「健康経営」の記事

プラズマ乳酸菌で労働生産性が向上!? ヤフーとキリンが共同発表

プラズマ乳酸菌で労働生産性が向上!? ヤフーとキリンが共同発表

2018.11.16

キリンとヤフーが共同で健康経営に関する研究を実施

プラズマ乳酸菌の摂取が免疫細胞の司令塔を活性化させることを確認

免疫力アップが労働生産性の向上につながることも導き出した

キリンとヤフーは11月15日に、キリングループの研究している「Lactococcus lactis strain Plasma(プラズマ乳酸菌)」について、共同で実施した研究結果を発表した。

研究結果は、「プラズマ乳酸菌を摂取すると、労働パフォーマンスの指標が向上する」というものだ。いったいどういうことなのだろう。

プラズマ乳酸菌が活性化させるのは免疫細胞の司令塔

そもそもプラズマ乳酸菌とは何か。乳酸菌はヨーグルトなどに入っているイメージだが、プラズマとは違う物質なのだろうか。キリン社によると、プラズマ乳酸菌とは免疫細胞の司令塔を活性化する唯一の乳酸菌だという。

どうやら免疫細胞には命令系統のようなものが存在し、司令塔を活性化させることに成功すれば、司令塔の命令を受けるすべての免疫細胞が活性化されるのだという。

ただし、一般的な乳酸菌が活性化できるのは、命令系統下位の細胞のみ。そのため効果も限られる。それに対して今回研究結果を発表した、プラズマ乳酸菌は免疫細胞の司令塔である「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化することができるため、免疫細胞全体を活性化することができるという。

そんなプラズマ乳酸菌が労働パフォーマンスとどう関係があるのか。次は、今回の研究で行われた試験内容を見てみよう。

一般的な乳酸菌とプラズマ乳酸菌の違い

元気な体が、低労働生産性の「プレゼンティーズム」を回避

今回の試験は、ヤフー社員226名を対象として行われた。プラズマ乳酸菌1000億個含むヨーグルトを4週間摂取し、体調、気分、労働生産性に関するアンケート評価を実施。その結果、非摂取の状態と比較すると、プラズマ乳酸菌を摂取している状態のほうが、活気があり、体調も良好だと感じている人が多かった。

また、「風邪気味で頭がボーっとする」「下痢で何度もトイレに行く」といった、出勤しているが心身の健康上の問題によって十分なパフォーマンスを発揮できていない状態を「プレゼンティーズム」と呼ぶが、今回の試験によって、このプレゼンティーズムの状態が軽減され、労働生産性が向上したことを確認できたという。

つまり、プラズマ乳酸菌を毎日摂取することで、生体内の免疫が活性化し、体調がよくなり、プレゼンティーズムを改善して労働生産性が向上することがわかったのだ。

簡単に言うと、プラズマ乳酸菌を摂取して元気な状態で仕事をすれば、高いパフォーマンスを発揮できるということである。

プラズマ乳酸菌の摂取によってプレゼンティーズムが改善するという結果が得られた

キリン 代表取締役社長の磯崎功典氏は「従業員とその家族が健康であることは、社会にとってプラスの価値を生みます。健康寿命が延びることによる労働力の確保、ひいては、経済の活性化にもつながると考えました。その結果、従業員は考える時間やチャレンジする時間を持てるようになり、仕事のパフォーマンス向上や、イノベーションの実現につながっていくでしょう」と、キリンが健康経営に力を入れる理由を説明した。

キリン 代表取締役社長の磯崎功典氏

同社が乳酸菌事業に参入してから1年。すでに、初年度の売上額は、目標の1.5倍の額にあたる55億円に達しているが、さらに拡大していき、3年後には2.7倍の150億円を目指す。

たしかに筆者自身も、プレゼンティーズム状態だと感じることはしばしばある。疲労だけでなくオフィス内の騒音なども、仕事に集中できない原因の1つだと思われるが、はたして、そのようなメンタル面のプレゼンティーズムも改善されるのだろうか。実際にプラズマ乳酸菌を飲んで、試してみたいところだ。

タニタ、

タニタ、"生涯現役社会"に向け新サービス立ち上げ 国の健康政策への組み込み視野に

2018.10.02

タニタ、健康寿命の延伸狙う「健康プラットフォーム」立ち上げ

官民ファンドのINCJから多額の増資、いずれは政策へ活用か

パートナー企業4社と連携し、2019年より実証実験

タニタとタニタヘルスリンクは9月28日、INCJ、イトーキ、SBI生命保険、日立システムズの4社を引受先とする総額35億円の第三者割当増資を実施し、契約締結が完了したことを発表した。

