「富士通」の記事

レノボ傘下でも独立運営、富士通PC事業の行く末は?

レノボ傘下でも独立運営、富士通PC事業の行く末は?

2017.11.06

富士通とレノボ・グループ、日本政策投資銀行は11月2日、PC事業における富士通とレノボとの戦略提携について正式契約を締結したと発表した。

今回の提携により、富士通の100%子会社として運営されている富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式のうち、51%をレノボに、5%を日本政策投資銀行にそれぞれ譲渡することで、FCCLを3社の合弁会社とし、PCおよび関連製品の研究開発・設計・製造・販売を行う。

FCCLの社名はそのまま継続して使用されるとともに、現在の製品ポートフォリオや開発、製造体制も維持し、引き続き富士通ブランドの製品を提供していくことになる。商品の販売やサポートは、法人向け商品が富士通から販売パートナー経由か直接提供し、サービスも富士通が提供する。国内個人向け商品については、FCCLから販売店経由、または直接提供し、サポートもFCCLが提供することになる。

エッジコンピューティングへの対応が一つの課題

富士通 代表取締役社長の田中 達也氏は今回の提携について、「富士通が30年以上にわたり培ってきた製品開発力と製造能力に加えて、レノボの持つ世界屈指の調達力、スケールメリットを活用することが目的」と話す。富士通ブランドPCの商品力強化によって、富士通グループにとっても有意義なものになるというわけだ。

一方でレノボ・グループ 会長 兼 CEOのヤンチン・ヤン氏は、「当社の中核事業はPC事業であり、今回の信頼できるブランドである富士通とのパートナーシップは、PC市場で世界第3位の規模を誇る日本はもちろん、グローバルでのビジネスをさらに強固なものにしてくれるでしょう」と述べ、今回の提携がレノボと富士通の双方に大きなメリットをもたらすだろうと、提携についての期待感を示した。

提携について説明する、富士通 代表取締役社長 田中 達也氏
レノボ・グループ 会長 兼 CEO ヤンチン・ヤン氏

今回の提携では、PCのみならず、タブレットやシンクライアント、VRヘッドセットなど、関連製品の研究開発、設計、製造、販売までをカバーする。FCCLは独立した専任の組織として運営されるため、経営陣や販売ルート、現在行われている業務などに変更はなく、ユーザーにとっては「これまでと変わらない存在になる」(レノボ・グループ シニアバイスプレジデント 兼 アジアパシフィック地域プレジデント ケン・ウォン氏)という。

ウォン氏は、日本市場について、法人向けを中心に2020年まではPC市場の成長が見込めるとした上で、レノボと富士通それぞれの強みが補完しあい、より良いデバイスの提供やサービスを展開することで、さらなる成長を実現できるとアピールする。

現在のFCCLは「付加価値の進化」をキーワードに、PCやタブレットの既存製品に対して「モビリティ」や「セキュリティ」といった特定機能の強化を進めてきた。一方でFCCL 代表取締役社長の齋藤 邦彰氏は「分散型エッジコンピューティングなどへの対応が足りない」として、トレンドの追従、先取りを意識した商品・サービスの展開を模索すると話す。

今回の提携によってレノボグループは、「レノボ」と「NEC」「富士通」という3つのブランドを抱えることになる。これらをどう活かすかについてレノボ・グループのウォン氏は、市場で競争があるからこそ、より良い製品が提供できるとした上で、日本市場が依然として成長市場であり、それぞれのブランドで製品を提供することで、より多くの選択肢を提供できるとした。

また、NECパーソナルコンピュータとの統合や、工場などの廃止も現時点では一切考えていないと明言。今回の提携は、あくまでFCCLが独立した専任企業としての運営が前提だ。質疑応答でも、将来に合弁会社の組織・社名の変更などを一切考えていないと説明されていた。そうした点では、レノボの開発陣と連携しつつ製品を開発している、NECパーソナルコンピュータという前例とは位置づけが大きく異なる。

しかし、過半出資の合弁会社である以上、将来的にレノボ側が製品開発に関与してくる可能性は排除できない。そのため、これまで通り自前での設計や製造、サービス提供をどこまで続けられるかという点が今後の課題となりそうだ。

ただ、FCCLはレノボの調達力やスケールメリットを得て、これまで以上に積極的な製品開発が行えるようになることは十分期待できる。その上で、レノボの経営陣に対して「FCCLは引き続き独立運営がいい」と思わせるような、魅力がありイノベイティブな製品を開発し続けることが、今後FCCLには求められると言えるだろう。

富士通、レノボらとPC事業の合弁会社設立で合意

富士通、レノボらとPC事業の合弁会社設立で合意

2017.11.02

富士通、レノボ・グループ、および日本政策投資銀行は2日、グローバル市場に向けたPCおよび関連製品の研究開発・設計・製造・販売を行う合弁会社を設立する戦略的な提携について、本日、正式に合意したと発表した。

富士通は、100%子会社である富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の株式の51%をレノボに対して、また、5%を日本政策投資銀行(DBJ)に対して、それぞれ譲渡することにより、FCCLをレノボ、富士通、およびDBJの合弁会社とする。株式譲渡は2018年度第1四半期を目途に行い、富士通が受け取る譲渡価額は合計で280億円(約19億香港ドル、内、レノボ255億円、DBJ25億円)。

合弁会社となった後も、FCCLは社名を継続して使用する。FCCLの代表取締役社長には、現FCCL代表取締役社長の齋藤邦彰氏が就任する。合弁後もFCCLの製品ポートフォリオや開発・製造体制は維持するといい、富士通の「FMV」ブランドも継続して使用すると見られる。

