「仮想通貨」の記事

「NEM JAPAN」設立 - エンタープライズで使われるブロックチェーン目指す

「NEM JAPAN」設立 - エンタープライズで使われるブロックチェーン目指す

2018.11.30

NEM.io財団の日本支部「NEM JAPAN」が設立

社会実装で選ばれるブロックチェーンになるためにサポートを進める

すでに活用が進んでいるNEMのユースケースも紹介

11月28日、日本仮想通貨ビジネス協会の11月度勉強会において、NEM.io財団の日本支部「一般社団法人 NEM JAPAN」の設立が発表された。

NEMとは多目的に使えるブロックチェーンのこと。通常はプログラミングを行う必要がある機能がWebAPIとして提供されているため、ビジネスで採用する際に必要な開発コストを抑えられるうえに、スピーディな導入ができるのが特徴だ。

もう1つの特徴として、安全な設計が挙げられる。NEMと聞くと、コインチェックの流出事件が記憶に新しいが、あれは取引所のウォレット(仮想通貨の口座のようなもの)管理方法に問題があったのが原因。NEMブロックチェーン自体に原因があったわけではない。実際、2015年3月29日に最初のブロックが作られて以来、ブロックチェーンのプロトコルが原因のアセット流出はゼロだという。

NEMブロックチェーンの特徴

今回日本で設立されたNEM JAPANでは、エンタープライズ用途で選ばれるブロックチェーンになるために、エンジニア向けのセミナーや教育イベントの実施、実装サポートといった普及のための活動を行っていくという。

NEM JAPAN 代表理事の古賀大喜氏は「NEMは海外のプロジェクトであることもあり、これまで日本人にとって敷居が高いものでした。NEMブロックチェーンについて何か聞きたいことがあった場合に、気軽に相談できる窓口がなかったのです。そのためNEM JAPANは、ブロックチェーン事業をしたいという人が、相談窓口としてもご利用いただければと考えております」と、団体の役割を述べた。

NEM JAPAN 代表理事の古賀大喜氏

すでにいくつものユースケースが生まれているNEM

また、勉強会ではNEMブロックチェーンの活用事例についても触れられていた。

マレーシア国際イスラム大学では、闇市場で学位が売買されるという課題を解決するために、学位証明書のハッシュ値をブロックチェーンに記録して検証できる学位証明システム『e-Scroll』を実装。そこに、NEMブロックチェーンのソリューションである『LuxTag』が使われている。

2019年にラスベガスでオープン予定のエンターテインメント体験施設「Kind Heaven」では、デジタルコレクター商品の希少性を証明する用途としてブロックチェーン技術を活用。また、同様の例として、VR/AR内のデジタルアセットをNEMブロックチェーン上で発行・流通・管理することが可能になる『VERSES』の例も紹介された。

日本においては、政治と有権者の建設的な議論を促すプラットフォーム『ポリポリ』と、以前弊誌でも紹介したスポーツチームや選手をトークンによるギフティングで支援する『Engate』、歩くとブロックチェーントークンが付与されて、それを飲食店で使うことのできるヘルスケアアプリ『FiFiC』などのブロックチェーン採用サービスを紹介。FiFiCについては、特定の場所にトークンをあらかじめ配置しておき、実際にその場所を訪れた人がトークンを受け取ることができる機能が検討されていることに触れ、観光の集客にも活用できることを強調した。

希少性の担保やトレーサビリティなど、さまざまなシーンでの採用が進むブロックチェーン。これからも多くの事例が出てきそうだ。ビジネスにおいて効果的な活用をするにはどうすればいいのか、少しでも興味のある人は、NEM JAPANに一度相談してみるといいかもしれない。

モナバーで発見した「人と人をつなぐ」仮想通貨のポテンシャル

モナバーで発見した「人と人をつなぐ」仮想通貨のポテンシャル

2018.11.26

モナコインをコンセプトに営業を開始したBAR「モナバー」

手続きの煩雑さが仮想通貨決済普及の足かせに?

