「少子高齢化」の記事

バズりを狙いスベって炎上、「リアルガチでやばい」年金ツイート問題

カレー沢薫の時流漂流 第33回

バズりを狙いスベって炎上、「リアルガチでやばい」年金ツイート問題

2019.03.25

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第33回は、リアルガチでやばい「日本年金機構のツイート炎上」について

日本年金機構のツイッター広告が炎上し、即ツイ消しおよび謝罪する事態になったという。その炎上したツイートというのがこちらの文言だ。

「ガチヤバイ!? リアルガチでやばいかも!? 新社会人のみなさまへ 受け取る年金少なくなってない!? ねんきんネットで確認だ!」

これは非常によくある「ウケると思ってスベッた上に大炎上」パターンであり、「炎上ガチャ」でこれが出て来たら確実に低レアなので「即売却」といった感じだ。

問題のツイートでは何かを差別、あるいは蔑視しているワケでもなく、火力としてはチャッカマン程度であり、そんなに怒らなくてもとさえ思えるが、やはり怒る方にも理由はある。

日本年金機構はこれまでに大きな不祥事を起こしてきている。2007年にはオンライン化した年金データに不備や誤りが多いことが発覚した「消えた年金問題」というのがあった。

ちゃんと年金を納めていてもそれが記録されていないため、将来の年金額が減ってしまうかもしれない、という非常に重大な事件である。国民から取るだけ取っておいて、その管理がずさん、という、メロスでなくても激怒して走り出す案件であった。また、2015年には215万人の個人情報を流出させるという情報漏えい事件も起こしている。

こんな信用残機ゼロの状態では「ちょっとしたおふざけ」でも「ガチでやばいのはお前らのせいだろ」「何故こっちを煽る? まずそっちがちゃんとしろ」「こんなことに俺たちの年金を使いやがって」という鬼のマジレスが来てしまうのは当然である。

広告にユーモアは大事だが、「年金」クラスの笑いごとじゃないテーマになると「真面目かよ!」と言われるぐらい真面目にしておいたほうが良い、という好例だ。

炎上広告が出ると必ず「おかしいと思う奴はいなかったのか」「誰か止めろよ」という声が出るが、「SNSでバズること」を目的にすると、人間の視野は2度ぐらいになってしまう。そのため、過度な悪ふざけになっているとか、弩級の差別表現が入っているということにマジで気づかなかったりするのだ。

また、社内に「これはおかしい」と思う人間が5億人いたとしても、トップが「これはウケる」と思ってしまっていたら、下っ端にそれを止めることはできない。個人がやるとどうしても考えが偏るので、企業はさまざまな性別年代の人間に意見を聞いた上で、広告を打った方が良いと思う。

だが意見を幅広く聞いた上で、一番上がそれを「考えすぎだって」と一蹴して断行したりするので、組織の炎上というのは根深い問題である。

今回の炎上を「明日は我が身」と思う理由

だが今回の年金機構の炎上は、個人的感情として「一概に責められぬ」感がある。

今回の広告はその表現を「他人事かよ」と大いに責められたわけだが、年金機構的にはそんなつもりはなく、どうやったら若者に年金に関心を持ってもらえるか、真面目に考えた結果「ああなってしまった」のではないだろうか。

二十代前半ばかりの職場でただ1人アラフォーの自分が、無理して若者言葉を使い盛大にスベッた挙句、給湯室でメチャクチャ悪口言われてた、みたいな図を想像すると、「身に覚えがある」もしくは「明日は我が身」なので、あまり責められないのだ。

実際、年金機構は年金に対し捨て鉢になっているわけではなく、何とか国民に年金に関心を持ってもらい、適切に払ってもらいたいと思っていることだけは確かなのである。

ところで、私は去年無職になったことにより、厚生年金から国民年金になってしまった。当然国民年金だと厚生年金より将来もらえる額は少ない。将来の不安を感じた私は、「国民年金基金」の資料を取り寄せた。

国民年金基金とは、自営業や私のような無職が国民年金とは別途で年金料を収め、将来もらえる年金額を増やせるという制度である。支払った金額は確定申告の控除対象にもなるので節税にもなるのだ。

年金は当てにならないから他で老後資金を作ろうという声も大きいが、それでも年金ほど確実でリスクが少ないものは今のところない、という意見も多く見られる。

だが、資料を申し込んだ時は熱かった気持ちが、届いた時冷めているというのはよくあることで、取り寄せるだけ取り寄せてしばらく放置していた。

すると国民年金基金から電話がかかってきたのである。私は電話が苦手で、取ると青紫色の粉瘤が出来るので取らなかったのだが、こんなテーマで書くことになるなら粉瘤の一つや二つ覚悟で取れば良かった。おそらくだが「国民年金基金どうでしょう?」という内容だったのではないだろうか。端的に言えば「営業電話」である。

