「事業継承」の記事

経営者の妻に聞いた「いらない遺産」ランキング、首位は「会社」

経営者の妻に聞いた「いらない遺産」ランキング、首位は「会社」

2019.03.14

団塊世代の退職が本格化、事業承継が課題に

骨董品より人気がない「会社株式」

経営者夫妻、事業承継でミスマッチが深刻?

日本企業の後継者不足の問題が深刻さを増している。

オーナー経営者にとって、信頼できる配偶者や子供が会社をしっかりと引き継いでくれるなら万々歳だが、理想通りにいくケースばかりではない。経営者とその配偶者は会社の相続について、どう考えているのか。

M&A(合併・買収)仲介サービス大手のストライクが行った調査からは「会社を残したい夫」と「残してほしくない妻」間のミスマッチが鮮明に見えた。

経営者夫が残したいもの、「会社」が上位に

同社が2019年1月10~11日にインターネットを通じて男性経営者に実施した調査によると、「自分が亡くなった時に残したい資産」との質問に対し、「経営する会社(会社の株式)」と答えた割合は約40%で、「現金・預金(68%)」「居住用不動産(42%)」に次いで上位3番目にランクインした。

この結果は続く「保険金(22%)」「不動産(20%)」「有価証券(15%)」「美術品・骨董品(3%)」を大きく引き離しており、苦労して会社を育て上げた経営者は、親族に大事な事業を引き継ぎたいとの気持ちが強いことがわかる。

経営者が妻に残したい資産(夫へのアンケート、複数回答、n=309) 出典:ストライク

妻は「会社はいらない」が断トツの首位

一方、資産を残される側の「経営者の妻」はどう思っているのか。

同社が2018年8月に「ご主人が亡くなる際に残されて困るものは?」と調査したところ、「経営する会社(会社の株式)」と答えた割合が38%で断トツの首位。2位にランクインした「美術品・骨董品」(18%)や3位の「不動産」(9%)を大きく引き離した。事業を家族に引き継いでもらいたいと願う経営者にとっては残念な結果だ。

このミスマッチについて、ストライクの荒井邦彦社長は「経営者の配偶者が会社(自社株)を相続したとしても、今の時代に後継者を見つけるのも売却するのも難しいという不安の表れではないか」と考察している。

経営者の夫が亡くなる際に残されて困る資産は?(妻へのアンケート、複数回答、n=103) 出典:ストライク

反対に「残して欲しいもの」についての調査も実施した。もっとも多かったのは「現金・預金」で、全体の89%にのぼった。以下「保険金」「居住用不動産」「国債などの有価証券」と続き、「経営する会社(会社の株式)」と答えた人は15%にとどまった。

決断迫られる経営者と家族

第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊の世代」の引退が本格化していることもあり、中小企業では事業をどう次世代に伝えていくかが深刻な課題となっている。

経営者が家族に事業を引き継いでもらいたくても、子供は都会で会社勤めをしており、実家に戻って家業を継ぐ気はないケースは多い。多くの配偶者も「経営の経験はない」などとして会社の引き継ぎには積極的ではない。

経済産業省・中小企業庁によれば、中小企業の経営者の年齢分布でもっとも多い層は2015年時点で66歳で、同20年前の1995年時点での47歳から大幅に上昇してしまっている。さらに今後10年の間に、平均引退年齢とされる70歳を迎える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に上ると言われ、うち約半数の127万人(日本の全企業数の3分の1に相当)は後継者未定とされている。

こういった夫婦間、家族間のミスマッチが「黒字廃業」のケースを増してしまう懸念がある一方、これをビジネスチャンスと見て、後継者不足の解決に向けM&A支援サービスを提供する事業者の動きも活発になりつつある。高齢化がまさに「時間の問題」として進む中、経営者やその家族が決断を迫られる日は近づいている。

中小企業の「後継者問題」は深刻、M&A仲介のストライクがビズリーチと新サービス

中小企業の「後継者問題」は深刻、M&A仲介のストライクがビズリーチと新サービス

2019.02.22

M&A仲介のストライクと人材サービスのビズリーチが連携

買収企業の経営幹部採用支援を目指す

「団塊世代」の退職に伴い、M&Aは年々拡大している

労働需給がひっ迫が、企業買収の世界でも課題になることが増えている。企業を買収しようとしても、その企業を運営していく人材を確保できずに買収を断念するというケースが目立つのだ。