投げ銭を通じて生まれる仮想通貨のコミュニケーションとは

仕事終わりのサラリーマンが家路を急ぐ20時過ぎ。JR高円寺駅を南に下り、パル商店街を歩いていると、不思議な看板が目に入ってくる。

MONA BAR TOKYO ――。

看板には、穏やかなほほえみを浮かべる白い猫のようなキャラクター「モナ―」が描かれており、そこそこの存在感を放ちながら商店街の一角に佇んでいる。

BARと書かれているということは、お酒が飲める「BAR」なのだろう。隣で飲んでいる人から「あなたのココロのスキマ、お埋めしますドーン!!!!」なんて言われそうな“場末感”を醸し出しているが、同時に「なんだか気になる」不思議な魅力があった。

はたして、店内はいったいどうなっているのだろうか。ちょっとしり込みしてしまう雰囲気ではあったが、覚悟を決めて入店してみることにした。筆者には、やると言ったらやる「スゴ味」があったのだ。

MONA BAR TOKYO(モナバー)の外観。商店街を歩いていると、某掲示板でおなじみのキャラクター「モナー」が現れる
店内へと続く階段

仮想通貨を広めるべく、ホットサンド屋からモナバーへ

いざ、店内に足を踏み入れると、入り口の怪しさからは想像できないほど、オシャレで清潔感のある内装が目の前に広がる。ところどころにモナーの顔が見え隠れするが、店内に置かれたウッド調のテーブルやイス、観葉植物を見る限り、まるで隠れ家的なカフェといった感じだ。

モナバーの店内

「もともと、MUSTANG TOKYOという、ホットサンドのお店を5年くらいやっていました。昼は今でもホットサンド屋さんですが、2018年の7月28日から、夜だけ仮想通貨のモナコインをコンセプトにしたモナバーに切り替えて営業しています」

モナバーの代表を務めるモナ子さん(仮名)は、店舗の形態をそう説明する。なるほど、ホットサンド。それならばオシャレさにも納得だ。そして、モナバーは、某掲示板の「モナー」そのものではなく、仮想通貨の「モナコイン」をコンセプトにしたBARらしい。

モナバー 代表のモナ子(仮名)さん。既存のお客さんを困惑させないよう、まるっきり仮想通貨のお店にするのではなく、夜の時間帯だけ店舗形態を変えたが、久しぶりに来店したお客さんからは「変な組織にのっとられたのかと思った」と言われたという。しかも今回、取材はOKだったが、顔出しと本名の公開はNGだった。もしかして、ほんとうは怪しい組織の一員なのかもしれない……

しかし、ホットサンドとモナコイン、両者はコンセプトも客層も大きく異なるうえに、共通項もないように思える。夜だけとはいえ、なぜモナバーをスタートさせたのだろうか。

「2017年の夏ごろから個人的な趣味で仮想通貨を触っていたのですが、これが非常に興味深くて。ちょうどホットサンドのお店が5年経過したこともあり、なにか新しいコンセプトがほしいと考えていたので、モナコインをテーマにしたお店をオープンさせることにしたのです」

新しい風を吹き込ませるべく、夜間の店舗形態を一新したモナバーだが、おそらく一番メジャーな仮想通貨はビットコインのはず。なぜ、モナコインをチョイスしたのだろう。

「モナコインは、仮想通貨のなかでも、投げ銭などのコミュニケーションが特に活発に行われている通貨です。その投げ銭のおもしろさを少しでも伝えられたらと思って、モナコインを選びました」

モナコイン保有者の間では、SNSなどで仮想通貨をチップ代わりに渡す「投げ銭」の文化が定着しているらしい。そこでモナ子さんは、仮想通貨に触れたことのない人にも、投げ銭の魅力を伝えたいと考えたわけだ。ちなみに投げ銭は、SNSのなかでも特にTwitterでの利用が多いという。アカウントを持っていれば、誰でも簡単にモナコインのやり取りができるのだとか。