タニタらは「健康プラットフォーム」を構築し、パートナー企業とともに新たなヘルスケア事業を2019年度中に展開する予定だとしている。ここでは、同日、マンダリンオリエンタルホテル東京にて開催された記者発表会の模様をお伝えする。

「いずれは国の健康政策に貢献したい」

タニタ代表取締役社長の谷田千里氏

今回、タニタらが展開する新しいヘルスケア事業は、各社が持つヘルスケア関連情報やサービス、システムなどを融合させ、東京大学と連携して、誰もが利用できる新たな健康プラットフォームの創出を目指すもの。その第一弾として、2019年度に岡山市で実証実験を始める。

発表会の冒頭では、タニタ代表取締役社長の谷田千里氏が登壇し、今回の増資にあたっては官民ファンドのINCJから多大な支援を受けたことを明かし、「国内における健康サービス産業を創出せよとの大きな期待の表れである」と強く認識したという。

そして「国が推進する公的保険外の領域におけるヘルスケア分野の産業化やデータヘルス計画の受け皿となるべく、産・官・学が連携し、誰もが参加できる健康増進のインフラ作りに取り組んでいく」と意気込みを語った。

「健康プラットフォーム」によって生まれる新たな健康サービス

また、「国内のあらゆる企業、団体、アカデミアなどその垣根を越えて連携するオープンプラットフォームによって健康課題を解決できれば、この分野で世界を大きくリードすることができる」と断言。「今回構築する健康プラットフォームは、国民の健康データをビッグデータとして、健康寿命延伸に向けた多くの方々のさまざまな取り組みに活用できる可能性がある」とも述べた。

さらに「この健康プラットフォームが日本の公的資産として国の健康政策に役立てていただくことを視野に入れている」と展望を語り、「"生涯現役社会"の実現へ向けた大きな挑戦がいよいよスタートします」と挨拶を締めくくった。

タニタヘルスリンク代表取締役社長の丹羽隆史氏

次に、タニタヘルスリンク代表取締役社長の丹羽隆史氏が登壇。今回構築を目指す健康プラットフォームは、検診やレセプト、健康情報などから疾病リスクを可視化し、個々人の生活スタイルや趣味嗜好から簡単・楽しい・続けたいと思えるコンテンツで行動変容を促し、利用者を健康にしていくものであると説明した。

自分に合ったかかりつけ薬局、保険、服、食事などによって、利用者自身の健康を守れるような情報をワンストップで提供するプラットフォームを目指すという。

 

「平均寿命」と「健康寿命」の差は男性で9年、女性では約13年。

また、同プラットフォームを作ろうと考えた要因のひとつに、日本国民がこのまま不摂生な生活をし続けることで医療費が増え続け、健康保険制度を維持することが難しくなるであろう状況に危惧を抱いたことを挙げた。

さらに「平均寿命」と「健康寿命」の差(病気や寝たきりの期間=介護を受け生活する期間)が、男性で9年、女性では約13年もあるとし、医療費適正化や健康寿命の延伸のためにはさまざまな世代での生活習慣病予防に向けた取り組みが重要だと述べた。

「健康無関心層」にも満足を得られる健康づくりサービスを提供

従来の健康サービスでは、健康診断の結果をもとに指導されるが、楽しくなかったり続かなかったりして、成果が出ないといった課題があった。今回、タニタが提案する健康サービスは、約3割いると言われる「健康関心層」の人々には成果をさらに伸ばしてもらい、残り約7割の「健康無関心層」の人々にはゲームや園芸、旅などのコンテンツ群を入り口にし、楽しみながら健康になる行動をとってもらう。その結果として、自分の体形や体組成は変化し、いつのまにか健康になれるという仕組みだ。

次に、健康プラットフォームの参画法人やアカデミアの役割についての説明に移った。

タニタヘルスリンクは、体組成計や活動量系などのハード、WEBサイトやアプリを用いた健康管理サービスおよび専門家によるセミナーなどのソフト、そしてタニタ食堂の企画・運営などの食事といった側面から、人々の健康づくりを促進する健康サービスをトータルで提供する。

