「仮想通貨」の記事

スマホ決済が普及しつつあるなか、なぜ仮想通貨決済は広がらないのか

スマホ決済が普及しつつあるなか、なぜ仮想通貨決済は広がらないのか

2019.05.16

盛り上がりを見せる「スマホ決済サービス」

ブームで終わり普及しなかった「仮想通貨決済」

両者は何が違ったのか、考察してみた

スマホ決済サービス「PayPay」が2018年末に実施した「100億円還元キャンペーン」の影響もあってか、にわかに「スマホ決済」が盛り上がり始めている。コンビニやファーストフード店など、わずか数カ月のうちに利用可能店舗数は爆発的に増加した。

その一方で、2017年に盛り上がった「仮想通貨」は、ここのところ話題として触れられる機会が減ったように感じる。旅行業者の「エイチ・アイ・エス」や、家電量販店の「ビックカメラ」をはじめ、いくつもの小売店舗が仮想通貨決済を導入したが、一般的に普及したとまでは言えないだろう。

爆発的に利用可能店舗数を伸ばした「スマホ決済」と、未だに普及していない「仮想通貨」は、何が違うのだろうか。

わかりやすいユーザーメリットが普及の一歩目になった

両者の目立った違いは、わかりやすいユーザーメリットを提示したか否かではないだろうか。先述した「PayPay」の100億円還元キャンペーンのように、話題性のあるユーザーメリットを提供することで、多くの認知とユーザーの獲得につながったのだ。特にこのキャンペーンは支払い時に発生するものであり、「キャッシュレス決済する」という行動に直接結びついた。

仮想通貨取引所でも「口座開設で1000円をプレゼント」といったキャンペーンを実施しているところもあるが、性格は大きく異なる。そもそも、取引所で仮想通貨を購入する場合は投機目的になりがちで、決済にはつながりにくい。キャンペーンも、あくまで自社で仮想通貨の取引を促進させるにとどまる。

ビットコインなどが、スマホ決済のように民間企業の開発したサービスではないことも大きな原因だろう。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が仮想通貨「coin(仮称、発表時はMUFGコイン)」を開発中であるなど、民間企業も仮想通貨ビジネスに着手してはいるが、まだ実用段階には至っていないため、PayPayのようなキャンペーンを打つことができていないのだ。

システムの分かりやすさが普及率の差に関係

また、スマホ決済システムのほうが消費者にとって、より親しみ深いものであったという点も、大幅に普及した要因の1つだろう。

スマホ決済は、自分の銀行口座やクレジットカードを登録し、それらを経由して支払いが行われるというシンプルなものだ。資金の動きをスマホで容易に確認することもできる。

一方で仮想通貨の場合、自分の保有通貨がどのように動いていくのか理解している人は、そこまで多くないのが現状だろう。

そもそも、仮想通貨とは何か。仮想通貨取引がどういうもので、どんなメリット・デメリットがあるのかを一般の消費者が理解していないことは、決済の普及を阻害する要因になり得る。まずは、仮想通貨決済を普及させるために、仮想通貨に興味を持ってもらい、リテラシーを向上させるような環境づくりが必要かもしれない。

さらに言えば、スマホ決済がここまで普及したあとに、わざわざ仮想通貨取引に変えるメリットはどこにあるのか。ひと手間かけて資金を移行してまで、「仮想通貨で決済してみよう」と消費者を動機付けるのは、かなり難しいといわざるをえない。

スマホ決済加盟店の導入障壁を下げる事業者の取り組み

増殖したスマホ決済サービス

次に、加盟店の業務負担の差について考えてみよう。スマホ決済の場合、キャンペーンでユーザーが増えれば、「自店で決済できないことを理由にお客さんが去っていく」といった機会損失を防ぐためにも、小売店舗の導入意向が強くなるだろう。しかし、導入のハードルとして、現状、キャッシュレス決済ではいくつものサービスが乱立しているため、業務フローが煩雑になっていることが挙げられる。