すると、おもむろにスマホでTwitterを起動したモナ子さん。「試しにやってみましょう」と、操作を始める。

「モナバーをオープンする前は、ほとんどモナコインを持っていなかったのですが、今は結構持ってるんです。取引所で買ったのではなく、ほとんどみんなからもらったコインなんですよ。ちょっと送ってみますね」

“みんなからもらった”というモナコイン。クラウドファンディングのようなことをしたのだろうか。

「いえ、違います。例えば、『新しいメニューです』とつぶやくと、『いいね』を押す感覚で、みんなが投げ銭してくれるんです」

モナ子さんはあっけらかんと話す。みんな、そんな簡単に自分のお金を渡せるのだろうか。「いいね」はお金がかからないからバンバン押せるが、その要領でお金を渡すという感覚は、貧乏な筆者からすると、イマイチ理解できない。

「えっと、Twitterのアカウントは……、やすかマギカさん? あれですか、まどマギから取ってるんですかね?」

え、……ええ。その通りです。すみません。僕と契約してNewsInsightを読んでよ!

なんてやり取りをしていると、筆者のTwitterに<@MONABAR_TOKYOさんから@yasuka_magicaさんにお届け物です! つ[3.9mona]>という通知が届く。ものの10秒足らずで、モナ子さんはやすかマギカに3.9MONAを送り終えていたのだ。

3.9MONAが届いた

簡単にモナコインを渡す様子を目の当たりにして、非常に感心したやすかマギカだが、これだと取材に来てモナコインを受け取って帰るという、図々しい奴に思われてしまうではないか。どうすれば返せるのだろう。

「いえいえ、全然大丈夫なので、持っておいてください。今のレートだと3.9MONAで500円くらいですが、去年暴騰した時は1MONA2000円近くまでいったんです。なので、これだけで1万円くらいの価値になるかもしれません」

「自分のお金を渡す感覚がわからない」と考えていた自分が恥ずかしくなるくらい簡単に、モナ子さんは言った。まるで握手をするような気軽さで仮想通貨を渡す。これが投げ銭の文化なのだ。

ちなみに、今回いただいた3.9MONAには「ありがとう(サンキュー)」の意味が込められているという。ほかにも、0.114で「いいよ」など、語呂合わせで送ることが多いそうだ。受け取ったモナコインは、モナコインちゃんbotというアカウント(@tipmona)を使うことで、ほかの人に送ったり、取引所の口座があれば日本円にしたりすることもできる。残高を問い合わせることも可能だ。

3.9MONA受け取った後、残高を確認したら、ほんとうにやすかマギカは3.9MONA保有していた

投げ銭で仮想通貨の輪を広げることが、利用シーン拡大につながる?

投げ銭を目の前で見せてくれたモナ子さん。しかし、その文化を理解してもらうことは簡単はないと、身をもって感じている。

「モナバーに来てくれた友人にも、たまに3.9MONAを渡すのですが、みんな全然意味をわかってなくて。そのまま放置している人も多いと思います。夏は3.9MONAで1000円くらいの価値があったので、ビール1杯くらい飲めたんですけど」

「モナビール」というオリジナルのビール

仮想通貨の投機的イメージから、モナコインの活用を躊躇してしまう人が多いのかもしれない。どうすれば、そのイメージを払しょくできるのだろう。

「使える飲食店が増えていけば、手に入れたモナコインをクーポンのようにいろいろな場所で使えるんですけどね。仮想通貨決済を開始しても、途中でやめてしまうお店は少なくないので、なかなか普及は難しいでしょう。飲食店の決済では、国際送金のような仮想通貨ならではのアドバンテージを発揮しづらいですし」