タニタヘルスリンクの役割

丹羽氏は「健康プラットフォームの解析エンジンやコンテンツを、既に提携している150以上の自治体や企業にに加えて、自治体、健康経営を進める企業など計300以上の団体に提供したいと考えている。地方創生推進交付金を活用したモデルによって、自治体だけで200以上を目指す」とし、「裾野の広い健康領域をひとつの企業集団でカバーすることは不可能だが、多くの企業の賛同を得て手を携えることで領域全体をカバーし、無関心層にも届くサービスを構築していく」と述べた。

最後に「タニタヘルスリンクは"日本をもっと健康に"を目的に、思いを共有いただける企業をつなぐハブの役割を、この健康プラットフォームにおいて担っていく」と説明した。

パートナー企業・大学、参加の動機は

東京大学COI 自分で守る健康社会拠点 機構長の池浦富久氏

次に、タニタヘルスリンクも参画している、東京大学COI 自分で守る健康社会拠点の機構長・池浦富久氏が登壇。人生100年時代でいちばん大事な"健康の自分ごと化"を達成するために、同機構では自分のリスクをしっかり把握し、それを可視化し、何をすればいいのかをアドバイスするような一連のアプリケーションを開発しているという。

池浦氏曰くこれは「"ドラえもんの健康ポケット"のようなもの」で、「健康の考え方は人によって千差万別で色んなサービスを用意しなければいけないが、健康プラットフォームでこのアプリケーションの"健康ポケット"をさらに増やしていただき、国民の一人ひとりに適したアプリケーションにしていきたい」と述べた。

将来の生活習慣病リスクを可視化し、生活習慣や趣向に基づいたアドバイスを自動化するアプリケーション「カラダ予想図」

続いて、東京大学大学院工学系研究科 特任助教・医師の岸暁子氏から、同機構が開発しているプログラム「カラダ予想図」に関しての説明があった。

東京大学大学院工学系研究科 特任助教・医師の岸暁子氏

これは、検診データやレセプトデータ、健康情報から個人ごとの現在・将来の生活習慣病(メタボ、脂質異常症、糖尿病、高血圧症、慢性腎臓病、虚血性心疾患など)のリスクを可視化するとともに、本人の生活習慣や趣向に基づいたアドバイスを自動化するものだ。

同プログラムによってリスクが可視化されることで、自らの気づきによる自発的な動機付けとなり、行動変容を促進するとのことだ。今後はこの健康プラットフォームによってデータ連携の充実を図り、個別化された保健医療サービスの実現を目指すという。

最後に「データを集めることは非常に大変なことなので、健康プラットフォームには期待しています」とエールを送った。

INCJ マネージングディレクター・板橋理氏

そして、健康プラットフォームに資金・経営面でサポートするINCJのマネージングディレクター・板橋理氏が登壇し、今回出資に至った経緯について説明した。

同社は経済産業省(以下、経産省)と連携して投資活動を行っている。新産業構造ビジョンでは、健康寿命について、2020年までに1歳以上、2030年頃に5歳の延伸を政策目標のひとつとして掲げている。

その実現のために「個人が生涯にわたり健康関連データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築」や「行動変容を促すためのインセンティブ設計」が含まれているとした。

さらに官邸から発表された未来投資戦略の中に、「次世代ヘルスケアシステムの構築」が掲げられ、「自らの健康状態や服薬歴等を把握できる仕組みの構築」や「ビッグデータを個人のヒストリーとして連結・分析できる基盤の構築」が含まれている。

INCJは、今回の健康プラットフォームが政策的な課題に合致していることから、23億円を出資

政府の方針において健康寿命の延伸は戦略分野となっており、個人の健康データを活用したプラットフォーム構築の社会的重要性が増加している認識を持ったということだ。今回、タニタヘルスリンクが構築する健康プラットフォームが、政策的な課題に合致していることから今般、23億円の出資を決定した。

日立システムズ 代表取締役 取締役社長 北野昌宏氏(左)、イトーキ 代表取締役社長・平井嘉朗氏(右)

続いて、SBI生命保険の代表取締役社長・飯沼邦彦氏が、同社が健康プラットフォームへ参画した理由について説明した。同氏によれば、顧客に対し疾病リスクや生活スタイルから最適な保険商品の提案が可能になること、将来の疾病リスクや顧客の生活スタイル、趣向に応じた保険商品の開発、未病、予防の提供機会を得られることから、同プラットフォームを活用した保険商品やサービス展開を目指せるのが最大の理由だとした。