QRコードを読み取るだけとはいえ、サービスの多さによる混乱はあるはず。特に、外国籍のアルバイトが増えているコンビニであれば、なおさらだ。

そのような課題に対して、2019年3月27日には「メルペイ」と「LINE Pay」が業務提携を発表した。内容は「メルペイ」か「LINE Pay」のいずれか一方の決済方法を導入した加盟店は、両方の決済サービスを利用できるようになるというものだ。まずは、キャッシュレス決済における加盟店負担を減らすべく、一見するとライバル関係にありそうなサービス事業者が手を組んだ形である。

仮想通貨の場合、例えばビットコインの支払いに特化した店舗であれば、ビットフライヤーが提供している特定の決済サービスなどを導入することで、QRコードの読み取りによる決済を行うことが可能だ。自動で売却し、日本円の状態で受け取れるため、店舗側が仮想通貨の価格変動リスクを負う必要はない。

しかし、仮にビットコイン以外の通貨で決済をしようと考えた場合には、店側が対応通貨の取引を行える自分のウォレット(仮想通貨の口座のようなもの)を持つ必要がある。通貨を売却して日本円に換金する手間が発生するほか、仮想通貨の価格変動リスクを負う必要も出てくるのだ。

「ペッグコイン」が仮想通貨普及のカギになるか

現状の仮想通貨では、ユーザー数がそこまで多くなっていないため、店舗側はわざわざ手間をかけてまで決済サービスを導入する必要がないと判断しているはず。キャッシュレス決済は、政府も促進させようと躍起になっていることもあり、まだまだ普及が続くだろう。

仮想通貨のメリットは、国際送金や投げ銭をする際、手間や手数料がほとんど必要ないことだ。一般的な決済手段とは利用シーンが異なる。しかし、先に述べたMUFGが開発している仮想通貨は、日本円の価格に連動するように設計されている「ステーブルコイン(ペッグコイン)」と呼ばれるもの。設計通りに実装されれば、仮想通貨ではあるが電子マネーのような感覚で使うことができるようになる。

そのうえで、PayPayのような大規模キャンペーンが打ち出されれば、消費者の仮想通貨への考え方が変わる可能性があるだろう。

課題は多いものの、まだ伸びしろのある仮想通貨。仮想通貨のメリット・デメリットが世間に広がり、適した利用シーンでのサービスが生まれ、利用者が使いたいと思えるようなインパクトのあるキャンペーンが展開されれば、スマホ決済のような波がやってくるかもしれない。

「NEM JAPAN」設立 - エンタープライズで使われるブロックチェーン目指す

「NEM JAPAN」設立 - エンタープライズで使われるブロックチェーン目指す

2018.11.30

NEM.io財団の日本支部「NEM JAPAN」が設立

社会実装で選ばれるブロックチェーンになるためにサポートを進める

すでに活用が進んでいるNEMのユースケースも紹介

11月28日、日本仮想通貨ビジネス協会の11月度勉強会において、NEM.io財団の日本支部「一般社団法人 NEM JAPAN」の設立が発表された。

NEMとは多目的に使えるブロックチェーンのこと。通常はプログラミングを行う必要がある機能がWebAPIとして提供されているため、ビジネスで採用する際に必要な開発コストを抑えられるうえに、スピーディな導入ができるのが特徴だ。

もう1つの特徴として、安全な設計が挙げられる。NEMと聞くと、コインチェックの流出事件が記憶に新しいが、あれは取引所のウォレット(仮想通貨の口座のようなもの)管理方法に問題があったのが原因。NEMブロックチェーン自体に原因があったわけではない。実際、2015年3月29日に最初のブロックが作られて以来、ブロックチェーンのプロトコルが原因のアセット流出はゼロだという。

NEMブロックチェーンの特徴

今回日本で設立されたNEM JAPANでは、エンタープライズ用途で選ばれるブロックチェーンになるために、エンジニア向けのセミナーや教育イベントの実施、実装サポートといった普及のための活動を行っていくという。

NEM JAPAN 代表理事の古賀大喜氏は「NEMは海外のプロジェクトであることもあり、これまで日本人にとって敷居が高いものでした。NEMブロックチェーンについて何か聞きたいことがあった場合に、気軽に相談できる窓口がなかったのです。そのためNEM JAPANは、ブロックチェーン事業をしたいという人が、相談窓口としてもご利用いただければと考えております」と、団体の役割を述べた。

