「携帯値下げ」の記事

見積もりが楽天的? 出揃ったキャリア決算、新規参入「楽天」の厳しい船出

見積もりが楽天的? 出揃ったキャリア決算、新規参入「楽天」の厳しい船出

2018.11.13

大手キャリアの「値下げ論争」への回答が出揃った

ドコモの値下げに、KDDIは様子見、ソフバンは人員削減で対策

楽天は、自前でのネットワーク敷設を想定通りに行えるのか?

10月末から11月初旬にかけて、大手キャリアが相次いで決算会見を実施。菅官房長官の「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある。2019年10月に第4のキャリアとして楽天が参入するまでに実現できるだろう」という発言に対して、各キャリアの姿勢が改めて見えてきた。

値下げ発表受け、様子見のKDDI、人員削減のソフトバンク

菅官房長官の発言で携帯3社の値下げ議論は岐路に立たされた

値下げに積極的な姿勢を見せたのはNTTドコモだ。同社の吉澤和弘社長は「2019年第1四半期に2〜4割の値下げを実施する。4000億円程度のお客様還元を考えている」と発表した。具体的な値下げ方法までは明かさなかったが、端末代金に対する割引をやめ、通信料金と分離する「分離プラン」の導入が有力視されている。

ただ、これまで吉澤社長は値下げに消極的な姿勢を示していたはずだが、突然、導入に踏み切った背景にあるのは「官邸からNTTの持ち株に圧力があったのではないか」(複数の業界関係者)と見られている。

NTTドコモの「値下げ発言」に対して「正直、驚いている」と語ったのは、KDDIの高橋誠社長だ。高橋社長は「我々は昨年、すでに分離プランを導入している。まさに分離プランのトップランナーであり、政府からの宿題もすでに済ませている」と説明した。実際のところ、「NTTドコモの値下げは、具体的な内容がわからない」(高橋社長)ようで、NTTドコモに先んじて、値下げで仕掛けるということはせず、まずは様子見の姿勢を取るようだ。

ただし、NTTドコモの値下げのインパクトによっては「対抗値下げも検討する」(高橋社長)とのこと。ソフトバンクも基本的には「すでに今年9月に分離プランを導入している」(孫正義会長)というスタンスだ。

孫正義会長は「9月に導入したウルトラギガモンスター+は、ギガ単価で見れば、世界でもっとも安いのではないか」と主張。いたずらに値下げ競争には応じない姿勢を見せた。ただし、格安ブランドのワイモバイルにおいては、来春に分離プランを導入する予定で、「1〜2割程度、安くなるのではないか」(宮内謙社長)と見積もった。

NTTドコモがどれだけ値下げしてくるか、どのくらいの影響力があるか見えないだけに、ソフトバンクでは、国内通信事業に携わる社員の約4割を今後、成長ができる分野に配置転換し、通信収入が下がっても、増益を達成できる組織体制にしていく予定だ。

第4のキャリア「楽天」の厳しい船出

菅官房長官や各キャリアの社長の話をまとめると、2019年には2回、通信料金値下げが起きる可能性が出てきた。

まず最初はNTTドコモの値下げだ。吉澤和弘社長は「2019年第1四半期」という言い方をしているが、通常、NTTドコモが料金プランなどの発表を行う場合、決算会見で明らかにすることがほとんどだ。例年、NTTドコモでは、ゴールデンウィークに突入する直前の4月末に決算会見を実施する。来年も4月末に発表し、6月あたりに値下げを実施するという流れになる可能性が高そうだ。

ここで、他社を驚かせるような料金プランが投入されれば、KDDIやソフトバンクも対抗値下げを迫られることになるだろう。

もうひとつは楽天の携帯電話事業参入のタイミング。こちらは2019年10月の予定だ。

11月8日に行われた楽天の決算会見で、料金施策について質問を受けた楽天モバイルネットワークの山田善久社長は「1年先なので、他社がどうこうよりも、ユーザー視点で魅力的な料金を提供していきたい。短期的に他社がどうだからといって決めるものでもない。最終的な料金戦略は決まっていないが、期待されているので、それに応えられる料金にできればと思う」と語った。

総務省に提出された計画書では、MVNOで提供している楽天モバイルの通信料金と同等にするつもりと言われている。しかし、第4のキャリアとして参入した場合、楽天モバイルと同じ料金設定では、ユーザーにとって魅力的には見えないだろう。当然のことながら、楽天モバイルよりも安価な料金設定でなければ、誰も振り向いてくれない。