SBI生命保険はプラットフォームを活用した保険商品・サービスを展開

次に、日立システムズの代表取締役 取締役社長 北野昌宏氏が登壇。同社の役割は、健康プラットフォームの解析エンジンを共同開発するとともに、その拡大にも協力するとのこと。北野氏は「ITの会社なので、ITを使って貢献したい」と述べるとともに、多くの企業では人材不足に悩まされていることから、「大事な社員が病気になると企業としても非常に厳しくなるため、できるだけ多くの社員に健康でいていただきたい」というのが、今回参画したもうひとつの理由であることを明かした。

イトーキはWebアンケートサービス「はたらきかた検診」の分析結果を提供

最後に、イトーキの代表取締役社長・平井嘉朗氏が登壇した。同社は一日の大半を過ごすオフィスでの日常の行動がどのように健康に影響しているのかを、長年研究しており、働き方改革や健康経営の課題分析、効果検証に活用できるWebアンケートサービス「はたらきかた検診」をスタートした。

これは、働き方改革や健康経営をしたいが何から実施すればよいのか知りたい、実施した施策の効果を定量的に測りたい、といったニーズに活用できるという。今回、健康プラットフォームに参画した理由は、「これらの分析結果を提供するとともに蓄積データを我々なりに活用することで、さらに高精度なデータを顧客に提供し、日本の健康に貢献していきたい」からだと語った。

健康プラットフォームの第1号案件は岡山市

健康プラットフォーム事業の第一号案件には、岡山市が選出された。同市をフィールドに、国保や協会けんぽ、組合健保に所属している岡山市民で、個人同意に承認した人を対象にリスク解析を行っていく。

そして、それらの人々が健康改善に取り組みやすいように個々人の生活スタイルや趣味嗜好に寄り添ったレコメンドを出し、保健士や専門職の人々と連携するサービスを開始する。全国健康増進協議会に加盟する淳風会(岡山市)を軸に、全国440万人が受診する検診機関を通じて、全国に広めていく計画だ。

なお、サービス開始時期については、まず2019年4月から岡山にてトライアルを開始し、2019年10月に今回のプラットフォームの一部コンテンツが加わる形となり、そして2021年度には本格サービスの提供開始を目指しているということだ。

「健康プラットフォーム」を構築するタニタおよびパートナー企業

今回、タニタらが発表した新たなヘルスケア事業の展開は、経産省が掲げた政策目標のひとつである「健康寿命の延伸」に向けてのインフラとして、大きな目玉となりそうだ。加えて、働き方改革および生涯現役生活の実現に向けた狙いもあるという。同プロジェクトによって、多くの人々がそれぞれの健康増進のための取り組みに活用できるようになることを期待したい。

YouTuber社員、根羽清ココロに教わる「心身ともに健康な働き方」

YouTuber社員、根羽清ココロに教わる「心身ともに健康な働き方」

2018.08.24

ロートでは2つの部署の仕事をする「兼務制度」で社内交流を促進

ロートネームの普及で意見の出やすい雰囲気を醸成

公式YouTuberとしての活動目標数は登録10万人!

「8000歩のウォーキングで何km移動できるか」と問われて、すぐに答えがわかる人はどの程度いるだろう。歩幅を70cmと仮定すると、距離にしておよそ5.6km。歩くには少なからず覚悟が必要な数字である。

平日は取材を除いて基本デスクワークで座りっぱなし。休日はエアコンの効いた室内で、朝から晩までテレビゲームをしたり、マンガを読んだりして過ごす。そんな筆者からすると、5km歩くというハードルは思いのほか高く、長距離の徒歩移動なんて考えただけでも疲れてしまう。

だが、世の中は広い。筆者にはできないことを平然とやってのける企業があった。ヘルスケア事業を展開するロート製薬だ。なんと同社では、全社員に活動量計を配布し、「毎日8000歩&早歩き20分」運動を実践しているのだという。さらに、毎朝9時から社員全員で「オリジナル体操」を実施したり、社内の喫煙率ゼロを目指す「卒煙推進」に取り組んだりと、健康経営に余念がない。

では、どのような考えのもとで、社員の健康づくりをサポートしているのだろうか。同社の広報室に話を聞いてみた。

兼務制度の社内交流が「自分たちは関係ない」を取り除く

「ねばーーー! こんにちは。よろしくお願いします!」

ね、えっ? ねば? え? 何?