NEM JAPAN 代表理事の古賀大喜氏

すでにいくつものユースケースが生まれているNEM

また、勉強会ではNEMブロックチェーンの活用事例についても触れられていた。

マレーシア国際イスラム大学では、闇市場で学位が売買されるという課題を解決するために、学位証明書のハッシュ値をブロックチェーンに記録して検証できる学位証明システム『e-Scroll』を実装。そこに、NEMブロックチェーンのソリューションである『LuxTag』が使われている。

2019年にラスベガスでオープン予定のエンターテインメント体験施設「Kind Heaven」では、デジタルコレクター商品の希少性を証明する用途としてブロックチェーン技術を活用。また、同様の例として、VR/AR内のデジタルアセットをNEMブロックチェーン上で発行・流通・管理することが可能になる『VERSES』の例も紹介された。

日本においては、政治と有権者の建設的な議論を促すプラットフォーム『ポリポリ』と、以前弊誌でも紹介したスポーツチームや選手をトークンによるギフティングで支援する『Engate』、歩くとブロックチェーントークンが付与されて、それを飲食店で使うことのできるヘルスケアアプリ『FiFiC』などのブロックチェーン採用サービスを紹介。FiFiCについては、特定の場所にトークンをあらかじめ配置しておき、実際にその場所を訪れた人がトークンを受け取ることができる機能が検討されていることに触れ、観光の集客にも活用できることを強調した。

希少性の担保やトレーサビリティなど、さまざまなシーンでの採用が進むブロックチェーン。これからも多くの事例が出てきそうだ。ビジネスにおいて効果的な活用をするにはどうすればいいのか、少しでも興味のある人は、NEM JAPANに一度相談してみるといいかもしれない。

モナバーで発見した「人と人をつなぐ」仮想通貨のポテンシャル

モナバーで発見した「人と人をつなぐ」仮想通貨のポテンシャル

2018.11.26

モナコインをコンセプトに営業を開始したBAR「モナバー」

手続きの煩雑さが仮想通貨決済普及の足かせに?

投げ銭を通じて生まれる仮想通貨のコミュニケーションとは

仕事終わりのサラリーマンが家路を急ぐ20時過ぎ。JR高円寺駅を南に下り、パル商店街を歩いていると、不思議な看板が目に入ってくる。

MONA BAR TOKYO ――。

看板には、穏やかなほほえみを浮かべる白い猫のようなキャラクター「モナ―」が描かれており、そこそこの存在感を放ちながら商店街の一角に佇んでいる。

BARと書かれているということは、お酒が飲める「BAR」なのだろう。隣で飲んでいる人から「あなたのココロのスキマ、お埋めしますドーン!!!!」なんて言われそうな“場末感”を醸し出しているが、同時に「なんだか気になる」不思議な魅力があった。

はたして、店内はいったいどうなっているのだろうか。ちょっとしり込みしてしまう雰囲気ではあったが、覚悟を決めて入店してみることにした。筆者には、やると言ったらやる「スゴ味」があったのだ。

MONA BAR TOKYO(モナバー)の外観。商店街を歩いていると、某掲示板でおなじみのキャラクター「モナー」が現れる
店内へと続く階段

仮想通貨を広めるべく、ホットサンド屋からモナバーへ

いざ、店内に足を踏み入れると、入り口の怪しさからは想像できないほど、オシャレで清潔感のある内装が目の前に広がる。ところどころにモナーの顔が見え隠れするが、店内に置かれたウッド調のテーブルやイス、観葉植物を見る限り、まるで隠れ家的なカフェといった感じだ。

モナバーの店内

「もともと、MUSTANG TOKYOという、ホットサンドのお店を5年くらいやっていました。昼は今でもホットサンド屋さんですが、2018年の7月28日から、夜だけ仮想通貨のモナコインをコンセプトにしたモナバーに切り替えて営業しています」

モナバーの代表を務めるモナ子さん(仮名)は、店舗の形態をそう説明する。なるほど、ホットサンド。それならばオシャレさにも納得だ。そして、モナバーは、某掲示板の「モナー」そのものではなく、仮想通貨の「モナコイン」をコンセプトにしたBARらしい。

