「社内ゲーセン」は会社の聖杯? ディライトワークスとミカドの挑戦

「社内ゲーセン」は会社の聖杯? ディライトワークスとミカドの挑戦

2019.03.28

ディライトワークスは社内にゲームセンターを設置した

タイトル選定などは「ゲーセンミカド」が協力

さまざまな時代のおもしろさに触れることで創作活動に役立てる

スマホゲーム『Fate/Grand Order(FGO)』などを運営するディライトワークスは3月27日、“社内ゲームセンター”を新設したことを発表した。同施設のオープンにあたって、東京都内で2店舗のゲームセンターを運営する「ゲーセンミカド」に協力を依頼したという。

「DELiGHTWORKS × ゲーセンミカド」と名付けられたその社内ゲームセンターは、どのような意図のもとでオープンしたのだろうか。

きっかけはFGOACをいちユーザーとして遊ぶため

ゲーム開発を事業とするディライトワークスとはいえ、オフィスにゲームセンターを作るという発想はなかなか出てこない気がする。どのような流れで、社内ゲームセンターを設置することになったのだろう。

ディライトワークス DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studiosでスタジオヘッドを務める塩川洋介氏は「いくつか理由はあるのですが、きっかけは弊社の開発したアーケードゲーム『Fate/Grand Order Arcade(FGOAC)』です。もともと弊社では自分たちで作ったゲームを、いちユーザーとして熱心に遊び、それを開発にフィードバックしていくことを日常的に行っています。それはFGOACも同様。なので、会社のなかにお客さまと同じように遊べるよう環境を作りたいと考えていました」と、社内ゲームセンターを設置したきっかけを述べた。

ディライトワークス DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studiosでスタジオヘッドを務める塩川洋介氏

しかし、理由はそれだけではない。

「弊社では、2018年の3月に、ボードゲームカフェを社内にオープンさせました。全国でボードゲームカフェを展開している『JELLY JELLY CAFE』さんの協力のもとで開設した、250種類以上のボードゲームが遊べるという本格的なものです。どうせやるなら本物のボードゲームカフェを作ろうと、社内にオープンしましたのですが、ボードゲームカフェを作ったことで、いい影響が数多くでてきました」(塩川氏)

そのいい影響として、ボードゲームカフェがきっかけで業界交流会や業界イベントを開催したり、自社ボードゲームコンテンツを開発したりと、普段の利用から発展して、さまざまな事業へと広がっていったのだという。

「そこで、どうせFGOACを設置するのであれば、本格的なゲームセンターを開設してみようではないかと考えて、今回のゲーセンミカドさんの協力を得て、社内ゲームセンターの設置に至りました」(塩川氏)

本格的な社内ゲームセンターを作れば、ボードゲームカフェで得られたようないい影響があるのではないか。塩川氏は、そう考えたことが社内ゲームセンター設置のきっかけになったと話す。

続いて話は「パートナーの選定理由」に移り、まずは開設に協力したゲーセンミカド オーナー兼店長の池田稔氏が「ゲームセンターとひとことに言ってもさまざまなタイプがありますが、私の運営している『ゲーセンミカド』は、自分たちの企画力を活かした取り組みや大会運営、それらの配信、珍しいゲーム機などで勝負している、いわば逆張りのゲームセンターです」と、ゲーセンミカドを紹介。「ゲーセンミカド」は高田馬場と池袋で計2店舗あり、高田馬場店は今年で10周年を迎えるそうだ。企画のなかには、なんと「ゲーセンで結婚式を挙げる」という取り組みもあったとか。

ゲーセンミカド オーナー兼店長の池田稔氏

そんな枠にとらわれないゲームセンターだからこそ、塩川氏は、今回のパートナー相手に「ゲーセンミカド」を選んだのだという。

「社内にゲームセンターを設置すること自体、おそらく前例のないことだと思いますのが、ゲーセンミカドさんであれば、柔軟かつ本気でゲームセンターを作ることを一緒に考えてくださるだろうと、ご協力をお願いいたしました」(塩川氏)

タイトル選定で大切にしたのは“ライブ感”

