「ルノー」の記事

ついに日本上陸! 復活したフレンチスポーツ「アルピーヌ」の魅力

ついに日本上陸! 復活したフレンチスポーツ「アルピーヌ」の魅力

2018.06.27

世界ラリー選手権(WRC)で初代王座に輝くなど、フランスを代表するスポーツカーとして多くのファンに親しまれたアルピーヌが復活。かつての名車と名前も同じ「A110」が日本に上陸した。駐日フランス大使公邸での発表会で明らかになった車両概要や販売方法を報告する。

復活のアルピーヌから新型「A110」が登場

戦後フランス車の歴史に欠かせない存在

アルピーヌ。その名を知っている読者は少ないかもしれない。しかし、このスポーツカーブランドは、第二次世界大戦後のフランス車を語るうえで欠かせない存在でもある。

1955年に創設されたアルピーヌは、フランス北西部の港町ディエップでルノーのディーラーを営んでいたジャン・レデレが、当時のルノーをベースに製作したスポーツカーを起源とする。

アルピーヌは当初から欧州のラリーや公道レースで活躍。1962年に誕生した「A110」の実績は中でも顕著で、1973年に始まったWRCで初代チャンピオンを獲得するなどの活躍を示した。1960年代から参戦していたル・マン24時間レースでも、1978年に総合優勝を獲得している。

「A110」はモータースポーツで輝かしい実績を残した名車だ(画像は新型)

フォルクスワーゲンをベースに生まれたポルシェ、あるいはフィアットの高性能版として名を成したアバルトと似たストーリーをアルピーヌは持っており、この3つのブランドは生まれた年も近い。RR(リアエンジン・リアドライブ)を採用しているところや、モータースポーツに積極的だったことなども共通している。

復活に至った経緯は

戦後、優秀な大衆車が続々と登場し、これをベースにした小型軽量のスポーツカーが生まれてレースに挑戦したという流れは欧州各地であった。その中で、フランス代表という扱いを受けていたのがアルピーヌだったというわけだ。

一方でルノーとの関係が深かったアルピーヌは、WRCタイトルを獲得した1973年にはルノーの傘下に入っている。その後もスポーツカーの生産は続けていたものの、1995年にいったん活動を休止した。

ルノーの傘下に入ったアルピーヌだが、1995年には活動を休止していた

そのアルピーヌが復活に向け歩み始めたのは2012年。当初は英国の小型軽量スポーツカー「ケータハム」との共同開発を計画し、合弁会社を設立した。このジョイントは2年後に解消したが、アルピーヌが復活をあきらめることはなく、2016年には試作車「ビジョン」を発表。翌年には市販型がデビューし、今年になって日本でも発売したという流れだ。

ライバル「ケイマン」より380mmも短いサイズ感

発表会が行われたのは6月22日。場所はなんと駐日フランス大使公邸だった。これだけでも意気込みが分かる。広い庭園には上陸したばかりの新型とともに、我が国の熱心なファンが所有する旧型「A110」も置かれていた。

駐日フランス大使公邸の庭園で新旧そろい踏みを果たした「A110」(右が新型)

ボディサイズは旧型に比べれば大きいが、予想したほどの差はない。具体的な数字を挙げれば全長4,205mm、全幅1,800mm、全高1,250mmで、国産スポーツカーのトヨタ「86」/スバル「BRZ」との比較では35mm短く、25mm幅広く、70mm低いというボリューム感。全幅が同じ輸入スポーツカーのライバル、ポルシェ「ケイマン」より380mmも短い。コンパクトという「A110」の伝統が受け継がれていることが分かるだろう。

軽さもまた伝統を継承している。今回発表された発売記念限定車「プルミエール・エディション」の独自装備23キロを含めても、わずか1,110キロにすぎない。対する「86/BRZ」が最低でも1,210キロ、「ケイマン」が1,360キロである。プラットフォームとボディをアルミ製としたことが「A110」の軽さに貢献している大きな要因だ。

サイズ感や軽さなど、新型(右側)は伝統を継承している

中身は刷新もスタイルは継承

それ以上に印象的なのは、スタイリングが似ていること。実は新旧「A110」、骨格は太い鋼管を車体中央に背骨のように通したバックボーンタイプからアルミ製プラットフォームに変わり、リアタイヤの後方に縦に積まれていたエンジンは、リアタイヤ前方に横置きされるミッドシップ方式となるなど、構造は変わっているのに見た目はそっくりだ。

