「医療」の記事

Fitbitは復活したのか? 変性するウェアラブル市場で勝機見出す

Fitbitは復活したのか? 変性するウェアラブル市場で勝機見出す

2019.03.11

Fitbitが日本市場に新商品を追加

人気のスマートウォッチ「Versa」の廉価モデルも登場

ラインナップ、販売チャネル拡大で再成長を目指す

フィットビットは日本国内向けに、新型フィットネストラッカー(活動量計)の「Inspire」「Inspire HR」「Ace 2」、および新型スマートウォッチの「Versa Lite」を発表した。Ace 2のみ2019年夏より発売、他3製品は3月より発売する。

左から、フィットビット・ジャパン合同会社 カントリーゼネラルマネージャーの千川原智康氏、AuB代表取締役社長で、元Jリーガーの鈴木啓太氏、フィットビット アジア太平洋地域 マーケティング・バイス・プレジデントのジェイミー・ハードレー氏、フィットビット 副社長兼アジア太平洋地域事業部長のスティーブ・モーリー氏

活動量計市場の縮小に伴い一時は業績不振に陥いったフィットビットだったが、2017年に「Fitbit Ionic」を皮切りにスマートウォッチ市場に参入し、2018年にはスマートウォッチ「Fitbit Versa」がヒットしたことで、かつての勢いを取り戻しつつある。同社の成長戦略を紐解きたい。

売れ筋の「Versa」の廉価モデルが登場

「Fitbit Versa Lite」は、ヒットモデル「Versa」の機能をよりシンプルにすることで、より低価格帯を狙った新製品だ。フィットビットのスマートウォッチの新たなエントリーモデルと言える。価格は2万5290円(税込)。

「Fitbit Versa Lite」

見た目はVersaとほぼ変わらず、アプリや文字盤のダウンロードが可能なほか、ディスプレイサイズ(1.34インチ)、バッテリ性能(4日間以上)、心拍センサ搭載などといった仕様もVersaと同じだ。

操作に用いるボタン数は減少した。従来、操作に用いられていた本体右側面にあった2つのボタンはなくなり、画面のタップやスワイプによって操作できるようになっている。

画面のタッチやスワイプで直感的に操作できる

機能面で「Versa Lite」の「Versa」との大きな違いは、NFC方式のモバイル決済や内蔵音楽ストレージに対応していない点、階段昇降段数や水泳時の往復回数の計測ができない点、「Fitbit Coach」による画面上でのエクササイズ表示機能がない点だ。

これらの機能は、いざ使ってみると便利さを感じる部分ではあるが、「最初のスマートウォッチ」として使う分には、そこまで気になるものではないだろう。それよりも、価格を下げることによる入手のしやすさを重要視し、新規ユーザーを取り込もう、というのが同社の狙いだ。

Versaシリーズの機能の違い

ラインアップ、販売チャネル拡大で再成長を目指す

また、フィットネストラッカーの「Inspire」(1万1790円)「Inspire HR」(2万1470円)と、子供向けの「Ace 2」(1万1790円)の3モデルも新たに投入する。

「Inspire」
「Inspire HR」
「Fitbit Ace 2」

Inspire、Inspire HRともに、歩数や消費カロリーの計測、ウォーキングやランニング、水泳といったアクティビティの自動認識に対応しているほか、スマートフォンからの通知も表示できる仕様となっている。バッテリはどちらも最大5日間駆動する。

両機の大きな違いは、心拍センサの有無だ。Insupire HRには心拍センサが搭載されており、常時脈拍を測定できる。これによって「睡眠の深さ」も計測できるのが特徴だ。また、Insupire HRのみ、スマートフォンのGPSを利用することで、ユーザーの歩行距離やペースを測定することもできる。

「Insupire HR」には心拍センサが付いており、「Inspire」と比較すると少々分厚い印象

Ace 2は2018年に発売された「Fitbit Ace」の後継モデル。「子供向け」というコンセプトを前面に打ち出す。

基本機能は前モデル(Ace)と同等で、歩数や活動時間の記録、睡眠の計測が行えるほか、設定した目標(運動時間など)を達成するとお祝いメッセージが表示されるといった機能もある。