「ロート製薬 スキンケア製品開発部 兼 広報・CSV推進部の根羽清(ねばせい)ココロです。広報部の活動もしていますが、ロートには社内兼務の制度があって、普段はスキンケアの研究をしています」

今回はロート製薬 広報の根羽清ココロさんが取材に対応してくれるという。スキンケアの研究も行っているというココロさん。なるほど、どうりで。まるでCGのように美しい肌をしているわけだ。

ロート製薬 スキンケア製品開発部 兼 広報・CSV推進部の根羽清ココロさん

よし。早速だが一度、情報を整理しよう。ロート製薬には根羽清ココロさんという社員がいて、スキンケアの研究を行いながら、広報としての業務も行っていると。……大丈夫だ。おかしな点はどこにもない。このまま取材を続行しよう。

しかし、1つだけ、どうしても気になることがあった。

それは「社内兼務」というワードだ。

「ロートでは、希望があれば2つの部門に所属し、異なる業務を担当することができるんです。『営業と人事』とか、『健康経営の推進と商品企画』とか、知識やスキルを横展開させて、相乗効果に期待できそうな組み合わせで兼務する人が多い印象ですね」

なんと、同社では2つの部署の仕事をする「兼務制度」によって、キャリアの幅を主体的に広げることができるのだという。興味のある新しい仕事にチャレンジしたり、関連する仕事を掛け持ちしたりと、理由はさまざまだが、自分のやりたい仕事に携われるチャンスが増えるという意味では、社員にとってうれしい制度なのではないだろうか。

さらに、兼務制度の狙いはキャリアの拡大だけにとどまらないのだと、ココロさんは説明を続ける。

「カッチリした縦割りの組織だと、部門間で情報が遮断されたり、『これはあの部署の仕事だから自分たちは関係ない』という考えが生まれたりする恐れがありますよね。そのためロートでは、横のつながりを深めるために、フラットな組織にしていかねばー! と思っていました。1人で2つの部署をまたぐ兼務制度には、社内交流を一層促進させるという狙いもあるんです。兼務制度をはじめてから今年で3年目。現在は60人ほどの社員が利用していますよ」

たしかに、行き過ぎたセクショナリズムは多くの弊害を生み出しかねない。同じ会社に属していても、知らない部署や面識のない社員は、完全に他人。同じフロアのよく知らない社員たちが雑談に花を咲かせた際に、「うるさくて集中できない」というストレスを感じるのは筆者だけではないはずだ。

もし、自分が兼務制度で近くの部署の人たちと仕事をしていたら、ストレスは感じなくなるのだろうか? ……その点については正直あまり自信がないが、仕事の相談は行いやすくなり、社内の連携がスムーズになることは間違いないだろう。ココロさんを見習って、横のつながりを深めていかね、ね、ねばー。

意見しやすい雰囲気づくりは、呼び名改革から始まった

「社内コミュニケーション促進の取り組みとしては、“ロートネーム”って呼ばれるあだ名制度もあるんです! 全員の社員証にも記載されていますし、けっこう浸透しているんですよ。ちなみに私のロートネームはココロ。『ココロ、ランチ行こう~』とか『ココロ、休日何してたの~?』とか、ちょっとした雑談の際に使います。オフィスの雰囲気も和やかになりますね」

取材中のココロさん

ココロさんは社内連携の話のなかで、もう1つ、ロートネームという取り組みについて紹介してくれた。

かつてロート製薬は、「いわゆる“OL風"の制服を身にまとった女性社員がお茶くみをする」ような会社だったという。しかし、そのような光景に違和感を覚えた代表取締役会長 兼 社長の山田邦雄氏は、仕事をするうえで関係のない上下関係を撤廃すべく、まずは社内でコミュニケーションをする際、名前に役職を付けることをやめて、あだ名(ロートネーム)で呼び合うようにしたのだ。

「すぐに普及したわけではありませんが、年齢関係なく自由に意見が言えるようにと、山田が社内の改革を実施していきました。今では山田も若手社員から『邦雄さん』って呼ばれていますよ」

アイデアを出すのに立場や年齢は関係ない。偉いからといって部下のアイデアを頭ごなしに否定したり、自分の感性を押し付けて意見が出にくい雰囲気をつくったりすることは、企業の成長にも悪影響を及ぼしかねないはずだ。ロート製薬では、まずはお互いを柔らかいロートネームで呼び合うことで、意見の出やすい雰囲気を醸成することに成功した。きっと、ココロさんも活発にアイデアを発信しているのだろう。

公式YouTuberとして健康を推進せねばーーー!