モナ子さんが見せてくれたように、投げ銭はオンラインですぐに実行することができる。それは世界中どこにいても変わらない。銀行で国際送金する場合の手数料や手間を考えれば、仮想通貨に期待できるポテンシャルは大きいだろう。

しかし、飲食店決済の場合、国際送金のような利用者メリットはあまりない。さらに、現状仮想通貨はいわば外貨のような存在であるため、「仮想通貨専用の店舗向け決済サービス」などを導入していない限り、売上で手に入れた仮想通貨は自分で日本円に変える必要があるのだ。

「モナバーでは、『もにゃ』や『coinomi』と呼ばれるモバイルウォレットで仮想通貨の支払いをお願いしており、モナコインとビットコインのほかに、ネムとビットゼニーでの支払いが可能です。ただし、仮想通貨でお支払いいただいた場合、店側は取引所で売上を円に変えなければなりません。手数料もかかりますし、レートも上下しますし、そのうえ、なかには海外の取引所でしか交換できない仮想通貨もありますし、正直めっちゃ面倒ですね(笑)」

手数料や価格の変動によって、売上の半分ほどしか手元に残らないということも少なくない。モナ子さんは下がっている通貨がある場合、日本円にせず、そのまま寝かせているという。

「ただ、モナコインはちょっと特殊で、保有者が愛着を持っている通貨なんです。もっとモナコインを広めたいとか、みんなで使いたいとか、知らない人に興味を持ってほしいとか、そういうことを考える人が多い気がしますね。モナバーとしても、『モナコインが好きでたまらない』という狭い層に対して、少しでも利用シーンを提供できればと考えていたので、それ自体はある程度実現できています。次はもっと投げ銭の文化を広げていきたいですね」

実際モナバーでは、地方在住のモナコイナー(モナコイン愛好者をこう呼ぶらしい)が、休日にわざわざ足を延ばして来店するケースも多いそうだ。

店内には、遠方から訪れたモナコイナーが楽しめるような、遊び心を感じるアイテムも(クリックしてアップ画像表示)

そう考えると、モナコインのように、通貨に対する愛着があれば、活発な交流や利用シーンが生まれるような気がする。仮想通貨ファンが投げ銭などでユーザーの輪を広げていくうちに、モナバーのような場所が生まれる――。それが繰り返されていくことで、少しずつ利用者と利用場所は増えていくはずだ。ファンが増えれば、国際送金のようなアドバンテージがなくても、仮想通貨の決済は普及していくのではないだろうか。

「仕事の依頼」や「遠隔地からのおごり」も!? 仮想通貨が生むコミュニケーション

投げ銭を広げていきたいというモナ子さんだが、来店した友人にモナコインを渡す以外では、どのようなやり取りがあるのだろうか。

「いくつかあるのですが、例えば『オダイロイド1号(@odairoid_001)』というTwitterのアカウント。誰かがお題と報酬を提示し、お題に答えたユーザーのなかで、リツイートといいねの総数が多かった上位5人に報酬が配られるというものです」

提供されるお題は、「新しいサービスの名前を考えてください」というアイデア募集や、「大金持ちにやってほしいことは何?」といったアンケートなのか大喜利なのかわからないものまで幅広い。

「このオダイロイドも、現状、狭いコミュニティのなかの人しか知らないので、もっといろいろな人に知ってもらいたいと考えているところです。自分で買う場合、仮想通貨はリスクを避けられませんが、1円も出さずにちょこちょこ仮想通貨を集められたら楽しいですよね」

オダイロイド1号のTwitterページ

また、仮想通貨を保有している人は、「オダイロイドポータル」から、お題の投稿も可能。答える側だけでなく、募集する側としても参加できるのだ。

「モナバーでは、仮想通貨のウォレットを疑似体験できる『モナチップ』という、ブラウザ上で動くポイントシステムを採用しているんですが、このプログラム部分をお店のオープン前に作る必要がありました。最初はクラウドソーシングサービスで制作を依頼したのですが、納期と金額の条件が合わなかったので、イチかバチかTwitter上で『近々オープンするモナバーで、こういうのやりたいんだけど、200MONAで誰かプログラムを作ってくれませんか?』と募集してみたんです。すると、6~7人が立候補してくれて。しかも、クラウドソーシングでは2カ月かかると言われたのですが、1週間でお願いすることができました」

