新卒採用 2019年卒も「売り手市場」が鮮明に

新卒採用 2019年卒も「売り手市場」が鮮明に

2018.11.09

2019年卒も新卒採用は売り手市場に

若年人口の減少と団塊引退、外国人材にも課題

企業の採用環境は来年以降も厳しさ続く

人手不足が深刻な社会問題となっているなか、2019年新卒の就職活動でも、企業の採用需要に対して働き手が不足する「売り手市場」が続いていることがわかった。

人材サービスのマイナビが、2019年卒の新卒内定状況について、国内企業3,013社に今年9月~10月の期間で調査を行ったところ、企業が獲得できている内定者数を募集人員で割った「採用充足率」は84.4%と低迷。100人の募集に対し、およそ84人が集まったという数値で、ここ10年で最低だった昨年の83%には及ばないものの、今年も企業にとって厳しい状況であることが鮮明になった。

業種別で見ると「ソフトウエア・通信」業界の採用充足率が77.3%と特に低く、技術系人材や成長産業への手当てが充分ではない可能性が見え隠れする。また、上場企業の充足率が95.9%であるのに対し、非上場企業では76.5%と20ポイント近い差が出ており、非上場企業が特に厳しい状況にある。

調査時点で6割近い企業が「今後も採用を継続する」と回答しているが、既に次年度も売り手市場は継続するという見方が大勢を占めている。母数としての新卒者の減少という人口構造の問題も重くのしかかる。国の調べでは平成30年時点の20~24歳人口は約630万人だが、次世代に控える15~19歳人口は600万人を下回る591万人で、その後も世代人口は減り続ける。さらに、世代人口が937万人で最大の65~69歳は働き手からの引退が進んでいる。

外国人材の活用も議論になっているが、マイナビの調査では、2019年卒で外国人留学生を採用した企業は約1割だった。採用が進まない理由は「日本語能力(24.7%)」や「ビザなどの手続きが困難(14.6%)」よりも、「外国人が活躍できる環境が整っていない(43.2%)」や「現場の受け入れ体制が整っていない(43.8%)」といった、企業の内部要因が大きかったようだ。ただ、2020年卒では10.7%の企業が外国人留学生の採用を予定し、検討中の企業も28.8%と増加する見通しだ。

こういった厳しい採用環境へ備えるため、企業側は新卒採用におけるインターンシップや面接のスケジュールをさらに早める傾向を見せている。マイナビは、「就職戦線は今、学生が受験する企業を絞る『厳選就活』の時代。企業は学生へ魅力を伝え、深いコミュニケーションを築く採用施策が必要になる」と、今後の企業側の施策について指摘している。

ユニクロが全世界の倉庫を「自動化」 第一号は有明から

ユニクロが全世界の倉庫を「自動化」 第一号は有明から

2018.10.10

ユニクロ、有明の物流倉庫の自動化を公開

ダイフクと提携し海外拠点でも同様に自動化を展開

倉庫の自動化は全社的な改革の一環、と柳井氏

ユニクロなどを展開するファーストリテイリングと、物流システム・機器の大手企業ダイフクが戦略的なグローバルパートナーシップの構築に関して、「中長期的・包括的な物流に関するパートナーシップ合意書」を締結したと発表した。

10月9日、両社の代表者が出席のもと、記者発表会を開き、東京・有明にある物流倉庫に導入された、2社が共同で取り組みを進める最新鋭の自動化設備を公開した。

物流分野における戦略的グローバルパートナーシップを発表し握手を交わす、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏(中央左)とダイフク代表取締役社長の下代博氏(中央右)。発表会では、ファーストリテイリング グループ執行役員 神保拓也氏(左端)、ダイフク 執行役員 権藤卓也氏(右端)も出席した

ファーストリテイリングと手を組むダイフクは、大阪市に本社を置く1937年設立の企業。"マテリアルハンドリング(マテハン)"と呼ばれる、物流における保管・搬送・仕分けを効率的に行うためのシステム製造業界では、世界トップラスに位置づけられる。