そこで新たな取り組みとして、M&A(合併・買収)仲介サービスのストライクと人材サービスのビズリーチが連携し、買い手企業に対して、買収した会社の経営者や経営幹部の採用を支援するサービスを開始した。両社はM&Aと人材サービスの相乗効果により、より円滑な企業買収を促す。

ストライクは後継者不在に悩み引き取り手を探す企業経営者と、規模の拡大を目指し事業を獲得したい企業をマッチングするM&A仲介サービスを展開している。ビズリーチは経営幹部などハイクラス層に特化した人材サービスを手掛ける。両社の連携により、買い手企業は、その獲得事業の運営に必要な経営幹部を効率的に採用できる。

中小企業で深刻化する後継者不足問題に一石

両社の取り組みの背景には、中小企業の後継者不足問題がある。

経営者が親族に事業を引き継いでもらいたくても、子供は都会で会社勤めをしており、実家に戻って家業を継ぐ気がないといったケースは多い。今後本格化する、第一次ベビーブームの時期に生まれた「団塊世代」の大量退職も問題に拍車をかける。複数の要因が重なってしまう結果、中小企業では事業をどう次世代に伝えていくかが喫緊の課題となってしまっている。

経済産業省・中小企業庁らによれば、中小企業の経営者の年齢分布で最も多い層は2015年時のデータで66歳だ。これは20年前の47歳から大幅に上昇した。今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人が後継者未定とされている。

日本の企業数は約400万社といわれるので、127万人というのは実に全体の3分の1相当の企業が後継者問題を抱えることになるという計算だ。ある調査によれば、仮に現状を放置すると、2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があるともいわれる。

なお、ストライクが中小企業経営者の妻100人に「将来残されて困る資産」を調査したところ、最も多かった解答は「経営する会社の自社株」で、その解答割合は38%にものぼったという。近年はM&Aが中小企業の後継者不在問題の解決に向けた選択肢の1つになりつつあり、同市場は毎年2~3割拡大している。

長寿企業はなぜ日本に多いのか? 新潟で見た身の丈経営と三方よし

長寿企業はなぜ日本に多いのか? 新潟で見た身の丈経営と三方よし

2018.11.30

世界で最も古い企業がある日本の長寿企業天国ぶり

長寿企業の大半は一族経営ともいえるファミリービジネス

長寿だからこそ多くの災禍と事業継承問題に見舞われる

よく知られていることだが、創業100年以上の企業は日本に集中しており、30,000社以上にのぼる(東京商工リサーチ調べ)。全世界的に、創業100年以上続いている企業のうち約3割が日本企業だといわれており、200年以上続く企業となると、日本企業が5割以上を占め、さらに長寿企業世界10傑となると、ドイツの一企業をのぞき、ほかはすべて日本企業で占められている。

また、これもよく知られている話だが、世界最古の企業は大阪に本社を置く「金剛組」(現・高松建設グループ)。この企業は西暦578年に創業され、1440年の歴史を誇る。寺社仏閣や城郭の設計・施工を生業とし、有名なところでは聖徳太子による四天王寺や江戸城、大阪城の城門や櫓を手がけたともいわれている。

では、なぜ日本にはこれほど長寿企業が多いのか……。そのヒントになりそうなシンポジウム「THE EXPO ~百年の計~」が新潟県・新潟市で開催された。このシンポジウムでは、100年以上続く新潟の長寿企業を招き、パネルディスカッションを実施。それを県内の経営者に聞いていただき、次の100年企業育成の礎にしようというのが、おもな意図だ。なお、当日は100人以上の企業経営者が話を聞きに集まった。

新潟市で「THE EXPO ~百年の計~」が開催された

新潟市でTHE EXPO ~百年の計~が開催されたワケ

シンポジウムが新潟県で行われたということも、気にかかる。純粋に100年企業が多いのは首都圏や関西圏のはずだ。特に大阪は江戸時代より「天下の台所」と呼ばれ、当時から続く“食に関する企業”があまたある。

それが、新潟をTHE EXPO ~百年の計~の舞台にしたのはなぜか。まず、北陸地方は古くから“産業のベルト地帯”ともいえる地域だからというのが挙げられる。

西から列挙すると、日本産メガネフレームの95%以上が生産される福井県・鯖江市がある。鯖江でメガネフレームが作られ始めたのは明治38年(1905年)といわれ、100年以上続く企業が多いことが予測できる。石川県・金沢市は、前田家100万石の中心地で、金箔工芸品や九谷焼といった名産で有名。富山県・富山市は、「富山の薬売り」発祥の地で、現在でも家庭の置き薬として存在感を示す。