楽天はKDDIとローミング契約し、サービス開始当初は東京23区、名古屋市、大阪市以外のネットワークをKDDIから借りることができる。

しかし、2026年までには全国に自前でネットワークを敷設しなくてはならない。それには相当なコストが掛かるはずだ。楽天では6000億円未満で実現できると強調するが、その発言を本気で信じる業界関係者はほとんどいない。

ベンダー体制図と設備投資額。「少数の実績のある企業と連携を取りながら進めている。投資額は、当初発表していた600億を下回ると考えている」との説明がなされた

MVNOよりも安い料金をユーザーに提供しつつ、しかも、全国にネットワーク構築できるだけの設備投資額を確保できるだけのソロバン勘定が楽天には求められるのだ。

2019年10月に参入する楽天に対して心配しているのが提携したばかりのKDDIだ。高橋誠社長は「NTTドコモが分離プランを入れると、大手3社がすべて分離プランになる。(キャリアの通信料金が安く見えるので)楽天は、いまのMVNOと同じ料金プランでも、通用しなくなるのではないか。そこで料金をさらに下げると体力的に持たなくなる。(低料金を期待されている)楽天のハードルが上がっているような気がする」と語った。

本来であれば、高い料金プランを続ける大手3社に対して、楽天が低料金プランで果敢に攻めていくという構図が理想だったはずだ。しかし、NTTドコモが、重い腰を上げてしまったことで、楽天にとっても、厳しい船出になってしまうのではないだろうか。

値下げ議論きっかけに岐路に立つ携帯3社、ドコモを悩ますNTTグループの呪縛

値下げ議論きっかけに岐路に立つ携帯3社、ドコモを悩ますNTTグループの呪縛

2018.11.07

利益の大半をはき出しても4,000億円を値下げするドコモ

KDDIとソフトバンクは追従せず、すでに還元済みと主張

ドコモ施策はMVNO接続料にも影響、通信ビジネスは転換期

携帯3社の2018年3月期上期の決算が出そろった。各社増収増益を果たした順調な決算だが、背後には政府による「通信料4割削減」という圧力が迫っている。その中で、NTTドコモが4,000億円規模のユーザー還元と銘打って通信料削減に乗り出した。それに対する2社は、既存プランによってすでに対応している点をアピールする。改めて各社の現状を探ってみたい。

ドコモ、半期利益を吹き飛ばす4,000億円の値下げ

ドコモは10月末の決算会見で、吉澤和弘社長が「携帯料金を2~4割値下げする。総額4,000億円規模のユーザー還元となる」と表明した。料金プランの詳細は今後検討するとしており、来年第1四半期に提供を開始する。

NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏

この新料金プランについて吉澤社長は、菅義偉官房長官による「携帯料金4割値下げ」の要請に対する影響は否定する。ドコモでは、まず4,000億円というユーザー還元のターゲットがあり、結果として2~4割という数字になった、と話す。

つまり、結果として「4割」という数字になったが、あくまで”たまたま”と位置づけたいようだ。このタイミングになったことについても、「スマートフォン利用者の拡大で、料金が分かりにくいなどの要望が高まっていた」と説明する。こうしたニーズの高まりで新料金の検討を行っており、タイミングとして政府要請と一致したのだという。

政府要請と時期が重なったのは偶然?

もちろん、携帯各社は民間企業であり、政府が料金に口を挟む根拠は薄い。そのため、ドコモとしても自主的な対応という建前は必要だ。料金値下げに対するニーズの高まりも事実だろうし、後述するように2社が分離プランに取り組んでいるので、新たな料金プランの検討を続けていたのも間違いないだろう。

それが今のタイミング、しかも来年第1四半期提供という状況での発表になったのは、政府要請への対応と見ていい。ただ、4,000億円という値下げ規模は、上期の純利益4,071億円が全て吹き飛ぶレベルであり、かなり思い切った施策だ。

加えてドコモは、5Gネットワーク構築のため2019~23年度で1兆円の投資を計画しており、値下げとともに大幅な減益に繋がる。こうした点が投資家に嫌われた形で、ドコモの株価は急落した。2021年度には売上5兆円、23年度には営業利益9,900億円台に回復することを計画しているが、利益の大半をはき出し、復活まで数年をかけた計画は、市場の理解を得られたとは言いがたい。

ドコモの背後に見え隠れするNTTの影

ここで見え隠れするのがNTTの影響だ。ドコモの株式は、親会社のNTT持株が63%強所有している。そしてNTTの株式の約35%を保持しているのは国だ。もともと、グループとしてドコモに対するNTTの影響力は大きく、その意向を無視できないドコモにとって、大幅な減益要因となる今回の新料金プランを勝手に進めることは難しい。