グローバル展開の拡大を企業戦略に掲げる2社がタッグを組み、有明の物流拠点の自動化システムを皮切りに、先進的な物流システムを構築し、国内外への拡大を図る。

自動化の陰には「物流の混乱」

今回のプロジェクトを指揮する、ファーストリテイリングのグループ執行役員・神保拓也氏は、ダイフク社とのパートナーシップ締結の背景には、2015年に同社内で起きた「ユニクロ物流の大混乱」があると語った。

2015年当時、物流はパートナーに丸投げしていたことから現場は混乱、配送遅延なども起こっていたという

「当時、物流パートナーに業務を丸投げしていたため、実際に現場で何が起きているのかを把握できていなかった。物流の混乱を物流部だけで解決しようとしていて、物流のあるべき全体像や戦略を考えることができていなかった」と神保氏。

そこで、物流部を解体し、企画・計画・精算・物流・販売などサプライチェーンに関わる人材から成る「グローバルサプライチェーンマネジメント部」を発足するなど、翌2016年9月から物流システムの改革に向けた取り組みを開始した。

ユニクロの物流改革の概要図

たとえば、ユニクロの人気商品であるヒートテックに関して、実売される時期は秋口であるのに、春先に生産されてすぐ大量入庫されてしまい、半年近く休眠在庫が発生してしまう問題が発覚した。こうした課題の抽出から物流パートナーとの信頼関係を再構築し、問題解決に努めた。

しかし、人件費の高騰や集人難、教育コストなどの理由から人海戦術的な手法では限界が見えることから、「遅きに失する」という考えのもと、抜本的な改革に着手するに至ったと説明した。

RFIDで検品、「モノがヒトに向かってくる」ピッキング

その結果、たどり着いたのが"世界最先端技術を用いた進化し続ける超省人化アパレル倉庫"で、最初に具現化されたのが今回報道陣に公開された有明倉庫だ。この倉庫は2017年から稼働している同社のオフィス「UNIQLO CITY TOKYO」と同じ建屋にあり、ECで注文された商品の保管から発送までを担っている。

ユニクロ有明倉庫の自動化システムの概要

ダイフク社との取り組みは、2016年12月に遡る。当初、有明倉庫の自動化は同社が過去手掛けた中でも世界最大級の規模。常識から考えると3年の工期がかかると言われており、「オリンピックまでに間に合えば」という目標を掲げていたが、実際にはわずか1年半で完成。今春に1時稼働が開始され、10月からフル稼働に入ったという。

有明倉庫は、延床面積11.2万㎡の6階建ての建物内の1~3階にあり、まずは1階部分で自動で荷物の積み下ろしを行った後、3階にベルトコンベアーで運ばれて、RFIDタグによる自動検品を経て、自動で保管倉庫に格納される。

有明倉庫の3階部分にある、自動検品エリア。コンテナ内の商品は1点1点RFIDタグが取り付けられ、自動検品機を通過してチェックが行われる

人手を必要とせず、天井の空間にまで商品を保管ができるため、保管効率は従来の3倍に向上した。出庫に関しても自動かつ迅速に行われ、唯一人手で行われるその後のピッキング工程では、商品が作業者の手前に運ばれる仕組み。そのため、既存のピッキングのように倉庫内を歩き回ることなく、一歩も動かずに作業が行える。

その後の梱包作業も、配送用の箱の組み立てから封函まで全自動。しかも内容量に合わせて配送箱の高さを調整して封函される仕組みのため、配送時の積荷容積を抑えることができる。

梱包された商品はそのまま配送先の方面別に自動で仕分けされるため、荷積みのために待機する配送業者の仕分け作業の手間も省く。物流システム内の移動に使われた商品コンテナまでもが最後に自動で折り畳まれる仕組みだ。

3階部分の自動保管倉庫。自動で格納や出庫が行われるため、人の手が届かなかった天井近くにまで保管が可能になり、これまで以上に空間を有効活用ができる

今回の自動化システムによる省人化率は90%、教育コストも80%削減。入庫時の生産性は80倍、出庫時の生産性は19倍に向上。ほぼ機械が自動的に行うため24時間稼働が可能になり、稼働開始からおよそ半年間でのRFIDによる自動検品のエラーや漏れは1件もなく、精度は100%とのこと。従来は8~15時間ほどかかっていたオーダーから出荷までの時間は最速15分、遅くとも1時間以内には出荷が可能になったという。