これについては、発表会のためにフランスから来日したエクステリアデザイン担当のデアン・デンコフ氏が、4つの独立した丸いヘッドランプ、ボンネット中央を走る「スパイン」(脊柱)、 ボディサイドのくぼみ、傾斜し湾曲したリアウインドーなどのディテールを継承したことがポイントだと語っていた。

4つの丸いヘッドランプやボンネット中央の「スパイン」、ボディサイドのくぼみなどが、新型「A110」の外観をアルピーヌたらしめている要素だ

最高速度250km/hのスポーツカーとしては、リアスポイラーがないことも特徴だ。ボディ下面をフラットに仕上げるとともに、リアバンパー下に「ディフューザー」と呼ばれるパーツを装着し、車体を下に押し付けるダウンフォースを発生させることで、安定感を獲得しながらフレンチスポーツらしいエレガントなフォルムを実現できたという。

スポーツカーなのにリアスポイラーが付いていないことも特徴だ

2人乗りのインテリアは、ドアトリムの一部をボディカラーとし、センターコンソールにはアルミパネルを起用するなどして、伝統の継承とともに軽量であることもアピールする。イタリアのモータースポーツブランド「サベルト」製スポーツシートは1脚わずか13.1キロとこちらも軽い。

エンジンはルノー/日産アライアンスが開発した1.8L直列4気筒ターボ。最高出力185kW、最大トルク320Nmを発揮し、7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)で後輪を駆動する。1.8L4気筒というのは旧型「A110」の最高性能版と同じ数字で、ここからも伝統を感じる。もちろん、スポーツカーにふさわしい音にもこだわったそうだ。

サスペンションは、タイヤ接地面変化が少ないことからレーシングカーでは定番となっている「ダブルウィッシュボーン」という形式を前後に採用。実用車で多用される「ストラット式」を用いたライバルに差を付ける。ここにもアルミを多用して軽さに配慮している。前後重量配分は44:56で、ミッドシップスポーツとしては理想的な値。加えて重心高も低く、高次元のハンドリングが期待できる。

新型「A110」は高次元のハンドリングを期待させるクルマだった

争奪戦に? 50台限定で価格は790万円

こうした内容を持つ「プルミエール・エディション」の価格は税込み790万円。50台限定でハンドル位置は左、色はブルーのみだ。アルミ製ボディ/プラットフォームやフレンチスポーツらしいデザイン、プレミアムブランドと呼びたくなる作りの良さなどを考えれば安いという声が、発表会場では多く聞かれた。

販売方法についてのアナウンスもあった。2018年7月10日までオフィシャルウェブサイトと全国14店舗の正規販売店で購入申し込みを受け付け、その数が50件を超えた場合は15日に抽選を行う。この抽選もフランス大使館で大使立会いのもと行うという。翌日にはウェブサイトに当選番号を掲載するとともに、当選者にはメールで通知し、正式受注が始まるという段取りになる。

新型「A110」(手前)は限定50台で、購入申し込みが多い場合は抽選となる

プルミエール・エディションに続いて量産車が導入される見込みで、ベースモデルとなる「ピュア」と上質な仕立てを施した「レジェンド」が予定されている。こちらについては、年末までにアナウンスされるようだ。おそらくブルー以外のボディカラー、右ハンドルも選べるようになるだろう。

購入を考えている人は迷うところかもしれないが、いずれにせよ現実的な価格とサイズのスポーツカーが、アルピーヌという名門復活という形で現れたことを歓迎するクルマ好きは多いのではないだろうか。

同じクルマでもバッジが違う? なぜ複雑な「OEM」供給が増えたのか

同じクルマでもバッジが違う? なぜ複雑な「OEM」供給が増えたのか

2018.05.10

そのクルマを作ったのが誰なのかは、バッジを見ただけでは分からない場合がある。なぜなら自動車業界では、「A」というメーカーが作ったクルマに「B」というメーカーのバッジが付いているケースがよくあるからだ。例えば、日産自動車が作っている「セレナ」をスズキが「ランディ」として売っていたりする。

日産「セレナ」
スズキ「ランディ」(画像提供:スズキ)

このような関係を「OEM」(original equipment manufacturer、相手先ブランド名製造)供給と呼ぶが、その相関図は複数のメーカーが絡むこともあり複雑に入り組む。なぜこういった状況となっているのか。モータージャーナリストの清水和夫さんに以下で解説してもらう。

