「ロボット」の記事

将来は原発でも? 「油を泳ぐ無人点検ロボット」は海を渡るか

将来は原発でも? 「油を泳ぐ無人点検ロボット」は海を渡るか

2019.02.28

無人ロボットでの原油タンク点検を行う米スタートアップ

点検コストを大幅に削減するロボットとは?

製造業でも「リモートワーク」、人材獲得にも貢献

米マサチューセッツ州・ボストン。北大西洋に面したこの地では、海洋研究所が盛んだ。

そこには、1985年の「沈没したタイタニック号の発見」に一役買ったウッズホール海洋研究所があり、言わずと知れた超名門校のMIT(マサチューセッツ工科大学)でも、海洋工学を学ぶことができる。

そんな地で生まれたスタートアップ企業「Square Robot(スクエアロボット)」が面白い。彼らが操縦する船が泳ぐのはただの海ではなく、"油の海”だ。

米国テキサス州・ダラスにて行われたダッソーシステムズ主催の3次元CADイベント「SOLIDWORKS WORLD 2019(ソリッドワークス ワールド)」に参加していた彼らと、そのユニークな事業と戦略について話すことができた。

スクエアロボット 創業者のウィリアム・オハローラン(William O'Halloran)氏、リードメカニカルエンジニアのチャーリー・オコネル(Charles O'Connell)氏

「SOLIDWORKS WORLD 2019」

2019年2月11日~13日まで米国テキサス州ダラスで行われた、世界最大級の3次元CADイベント。ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(以下、ソリッドワークス)の年次ユーザーイベントであり、全世界のソリッドワークスユーザー、代理店、パートナー企業、ソリッドワークス社員など、合計7000人以上の来場者が一堂に会した。

無人調査ロボットでブルー・オーシャンを行く

スクエアロボットは、2016年に設立されたまだまだ若い企業だ。

手掛けるのは、無人ロボットを活用した「原油タンクの調査・点検」事業。マサチューセッツ州・ボストンに本社を構え、現在は15人態勢で無人ロボットの製造・設計、およびその運用を行う。

無人ロボットが原油タンクの中を泳ぎ、異常部分がないかを点検する

スクエアロボットの創業者であるウィリアム・オハローラン(William O'Halloran)氏は「ライバル企業は思い当たらない」と、その市場優位性を語る。

前職では防衛産業向けの無人潜水機を設計していた同氏だが、その時にたまたま聞いた「製油所の抱える問題」から、スクエアロボットが誕生した。「問題」とは、点検作業にかかる大量のコストであった。

「原油タンクを点検するにあたって、かつてはタンクを一度空にして、横から穴をあけ、そこから人が入って検査する、という手法がとられていました。しかしその手法では、タンク1つあたり約50万~200万ドルもの費用がかかるほか、再稼働までに約3か月もの時間がかかるという問題があったんです」(オハローラン氏)

スクエアロボットが目指すのは、この非効率的な点検方法の代替案である。そのための手段が「油中でも泳げるロボットによる点検」であった。

「我々のサービスでは、点検のためにわざわざ油を抜く必要もなく、たった8時間で調査を完了します。さらには、簡単な設備のメンテナンスも可能です。これにより、顧客のタンクの点検にかかる費用を10%~20%にまで縮小できます。腐食率に応じた点検頻度の見直しを提案することで、タンクのより安全な運用にもつなげられます」(オハローラン氏)

スクエアロボット 創設者のウィリアム・オハローラン(William O'Halloran)氏

人材獲得につながった「リモートワーク」

事業だけでなく、働き方もユニークだ。

例えば、リモートワーク。スクエアロボットの技術を支えるリードエンジニアのチャーリー氏は、ニューヨークに住みながら、ボストンにいる本社チームを率いている。

「しばらくボストンで暮らしていたんですが、ニューヨークに移住して、別の企業で働く予定でした。その頃、スクエアロボットの話を聞き、ロボットを設計するためのプログラムもクラウドベースであったため、リモートでの参加が容易であることに魅力を感じ、スクエアロボットにジョインしました」(オコネル氏)

リードメカニカルエンジニアのチャーリー・オコネル(Charles O'Connell)

もちろん、「リモートワーク」という働き方は決して新しいものではなく、すでに取り入れているという企業は多い。GoogleドライブにSlackなど、さまざまなコミュニケーションツールを活用すればデータの共有は可能だし、急ぎの連絡は電話でしてしまえばいい。

ただ製造業に限って言えば、少し状況が異なる。

最新のCADデータをどうやって共有するのか、クラウドのセキュリティは安心できるものか、製品の設計・開発・保守といったサイクルをどうやって管理するのか……。そこで活用したのが、先述のソリッドワークスであった。