また、表示画面に「アバター」を設定できたり、ファミリーアカウントを作成すれば子供の運動量を随時確認できたりと、子どもは楽しみ、親は安心して使えるような製品とした。

アバターは、モンスターや花、ロケットなど複数

ラインアップの拡充に合わせ、販売チャネルも拡大することで相乗効果を見込む。

従来、フィットビットはAmazonのほか、ビックカメラやヨドバシカメラといった家電量販店での販売をメインとしていたが、新たに「On time」などの時計店での販売も開始する。3月~4月中に、およそ150店舗に展開するとのことだ。

販売チャネルに、新たに時計店を追加

急成長するウェアラブルデバイス市場で勝機は?

IDCによれば、2018年第4四半期(10~12月)における世界ウェアラブルデバイスの出荷台数は、前年同期比31.4%増の5,930万台となり、これまでの四半期最高記録を更新したという。

中でも、スマートウォッチは前年同期比で55.2%成長し、全体の34.3%を占める、今後の更なる成長が見込まれる分野だ。さらには、リストバンド型端末も市場の30%を占めており、引き続き無視できない重要な分野である。

2018年第4四半期における、ウェアラブル市場上位5社の出荷量、市場シェア、前年比成長率(出展:IDC)

フィットビットはウェアラブル市場で全体の約6割を占める「スマートウォッチ」と「リストバンド型端末」のどちらにも強みを持つ。ウェアラブルブームの頃に比べれば主要プレイヤーは限られてきており、市場全体の成長率次第という要素は残るが、海外主導で予防医療の観点からウェアラブルに再度注目が戻るなど、兆しは見えている。今回の日本における新商品の投下、および販売チャネルの拡大は、フィットビット再成長の「のろし」となりそうだ。

3省3ガイドラインで、IT化と向き合い始めた日本の医療業界

3省3ガイドラインで、IT化と向き合い始めた日本の医療業界

2019.01.31

担当各省のガイドライン整備で医療業界にIT進出

震災もきっかけに、BCP対策の視点から医療データを電子化

遅れた日本、より良い生活のためにも早急な挽回を

出張先で体調を崩し、救急搬送されたとしよう。もし、持病を抱えていて、飲んではいけない薬があったとしたら… かかりつけの主治医や薬剤師がいれば、服薬の管理はしっかりできるだろう。しかし、出先の病院の場合、投薬情報や診療データが共有されていないことが多いはず。これはなかなかに恐ろしい話ではないだろうか。

頻発する大災害も危機感のきっかけに

そこで最近、注目を集めているのが「PHR(Personal Health Record)」である。その名が示すとおり、自分自身で健康に関するデータを管理するというものだ。では、そのデータはどこに保存するのであろうか。まさか、USBメモリに保存してつねに持ち歩く? そんなアブナイことはできない。

そもそもカルテやレセプトといった診療データは、非常にレベルの高い個人情報といえる。これまでは、厳格に管理のされた1つの医療機関内でしか利用されることはなかった。しかし、多様化する患者のニーズや、サービス向上の意識から、治療の現場では診療データの共有が重要な要素になってきている。

注目を集めるもう1つの要因が、巨大災害である。2011年3月の東日本大震災は甚大な被害をもたらした。医療機関も建物ごと破壊され、カルテなど多くの医療情報が失われた。実は、その1年前に厚生労働省は、医療情報をクラウドへ保存するクラウドサービスを認める法改正を行っていた。しかし、その時点ではクラウド移行は十分に行われていなかった。

医療データに限らず、バックアップの基本の1つに「BCP対策として、バックアップは遠隔地に保存する」という考えがある。BCPとはBusiness Continuity Planの略で、事業継続のために、不測の事態に備えて対策するというものだ。さらに、その前提として、如何にして医療データ(カルテなど)を電子化するかといった課題もある。最近では電子カルテを採用する医療機関も増えたが、いまだに紙のカルテを使用している医療機関は少なくない。電子化の具体策も重要な課題になるだろう。