そして新潟県。新潟は屈指の米所で造り酒屋が数多い。さらに、直江津という北陸屈指の良港も古くからあり、貿易産業が盛んだった。そのうえ北東には酒田港があり、直江兼続が奨励した漆や紅花、上杉鷹山が心血を注いだ漆を原料にしたロウソクといった特産品の集積地で、廻船問屋の寄港地としても大いに利用された。

鯖江はメガネフレームで有名だが、福井県全般では陶磁器も盛ん。写真は鯖江のある施設で見かけた越前焼の壁掛けオブジェ(2018年4月撮影)
金沢で見かけたワイングラス。「ステム」(支柱)と「プレート」(フット)部分に美しい九谷焼が施されている(2018年9月撮影)

さらに新潟だけは、これらの産業ベルトとは様相が異なるという説がある。一般的に長寿企業は、城下町=県庁所在地(金沢・富山)、または県庁所在地ではない城下町(鯖江)、港町(酒田)の周囲に集まるが、新潟は全県に長寿企業が散らばっている傾向があるという。これはあくまで憶測だが、越後平野は広く、あちこちで米が作られ、その地の利を生かした場所に造り酒屋が生じたからと考えられる。その造り酒屋は“そのまま酒造業” “酒造業とほかの事業の兼業” “酒造業からまったく別の事業へ”といった経緯をたどり、県全体に長寿企業が散在しているのではないか。

長寿企業の大半を占める“ファミリービジネス”

さて、THE EXPO ~百年の計~の内容に移ろう。まずは主催者である百年の計実行委員会 委員長 赤池学氏の挨拶から始まった。赤池氏が特に強調していたのが、「地域の価値をしっかりと後生に伝えること」「CSVやCSRなどで、地域住民との密着を図ること」だった。そして、この2つを100年以上前から続けてきたからこそ(当時CSV・CSRという言葉はなかったが……)、長寿企業として存在感を示せているのではないかと結論づけた。

日本経済大学大学院 特任教授 後藤俊夫氏

続いて日本経済大学大学院 特任教授 後藤俊夫氏(一般社団法人100年経営研究機構 代表理事)が基調講演を務めた。後藤氏は「身の丈経営こそ長寿の秘訣。一族経営ともいえるファミリービジネスが長寿企業になりやすい」と話した。

ファミリービジネスは、経済的にも人的リソース的にも余裕がなく、事業拡大・多角化による利益追求を行いにくい。逆にいうと大がかりな投資をしないので、不況時に投資額が経営を圧迫することが少なく、ある意味“究極のディフェンシブルプレイヤー”だと後藤氏は話す。後藤氏がノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア前米副大統領と会見した際、「なぜ日本には長寿企業が多いのか」とたずねられ、後藤氏は「利益追求にとらわれない身の丈経営の企業が多いからです」と答えたそうだ。欧米企業は、利益追求を第一に考える傾向が強い。前副大統領には、日本の長寿企業の姿勢に、新たな“気づき”を見つけたようだと、後藤氏は語る。

一方、長寿企業にはもうひとつの特徴があると後藤氏は指摘する。それは“社会の公器”としての役割を果たしていることが多い点。たとえば近江商人の「三方よし」。「売り手によし、買い手によし、世間によし」を表した言葉だが、特に“世間によし”という部分は、近江商人が津々浦々全国を回ることで、各地で不足している物品を補い、商品の価格を均衡させる役割を果たした。大手商社、伊藤忠商事もルーツは近江商人だった。

また、宿泊業も社会の公器として重要な存在。世界最古の企業は建設業、二番目は「池坊」という華道家元だが、そのほかは圧倒的に宿泊業が目立つ。宿泊業は、旅人や行商人に食事や安全な眠りを提供するうえ、宿場街に発展することで地域経済の活性に寄与してきた。ちなみに世界最古の宿泊業は、西暦705年創業の甲斐の国(山梨県)の山奥にある「慶雲館」。ギネスにも「最も古い歴史を持つ宿」として認定されている。