その後、電話は数回かかってきて、驚くべきことに、日曜日でもかかってきた。国の機関が日曜に動くとは思っていなかったので驚愕である。

「必死かよ」と思ったが、事実必死なのだろう。それぐらい年金はひっ迫しているのだ。もしかしたらノルマ的なものすらあるのかもしれない。

年金をもらうのは我々である。企業の炎上なら「不買運動」ができるが、年金の場合「不払運動」になり、後々受取額が減って困るのは国民の方である。

今回の炎上で国民が年金に対しますます拒否感を持ってしまったのは、年金機構というより我々にとっての悲劇なのだ。広告自体には反感を持ったかもしれないが、年金に関心を持ち、自身の年金状態を確認するのは大事なことである。

私も次に電話がかかってきたら、粉瘤上等で取ってみようと思う。

経営者の妻に聞いた「いらない遺産」ランキング、首位は「会社」

経営者の妻に聞いた「いらない遺産」ランキング、首位は「会社」

2019.03.14

団塊世代の退職が本格化、事業承継が課題に

骨董品より人気がない「会社株式」

経営者夫妻、事業承継でミスマッチが深刻?

日本企業の後継者不足の問題が深刻さを増している。

オーナー経営者にとって、信頼できる配偶者や子供が会社をしっかりと引き継いでくれるなら万々歳だが、理想通りにいくケースばかりではない。経営者とその配偶者は会社の相続について、どう考えているのか。

M&A(合併・買収)仲介サービス大手のストライクが行った調査からは「会社を残したい夫」と「残してほしくない妻」間のミスマッチが鮮明に見えた。

経営者夫が残したいもの、「会社」が上位に

同社が2019年1月10~11日にインターネットを通じて男性経営者に実施した調査によると、「自分が亡くなった時に残したい資産」との質問に対し、「経営する会社(会社の株式)」と答えた割合は約40%で、「現金・預金(68%)」「居住用不動産(42%)」に次いで上位3番目にランクインした。

この結果は続く「保険金(22%)」「不動産(20%)」「有価証券(15%)」「美術品・骨董品(3%)」を大きく引き離しており、苦労して会社を育て上げた経営者は、親族に大事な事業を引き継ぎたいとの気持ちが強いことがわかる。

経営者が妻に残したい資産(夫へのアンケート、複数回答、n=309) 出典:ストライク

妻は「会社はいらない」が断トツの首位

一方、資産を残される側の「経営者の妻」はどう思っているのか。

同社が2018年8月に「ご主人が亡くなる際に残されて困るものは?」と調査したところ、「経営する会社(会社の株式)」と答えた割合が38%で断トツの首位。2位にランクインした「美術品・骨董品」(18%)や3位の「不動産」(9%)を大きく引き離した。事業を家族に引き継いでもらいたいと願う経営者にとっては残念な結果だ。

このミスマッチについて、ストライクの荒井邦彦社長は「経営者の配偶者が会社(自社株)を相続したとしても、今の時代に後継者を見つけるのも売却するのも難しいという不安の表れではないか」と考察している。

経営者の夫が亡くなる際に残されて困る資産は?(妻へのアンケート、複数回答、n=103) 出典:ストライク

反対に「残して欲しいもの」についての調査も実施した。もっとも多かったのは「現金・預金」で、全体の89%にのぼった。以下「保険金」「居住用不動産」「国債などの有価証券」と続き、「経営する会社(会社の株式)」と答えた人は15%にとどまった。

決断迫られる経営者と家族

第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」の引退が本格化していることもあり、中小企業では事業をどう次世代に伝えていくかが深刻な課題となっている。

経営者が家族に事業を引き継いでもらいたくても、子供は都会で会社勤めをしており、実家に戻って家業を継ぐ気はないケースは多い。多くの配偶者も「経営の経験はない」などとして会社の引き継ぎには積極的ではない。

経済産業省・中小企業庁によれば、中小企業の経営者の年齢分布でもっとも多い層は2015年時点で66歳で、同20年前の1995年時点での47歳から大幅に上昇してしまっている。さらに今後10年の間に、平均引退年齢とされる70歳を迎える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に上ると言われ、うち約半数の127万人(日本の全企業数の3分の1に相当)は後継者未定とされている。

こういった夫婦間、家族間のミスマッチが「黒字廃業」のケースを増してしまう懸念がある一方、これをビジネスチャンスと見て、後継者不足の解決に向けM&A支援サービスを提供する事業者の動きも活発になりつつある。高齢化がまさに「時間の問題」として進む中、経営者やその家族が決断を迫られる日は近づいている。

老後がどんどん遠くなる「70歳定年」試算

カレー沢薫の時流漂流 第30回

老後がどんどん遠くなる「70歳定年」試算

2019.03.04

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第30回は、老後自体が短くなる「70歳定年」試算について