モナバー 代表のモナ子(仮名)さん。既存のお客さんを困惑させないよう、まるっきり仮想通貨のお店にするのではなく、夜の時間帯だけ店舗形態を変えたが、久しぶりに来店したお客さんからは「変な組織にのっとられたのかと思った」と言われたという。しかも今回、取材はOKだったが、顔出しと本名の公開はNGだった。もしかして、ほんとうは怪しい組織の一員なのかもしれない……

しかし、ホットサンドとモナコイン、両者はコンセプトも客層も大きく異なるうえに、共通項もないように思える。夜だけとはいえ、なぜモナバーをスタートさせたのだろうか。

「2017年の夏ごろから個人的な趣味で仮想通貨を触っていたのですが、これが非常に興味深くて。ちょうどホットサンドのお店が5年経過したこともあり、なにか新しいコンセプトがほしいと考えていたので、モナコインをテーマにしたお店をオープンさせることにしたのです」

新しい風を吹き込ませるべく、夜間の店舗形態を一新したモナバーだが、おそらく一番メジャーな仮想通貨はビットコインのはず。なぜ、モナコインをチョイスしたのだろう。

「モナコインは、仮想通貨のなかでも、投げ銭などのコミュニケーションが特に活発に行われている通貨です。その投げ銭のおもしろさを少しでも伝えられたらと思って、モナコインを選びました」

モナコイン保有者の間では、SNSなどで仮想通貨をチップ代わりに渡す「投げ銭」の文化が定着しているらしい。そこでモナ子さんは、仮想通貨に触れたことのない人にも、投げ銭の魅力を伝えたいと考えたわけだ。ちなみに投げ銭は、SNSのなかでも特にTwitterでの利用が多いという。アカウントを持っていれば、誰でも簡単にモナコインのやり取りができるのだとか。

すると、おもむろにスマホでTwitterを起動したモナ子さん。「試しにやってみましょう」と、操作を始める。

「モナバーをオープンする前は、ほとんどモナコインを持っていなかったのですが、今は結構持ってるんです。取引所で買ったのではなく、ほとんどみんなからもらったコインなんですよ。ちょっと送ってみますね」

“みんなからもらった”というモナコイン。クラウドファンディングのようなことをしたのだろうか。

「いえ、違います。例えば、『新しいメニューです』とつぶやくと、『いいね』を押す感覚で、みんなが投げ銭してくれるんです」

モナ子さんはあっけらかんと話す。みんな、そんな簡単に自分のお金を渡せるのだろうか。「いいね」はお金がかからないからバンバン押せるが、その要領でお金を渡すという感覚は、貧乏な筆者からすると、イマイチ理解できない。

「えっと、Twitterのアカウントは……、やすかマギカさん? あれですか、まどマギから取ってるんですかね?」

え、……ええ。その通りです。すみません。僕と契約してNewsInsightを読んでよ!

なんてやり取りをしていると、筆者のTwitterに<@MONABAR_TOKYOさんから@yasuka_magicaさんにお届け物です! つ[3.9mona]>という通知が届く。ものの10秒足らずで、モナ子さんはやすかマギカに3.9MONAを送り終えていたのだ。

3.9MONAが届いた

簡単にモナコインを渡す様子を目の当たりにして、非常に感心したやすかマギカだが、これだと取材に来てモナコインを受け取って帰るという、図々しい奴に思われてしまうではないか。どうすれば返せるのだろう。

「いえいえ、全然大丈夫なので、持っておいてください。今のレートだと3.9MONAで500円くらいですが、去年暴騰した時は1MONA2000円近くまでいったんです。なので、これだけで1万円くらいの価値になるかもしれません」

「自分のお金を渡す感覚がわからない」と考えていた自分が恥ずかしくなるくらい簡単に、モナ子さんは言った。まるで握手をするような気軽さで仮想通貨を渡す。これが投げ銭の文化なのだ。

ちなみに、今回いただいた3.9MONAには「ありがとう(サンキュー)」の意味が込められているという。ほかにも、0.114で「いいよ」など、語呂合わせで送ることが多いそうだ。受け取ったモナコインは、モナコインちゃんbotというアカウント(@tipmona)を使うことで、ほかの人に送ったり、取引所の口座があれば日本円にしたりすることもできる。残高を問い合わせることも可能だ。

3.9MONA受け取った後、残高を確認したら、ほんとうにやすかマギカは3.9MONA保有していた

投げ銭で仮想通貨の輪を広げることが、利用シーン拡大につながる?

