「ロボット」の記事

連載開始から66年、「鉄腕アトム」が現実に誕生

連載開始から66年、「鉄腕アトム」が現実に誕生

2018.09.11

「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」(2017年創刊)の最終号が発売

ついに“リアルアトム”がコミュニケーション・ロボットとして誕生

10月1日からは全国の家電量販店などで完成版ATOMが販売される

漫画家・手塚治虫が『鉄腕アトム』という作品を生み出したのが1952年。連載開始からおよそ66年の時を経て、同作の主人公であるロボット「アトム」が「コミュニケーション・ロボット ATOM」として、ついに現実世界に姿を現すことになった。

現実のATOMは空も飛べなければ、10万馬力もない。しかし、世間話をしてくれたり、手塚治虫先生のエピソードを話してくれたり、天気予報を教えてくれたり、ラジオ体操をしてくれたりと、家族の一員として、さまざまなコミュニケーションをしてくれるのだ。

胸にあるディスプレイで『鉄腕アトム』をはじめとした手塚治虫のマンガの一部を読むことができるほか、アニメ『鉄腕アトム』の視聴も可能。「『アトムマーチ』を歌って」と話しかければ、みごとな歌声を披露してくれる。

「コミュニケーション・ロボット ATOM」(c)TEZUKA PRO/KODANSHA

今回、ATOMを作ったのは、天馬博士でもお茶の水博士でもなく、講談社、手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフト、VAIOの5社。それら5社は2017年4月4日に、付属するパーツを70号分すべて組み立てればATOMを作れる「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」を創刊した。今回、大地震のあった北海道エリアを除く地域で発売される最終号で、約2万人いる購読者の家でATOMが完成する。そういう意味で考えると、ATOMの生みの親は購読者だと言えるかもしれない。

ATOMに備えられた2つのAI

ATOMのコミュニケーションを可能にしているのは「クラウドAI」と「フロントエンドAI」だ。「クラウドAI」はインターネット上のAIで、オンラインにあるさまざまな情報を検索して教えてくれるというもの。21.8億件以上の対話データと解析技術を用いて構築された、NTTドコモの「自然対話プラットフォーム」が使われており、意図解釈とシナリオ対話に雑談エンジンが加わったことで、ナチュラルな会話を可能にした。

また、ユーザーが与えた情報を記憶する「思い出エンジン」によって、過去の出来事を会話に活かすことができるという。話せば話すほど記憶が積み重なり、ATOMと思い出話に花を咲かせることができるようになるのだ。

「フロントエンドAI」は、周辺環境を認識し、動体識別から属性や自分との関係を判断する富士ソフトの開発したAI。画像や音声など、複数の情報が作用し、個人を特定する。ATOMに近づいてくるものが人か否か、初対面の人か否か、知っている声紋か否かといった判断をわずか0.4秒で行うのだという。ちなみに、「暇だ」と思っていると、あくびをすることもあるそうだ。

なお、これらのAIは、VAIOの製造するメインボードと、「Raspberry Pi 3」によって支えられている。

ATOMの持っている2つのAI

なお、2018年10月1日からは、「週刊 鉄腕アトムを作ろう!」を定期購読していない人でもATOMを入手できるよう、組み立て済みの「完成品」が全国の家電量販店などで発売される。希望小売価格は21万2,900円(税別)。ATOMの知識が日々更新される「ATOMベーシックプラン」(月額1,000円、税別)に加えて、修理代金が半額になる「ケアプラン50」(月額990円、税別)や、75%割引になる「ケアプラン75」(月額1,690円、税別)などのプランが用意されている。

なおATOMに搭載されている機能は、本体だけで楽しめる「基本機能」と、インターネットに接続すれば楽しめる「拡張機能」、上記ベーシックプランに加入することで楽しめる「発展機能」の3種類に分かれている。

本体を購入するだけでも「自己紹介」などのコミュニケーションは可能だが、せっかく購入するのであれば、ATOMを最大限活用できるよう、ベーシックプランには入っておきたいところだ。

「ATOM」、aiboの対抗馬なるか

これまで個人的には、もしロボットを買うなら「aibo」がいいと考えていた。かつて実家で犬を飼っていたこともあり、「ペットがほしい」という欲求があったためだ。大豪邸に住んでいるわけではないので、場所を取るような大きなロボットは置けないし、無機質で景観を損なうデザイン性の低いものは置きたくない。それであれば、愛らしいしぐさで仕事に疲れた心を癒してくれるaibo以外にはないのではないだろうか。そう、考えていたわけだ。