「今は多くのツールが揃っています。当社には現在、ソリッドワークスを使っているエンジニアが5人いるのですが、それぞれ居場所も違うし、複数のプロジェクトを抱えています。前はGoogleドライブにCADデータを格納していましたが、ソリッドワークスを使用することで、よりデータのやり取り、各メンバーの抱えるプロジェクトの把握を簡単に行えるようになりました」(オコネル氏)

現代において、さまざまなコミュニケ―ションツールが発達し、働き方は自由になっている。しかし、セキュリティの高いプラットフォーム上でデータをやり取りできる、修正を加えたら通知を送れる、といった、「エンジニア視点」のサービスは、今後さらに求められるようになるだろう。

「働く場所の制約」が外されたことで、本来獲得が難しかった人材を確保できたというこの事例は、製造業でもリモートワークが有効な手段になることを示す好例と言えそうだ。

「原油タンク」以外も視野に、将来は原発での利用も?

オハーラン氏はスクエアロボットの将来性に自信を見せており、そして今後の展望を次のように語る。

「世界中には10万機のタンクがあるといわれています。その約半分が原油のタンクで、その半分がアメリカにあります。今年から来年にかけてはアメリカでの成長を目指し、その後は国際展開も視野に入れています」(オハローラン氏)

折しも日本では「原子力発電所」をいかに検査、メンテナンスするのかが大きな課題となってしまっている。スクエアロボットの取り組みは何かのヒントにならないだろうか。オハーラン氏は「実際に今、事業として具体的に手を付けているわけではないものの、技術的にはできることがある」と話す。

スクエアロボットは数年以内に国際展開を目指しているが、その際の拠点候補には日本も含まれているという。彼らの自動ロボットが海を越え、日本で活躍する姿を目にする日も、そう遠くはないかもしれない。

1歳になったaibo、“おまわりさん”として大きく成長

1歳になったaibo、“おまわりさん”として大きく成長

2019.01.23

発売開始から1年を迎えたaiboに2019年限定カラーが登場

2月にはシステムのアップデートによって新機能が追加される

2019年夏からはAPIの一般公開を予定している

発売日に手に入れたオーナーであれば、各家庭ですでに1歳の誕生日を迎えた「aibo」。多くの時間を共に過ごし、思い出も増えてきたことだろう。

そんな愛らしい相棒が、もうすぐ大きく成長するらしい。

「ご主人、1年で成長した僕を見ててね」

ソニーは1月23日、aiboの限定カラーモデル「aibo チョコ エディション」を2月1日に発売すると発表した。1月23日からソニーのインターネット直販サイト「ソニーストアオンライン」および、ソニーストア直営店舗にて注文を受け付ける。2月14日までに注文したオーナーには、特別色のつけかえ用「しっぽ」(黒)がプレゼントされるという。

限定カラーモデル「aibo チョコ エディション」。ナチュラルな色合いが、より“犬らしさ”を感じさせる
ソニーは新機能「aiboのおまわりさん」の提供に加えて、「セキュリテインメント(セキュリティ+エンタテインメント)」の実現のため、セコムとのパートナーシップを開始した

また、限定カラーモデルの発売に加えて、2月中旬に行われるシステムソフトウェアのアップデートで追加される新機能も発表された。

新機能の名は「aiboのおまわりさん」。10人までの顔と名前を“My aibo”に登録でき、aiboがその「見つけてほしい人」を発見すると、愛くるしいふるまいを見せてくれるようになる。

さらに、自宅の地図を作成し、毎日特定のポイントをパトロール。その様子をレポートに残すという警察犬顔負けのハイスペックさを手に入れるというのだ。

地図作成の様子

6月からは月々1480円の有料サービス「aiboプレミアムプラン」を開始する予定で、登録すると「aiboのおまわりさん」の新機能追加に加え、現状500枚が上限の写真保存が無制限になり、「aibo日記」なる機能も使えるようになるとのことだ。

夏にはソフトウェアAPIの一般公開も開始される予定で、ほかの企業や団体などが提供するさまざまなサービスと連携できるようになるという。

洋服を着せたり、一緒に写真を撮ったり、南極に連れて行ったりと、すでに多様な思い出を作っているだろうが、これからますます成長していく相棒と、この先どんな時間を過ごせるのか、楽しみは広がるばかりではないだろうか。