メルセデス・ベンツ「スマート」の複雑な構成

以前の記事で解説した多品種生産にも関係するが、モデルの多様化はクルマの生産コスト増加につながるので、あるメーカーが他ブランドと部品やプラットフォーム、エンジンなどを共有する「OEM」供給が流行っている。それでは、そのクルマを誰が作ったと考えるべきかといえば、そのブランドのバッジが製造者を表しているのである。

面白いOEMの協業はメルセデス・ベンツの「スマート」とルノーの「トゥインゴ」だ。

2人乗りの「スマートフォーツー」はメルセデスにしかないが、自然吸気のエンジンは昔の三菱自動車製をベースにしているし、900ccの3気筒ターボはルノーから供給を受けている。だが、4人乗りの「スマートフォーフォー」はルノー「トゥインゴ」とプラットフォームおよびエンジンを共用する。プラットフォームはメルセデスが設計・生産するが、エンジンはルノー製だ。

左が「スマートフォーフォー」(画像提供:メルセデス・ベンツ日本)、右がルノー「トゥインゴ」

日本では4人乗りの「スマートフォーフォー」とルノー「トゥインゴ」が市販されているが、ブランドにこだわらないなら、ルノーのほうが安いし乗り心地もよいのだ。このような関係性にある2台のクルマを「どこで差別化するか」は、これからのブランドビジネスの難しいところだろう。

正真正銘のフレンチSUVが日本に? 好調ルノーから「カジャー」登場

正真正銘のフレンチSUVが日本に? 好調ルノーから「カジャー」登場

2018.04.21

日本での販売台数を8年連続で伸ばしているルノーが新型SUVを発表した。昨年新型に切り替わった「メガーヌ」とプラットフォームやパワートレインを共有する「カジャー」だ。ライバルの多いSUVカテゴリーで「カジャー」の魅力はどこにあるのか。試乗でチェックしてみた。

ルノーの新型SUV「カジャー」が日本に登場

「コレオス」と「キャプチャー」の間を埋めるクルマ

日本の多くの人は知らないかもしれないが、ルノーのSUVの歴史は長い。同社がルーツと位置付けているのは1950年発表の「コロラル」だ。車名は植民地を表す「コロニアル」と郊外を示す「ルーラル」を組み合わせた造語で、ワゴン/バン/ピックアップがあり、後輪駆動を基本としつつ4WDもあった。

その後も「4」(キャトル)をベースとしたオープンボディの多用途車「ロデオ」、欧州小型ミニバンの先駆車である「セニック」の車高を上げて4WD技術を組み込んだ「RX4」など、SUV的な車種を何度か送り出してきた。

「コロラル」(左)と「セニックRX4」

日本に正規輸入されたルノーのSUVは、この「セニックRX4」が最初で2001年の発売。続いて、2009年に「コレオス」が上陸した。コレオスはルノーが日産自動車とアライアンスを結成したあとの設計で、プラットフォームやパワートレインは当時の日産「エクストレイル」と共通だった。

続いて、2014年に発売されたのが「キャプチャー」だ。こちらは同じルノーの「ルーテシア」や日産「ジューク」とプラットフォームやパワートレインを共有した、コンパクトSUVと呼べるジャンルに属する車種。欧州のクラス分けではBセグメントに属する。そして今年、コレオスとキャプチャーの間を埋める車種として加わったのが「カジャー」だ。

「キャプチャー」(左)と「カジャー」

カジャーはルノーではメガーヌ、日産ではエクストレイルとプラットフォームを共有する。この点は、ほぼ同時に新型に切り替わったコレオスと共通だが、コレオスは同時にサイズアップしてDセグメントを担当することになり、カジャーがCセグメントに属することになった。

ルノー「メガーヌ」および日産「エクストレイル」とプラットフォームを共有する「カジャー」

上では今年登場と書いたが、カジャーは昨年、BOSEのオーディオシステムを備えた仕様が100台限定で日本に上陸している。SUV人気が盛り上がる中でコレオスの輸入が終了し、メガーヌは新型への切り替え待ちというタイミングで、いち早くカジャーを紹介したかったのかもしれない。

シンプルさで魅せるデザイン

カジャーのボディサイズは全長4,455mm、全幅1,835mm、全高1,610mmで、輸入車ではフランスでもライバル関係にあるプジョー「3008」と同等。日本車ではアライアンスの仲間になった三菱自動車工業の「エクリプス クロス」が近い。