倉庫を自動化したことによって得られた効率化を数字で示した

記者会見では、今回の自動化システムの投資額は明かされなかったが、1つの物流センターあたりの投資額は10億~100億円、全世界では1000億円規模にのぼるとのこと。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、「ダイフクさんは日本初の自動車生産ラインの製造事業者として23の国と地域に拠点を持ち、自動車業界とともに世界へ進出した企業。今度はユニクロと手を組み、世界最先端・最大級の自動倉庫で世界へ」と語り、2~3年以内に全世界の全拠点における倉庫の自動化を目指す意向を明かした。

物流システムの改革・改善は、顧客へのサービス向上のみならず、従業員やアパレル業界の働き方改革、配送業界などECに関連する周辺業界の業務改善など社会貢献の一環でもあると意向を明かした、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井氏

なお、既に中国、タイ、オーストラリア、アメリカ西海岸・東海岸の拠点にはダイフク社の専門家チームが入り、自動化に着手しているとのこと。また、今回公開されたシステムに留まらず、さらなる自動化を目指してロボット開発ベンチャー企業とも話を進めていると明かした。そして、今回の物流倉庫の自動化は、アパレルサプライチェーンとして、働き方改革なども含めたすべての改革につながる、会社全体での取り組みの一環だと説明した。

"着る"空間「WEAR SPACE」製品化へ 巨人・パナソニックがアジャイル開発に挑む

2018.10.04

パナソニックから既存製品カテゴリ「外」のプロダクトが登場

パナソニックブランドは用いず、クラウドファンディングを開始

大企業にベンチャーマインドを注入するためのプロジェクト

集中力を高めるためのウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」。ややSFめいたような、見慣れない形状が目を惹くが、これはスタートアップ企業ではなく、家電業界の巨人・パナソニックから生まれた製品だ。

同製品は「WEAR SPACE project」発の製品として、クラウドファンディングで資金調達を行い、量産に着手する。パナソニックブランドを用いないプロジェクトとしてスタートしたその理由について、発表会の場で話を聞いた。

コワーキングの裏にある「一人作業」ニーズ狙う

パナソニックアプライアンス社 デザインセンター所長 臼井重雄氏

今回「WEAR SPACE」を企画したのは、パナソニックの中でも家電を手がけるアプライアンス社内のデザインチーム「FUTURE LIFE FACTORY」。同社 デザインセンター所長 臼井重雄氏の肝いりで立ち上がった所長直下の組織で、若手デザイナーのみで構成されている。

パナソニックでは製品ごとにチームが分かれており、たとえば炊飯器のチームが新製品を作る場合は、従来品をベースとした性能向上など、リニューアルのような格好で開発を行う。それとは逆に、既存の製品カテゴリと結びつかない、ゼロベースの製品開発を行うのが「FUTURE LIFE FACTORY」だ。

パナソニックアプライアンス社 デザインセンター 新領域開発課 FUTURE LIFE FACTORY 姜 花瑛氏

「WEAR SPACE」は、ノイズキャンセリング機能を搭載したワイヤレスヘッドホンと、ファブリックパーティションを組み合わせて出来ている。水平視野を6割カットし、目の前の作業への集中を促進するという。専用アプリでノイズキャンセリングを3段階で変更可能で、Bluetoothによる音楽のワイヤレス再生にも対応する。

開発の背景には、働き方改革により、パナソニックはじめ大企業の多くでフリーアドレスが導入されたことにあった。コワーキングがトレンドになる一方、一人で集中したいシーンは誰しもあるが、オフィス内に個人用ブースを確保するのはなかなか難しい。そうしたニーズを解決するためのプロダクトとして、「WEAR SPACE」が生まれた。

実際に装着してみたところ、装着時に「重い」と感じることはなく、側圧のみで固定された。現在、ヘッドホン部分はパナソニック製品を組み込んでいるが、製品版で同様の仕様とするか、同社傘下のshiftall(後述)が一から製造するかは現在検討中とのこと

コアターゲットは、ソフトウェアエンジニア、Webデザイナーなど、仕事道具にこだわりを持つデスクワーカーを想定。FUTURE LIFE FACTORY・姜氏は、「それ以外の人たちにも、図書館やスポーツ選手の集中、漫画家、漫画喫茶、図書館などで活用いただけるのでは」とコメントした。