投げ銭を目の前で見せてくれたモナ子さん。しかし、その文化を理解してもらうことは簡単はないと、身をもって感じている。

「モナバーに来てくれた友人にも、たまに3.9MONAを渡すのですが、みんな全然意味をわかってなくて。そのまま放置している人も多いと思います。夏は3.9MONAで1000円くらいの価値があったので、ビール1杯くらい飲めたんですけど」

「モナビール」というオリジナルのビール

仮想通貨の投機的イメージから、モナコインの活用を躊躇してしまう人が多いのかもしれない。どうすれば、そのイメージを払しょくできるのだろう。

「使える飲食店が増えていけば、手に入れたモナコインをクーポンのようにいろいろな場所で使えるんですけどね。仮想通貨決済を開始しても、途中でやめてしまうお店は少なくないので、なかなか普及は難しいでしょう。飲食店の決済では、国際送金のような仮想通貨ならではのアドバンテージを発揮しづらいですし」

モナ子さんが見せてくれたように、投げ銭はオンラインですぐに実行することができる。それは世界中どこにいても変わらない。銀行で国際送金する場合の手数料や手間を考えれば、仮想通貨に期待できるポテンシャルは大きいだろう。

しかし、飲食店決済の場合、国際送金のような利用者メリットはあまりない。さらに、現状仮想通貨はいわば外貨のような存在であるため、「仮想通貨専用の店舗向け決済サービス」などを導入していない限り、売上で手に入れた仮想通貨は自分で日本円に変える必要があるのだ。

「モナバーでは、『もにゃ』や『coinomi』と呼ばれるモバイルウォレットで仮想通貨の支払いをお願いしており、モナコインとビットコインのほかに、ネムとビットゼニーでの支払いが可能です。ただし、仮想通貨でお支払いいただいた場合、店側は取引所で売上を円に変えなければなりません。手数料もかかりますし、レートも上下しますし、そのうえ、なかには海外の取引所でしか交換できない仮想通貨もありますし、正直めっちゃ面倒ですね(笑)」

手数料や価格の変動によって、売上の半分ほどしか手元に残らないということも少なくない。モナ子さんは下がっている通貨がある場合、日本円にせず、そのまま寝かせているという。

「ただ、モナコインはちょっと特殊で、保有者が愛着を持っている通貨なんです。もっとモナコインを広めたいとか、みんなで使いたいとか、知らない人に興味を持ってほしいとか、そういうことを考える人が多い気がしますね。モナバーとしても、『モナコインが好きでたまらない』という狭い層に対して、少しでも利用シーンを提供できればと考えていたので、それ自体はある程度実現できています。次はもっと投げ銭の文化を広げていきたいですね」

実際モナバーでは、地方在住のモナコイナー(モナコイン愛好者をこう呼ぶらしい)が、休日にわざわざ足を延ばして来店するケースも多いそうだ。

店内には、遠方から訪れたモナコイナーが楽しめるような、遊び心を感じるアイテムも(クリックしてアップ画像表示)

そう考えると、モナコインのように、通貨に対する愛着があれば、活発な交流や利用シーンが生まれるような気がする。仮想通貨ファンが投げ銭などでユーザーの輪を広げていくうちに、モナバーのような場所が生まれる――。それが繰り返されていくことで、少しずつ利用者と利用場所は増えていくはずだ。ファンが増えれば、国際送金のようなアドバンテージがなくても、仮想通貨の決済は普及していくのではないだろうか。

「仕事の依頼」や「遠隔地からのおごり」も!? 仮想通貨が生むコミュニケーション

投げ銭を広げていきたいというモナ子さんだが、来店した友人にモナコインを渡す以外では、どのようなやり取りがあるのだろうか。

「いくつかあるのですが、例えば『オダイロイド1号(@odairoid_001)』というTwitterのアカウント。誰かがお題と報酬を提示し、お題に答えたユーザーのなかで、リツイートといいねの総数が多かった上位5人に報酬が配られるというものです」