ドコモの発表でNTT自体の株価も急落したが、そうしたインパクトを踏まえても、政府の意向がNTTに流れてドコモの判断に影響したことは十分考えられる。しかも政府は10%への消費税増税を控えており、有権者に対して増税インパクトを抑え、政権の得点を狙いたい状況にある。

直接的な影響力の行使というよりは、間接的な忖度に近いものもあっただろう。大幅な減益を想定しながら、ドコモは継続的な増配を計画しており、株式を所有する国への影響を最小限にしようとしているようにも見える。

KDDIとソフトバンクは分離プランで還元済みと主張

これに対するKDDIとソフトバンクの2社は、すでに分離プランを提供したことによる値下げを実施したという認識だ。分離プランは、購入した端末代金に対して通信料金の割引を実施する「月月割」などを適用しない代わりに、通信料金を従来より下げたプランだ。

KDDIの場合、昨年の段階でピタットプラン、フラットプランの2つの料金プランを提供している。11月の決算説明会で高橋誠社長は、これを含めて、これまでに3,000億円規模のユーザー還元を果たしていると説明する。

KDDI 代表取締役社長 高橋誠氏

ソフトバンクはウルトラギガモンスター+の提供によって、分離プランへの移行を図った。11月の決算説明会で孫正義社長は、大容量を前提としたウルトラギガモンスター+で「ギガバイト単価は世界で最も安い」と胸を張り、さらに付随するSNSや映像サービスなどの通信を無償化する「動画SNS放題」で総トラフィックの43%をカバーしているため、「実質的に4割値下げしている」という認識を示した。

ソフトバンクは、グループのY!mobileでも一部に残る端末代金へのサポートをなくして値下げをする方針だ。またソフトバンクでは国内通信事業の人員を4割削減し、新規事業などに配置転換することでコスト効率化を図り、さらなる値下げにも対応できるようにするという。

ソフトバンクグループ 代表取締役会長兼社長 孫正義氏

分離プランでは、端末購入にともなう通信料金の割引が発生しないため、さらに端末販売は減る見込みだが、通信キャリアにとっては、端末販売にともなうコストが減少し、利益に貢献する。ユーザーから見ると、高額なハイエンド端末が買いづらくなる代わりに、毎月のキャリアへの支払額は減少する。端末価格が安いSIMフリー端末を利用するなどすれば、ユーザーの支払う総額は従来よりも下げることはできるので、ユーザー側も支払額を減らすための工夫は必要になるだろう。

通信ビジネスの転換期? MVMO料金への値下げ波及は?

こうして各社が値下げを図ると、「格安スマホ」などと政府が推進したMVNO事業者へのインパクトも大きくなる。ドコモではMVNOに対する接続料は順次下がっており、値下げとは無関係に決まることを強調しているが、算定基準への影響は出てくるだろう。するとさらにMVNOの料金が下がることも期待できる。ただ、これに関しては未知数で、MVNOの淘汰は進むことも予想される。

携帯電話料金は、シンプルにすると個別のニーズに沿わないとしてバリエーションが求められ、複雑化するとシンプルさが求められる、といった歴史を繰り返している。スマートフォンユーザーの増加で単純明快な料金プランへのニーズが強くなるため、当面はシンプルな料金プランが求められるだろう。デフレ脱出に苦戦する日本経済の下では、値下げ圧力も強い。

ドコモの新料金プランが具体的にどうなるかはまだ決まっていないが、値下げをしながらインフラの維持、災害対策、5G構築といった必要なコストをカバーし、さらに成長が期待できる領域への投資をするだけの利益を確保する、という設計が必要となる。

5Gに対する多額の投資と新規ビジネスの拡大による収益の拡大を、主力ビジネスの利益を失った状態で進めなければならないという、難しい舵取りをドコモがどう乗り切るのか。今後も動向が注目される。

煽り受けども強気のソフトバンク、4割値下げより「4割人員削減」

煽り受けども強気のソフトバンク、4割値下げより「4割人員削減」

2018.11.06

ソフトバンクが2018年第2四半期決算を実施

渦中のサウジ問題ファンドは現状維持「まずは真相究明から」

通信料は「すでに値下げ済み」、4割減らすのは”人員”

11月5日、ソフトバンクグループが開いた2018年度第2四半期決算の説明会では、サウジアラビア情勢とそれに伴うビジョン・ファンドの行方、携帯料金の値下げ議論などに多くの関心が集まる中、孫社長が熱弁を振るった。

ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏

サウジ情勢などを背景に株価は下落傾向にある一方、営業利益は前年同期比で62% 増を達成。決算説明会に登壇した孫社長は、「来年には日本経済が体験したことのないレベルの営業利益を出せるのではないかと、内心思っている」と強気の姿勢を見せた。

すでに通信事業を上回った投資事業

孫社長は、冒頭でサウジアラビアでのジャーナリスト殺害事件に言及。「決してあってはならない大変な事件だ。強い遺憾の意を示したい」。

一方、サウジ側が約半分を出資する10兆円規模のビジョン・ファンドについて、「サウジ国民から資金を預かって運用しており、投げ出すわけにはいかない。今後の新たなものをどうするかは真相究明の後に考えたい」とも語った。世界が注目する中、「現状路線を維持する」と慎重な言い回しで切り抜けた印象だ。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先は67社規模に

その中で孫社長は記者が殺害されたことから「ジャーナリズムや言論の自由への問題も提起した」と語り、会場に集まった記者たちの心情を代弁する一方、「話は大きく変わるが」と前置きしてソフトバンクホークスの優勝に言及。場の空気を変え、好決算に目を向けさせようとする話術が目立った。

NTTドコモやKDDIが通信以外の収入源を模索する中で、ソフトバンクが注力するのがビジョン・ファンドによる新規事業への投資だ。同社はAIを主体に多くの新興企業に投資する「AI群戦略」を進めており、すでにファンド事業による営業利益の合計額は通信事業を上回っている。

営業利益の内訳でビジョン・ファンドがソフトバンク(通信事業)を上回った

「4割値下げ」には「4割人員削減」で対策

2018年8月の菅義偉官房長官による「携帯料金は4割程度の値下げ余地がある」発言や、ドコモの「通信料を2〜4割程度値下げする」という発表で盛り上がる携帯値下げ議論には、「9月にSoftBankブランドで導入した分離プランで25〜30% 値下げ済みだ」と主張。Y!mobileブランドでも2019年上期に分離プランを導入し、1〜2割の値下げを見込むという。

ドコモが4000億円規模とした還元額に孫社長は触れなかったが、こうした還元を「減益の言い訳にはしたくない」と語り、ドコモを牽制。顧客還元を続けながら増益を狙うため、モバイル事業の人員を4割削減するとの方針を打ち出した。

背景には業務のロボット化がある。ソフトバンクモバイルの社内ではソフトウェア操作を自動化するRPAの導入により、事務作業の自動化を進めることで、これから2~3年をかけて通信事業の人員を4割削減し、ビジョン・ファンドが出資する新規事業に配置転換していくという。

通信事業の人員の4割を新規事業に配置転換

来たる「iPhoneが売れない時代」に向けて

携帯料金について孫社長は、「ギガ単価」の安さをアピールした。月間50GBの「ウルトラギガモンスター+」は、家族割引時に1GBあたりのデータ料金が80円にまで下がっており、「他社の半分か3分の1で、米国や欧州と比べても、世界でもっとも安い」と主張する。

ギガ単価は80円にまで低下しており、「動画SNS放題」でさらに4割安いという

ドコモやKDDIは提供していない、動画やSNSのパケットを無料化するサービスにも触れ、「無料の対象はトラフィックの43% を占めている。ギガ単価はさらに4割引きで比較されるべき」(孫社長)として、「実質4割値下げのインパクトがある」と語った。

一方、消費者からは通信料金が下がっても、分離プランでは端末の割引が受けられず、総支払額は変わらないとの声もあるが、「これまで高い端末を中心に販売してきたが、分離プランなら安いSIMフリー端末を含めて選択肢が広がる。実質的なコストダウンを図りやすくなる」(孫社長)とメリットを挙げた。

端末と回線を分離したプランをY!mobileも導入へ

分離プランでは端末が売れにくくなるが、もともと端末販売に利益はなく、減収となっても減益にはならないと孫社長は説明する。この影響を大きく受けそうなのが、ソフトバンクがこれまで売ってきた高い端末であるiPhoneだ。

かつてのiPhoneはソフトバンクが独占的に取り扱っており、ドコモとKDDIに対する挑戦者としてのソフトバンクを象徴する商品だった。だが、最近では「Pixel 3」の販売やAndroid One端末の展開でグーグルに接近している。もしかすると孫社長の目には、iPhone一強時代の終焉が見えているのかもしれない。