ドリンクを注文するともらえるモナチップ。自分のTwitterアカウントと同期したウォレットに貯めておくことができる。集めたチップは、モナバーオリジナルの缶バッジやマグカップなどと交換可能だ

立候補してくれた人のなかには、即日作れると言ってくれた人や、なんと高校生もいたという。

Twitter上でプログラマーを探すなんて、ひと昔前までは現実的でなかったかもしれないが、今は仮想通貨の活用による仕事の依頼も不可能ではない時代なのだ。特に今回のようなケースでは、下手な企業に依頼するよりも低コストかつスピーディに対応してくれる気がする。少なくとも、素人を寄せ集めた「名ばかり情報システム部」が社内にある場合、Twitterの超高校級プログラマーのほうが頼りになるのではないだろうか。

モナチップで交換できるグッズ

そのほか、投げ銭によって生まれたコミュニケーションとして、モナバーでは、こんなことも。

「お店に来た人が<いまモナバーにいます>とTwitterで投稿すると、それに気づいたモナコイナーの人が、<あの子たちにおごってあげて>とモナコインを送ってくれることがあるんです。来店していたほかのお客さんの分まで払ってくれて、『今日はおごりだー』って感じで。もちろん滅多にあることではありませんが、そういうつながりが生まれることも、モナコインの魅力だと思います」

お店に飾っているイラスト。これらも、モナ子さんがTwitterのオダイロイドで描いてほしいと募集したものだという。期限が1週間だったにも関わらず、10件以上のイラストが届いた

2017年末のバブルがあったこともあり、投機的なイメージが先行しがちな仮想通貨。だが、今回モナ子さんの話を聞いて、モナコインの魅力は、投げ銭から生まれるコミュニケーションではないかと感じた。

世界中からアイデアや技術的な協力を得ることができるだけでなく、今後さらに、投げ銭の文化が普及すれば、おもしろい動画や芸術的なイラストの投稿によって、仮想通貨の収入を得られるようになる可能性もあるだろう。

投げ銭によって生まれる、そんな「人と人のつながり」こそが、仮想通貨の持つ真の価値なのかもしれない。

MONA BAR TOKYO

【住所】東京都杉並区高円寺南3-58-29 2F
【営業時間】
月/火
20:00~24:00 (L/O 23:30)
金/土/日/祝
19:00~24:00 (L/O 23:30)
【定休日】
水/木
【TEL】03-5307-7055
【仮想通貨決済】
モナコイン/ネム/ビットコイン/ビットゼニー
【クレジット】
VISA/Master/JCB/American Express/Diners Club/Discover
※喫煙不可 (電子加熱式タバコ可)

相次ぐ仮想通貨トラブル、管理体制をどう考えるべきか

理解を一歩深めるための仮想通貨レクチャー 第5回

相次ぐ仮想通貨トラブル、管理体制をどう考えるべきか

2018.10.23

最近起きている仮想通貨事件は取引所の不注意が招いていることが多い

従来型の情報資産管理で、ある程度のセキュリティレベルに到達できる

仮想世界とクリプト資産の在り方を議論することは今後避けて通れない

2018年9月、今年2度目の大規模な仮想通貨交換所のハッキング事件が起こった。どうして仮想通貨にまつわるトラブルは絶えず起こるのだろうか。そして、この類のテーマをどの様にとらえ、議論すべきなのだろうか。