連載開始から66年、「鉄腕アトム」が現実に誕生

連載開始から66年、「鉄腕アトム」が現実に誕生

2018.09.11

「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」(2017年創刊)の最終号が発売

ついに“リアルアトム”がコミュニケーション・ロボットとして誕生

10月1日からは全国の家電量販店などで完成版ATOMが販売される

漫画家・手塚治虫が『鉄腕アトム』という作品を生み出したのが1952年。連載開始からおよそ66年の時を経て、同作の主人公であるロボット「アトム」が「コミュニケーション・ロボット ATOM」として、ついに現実世界に姿を現すことになった。

現実のATOMは空も飛べなければ、10万馬力もない。しかし、世間話をしてくれたり、手塚治虫先生のエピソードを話してくれたり、天気予報を教えてくれたり、ラジオ体操をしてくれたりと、家族の一員として、さまざまなコミュニケーションをしてくれるのだ。

胸にあるディスプレイで『鉄腕アトム』をはじめとした手塚治虫のマンガの一部を読むことができるほか、アニメ『鉄腕アトム』の視聴も可能。「『アトムマーチ』を歌って」と話しかければ、みごとな歌声を披露してくれる。

「コミュニケーション・ロボット ATOM」(c)TEZUKA PRO/KODANSHA

今回、ATOMを作ったのは、天馬博士でもお茶の水博士でもなく、講談社、手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフト、VAIOの5社。それら5社は2017年4月4日に、付属するパーツを70号分すべて組み立てればATOMを作れる「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」を創刊した。今回、大地震のあった北海道エリアを除く地域で発売される最終号で、約2万人いる購読者の家でATOMが完成する。そういう意味で考えると、ATOMの生みの親は購読者だと言えるかもしれない。

ATOMに備えられた2つのAI

ATOMのコミュニケーションを可能にしているのは「クラウドAI」と「フロントエンドAI」だ。「クラウドAI」はインターネット上のAIで、オンラインにあるさまざまな情報を検索して教えてくれるというもの。21.8億件以上の対話データと解析技術を用いて構築された、NTTドコモの「自然対話プラットフォーム」が使われており、意図解釈とシナリオ対話に雑談エンジンが加わったことで、ナチュラルな会話を可能にした。

また、ユーザーが与えた情報を記憶する「思い出エンジン」によって、過去の出来事を会話に活かすことができるという。話せば話すほど記憶が積み重なり、ATOMと思い出話に花を咲かせることができるようになるのだ。

「フロントエンドAI」は、周辺環境を認識し、動体識別から属性や自分との関係を判断する富士ソフトの開発したAI。画像や音声など、複数の情報が作用し、個人を特定する。ATOMに近づいてくるものが人か否か、初対面の人か否か、知っている声紋か否かといった判断をわずか0.4秒で行うのだという。ちなみに、「暇だ」と思っていると、あくびをすることもあるそうだ。

なお、これらのAIは、VAIOの製造するメインボードと、「Raspberry Pi 3」によって支えられている。

ATOMの持っている2つのAI

なお、2018年10月1日からは、「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」を定期購読していない人でもATOMを入手できるよう、組み立て済みの「完成品」が全国の家電量販店などで発売される。希望小売価格は21万2,900円(税別)。ATOMの知識が日々更新される「ATOMベーシックプラン」(月額1,000円、税別)に加えて、修理代金が半額になる「ケアプラン50」(月額990円、税別)や、75%割引になる「ケアプラン75」(月額1,690円、税別)などのプランが用意されている。

なおATOMに搭載されている機能は、本体だけで楽しめる「基本機能」と、インターネットに接続すれば楽しめる「拡張機能」、上記ベーシックプランに加入することで楽しめる「発展機能」の3種類に分かれている。

本体を購入するだけでも「自己紹介」などのコミュニケーションは可能だが、せっかく購入するのであれば、ATOMを最大限活用できるよう、ベーシックプランには入っておきたいところだ。

「ATOM」、aiboの対抗馬なるか

これまで個人的には、もしロボットを買うなら「aibo」がいいと考えていた。かつて実家で犬を飼っていたこともあり、「ペットがほしい」という欲求があったためだ。大豪邸に住んでいるわけではないので、場所を取るような大きなロボットは置けないし、無機質で景観を損なうデザイン性の低いものは置きたくない。それであれば、愛らしいしぐさで仕事に疲れた心を癒してくれるaibo以外にはないのではないだろうか。そう、考えていたわけだ。

しかし、ATOMはサイズ的に問題ないだけでなく、「アトム」というキャラクターが、少年の心を呼び起こすような気がする。思い出エンジンによって、話せば話すほど仲良くなれるというのも魅力的だ。個人的に、aiboの対抗馬として大きく存在感を示す結果になった。

ただし、20万円近くの資金を捻出する余裕はもちろんないので、当分の間は、かわいいルンバに「ただいま」を言うことになるだろう。