「社内兼業制度」や「ロートネームの定着」によって、社内コミュニケーションを活性化しているロート製薬。身体的な健康もさることながら、健全な働き方の追及にも力を注ぐ。ココロさんからも、イキイキと働くイメージが伝わってくる。

「たしかに、ロート製薬はめっちゃ働きやすい職場やと感じています。私を公式YouTuberに起用するなど、おもしろい取り組みもしていますしね」

おっと、またしても無視できないワードが登場した。「公式YouTuber」。その仕事内容が気になるので、ちょっと聞いてみよう。

「ロートのことを皆さんにもっと知ってもらえるよう、YouTubeに動画をアップしています。私はもともと副業でYouTuberの活動をしていたのですが、今回、会社公式のYouTuberとしても活動するようになりました。LIVE配信もしたんですよ! 想像以上にたくさんのコメントをもらって、盛り上がったので、ぜひまたやりたいですね!」

LIVE配信の様子

ココロさんは動画でも広報活動を行っているらしい。最近話題のYouTuberだが、企業の公式というのはまだ珍しいだろう。公式YouTuberになってからまだ日は浅いが、実際のところ反響はあるのだろうか。

「思っていた以上に反響は大きいです。公開してわずかな期間しか経っていないにもかかわらず、1万以上の方にチャンネル登録していただきました。私のイラストを投稿してくださる方や、動画をきっかけにロートの新商品を購入された方もいらっしゃって、うれしかったですね! ただ、目標は10万人なので、まだまだ頑張ります(笑)」

公式YouTuberの反響はなかなか大きく、社内でもいろいろな人に声をかけられるようになった。「ねばー」というあいさつもにわかに流行り始めているのだとか。どのようなシーンで使うのだろう。

「今後も、健康に挑戦するロートの公式YouTuberとして、みなさんに健康情報をお届けしていきたいと思っています。特に、これまでロート製薬にあまり興味なかった方にもぜひ見ていただいて、ファンになってもらいたいですね。あと、みなさんから『こんな健康情報を配信して欲しい』というリクエストがあれば、取り入れたいと思っています!」

リテラシーの向上が健康への第一歩

ココロさんのインパクトが大きくてすっかり忘れていたが、同社の健康経営に関する取り組みについて聞いてみたい。「毎日8000歩&早歩き20分」運動を実践しているとのことだが、どの程度浸透しているのだろうか。

「2017年は41.0%の社員が実践できました。私は内勤なので8000歩ってなかなか難しくて。通勤時に意識して歩かないといけないんですよ。ちなみに、今はチームに分かれて歩数ポイントを競い合うイベントを実施中です。健康は一日でできるものじゃありませんからね。継続できるきっかけづくりが大事なのです」

ココロさんはそう言って、全社員に配布されている活動量計を見せてくれた。

社員に配られる活動量計

「また、社員の健康リテラシー向上のために、『日本健康マスター検定』の積極的な受験を推奨しています。健康の知識ってなんとなく覚えていることも多いですが、しっかり理解することで、取り組みの必要性もわかりますからね。人々に健康を提案するためには、まず自分たちが健康でいないといけません!」

たしかに、「脂肪を落とす漢方薬」を提案する営業が太っていたら説得力に欠ける。自分たちが健康になってはじめて、世の中に健康を提案できるというわけだ。なんと、ココロさんも入社以来風邪をひいていないという。

「ロートが考える健康とは、単に病気でないということだけではなく、心身の健康を基盤として、情熱をもって日々の仕事に取り組める状態のことです。社員自らが前向きに健康であり続けようとする“きっかけづくり”に注力することで、これからも“健康人財”を育成していきたいですね。私も、まずは自分が健康経営を実践していかねばー! と思っています。そして、周りのみなさんも健康にしていけるような情報をたくさん発信していきたいです!」

ココロさんは力強く答えた。

ココロさんの話を聞いて、改めて「のびのびと働ける環境がいいアイデアを生み出す」ことを実感した。

おそらく、公式YouTuberを起用するというアイデアは、若手社員が思いついたものだろう。年齢関係なく自由に発言できる環境があり、その意見を受け入れてチャレンジする文化が、ココロさんの起用につながったのではないだろうか。

「否定されてもいいからどんどん意見を発信していこう」というマインドは大事だが、「こんな企画は通らないのではないか」「またアイデアを否定されるかもしれない」と若手社員が委縮してしまうような職場では、決していいものは作れない。フラットに意見を言える職場で、心身ともに健康な状態で働くことが、画期的なアイデアを生み出すのだと、楽しそうに働くココロさんに教えてもらった気がした。