仮想通貨のトラブルはなぜ絶えないのか

仮想通貨に関連する問題は、大きく2つに分類できる。それは、「仮想通貨固有の問題」と「仮想通貨交換業者固有の問題」だ。

まず、1つ目の仮想通貨固有の問題では、「Block Withholding Attack」などが挙げられる。詳しくは、先日の記事をご覧いただければと思うが、規模の小さなパブリック・ブロックチェーンの場合、悪意のある参加者が利己的なブロック生成とブロードキャストを行うことで、記録を改ざんできてしまう。こうした問題は、コンセンサスアルゴリズムの仕組みを変えることで対応が可能であり、現時点ではPoSやPoIなど、さまざまなアルゴリズムの試行錯誤が行われている。ほかにも、51%攻撃やブロックチェーンの伝搬速度の問題、ハードフォークの際のトランザクションの取り扱いなどが、改善が必要な要素として挙げられるだろう。

一方で、仮想通貨交換業者固有の問題では、今年連続して発生しているハッキング事件が印象的だ。原因は、交換所のセキュリティ対策の甘さである。秘密鍵、すなわち銀行口座の取引パスワードに相当するものを通常の業務端末と同じ環境に配置していた結果、業務端末がマルウェアに感染してしまい、秘密鍵を不正に取得されたという。

もちろん、これは仮想通貨に直接起因する問題ではない。通常、正しく統制されている事業会社が法人口座のオンラインサービスを利用する場合、銀行が発行する電子証明書を端末にインストールし、かつ、メールなどのコミュニケーションツールはもちろん、意図しない通信を行わないよう、無用なアプリケーションをインストールしていないことをシステム部門で確認したうえで、送金等の手続きの都度、経理担当や責任者など複数人が確認して、初めて入出金の操作ができるようになっている。

特に金融取引では、見かけの収益以上に莫大な金額を動かすためミスが許されない。万全を期すために、セキュアな端末や環境、マニュアルを整備することで安全な環境構築を行っているわけだ。当然、これら端末操作履歴の定期的な確認も含めてである。

過去に起きた事件では、意図しない通信を行えないようにする環境づくりに努めていた印象はなく、起きるべくして起きた事件とも言える。つまり、交換所の仮想通貨管理において、統制が効いている事業会社のセキュリティ基準を設けていれば、少なくとも、過去に起きた事件と同様の手口でのハッキングは防げていた確率が高い。

同じ手口でも本質が異なる個人情報流出と仮想通貨流出

黎明期の技術にトラブルはつきものだが、なぜここまで仮想通貨のトラブルが集中するのだろうか。それは、仮想通貨が財産的性質を持っているためだと考えられる。

インターネットは、もはや「それなしでは今日の日常が考えられない」ものとなっているが、さまざまなトラブルを経て、技術の標準化とセキュアな通信が確立されてきた。実際に、IDやパスワードが漏えいしたことによる「個人情報の流出」や「なりすまし」といった事件は、挙げればキリがない。逆に言えば、ハッキングを確実に防ぐことは、世界の名だたる企業の技術をもってしても相当に難しいことなのだ。

標準的な仮想通貨の技術やセキュアな管理方法は、まだ確立されておらず、発展途上だと言えるだろう。しかし、これまでのインターネットサービスとは、仮想通貨が財産的性質を持つ点で大きく異なる。すなわち、IDやパスワードを盗まれたことで個人情報が漏えいする事件とは、手口は同じでも、本質がまったく異なるのだ。

銀行や証券会社が、利用者から金銭や金融資産を預託される場合、安全に保管することは大前提だ。サービスとして提供する以上、預かり資産の保管状況や管理方法には当然留意しなければならない。信託会社で管理の方法による事業を提供しているほど、保管・管理は重要なのである。

また、先ほど例に挙げた銀行では、ハッキングはもちろんのこと、なりすましやマネーロンダリングを防ぐためにさまざまな取り組みを行っている。場合によっては、防衛産業や機密情報など、高いレベルの情報管理方法に学ぶことも考えられる。つまり、仮想通貨だから特殊というわけではなく、従来型の情報資産管理の方法に学ぶことで、ある程度のレベルに達することは可能なのだ。