まとめると、「電子化されたデータを適切に遠隔地にバックアップ、セキュアな共有」と、「紙などのカルテの電子化」を進める必要がある。

医療情報の3省3ガイドラインとは

一般的な医療機関が単独で、これらの実施にリソースをさくことは困難であろう。多くは、外部の民間業者に手段を委託することになる。そこで、外部に委託する際のルールや守るべき規範が生まれた。それが、「3省3ガイドライン」である。厚生労働省、経済産業省、総務省の各省が出しているガイドラインの総称で、具体的には以下の3つである。

・厚生労働省:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版(平成29年5月発行)
・経済産業省:医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン(平成24年10月発行)
・総務省:クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(第1版)(平成30年7月発行)

厚労省のものは医療機関が対象で、残りはサービスを提供する事業者が対象となる。これらは現在も検討が継続しており、2020年には、経済産業省・総務省による事業者向けガイドラインが統合整理され、「3省2ガイドライン」となる予定もある。

3省3ガイドラインが民間業者らのサービスに求める具体的な内容をかいつまむと、接続元IPアドレスの制限、クラウドサーバーIDS(不正侵入検知)/IPS(不正侵入防御)の導入、クラウドサーバーへのログの保管体制の整備などが機能として求められている。

この電子化・IT化で何が変わる?

AOSBOX Business Plusを発表するAOSデータの春山洋社長

3省3ガイドラインは民間事業者のビジネスを活性化し、医療の電子化・IT化を促進させるもの。では、このガイドラインに沿ったサービスでは実際、何ができるのか。具体例として、3省3ガイドラインに準拠して2019年春にAOSデータ社がリリースする予定のクラウドバックアップシステム「AOSBOX Business Plus」を見てみたい。

同サービスは、カルテやレセプトを電子化し、レントゲン・CTを画像データとして保全・共有するシステム。医療機関や患者の利便性を向上させるだけでなく、将来的にクラウド上にデータが蓄積されていけば、AIの分析などにより新たな知見を得られる可能性もあるだろう。

AOSBOX Business Plusのビジネスモデル
AOSBOX Business Plusの新機能
AOSリーガルテックの佐々木隆仁社長

AOSデータのグループ企業で、データ復旧技術に強みを持つAOSリーガルテック社の佐々木隆仁社長が、同サービスの発表会でこんな話をしていた。日本の司法・裁判制度の電子化・IT化は、世界的に見ると非常に評価が低いというのだ。世界銀行の調査では、司法・裁判のIT化に関連する項目において日本はOECD加盟35か国中25位で、政府もこれを問題視し、2020年までに3位以内を目指すとしているが、かなり厳しい状況である。

普段はスマートフォンを使い、オフィスの机にはPC、さらにクラウドサービスやSNSを駆使して情報を共有… 一般的な日本人の姿といってもよい。しかし、いざ行政サービスを受けようとすると、紙の用紙に手書きをし、収入印紙を貼って、本人が窓口に出向いて届けをしないといけない、そんな状況が当たり前で、非常にギャップがある。これが日本の現状である。

最大の原因は、既得権益を持つ人々が、なかなか現状を変えようとしない点だ。行政サービスなどでは、サービスを提供する側(政府や公官庁)自体が抵抗勢力であったわけだが、ようやく重い腰を上げ始めたという感じだろう。

世界銀行"Doing Business"における日本のランキング

AOSデータ社のサービスを例に医療業界の電子化を考えてみたが、3省3ガイドラインをきっかけに民間がビジネスを始めたことで、電子化に弾みがついたことは間違いない。将来を見据えて、変えるべきものは変えるという意思が大切だ。

今回は医療業界に焦点を当てたが、日本中が同じような状況なのかもしれない。未だにキャッシュレス決済の普及率ですら驚くほど低いのだ。使い古された感すらある「電子化・IT化」だが、現状に照らし遅れていることを認め、今後の日本の大きな目標にするべきだ。