そうして、本当に作られた社内ゲームセンター。設置されているゲームタイトルはさまざまで、ディライトワークスが手がけたFGOACはもちろん、『AC/DC』というピンボールや、アナログゲームの『国盗り合戦』まで幅広い。ゲームタイトルのラインアップ選定は、ゲーセンミカドが行ったというが、どのような点を意識したのだろうか。

「大切にしたのは“ライブ感”です。ゲームセンターにはコミュニティがあって、仲間がいるからこそ遊びたくなるというもの。自宅で1人でビールを飲むのもいいですが、居酒屋で友人と飲むビールの味はまた違いますよね。ゲームセンターもそれと同じです。ゲーム好きが集まっている場所だからこそ、100円を使いたくなるのです。なので、そんな“ライブ感”を意識しましたね」(池田氏)

なお、オープン時のラインアップは次の通りだ。「限られたスペースで1970年代から2000年代までを凝縮した」と話す池田氏。それぞれのタイトルは定期的に見直しをしていく予定だという。

ピンボールゲームの『IRON MAN PRO』(写真左)と『AC/DC』(写真右)
アナログの『国盗り合戦』
2人並んで対戦する『ストリートファイターII』
『スペースハリヤー』の筐体。法律が変わったために、現在では本機のような激しい動きのある筐体は作れないという
ディライトワークスが展開するFGOAC
今回のラインアップのなかで、塩川氏が注目しているタイトルの『MELTY BLOOD Actress Again Current Code』(写真右)
『ストリートファイターII』で対戦する池田氏と塩川氏

ボドゲカフェのような交流や創作活動のきっかけに

いちユーザーとしてFGOACに触れるところから、本格的なゲーセン作りに発展した今回の社内ゲームセンター。この取り組みを通じて両者が期待していることは何だろうか。

「社内ゲームセンターは、ディライトワークス社員を対象にした運営ですが、自社タイトルはお客さまと同じ環境でやるべきだと考えているので、FGOACはお金を払って遊んでもらいます。それ以外のゲームはフリープレイ。ただ、ゆくゆくは社外を含めたイベントを開催して、ボードゲームカフェのような好循環を生み出せればと思います。私もゲームセンターのよさはユーザー同士が集まる“ライブ感”だと思いますので、そのような企画も考えていきたいですね」(塩川氏)

また、ゲーセンミカド側から期待したいこととして池田氏は、クリエイターがアーケードゲームからインスピレーションを得ることを挙げた。

「限られた制約のなかで100円1枚でも多く使ってもらえるように作られたゲームたちに触れることで、ディライトワークスのクリエイターさんも感じることがあるはずです。そこから、新しいものが生まれること、特にディライトワークスさんがアーケードゲームを再びリリースしてくださるような未来を想像すると、期待せずにはいられませんね。今後も企画や運営面では協力していきたいと思います」(池田氏)

クリエイターに与えるインスピレーションについては、塩川氏も同様のことを考えているという。

「これまで弊社は、ジャンル、デバイス問わずゲームを開発をしてきました。アーケードゲームは自由度が高いので、多くの社員に触ってもらうことで新しい刺激があるはず。コンテンツの開発にも結び付けていければと思います」(塩川氏)

なお、ゲーセンミカドには、マンガ『ハイスコアガール』などを手がけた押切蓮介氏が「ミカドちゃん」というイメージキャラクターを制作している。今回の「DELiGHTWORKS × ゲーセンミカド」オープンを記念して、ディライトワークスコラボデザインを描き下ろしてもらった。

ゲーセンミカドのイメージキャラクター・ミカドちゃん
今回のために描き下ろされたデザインのミカドちゃん。「帝」の文字が書かれているところが「DW帝」に変更されている

ゲーム開発の会社とはいえ、「社内ゲームセンター」の設置は、思い切った取り組みであると言えよう。だが、枠にとらわれない遊び心があるからこそ、斬新でおもしろい発想は生まれてくるのではないだろうか。