しかし、ATOMはサイズ的に問題ないだけでなく、「アトム」というキャラクターが、少年の心を呼び起こすような気がする。思い出エンジンによって、話せば話すほど仲良くなれるというのも魅力的だ。個人的に、aiboの対抗馬として大きく存在感を示す結果になった。

ただし、20万円近くの資金を捻出する余裕はもちろんないので、当分の間は、かわいいルンバに「ただいま」を言うことになるだろう。

真の

今さら聞けないビジネスIT用語集 第14回

真の"働き方改革"につながる--「RPA」

2017.11.24

現在の日本社会が、少子高齢化などに伴う労働人口の減少という重要課題を抱えていることは、改めて述べるまでもない。総務省が調査した平成28年版 少子化社会対策白書によれば、2015年の15~64歳は7,708万人に対して、2060年には4,418万人と0.57%まで減少すると推計する。

平成28年版 少子化社会対策白書「我が国の総人口及び人口構造の推移と見通し」より抜粋

このような背景から「RPA(Robotic Process Automation)」の導入が求められるようになった。RPAは単純労働における人件費の削減という観点と、労働人口減少問題に対する生産性向上など、多角的視点から注目を集める技術として、ソフトウェアで構築したロボットが、人間の代わりに規定作業を実行するシステムを指す。

主にホワイトカラー業務の効率化や自動化を目指したものだが、単なる自動化と異なるのはアプリケーションごとにマクロを作成せず、認知機能を用いて各種アプリケーションの横断的な自動化を実現する。パーソルプロセス&テクノロジー プロセスエンジニアリング部 ゼネラルマネジャー 小林徹氏の説明によれば、RPAツールの販売に留まるライセンス代理店を含めば国内でも1,000社近くの販売会社が存在すると言う。

NTTアドバンスドテクノロジーの「WinActor」。コーディング知識がなくとも対応できる

RPA市場は急速に拡大し、グローバル市場で見れば2017年時点で7億3,600万ドルの規模が、2021年までには52億6,600万ドルまで拡大。日本市場に限定しても20億円規模が82億円まで拡大すると各調査企業は推計し、グローバル規模では6割以上、国内も5割以上の成長を見込んでいる。

アビームコンサルティングによれば、RPAを導入企業の97%が5割以上のコスト削減を実現していると、同社戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏は説明する

既に多くの企業がRPAソリューションの展開を始めており、アビームコンサルティングは診断・業務改革・開発者育成・保守サービスに加えてSAP ERPを用いたRPAサービスを提供してきた。パーソルホールディングスのグループ企業であるパーソルプロセス&テクノロジーは、2017年12月から人材育成プログラムを開始し、RPA市場の拡大に乗り出している。

人間の労働意欲を欠くような単純作業をRPAで代替することで、「真の働き方改革につながる」(アビームコンサルティング 戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏)と同時に、「人間では実現不可能だった部分をRPAが代替することで、新しいビジネスチャンスを生み出す」(小林氏)。必ずしもすべての部門がRPAの恩恵を受ける訳ではないものの、営業事務や月次レポート作成といった、徒労と言わざるを得ない作業から人々は解放されるべきだ。

阿久津良和(Cactus)

日立が目指す「Amazon、Googleと競合しない」プラットフォーム

日立が目指す「Amazon、Googleと競合しない」プラットフォーム

東芝が白物家電を中国家電メーカーのマイディアグループに売却したのは2016年の話だが、それに続いて今度はテレビ事業を、同じく中国メーカーのハイセンスに売却すると決めた。経営危機に陥ったシャープは昨年来、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で再建に勤しむなど、ここ数年、日本の家電メーカーを取り巻く環境は厳しい。

その中で日立は、早くから重電分野や社会インフラ事業に舵を切って経営の安定基盤を築いたことで「家電メーカーの優等生」として高い評価を受けてきた。そうした「選択と集中」を行いつつも家電部門を残した日立だが、国内家電市場の行く末には危機感を抱いている。

少子高齢化による人口減で市場が徐々に縮小する上、外資やベンチャーが次々と新機軸の製品を投入しており、コアな先進層から低価格重視層まで、幅広い分野で市場環境が変化しつつあるからだ。そうした状況から、日立は4月に組織改編で注力4分野ごとに事業を括り直し、それぞれ成長戦略の策定と投資を検討する方針を打ち出している。

