも未知数だ。

2018年8月、菅官房長官の「携帯電話料金はあと4割値下げできる余地がある」という発言から始まったキャリア各社の奔走は、ここにきてさらに熱を帯びることとなる。ひとまずは、NTTドコモのプランを踏まえてのソフトバンク、KDDI(au)のの料金プランがどう変化するかが見どころだ。

料金引き下げの切り札「プリペイド携帯」に政府もキャリアも消極的な理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第35回

料金引き下げの切り札「プリペイド携帯」に政府もキャリアも消極的な理由

2019.04.02

携帯料金の節約に、海外ではメジャーな「プリペイド方式」

日本でプリペイド方式のサービスが流行らない理由は?

値下げ議論の目的が建前でないなら、プリペイドも再検討すべき

ここ最近、行政主導による携帯電話の料金引き下げがモバイル業界で注目の的となっているが、諸外国では、携帯料金を節約するならプリペイド(前払い)方式のサービスを利用するのが一般的だ。にもかかわらず、日本では料金引き下げのためにプリペイド携帯電話を積極的に利用しようという機運は全く見られない。なぜだろうか。

海外ではとてもメジャーなプリペイド携帯

2018年に菅義偉官房長官が「携帯電話の料金は4割引き下げる余地がある」と発言して以降、携帯電話の料金に関する話題が世間を大きくにぎわせている。最近もNTTドコモが、ユーザーの利用状況に合わせて2~4割値下げになる料金プランを2019年第1四半期に提供すると発表したことから同社の動向に非常に大きな関心が寄せられているし、楽天が2019年10月に参入することによる競争激化も、注目されるところだ。

だが諸外国の動向を見ると、料金を節約しようとした場合、料金を後からクレジットカードや銀行口座などから引き落とす日本で一般的な「ポストペイド」方式より、利用料を先に支払う「プリペイド」方式が一般的だ。

プリペイド方式のサービスは、例えば「1,000円支払うと200分通話できる」といったように、利用する分量の料金だけをあらかじめ支払う仕組みだ。そのためポストペイド方式のように「20GBのプランを契約しているが、毎月2GBしか使っていない」といった無駄が発生しづらく料金を抑えやすいことから、海外では主として低所得者層や若者など、所得が少ないけれど携帯電話を利用したい人達からの支持を集めている。

プリペイド方式の携帯電話サービスは、欧米やアジアなど多くの国や地域で提供されている。写真は欧州を中心にプリペイド方式の低価格サービスを提供している「LEBARA」のSIMを扱うフランスのショップ

また長期間の契約が必要ないことから、海外旅行者や留学生などの一時滞在者などにとってもプリペイド方式のサービスは人気が高い。実際日本でも、インバウンド需要を見越し訪日外国人向けに日本でのデータ通信を安く利用できるプリペイド方式のSIMカードがここ数年で急増している。最近では空港などでプリペイドSIMカードを販売するケースも珍しくなくなってきたようだ。

訪日外国人向けのデータ通信用SIMに関しては、日本でもMVNOを中心として多くの企業が提供している。写真はインターネットイニシアティブの「JAPAN TRAVEL SIM」

そしてもう1つ、プリペイド方式はその仕組み上、囲い込みが難しく乗り換えがしやすいことから、キャリア間の競争を促すという面がある。携帯電話料金を巡るここ最近の議論では、キャリア間の競争停滞が問題視されていただけに、プリペイド方式の積極利用が競争に大きな効果をもたらす可能性は高い。

だがそのプリペイド方式のサービスを、料金引き下げの切り札として日本の消費者向けに積極的に導入しようという機運は全く見られない。料金引き下げに力を入れる行政側も、諸外国では一般的なはずのプリペイド方式の利活用に関しては、議論の俎上にさえ載せようとしていないのが現状だ。

犯罪対策の影響で活用の道が断たれる

なぜ、行政もキャリアもプリペイド方式に消極的なのか。キャリア側の理由として挙げられるのは、ビジネス上のうまみが少ないということだ。

ここ最近、月額制のサブスクリプション方式のビジネスが大きな注目を集めているように、ユーザーが契約している限り毎月確実に料金が支払われるポストペイド方式は、安定した収入が得られるという大きなメリットがある。一方でプリペイド方式は安定した収入につながらないことから、キャリアにとってはあまり提供したくないサービスでもあるのだ。

しかも日本では、多くの人がクレジットカードや銀行口座を持っている。銀行口座を持たない人が多くを占める新興国などの場合、プリペイド方式でないとビジネス自体が難しいが、環境が整っている日本で、キャリアがあえてプリペイド方式のサービスに力を入れる動機づけが弱いのである。

一方、行政側の理由として挙げられるのは、プリペイド方式がもたらす匿名性の問題だ。プリペイド方式は先に料金を支払ってしまえばサービスを利用できてしまうことから匿名性が高く、事前の本人確認を徹底しなければ誰が使っているのか分からないため、犯罪などに悪用されやすい弱点もある。

日本でも、かつてプリペイド方式の携帯電話は本人の身元確認が甘かったことから、2000年初頭にプリペイド方式の携帯電話を特殊詐欺などの犯罪に使うケースが頻発し、社会問題として注目されるに至った。そうした背景から総務省は2005年に、「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等および携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」(携帯電話不正利用防止法)を施行、プリペイド方式の契約者の本人確認が大幅に強化されている。

それを受ける形で各社がプリペイド方式の本人確認を強化したのはもちろんだが、NTTドコモなどは安全性重視の観点から、2005年にプリペイド方式サービスの新規契約自体を終了してしまっている。こうした動きによってプリペイド方式のサービスを提供しないことが安全で正しい、という印象を与えてしまったことが、日本でのプリペイド方式の有効活用という道を実質的に断ち切ってしまう要因になったといえるだろう。

もちろん現在も、ソフトバンクの「プリモバイル」のようにプリペイド方式のサービス自体は存在している。だがその知名度の低さからも分かるように、ポストペイド方式と比べ力の入れ具合は極めて弱いというのが正直なところである。今後も日本でプリペイド方式を積極活用しようという動きが起きる可能性は低いだろうが、真に消費者に多様な選択肢を与えて諸外国並みの料金低廉化を目指すというならば、諸外国に並んでプリペイド方式の選択肢を広げることも必要ではないかと筆者は考えている。