それは、何もゲーム開発会社に限らないはず。ピリピリした雰囲気や、真面目な発言だけでは、なかなか新しいアイデアは生まれにくい。社内ゲームセンターとまでは言わないまでも、せめてちょっとした息抜きができるような場所は、社内にあったほうがいいだろう。

日清が「完全栄養食」パスタ発売、多忙な現代人の「救世主」となるか

日清が「完全栄養食」パスタ発売、多忙な現代人の「救世主」となるか

2019.03.27

日清がパスタに1食分の栄養素を詰め込んだ新商品を発売

働き盛りの「栄養不足」にフォーカス

販路はネット限定、どこまで市場は広がるか

食事からバランス良く栄養を摂りたい…と考えていても、共働き世帯が増加し、働き方改革が叫ばれる労働環境の中で、それを実現するのは至難の業だ。

そんな社会情勢にあわせ、主食や飲料など手軽な形態で、1日に必要な栄養素を確保できるように作られた「完全栄養食」なるカテゴリが、にわかに注目を集めている。

これまではベンチャー企業の戦場だった「完全栄養食」に、即席麺の巨人・日清食品が参入。完全栄養食「All-in シリーズ」第1弾として、本日3月26日より「All-in PASTA」を発売した。

「All-in PASTA」のパッケージはかなりシンプル。メインターゲットの30代以上の働き盛り世代を狙ったと思われるカジュアルな仕上がりだ

チキンラーメンの正統進化? 21世紀型「簡便食」

日清食品の創業者・安藤百福が戦後の食糧難をきっかけに開発した「チキンラーメン」。もうすぐ最終回を迎えるNHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」で広く知られることになった開発エピソードの21世紀版と言えるのが、この「All-in」シリーズ。1日に必要な栄養素の3分の1の量を、1食分の麺に配合しているのが特徴だ。

連続テレビ小説「まんぷく」にあやかったプレゼンテーション。チキンラーメンから60年を経て、変化した時代に合った「簡便栄養食」を提供するというコンセプトだ
「All-in PASTA」の試食販売は、チキンラーメン発売当時に初めて試食販売を実施した阪急うめだ本店(大阪府)で行う(3月27日~31日まで)

チキンラーメン開発当時と比べれば、現代は「空腹を満たすには困らない」時代と言える。その一方で、個々人が「必要な栄養を万全に摂取する」という意味では、困っている人の割合が多いと言えるだろう。

厚労省の調査によれば、栄養素の摂取が推奨量に届いていると考えられる年代は少なく、またビタミン・ミネラル含有量の多さから健康的な食事に欠かせない野菜類の摂取は、国民全体で不足傾向にある上、40代以下では慢性的に不足していることが分かっている。

野菜不足は若年層においてより深刻になっている

そして、日清の独自調査だが、働き盛りの年代で健康に気を配る人は9割にのぼる一方、それが実現できていると感じているのは調査数のうち半数を切る。健康意識の高さと裏腹に、忙しさからか栄養バランスの良い食生活を送れていないようだ。

同社はビジネスパーソンの代表として三菱商事、伊藤忠商事、LOHACOなどの協力を得て調査を実施。働く人の意識として、「健康な食生活を送りたいが実践できていない」という大意が読み取れたという

栄養豊富だけど「ふつう」に食べられる味を追求

そうしたニーズを汲んだことで広がりつつある「完全栄養食」。だが、栄養食品やサプリメントを心底「おいしい」と感じたことがある人は、あまりいないのではないだろうか? 筆者も、飲み込み損ねたサプリメントが舌の上に残ってしまい、何とも不快なえぐみと臭いに閉口した経験がある。

開発担当者である同社 ダイレクトマーケティング課 ブランドマネージャーの佐藤真有美氏によれば、栄養そのものの味は苦み、えぐみ、酸味、さらにざらついた舌触りなど、およそおいしさとはかけ離れた特徴を持っているという。

それを一般的な食材と遜色なく食べられるようにするため、同社はビタミン・ミネラルを麺の内側に封じ込める独自製法「栄養ホールドプレス製法」を編み出した。また、その上で麺の持つ雑味をマスキングするような味付けを開発。この製法により、加熱調理による栄養価の減衰を軽減することにもつながったとしている。