家電製品を扱う生活・エコシステム事業は、鉄道やアーバンソリューション、自動車部品などとともに「アーバン」事業に組み込まれた。4月の改編以来初めて、日立 生活・エコシステム事業統括本部 統括本部長の中村 晃一郎氏がこのほど会見し、今後の家電事業戦略を説明した。

生活・エコシステム事業統括本部の中村 晃一郎統括本部長と、事業スローガンの「360°ハピネス」

家電で社会イノベーションを起こす

生活・エコシステム事業統括本部は、家電の開発、空調機器の販売・サービスを担当する日立アプライアンスと、家電の販売・サービスを担当する日立コンシューマ・マーケティングの2社を統括する。日立全体の2016年度売上高は9兆1622億円だが、生活・エコシステム分野の売上高はそのうち6%にとどまる。

「売上構成比では6%だが、家電分野は一般顧客に対して日立のブランドを想起させる重要な役割を背負っており、責任が大きい。しかし、収益性が全社平均より低いという弱点がある。2017年度の営業利益率は4.4%と前年比0.4ポイントの改善を見込むが、さらに上げていきたい。そのためには、統括本部の下でアプライアンスとコンシューマ・マーケが一体となる必要があるそしてもう一つ、『社会イノベーション事業』だ」(中村氏)

注力4事業分野の構成
2016年度売上高の事業セグメント別構成比

従来、家電事業は個人家庭への製品の売り切りであり、他の事業と比較すれば「社会イノベーション」というキーワードとは遠い位置にあった。

「これまでの家電事業は、高性能・高機能な製品で顧客に利便性を提供することに価値を見出してきたが、このあり方を変えていきたい。ハードに加えてサービスやプラットフォームを提供することで、顧客の生活シーン全体における新しい価値を生み出していく」(同)

それが今回発表した「人生100年時代における日立の新たなスマートライフ事業の創造」と題する新戦略だ。

日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えて世界一の長寿大国なった。人生100年時代の到来は、年齢や家族構成、健康状態など、人々の生活環境の多様化をもたらしている。そこにはさまざまなニーズや課題が存在しており、日立はデジタルの力で一人一人の生活に向き合い、それぞれに適した新たなソリューションを提供していく、というものである。

中村氏は、注力分野を「洗濯機」などの紋切り型の言い回しではなく、「洗う」「冷やす」「調理する」「安心して使う」「見守る」という言い方で説明した。

新たなスマートライフ事業として取り組む5つの分野

例えば「洗う」では、「ユーザーが望むことの本質は洗濯機の性能ではない」(中村氏)として、本来の価値を「着たい服を着たい時にキレイな状態で着れること。洗うという行為は、そのための段取りでしかない」と説明する。

もちろん、日立もただ単に話し言葉で茶を濁すわけではない。

「冷やす」「調理する」のケースでは、冷蔵庫内にカメラやセンサーを内蔵する時代が当たり前になれば、「食材が消費されたらネットで同じものを自動注文・配達」したり、電子レンジに食べたい料理を話しかければ「レシピを自動ダウンロードして冷蔵庫と連携、足りない食材の自動注文」と、従来の製品セグメントを超えた用法が期待されるからこそ、こうした言い回しにしたのだろう。

既に多くの家電製品に各種のセンサーを搭載しており、スマートライフの素地はできている

「見守る」分野では、高齢化問題にも切り込んでいく。「少子高齢化はさらに進み、2020年には65歳以上の高齢者1人支える労働人口が2人を切るまでになると言われている。この急速な高齢化により、独居老人問題や介護問題も深刻化する。日立はより長く健康生活を送れるようなソリューション提案を行っていく」(中村氏)

子ども世帯と離れて暮らす独居老人は、常に事件・事故に巻き込まれる危険に晒されている。さまざまな家電に搭載しているセンサーで、遠く離れた親の動向をリアルタイムに見守ることは可能だ。冷蔵庫の開閉やライト・エアコンのオン/オフといったデータで、人の活動状況が分かるからだ。

ただ、これでは家電機器の反応が無いときの状況は分からない。カメラで部屋の監視を見るのが一番だが、プライバシーの問題があって難しい。そこで同社は、日立LGデータストレージが開発した赤外線センサーの活用を提案する。人の動きを「点の集合体」によって表現し、プライバシーを保護しつつも対象物の姿勢・挙動を監視してリアルタイムに伝送する。万が一の時には、契約した日立チェーンストールなどの「街の電気屋さん」が駆けつける仕組みを想定しているようだ。