一方で、仮想通貨ならではのチャレンジもある。これまではデータそのものが高付加価値の場合、重要情報として管理区分を分けることで対象を把握して管理することができた。だが仮想通貨の場合、オープンな環境でトランザクションの配信を行う必要があるため、重要情報を扱う環境整備や仕組みは従来型の管理に比べて工夫が求められるのだ。

無論、完全な防護策を講じることは難しいのでリスクは残存する。しかしながら、業務環境や回線を分離することでハッキングの波及リスクを低減させる措置や、ウォレットへのアクセス頻度やウォレットあたりの所蔵上限を定めることで、万が一に備えるための対策は十分に行うことができるはずだ。こうした点は仮想通貨の特殊性として、業者間対策や管理方法の優劣を比較できるだろう。

クリプト資産としての仮想通貨との接し方

暗号化技術は画期的である。これまでの資産の概念を変える潜在性は、多くの人が感じている通りだ。そして、暗号化ネットワーク上に格納された資産、すなわちクリプト資産としてのコンテンツは、ビットコインのようにデジタルに表現された値のみならず、イメージや権利などさまざまな財産がデジタル化されていく可能性があるだろう。

さまざまな観点はあるものの、利用者財産を預かる事業者として特に気をつけるべきポイントは、利用者財産の管理、サイバーセキュリティ、AML(CFT)/KYCの3つに集約できる。

仮にベンチャー企業であったとしても、利用者財産を預かる以上、財産を適切に管理する環境を整えなければならない。少なくとも、整えることを経営上の優先課題とする意識は、利用者の信頼、ひいてはサービスや業界の信頼を得る上で最も必要な資質と言える。利用者財産の安全を担保するためには、サイバーセキュリティの在り方を考えなければならない。デジタルに管理された資産が紛失した場合、復元が困難であることは、これまで仮想通貨の盗難で経験している通りである。

金融資産を保管・管理する銀行や信託と同様、クリプト資産を預かる上で、これらに相当する保管や安全性を考える必要がある。そして、財産的性質を持つ以上、望ましくない利用を防ぐ必要もあるだろう。これには、マネーロンダリングをはじめ、犯罪行為への利用を防ぐために、財産的性質をもつ資産の利用方法に留意していくことが大事だ。

IoTの発達が促す現実世界と仮想世界のインターフェースの充実と、AIの発達による仮想世界の多様化が、インターネットの中にある仮想世界と現実との境目をより曖昧なものにしていくだろう。いままではコミュニティや店舗など、単純とは言わないまでもモデルが比較的明確に見ることができたが、今後は仮想世界のレイヤーとしてみる、法人や国家、経済システムに倣った複雑な体系の深化が進むと考えている。その際、当然仮想世界における複雑な体系では、権利や役務、資産といった概念が仮想世界において確定的に定義される必要があり、これらの定義の1つの方法としてクリプト資産の在り方を議論することは、人類が仮想世界に進出するうえで避けては通れない命題の1つとなるだろう。

クリプト資産がいかに新しいものであったとしても、先人が築き上げた歴史に学べる点があることを忘れてはならないし、歴史の一点という視座に立ったときにクリプト資産をどうとらえるべきか、という視点でこの類のテーマは捉えられるべきだと考える。すると、若輩ながら成すべき役割を垣間見ることができると感じる。

著者プロフィール

齋藤亮
SBIバーチャル・カレンシーズ代表取締役副社長

2010年、SBIホールディングス入社。SBIグループにて、主に経営企画・事業開発に従事。
2016年、SBIバーチャル・カレンシーズ株式会社 代表取締役に就任、日本初の仮想通貨交換業者として登録を果たす。
2017年より仮想通貨事業者協会(JCBA)理事。

SBIバーチャル・カレンシーズ

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