2月初旬、経済財政諮問会議で、定年年齢を70歳まで引き上げた場合の経済効果に関する議論が始まった。その結果、就業者が217万人増え、消費は4兆円増加し、社会保険収入も2兆円は増える、という「明るい未来」を示す試算が出たそうだ。

我々が70歳まで働かねばならないという前提の時点で全く明るくないのだが、国民が暗くなる分、国の財政は明るくなる、ということである。

70歳まで働けば、それだけ年金保険料を納める期間が長くなり、逆に年金給付の期間は短くなるため、年金問題も改善される。お前らの年金は、お前らが老人になってからも働いて解決しろという、本末転倒、良く言えば逆転の発想だ。そして就業人口が増えれば、金を持っている人間も増える、つまり消費も拡大するという寸法だ。

この試算についてはすでに識者から様々なつっこみを受けている。

まず「誰も70歳まで働きたいと思ってねえ」というのは、識者じゃなくてもわかる。現時点でも、働いている高齢者の働く理由を調査したところ半数以上が「生活のため」と答えてたという。

つまり生きがいや健康の為に働いている者は少数派であり、働かないで済むなら働きたくないのだ。私など二十代の時から働かずに生きたいと思っていたのだから、高齢者がそう思うのは至極当然である。

つまり、日本は、高齢者を支える体勢が出来ていないのに寿命だけが勝手に延びてしまったため、70歳まで働ける社会ではなく、70歳まで働かないと国ごと転覆する社会、になりつつあるのだ。それを前向きな変化と評するのはドM国家すぎるのではないか。

そして、高齢者たちが働きたくないのはもちろんだが、企業だってそんなに高齢者を積極的に雇いたいとは思っていないのだ。労働力として若い方が良いのは当然として、雇用期間が長くなるほど、給与支払や会社の社会保険負担の額が増える。つまり、定年が延びれば延びるほど企業の負担が増えるのである。

企業としては、日本の老に高い給与を払い続けるよりは、海外の若を安く使ったほうが良い、というのが本音ではないだろうか。

それに、「最近の高齢者は元気」と言っても、やはり若者よりは肉体的に衰えている。現場が高齢者だらけになると、逆に生産性が落ちたり、最悪事故が頻発したりするようになるかもしれない。

若者に足手まとい扱いされながらも無理して働いて、労災に遭うというのは、明るい老後とは言えない気がする。

人生100年、計画性がないと老後詰む時代

このように、多くの企業では歓迎されないと見られている定年70歳制度だが、70歳と行かないまでも、定年の延長をすでに取り入れている企業もある。代表的なのが「トヨタ自動車」である。だがこれは、「ただし技能系社員に限る」制度のようだ、自動車製造はオートメーション化されているようで、意外と人間のテクによるところが多く、その技能を持った人材は常に不足しているのだ。

つまり、老になってもスキルがある人間は企業にとっても惜しい、ということである。70歳まで働かなければいけない世の中では、今まで以上に「手に職」が大切になってくるということだ。

人生100年時代というのは、寿命が長いからゆっくりできるわけではなく、相当若いころから人生設計を考えていないと老後詰む時代、ということである。早めに絶対なくならない業種の資格を取るか、これからアツくなりそうな業界の勉強を始めるという先見の明も必要となってくる。これから激アツになりそうなのは葬儀関係だが、残念ながら葬儀業に必須となる国家資格はないようだ。

「全員が70歳まで働けば国は良くなる」という政府の試算も楽観的だが、我々も70歳まで働けるんだからいいや、と思うのはスイートすぎる。たとえ全ての企業が定年を70歳まで引き上げたとしても、自分に70歳まで働ける身体があるかはわからない。

一言で70歳と言っても、まだまだ働けそうな二十歳くらいに見える70歳もいれば、明らかな「秒読み」段階に入っている、とても働くどころではない70歳もいるのだ。

老化やそれに伴う病気などは誰の身にも降りかかることだし、運要素も強い。それを「70歳まで働ける身体を作っておかなかったのが悪い」という、凄まじいロングスパンな自己責任を求められる国はどう考えても明るくない。

やはり、どれだけ長く働くかより、体も頭も動くうちにどれだけ準備できるかの方が個人にとって重要だろう。

などと論じたててみたが、私は無職なので企業の定年が何歳になろうと関係ない。この長寿時代、定年がない自営業やフリーランスの方が強いと言われることもあるが、70歳どころか年齢問わず、明日仕事がないかもしれないのがフリーランスだ。

つまり失う仕事すらない「無職」が最強なのだが、少なくとも定年まで働けるという点では会社員という立場には大きなメリットがある。

ただそのメリットに気付けるのは、大体「失ってから」である。

連載バックナンバーはこちら