しかしエクステリアデザインからは、そのボリュームを感じない。フロントマスクやボディサイドの造形は、ひとまわり小柄なキャプチャーに似ているが、ルーフを塗り分けた2トーンカラーではないし、他のブランドの上級車種のように光り物で飾り立てたり線を増やしたりということがなく、シンプルにまとめているためだろう。

シンプルにまとまったエクステリアデザイン

逆にいえば無駄な装飾に頼らず、このサイズを緊張感ある造形に仕上げたデザイン力に感心する。

インテリアも黒一色のカラーを含めてシンプルに感じる。これ見よがしの演出はない。そのおかげだろう、ストレートに広さが伝わってくる。特に横方向の広がりは驚くほどだ。前後方向も余裕があり、身長170cmの人間ならゆったり過ごすことができる。

ストレートに広さが伝わってくるインテリア(ちなみに、奥のシートは前方に倒してある)

荷室にも感心する。後席を立てた状態で527Lという容量もさることながら、前後2分割のフロアは上下2段階にセットでき、それぞれを立てることで空間の仕切りに使うことも可能。さらにトノカバーは床下にしまうこともできる。

荷室は広く、アレンジも効く

「カジャー」に見るフランスと日本の融合

ルノーは日産とアライアンスを組む関係で、日本に滞在経験がある開発担当者が少なくない。フランス車伝統の優れたパッケージングと日本車のきめ細かい設計が融合したようなこの作りは、ルノーならでは仕上がりなのかもしれない。積極的に使いこなそうという気持ちにさせるクルマだ。

エンジンは1.2L直列4気筒ターボでキャプチャーと基本的に同じだが、205Nmの最大トルクはそのまま、最高出力を87kWから96kWに引き上げたほか、デュアルクラッチ・トランスミッションが6速から7速になり、車両重量は1,410kgとサイズのわりには軽いので、加速に不満はない。

加速にも不満はない

力に余裕があると思ったのは、エンジン音がほとんど車内に届いてこなかったためもある。キャプチャーもこの面では優秀だけれど、カジャーはCセグメントのSUVとして考えても驚きのレベルだった。

自然な身のこなし、SUVの中でもハイレベルな走り

それ以上に印象的だったのは乗り心地だった。低速では大径で太いタイヤの存在を感じることがあるものの、時速50~60キロあたりに速度を上げると揺れがほとんどなくなり、たまに訪れる上下動もしっとりいなしてくれる。ここだけでも感動してしまうほどの快適性だった。

しかもサスペンションが自在に動くので、コーナーでのグリップ感も優れている。余裕のある全幅は安定感を生み出し、ボディに対して小さなエンジンを積むおかげでフロントの重さは伝わらず、身のこなしは自然だ。最近レベルアップが著しいSUVの中でも能力は高いと感じた。

ボディに対して小さなエンジンを積むのでフロントの重さは感じない

同じプラットフォームを用いるメガーヌは、「4コントロール」と呼ばれる4輪操舵によって異次元のハンドリングを実現しているが、プラットフォームの基本性能そのものも秀でていることが、カジャーの試乗で分かった。

プラットフォームを共有するメガーヌは、ハッチバックとスポーツツアラー(ワゴンモデル)の両方に4コントロール装備のGTを用意するほか、ハッチバックのみにベースグレードのGTラインも用意する。カジャーはメガーヌ・スポーツツアラーのGTラインに相当する存在であるとも思った。

「カジャー」は「メガーヌ・スポーツツアラー」のGTラインに相当する存在とも感じた

最近多くのユーザーが注目するようになった運転支援や予防安全については、パーキングアシストや時速30キロ以上でのエマージェンシーブレーキ、車線逸脱警報、後側方車両検知警報などを標準装備している。しかし、ライバルの中にはこれを上回る内容を持つ車種もある。

ライバルに比べ価格面でも優位に

では、カジャーの魅力は何か。筆者は基本性能の高さだと考える。エクステリアはスタイリッシュでインテリアは広く、荷室は自在にアレンジ可能。パワートレインは期待以上の仕事をこなし、乗り心地は極上と呼べるほどで、ハンドリングもハイレベルだ。そして348万円という価格は、我が国での輸入車のライバルであるプジョー「3008」やフォルクスワーゲン「ティグアン」よりお求めやすい。

家族全員で多くの荷物を積み込んで遠くへ出掛け、長期の休暇を過ごす。カジャーはヴァカンスのようなシーンで本領を発揮するような気がした。その意味で正真正銘のフレンチSUVではないだろうか。