製法図。開発には約1年半を費やし、試作は300回を超えた。既存商品と比べても困難の多い道のりだった、と佐藤氏
コクのある「ボロネーゼ」、香りの良い「ジェノベーゼ」、酸味と旨みを併せ持った「スパイシーアラビアータ」の3種を、湯切り調理のカップ麺形式(1食税別600円)、麺(1食税別400円)とソース(2食入税別500円)を別売する一般的なパスタの形式で展開する

会見の途中で「ボロネーゼ」と「ジェノベーゼ」2種類の味の試食が配られたが、いずれも「良薬口に苦し」といったような、栄養素独特の風味は無かった。一般的なパスタと比べると小麦の含有量が少ないためか、ポロポロと切れやすいコシの少なさは気になった。

ボロネーゼ(左)とジェノベーゼ(右)を試食

とはいえ、黙って出されたら栄養食品のたぐいとはわからない仕上がりだ。個人的にはジェノベーゼソースの風味が気に入ったが、麺の食感をカバーするにはボロネーゼソースくらいの粘度や粒感があった方が、より「ふつうのパスタ」らしくなると思われる。

発売前の「All-in PASTA」を試食したビジネスパーソンからは、ランチ時の利用や社内購買への導入など、ビジネスのオンタイムにこそ使いやすいのでは、という意見が複数見られたという。インスタント麺として調理可能なことが、既存商品と比較した際の目立ったアドバンテージと言えそうだ。

ラーメンでなくパスタから出した理由

「All-in PASTA」の販路はオンラインに限定。日清食品グループのオンラインストア、および「アラビアータ」味の開発アイデア協力も行ったLOHACOで販売を行う。公式サイト上では、パスタソース以外の味付けを紹介するアレンジレシピを掲載。ちなみに、調理の方向性としては、酸味や醤油の風味が麺の雑味をマスキングするのに適しているとのことだった。

調理前後の栄養比較表。麺の中心に栄養素を入れ込むことで流出を抑え、スペックと実態の乖離を極力抑えた

ニーズの高まりがあると言っても、一般的なカテゴリになっているとは言いがたい「完全栄養食」。まずは流通コストが低いネット通販にて提供する。

また、今夏にはラーメン(汁なしそば)タイプの新商品も発売予定。トムヤムクン風、坦々麺風の開発中の試食が会見場で振る舞われた。いずれも発売時期にあわせたスパイシーさが共通で、酸味の効いたトムヤムクン、ゴマのコクが強い担々麺と性格が異なるフレーバーだ。

21世紀の「チキンラーメン」を彷彿とさせる売り出し方の同シリーズだが、スープありの麺は試作されなかったのだろうか? そう現場で佐藤氏に尋ねたところ、スープに麺の苦味が出てしまうため、まずは汁なしで成立するパスタから開発したということだった。今後、麺の改良、あるいは雑味をマスキング可能なスープの開発など方策の目処が立てば、汁ありタイプの商品化も可能性はあるという。

会見でプレゼンテーションを行った、日清食品 マーケティング部 藤野誠 部長(左)、同 ダイレクトマーケティング課 ブランドマネージャー 佐藤真有美

発展途上のカテゴリである「完全栄養食」だが、「All-in」シリーズの販売目標は2019年通して累計100万食を目標に掲げるなど、かなり強気の姿勢を見せた。それだけ、同社は簡便な栄養摂取に対するニーズの高まりを感じているのだろう。

働き盛りの人々を悩ます栄養不足。理想は当然ながら食材からの摂取ではあるものの、その理想と現実のギャップをうめるのには取り入れやすい新商品となっている。

その一方で、自社のネット販路主体でどこまで購入に結びつけられるか、また個人差の大きい食生活の中で、同商品による栄養の充足を実感する購入者がどの程度現れるか、というのは課題といえるだろう。

昨今はSNS経由の口コミが購買を大きく左右する。試食と口コミ、その相乗効果で受け入れられれば、より一層市場が拡大が加速するのではないだろうか。

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。