なお富士通、レノボの両社は、本日中に本件についての共同記者会見を開催する予定。

富士通が携帯電話事業を「今、売る」理由

富士通が携帯電話事業を「今、売る」理由

2017.08.24

8月22日、日本経済新聞が「富士通が携帯電話事業を売却する」と報じた。

富士通は同日午後、「他社とのアライアンスを含め様々な可能性を検討しているが、決定しているものはない」とのコメントを公開した。要は「否定ではない」わけだ。報道の通りとなれば、大手日本メーカーの中で携帯電話製造を続けるのが、ソニーとシャープ、京セラの3社にまで減ることとなる。

ではなぜ、富士通は携帯電話事業の売却を検討するのか? そして、売却によって富士通は事業全体をどう変えていくのか、考察してみよう。

富士通本体は「システムとソリューション」が本業

富士通の携帯電話事業は、日本国内で老舗の、伝統あるものという認識が広がる。ただ、携帯電話事業そのものは2016年2月に100パーセント出資の子会社「富士通コネクテッドテクノロジーズ」として分社しており、独立採算性を高めている。同時にPC事業も子会社化しており、個人向けの端末事業は「ユビキタスソリューションビジネス」として独立させていた。

富士通 代表取締役副社長/CFO 塚野 英博氏は、第1四半期決算でユビキタス事業を「先行き不透明」と語っていた
増収増益だった第1四半期のユビキタスソリューション

これは、富士通という企業のビジネス主体が、ITシステムの構築を軸にしたサービスとソリューションであることに起因する。これからは特に、IoTを含め「端末も重要だが、サービス側が存在しないと価値が生まれない」というビジネスの割合が増えていく。富士通全体としては、「個人向け端末は重要だが、それらをシンプルに訴求するビジネスと、本体のソリューション事業は分けて考えたい」という意思がある。

そもそも、日本のPC市場は法人6に個人4という比率であり、個人市場は減少傾向にある。一方、企業内システムのクライアントとしてのPCのニーズは変わらず存在しているため、法人市場は微増環境にある。双方を合わせるとトータルでは横ばい……と考えて良い。

そうした状況下において富士通は、法人・個人の双方でバランスよくシェアを維持してきた企業といっていい。だが、個人市場の伸びが落ちているうえに、法人市場ではデル・HPなどの伸びが大きい。「富士通のシステムを入れる=富士通のPCを買う」という状況はかつてのものになりつつある。

企業にとっての「端末」がPCだけでなくタブレット・IoT機器へと広がり、価値がクラウド側に集約すればするほど、「富士通のPC」を選ぶ理由は減る。特にコスト競争力の面で、海外勢は規模の経済を活かした強みを持っており、状況は決して良くない。では携帯電話はどうか?

もともと日本の携帯電話は、個人向けの製品でありつつも「携帯電話事業者」に販売する「B2B製品」としての意味合いが強い。携帯電話事業者との強いパイプを生かし、彼らのサービスや戦略に紐づいた良いものを作れば、それだけ受注が増えて販売も伸びた。

しかし、それも過去のことだ。スマートフォンが端末の中心になり、携帯電話事業者のサービスと端末の関係が希薄になると、海外勢との競争が激化した。国内スマートフォン シェアの5割をiPhoneが占める現状、ハイエンド端末のパイは減った。Android陣営の中でも、ハイエンド帯、低価格帯の双方で海外勢がライバルとなっている。

PCにおいて、そしてスマートフォンにおいても、富士通の課題は共通している。広く多くの国で販売する企業と比較して「数」が絶対的に劣るため、「価格競争力やパーツの調達力で不利になる」ということだ。

特にこの問題は、低価格製品に強く、直接的に影響してくる。しかもスマホでは、単なる安売りではなく、価格競争力がある分を品質に回して「安価だがクオリティが高い」ものにするパターンが増えている。そうした戦い方の中において、日本国内を中心にした事業戦略では、数量が稼げず、不利な点がばかりが目に留まる。

もちろん、規模の経済の話だけではない。過去には「中国などで生産する」という選択だけでコストを抑えられた。だが今は、人件費の高騰や輸送のタイムラグとコストまで考えると、「限定した数量であれば、消費地の近くで生産するほうが有利」な場合もある。特にPC事業の場合、そうした点を重視して「国内生産」のところも増えており、富士通もその考え方を採っている。

強みがあるうちに売る、という決断

しかし、スマートフォンについては、現状、部材調達力が価格と品質に与える影響が大きく、数量を出せるメーカーの有利がなかなか揺るがない。そこで、特別なパーツを調達できたり、デザインで特徴を出したりしやすい「とがったブランド力」を持つ企業だけが生き残った。ソニー・シャープ・京セラという3社の顔触れを見れば、おわかりいただけるのではないだろうか。

富士通は、PC事業と携帯電話事業、ともに売却交渉を進めている。どちらも強みがないわけではない。PCの生産力は高く評価できるし、スマートフォンにおいて「ARROWS」は国内において名の通ったブランドだ。セキュリティ保護やセンサーの活用など、得意分野もある。これらの点に魅力を感じる企業は確実に存在する。

しかし逆にいえば、「数量」「圧倒的なブランド力」という差別化要因を持てておらず、大きな改善を見込めないのもまた事実だろう。となると、強みがあるうちに売却したほうが利益につながる。売却するといっても、株式の一部を残してブランドを維持すれば、「富士通としての個人向け端末市場への道」が完全に途切れるわけではない。

富士通としては、この時期がある意味で「最後の売り時」なのである。