家電製品に搭載された各種センサーが離れた子世帯に親の活動状況を知らせてくれる。加えて、赤外線センサーが姿勢や動きをリアルタイムに検知するので、昏倒したときもすぐに発見できる

センサー技術は家電の保守サービスにも役立つ。同社は既に業務用エアコンでセンサーを内蔵しており、運転状況を常時モニターして異常データを検知した場合に訪問点検し、故障前に修理するサービスを提供している。これを家庭の洗濯機や冷蔵庫、エアコンに応用すれば、突然の故障で生活に支障をきたす心配もない。

業務用エアコンで採用されている機器モニターシステムを家庭用機器に導入すれば、故障したら困る冷蔵庫や洗濯機を毎日安心して使えるようになる

上記のソリューションは、多くのパートナーと実現に向けて協議をしているものの、まだ計画段階であり実現のめどは立っていないという。ただ、1つだけ高齢者向け転倒防止システムの実証実験がサンヨーホームズと共同で11月から始まった。サンヨーホームズが開発した屋内移動支援ロボットに、日立の画像解析技術を組み合わせ、高齢者の歩行時と転倒時の挙動を解析する。

これらの新しい取り組みは、独自開発のIoTプラットフォーム「Lumada」で展開する計画だ。家電だけでなく、業務用機器や社会インフラなど、日立グループ全社で集積したビッグデータを繋ぎ込み、さらにオープンプラットフォームとして他社サービスとも連携していく。中村氏は「家庭、職場、移動手段、街。すべてに関わる日立だからこそ全方位で人々の暮らしに向き合い、全方位的なプラットフォームで新しい暮らしの仕組みを提供できる」と力説する。

日立独自のプラットフォーム「Lumada」でパートナーと連携をとり、家の中だけでなく街のシステムとのつながる仕組みを構築する

これらスマートライフ新事業を進める上での事業スローガンが「360°ハピネス」だ。家の中から街の中までのさまざまなシーンと、子どもから高齢者まですべての世代、すべての世帯に向き合って全方位にハピネスを提供する、という思いが込められている。

「今後進めていくスマートライフ事業は、製品とサービスが逆転するものだ。『この家電が欲しいから』だけではなく、『このサービスがあるから日立の製品を買う』という流れを作りたい。仕組みから入って、そのパーツとしてプロダクトがある。製品開発もその流れになる」(中村氏)

ただ、日立が今回発表した中身は他社も進めているものとあまり変わらない。例えばシャープは、すでにオーブンレンジのヘルシオで同社のクラウド基盤「AIoT」を組み込んでおり、レンジに話しかけることでレシピを自動提案し、その食材を宅配する仕組みを一部地域で導入し始めた。

また、アマゾンやグーグルはAIスピーカーで家電をコントロールできるほか、米国では買い物もスピーカーに話しかけるだけで完結する仕組みを既に米国で構築中だ。特にアマゾンは、ボタンを押せば手元になくなった日用品が自動配達される「Amazon Dash Button」を日本でもスタートしたうえ、電子キーを使って不在でも家の中まで商品を届けてくれる仕組みを米国で試験し始めた。

アマゾンとグーグルというネットの覇者が握るプラットフォームに家電メーカーや住宅メーカー、車メーカーとあらゆる方面の企業が参画の姿勢を見せており、日本市場でもこの流れを断つことは難しいだろう。

こうした市場環境に対して中村氏は、「当社が目指すのもプラットフォーマーだが、アマゾンやグーグルとガチンコ対決するものではない。他社プラットフォームの利用を排除するわけではなく、かと言って日立が彼らのサプライヤーのなることもない。日立は日立で独自のプラットフォームを作り、アマゾンやグーグルもそのワン・オブ・パートナーとなることが望ましい」と語る。

ただ、すでに多くの企業を巻き込み巨大プラットフォームを構築しつつある2社に対して、「来年度中には何らかの形で事業化できるようにしたい」(中村氏)という状況はいささかスピード感に欠ける節がある。

もちろん、日立には社会インフラ事業という、米2社にはない強みがある。家電事業を含むアーバンだけでなく、エネルギーや流通、金融・公共といった全事業をあまねく連携できる強みをどれだけ精緻化できるのか。いち早く「家と街をつなげる広域システム」を実現することが、日立には求められるだろう。