新潟に根を張る長寿企業によるパネルディスカッション

基調講演のあと、新潟の長寿企業3社によるパネルディスカッションが行われた。ファシリテーターは横田アソシエイツ代表取締役 慶應義塾大学大学院 メディア研究科特任教授 横田浩一氏、参加者は「きっかわ」代表取締役社長 吉川真嗣氏、「百花園」代表取締役社長 太田等氏、「マルソー」代表取締役社長 渡邉雅之氏の3名。

ファシリテーター役の慶應義塾大学大学院 メディア研究科特任教授 横田浩一氏
左から、きっかわ 吉川真嗣社長、百花園 太田等社長、マルソー 渡邉雅之社長

それぞれの企業概要についてだが、きっかわ(創業1626年)は村上市を流れる三面川で獲れた鮭を加工した「千年鮭きっかわ」が主力商品。もとは酒造業だったが、業種転換して鮭食品に注力している。まさに前述した“酒造業からまったく別の事業へ”が当てはまる企業だ。百花園(創業1882年)は、伝統的な和菓子造りを守りながらも、より時代にマッチしたデザインに挑戦している。明治天皇が北陸行幸した際、2度和菓子を献上したことで名が知れわたった。マルソー(創業1913年)は、養蚕業や林業、馬喰がルーツ。その馬喰がもととなり、総合物流業へと発展した。ロジスティクス事業を行うマルソーを中心にタクシー業や建設工業、人材派遣業など多角化により業績を拡大するが、新潟の発展が最も重要というスタンスを今でも取っている。

百花園の和菓子。製法は和菓子の伝統に沿ったものだが、カタチがモダンな印象。ファシリテーターが「百花園の和菓子を食べたことがある人は?」と問いかけたところ、会場の多くの人が手を挙げた
きっかわの「千年鮭きっかわ」ブランドの商品。新潟は日本屈指の酒所だけあって、日本酒のおつまみに合いそうな商品を提供している。ディスプレイには干された鮭がまるまる一匹展示されていた
マルソーのブース。さすがに物流用車両は持ち込めないので、パンフレットやパネルの展示となった。だが、働きやすさの追求や新潟県に根ざした事業を行っていることが伝わってくる
特別協賛しているボルテックスのブース。オフィスビルの各フロアを「区分所有」してもらうことで企業価値向上を促す。企業の永続性にも着目しており、今回、協賛というカタチで参加した

このディスカッションのなかで3者は、「長く事業を続けていると、多くの危機に直面する」と口をそろえる。「日本は単一民族で、海に囲まれており陸続きの国境がなく、紛争がないから長寿企業が多い」と、海外メディアの一部に認識されているが、それは大きな間違いだという。明治維新以降、日清戦争や日露戦争、第一次世界大戦参戦、満州事変、日中戦争、そして壊滅的な打撃を受けた第二次世界大戦と、多くの戦禍があった。事実、きっかわが酒造業から鮭食品に転換したのは、第二次大戦中にお酒という嗜好品を手がけにくいというのが直接の理由だし、百花園は三代目店主が中国戦線に5年間徴集された。さらに関東大震災、兵庫県南部地震、東日本大震災のほか、毎年のように台風が国土を直撃する。加えて新潟は、新潟地震、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震と地震の頻発地。いつ大地震が起こるかわからない難点もある。

こうした、戦禍や自然災害による難局以外にも、長寿企業を悩ます問題がある。それは事業継承問題。各地の中小企業や職人業は後継者がおらず、泣く泣く事業停止を迫られることが問題となっている。なかには黒字にも関わらず、後継者問題で事業を閉鎖する企業もある。その点、マルソーは若干ユニークで、後継者が若いうちに問答無用(?)で事業を譲り、早々に企業における責任感を育てているようだ。4代目の渡邉雅之氏が社長に就任したのは34歳の頃。3代目は会長となり、4代目の経営を見守っている。

奇しくもTHE EXPO ~百年の計~取材の前日夜、筆者は東京急行電鉄の懇親会に参加していた。その席で、経営陣からの挨拶があったが、代表取締役社長兼社長執行役員 髙橋和夫氏も代表取締役会長 野本弘文氏も、東急電鉄が100周年を迎えたことをことさらに強調していた。また別の取材でパナソニックの話を聞く機会があったが、こちらも100周年であることを喜んでいた。事業の多角化や全国展開を行う大企業にとっても、創業100年というのはまず目指すべき大きな“金字塔”なのだなと思った。

だが、地域に根ざした齢数百年の長寿企業からみれば、これらの大企業はまだまだ“ヒヨッコ”といえるかもしれない。その対比が何となく「面白い」と感じた。