提供されるお題は、「新しいサービスの名前を考えてください」というアイデア募集や、「大金持ちにやってほしいことは何?」といったアンケートなのか大喜利なのかわからないものまで幅広い。

「このオダイロイドも、現状、狭いコミュニティのなかの人しか知らないので、もっといろいろな人に知ってもらいたいと考えているところです。自分で買う場合、仮想通貨はリスクを避けられませんが、1円も出さずにちょこちょこ仮想通貨を集められたら楽しいですよね」

オダイロイド1号のTwitterページ

また、仮想通貨を保有している人は、「オダイロイドポータル」から、お題の投稿も可能。答える側だけでなく、募集する側としても参加できるのだ。

「モナバーでは、仮想通貨のウォレットを疑似体験できる『モナチップ』という、ブラウザ上で動くポイントシステムを採用しているんですが、このプログラム部分をお店のオープン前に作る必要がありました。最初はクラウドソーシングサービスで制作を依頼したのですが、納期と金額の条件が合わなかったので、イチかバチかTwitter上で『近々オープンするモナバーで、こういうのやりたいんだけど、200MONAで誰かプログラムを作ってくれませんか?』と募集してみたんです。すると、6~7人が立候補してくれて。しかも、クラウドソーシングでは2カ月かかると言われたのですが、1週間でお願いすることができました」

ドリンクを注文するともらえるモナチップ。自分のTwitterアカウントと同期したウォレットに貯めておくことができる。集めたチップは、モナバーオリジナルの缶バッジやマグカップなどと交換可能だ

立候補してくれた人のなかには、即日作れると言ってくれた人や、なんと高校生もいたという。

Twitter上でプログラマーを探すなんて、ひと昔前までは現実的でなかったかもしれないが、今は仮想通貨の活用による仕事の依頼も不可能ではない時代なのだ。特に今回のようなケースでは、下手な企業に依頼するよりも低コストかつスピーディに対応してくれる気がする。少なくとも、素人を寄せ集めた「名ばかり情報システム部」が社内にある場合、Twitterの超高校級プログラマーのほうが頼りになるのではないだろうか。

モナチップで交換できるグッズ

そのほか、投げ銭によって生まれたコミュニケーションとして、モナバーでは、こんなことも。

「お店に来た人が<いまモナバーにいます>とTwitterで投稿すると、それに気づいたモナコイナーの人が、<あの子たちにおごってあげて>とモナコインを送ってくれることがあるんです。来店していたほかのお客さんの分まで払ってくれて、『今日はおごりだー』って感じで。もちろん滅多にあることではありませんが、そういうつながりが生まれることも、モナコインの魅力だと思います」

お店に飾っているイラスト。これらも、モナ子さんがTwitterのオダイロイドで描いてほしいと募集したものだという。期限が1週間だったにも関わらず、10件以上のイラストが届いた

2017年末のバブルがあったこともあり、投機的なイメージが先行しがちな仮想通貨。だが、今回モナ子さんの話を聞いて、モナコインの魅力は、投げ銭から生まれるコミュニケーションではないかと感じた。

世界中からアイデアや技術的な協力を得ることができるだけでなく、今後さらに、投げ銭の文化が普及すれば、おもしろい動画や芸術的なイラストの投稿によって、仮想通貨の収入を得られるようになる可能性もあるだろう。

投げ銭によって生まれる、そんな「人と人のつながり」こそが、仮想通貨の持つ真の価値なのかもしれない。

MONA BAR TOKYO

【住所】東京都杉並区高円寺南3-58-29 2F
【営業時間】
月/火
20:00~24:00 (L/O 23:30)
金/土/日/祝
19:00~24:00 (L/O 23:30)
【定休日】
水/木
【TEL】03-5307-7055
【仮想通貨決済】
モナコイン/ネム/ビットコイン/ビットゼニー
【クレジット】
VISA/Master/JCB/American Express/Diners Club/Discover
※喫煙不可 (電子加熱式タバコ可)