先ほどの発言で、姜氏が多様な活用シーンを想定した裏には、製品化が決定する前に、「SXSW 2018」などのイベントで「WEAR SPACE」を展示したことで生まれたコラボレーション企画にある。

たとえば日本酒のテイスティングを行う「YUMMY SAKE」とのコラボレーションでは、味覚に集中するために「WEAR SPACE」が使われた。また、ASD、ADHDボランティア「tentonto」とのコラボレーションで、ASD、ADHD当事者の装着感を実際に聞き取ることもできた。

大手メーカーとしては、開発過程をオープンにするのは異例のこと。だが、それによって開発側だけでは想像していなかった利用例が生まれたと語った。

量産を手がけるのは「帰ってきた」スタートアップ

「WEAR SPACE project」では、企画・デザインをFUTURE LIFE FACTORYが手がける一方、設計・製造・販売はパナソニック本体ではなく、その傘下のshiftallが手がける。

shiftall CEO 岩佐琢磨氏

shiftallは、「1/8タチコマ」などの製品で知られるハードウェアベンチャー・Cerevoの元CEOである岩佐琢磨氏が代表を務める、ハードウェアのアジャイル量産を手がける企業。キャリアをパナソニックからスタートし、独立してCerevoを立ち上げた岩佐氏にとって、古巣に帰ってきた格好となる。

企画と製造を分けた体制のメリットは開発期間の短縮。パナソニック社内で前例のない新製品を作るには「2年程度かかるケースもある」(姜氏)とのことだが、shiftallが設計・製造・販売を手がけることでその期間を短縮。約10カ月程度で製品化が可能になるとした。

また、岩佐氏はパナソニックに限定しない、メーカー系大企業についての話と前置きした上で「大企業がなくしたもの」と題したプレゼンを展開。「カッティングエッジなプロダクト」「小さなロットで迅速に市場投入するノウハウ」「ノンシリアル(非連続)なイノベーション」がそれにあたるとした。

「WEAR SPACE」について、「音楽を聴く機具から、集中するための機具に大きくアプローチを変えた」点が面白い、と語った岩佐氏。こうしたゼロからイチを生み出すような取り組みが最終製品に結びつくのは(大企業においては)難しいため、同プロジェクトの成り行きが、パナソニック内部にスタートアップマインドを作る上でも重要になると語った。

目標金額は1500万、実物展示も実施

「WEAR SPACE project」のクラウドファンディングは、10月2日からスタートしている。利用したサービスは、CCCの「GREEN FUNDING by T-SITE」。期限は12月11日まで、目標調達金額は1500万円。2019年8月以降にリターンとして製品を届ける想定だ。製品価格は3万5000円だが、支援プランによって割引が設定されている。

「ワークスタイリング 東京ミッドタウン」では、「WEAR SPACE」を体験できる

「WEAR SPACE」の実物は、発表会の行われた「ワークスタイリング 東京ミッドタウン」や「RELIFE STUDIO FUTAKO」「代官山ティーンズ・クリエイティブ」(Designart 2018開催時)など、都内各所で展示を予定している。

「これまで、デザインの提案は悪く言えば"絵に描いた餅"で、社内で提案して却下されたらそこで終わっていた」と姜氏。だが、今回のプロジェクトでは、クラウドファンディングで製品のあり方を市場に問いかけることで、新たな事業機会を素早く検証することを目的としている。最終的にはパナソニックが既存事業にとらわれない新商品を次々生み出せるような会社になっていければ、と抱負を語った。

また、shiftall・岩佐氏は、在席当時からパナソニックがどう変わったかという質問を受けて、「トップが危機感持っていること」と回答。同氏が退職した当時(2007年ごろ)、薄型テレビの好調で業績がV字回復している時と比較して、良い意味でトップダウンが効き始めていると評価した。その一方で「相変わらず(新規事業に対して)ブレーキ役も多い」とも指摘し、同社の関与によって、新事業の創出を後押ししていく姿勢を見せた。

クラウドファンディング開始から一夜明けた10月3日、最も安価に製品を入手可能な「Super Early Bird」プランは、定員100名に達していた。好調な出だしのまま進むことができるか、今後の動向にも注目したい。