「ランドローバー」の記事

「レンジローバー」にPHVが登場、高級・電動SUVに新たな選択肢

「レンジローバー」にPHVが登場、高級・電動SUVに新たな選択肢

2018.06.30

ジャガー・ランドローバー・ジャパンは「レンジローバー」および「レンジローバー スポーツ」にプラグインハイブリッド(PHVあるいはPHEVと省略する)モデルを追加し、予約受注を開始した。納車は2018年12月にも開始する予定。SUV一筋の老舗「ランドローバー」が、ついに電動SUVの世界に足を踏み入れた格好だ。

「レンジローバー」および「レンジローバー スポーツ」のPHVモデルが日本に(画像は「スポーツ」のPHV)

ライバルはポルシェ「カイエン」だけ?

今年でブランド誕生から70周年を迎えたランドローバーは、1948年から一貫してSUVだけを作り続けてきた。自動車業界では現在、ランボルギーニロールス・ロイスなども新商品を投入するほどSUVブームが過熱しているが、「真のSUVを生み出す知見を持っているのは我々だけ」とジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長は深い自信を示す。

ランドローバーは誕生から70周年、ジャガーは80年以上の歴史を持つ。ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、同社が展開するブランドの歴史や世界観を発信すべく、東京・銀座に期間限定で「JAGUAR LAND ROVER STUDIO」をオープン。期間は本日6月30日から9月24日まで。スタジオ内には同社のクルマを展示するほか、カフェやブランドグッズショップも併設。この施設からクルマに試乗することもできる

そのジャガー・ランドローバーが、同社初の電動モデルとして世に問うのが「レンジローバー/レンジローバー スポーツ」(以下、レンジローバーPHVと総称)のPHVだ。PHVとはエンジンおよびモーターの双方を搭載し、その双方で走行可能なクルマのこと。バッテリーとモーターだけで電気自動車(EV)のように走れる一方、エンジンを積んでいるので航続距離も伸ばせるというのがPHVの利点だ。

最高出力212kW、300馬力のガソリンエンジンと最高出力85kW、116馬力のモーターを搭載する「パラレル・ハイブリッド」システムのレンジローバーPHVは、2つの駆動装置を合わせて最高出力297kW、404馬力を発揮することができる。最高速度は時速220キロで、止まった状態から時速100キロまで加速するのに要する時間は「スポーツ」であれば6.7秒とのこと。フル充電の状態であれば、バッテリーとモーターだけで最長51キロの走行が可能だ。

フロントグリルに充電口が付いている

状況に合わせて「パラレル・ハイブリッド・モード」と「EVモード」から走行モードを選べるレンジローバーPHVだが、面白い機能としては、パラレル・ハイブリッド・モード時に使える「エネルギー最適化(PEO:Predictive Energy Optimization)機能」がある。これはナビゲーション・システムに設定された目的地からルートの高低差を計算し、クルマがモーター走行とエンジン走行を切り替えて、効率的に走ろうとしてくれるという機能だ。

充電中であれば、エアコンの電力をケーブルから供給することで、クルマ側バッテリーを消費せずに冷暖房機能を使える(画像は「レンジローバー」のPHV)

高級かつ電動のSUVとして、レンジローバーPHVのライバルとなりそうなのはポルシェ「カイエン」くらい。そういう意味では選択肢が増えたわけだが、実際のところ、この手のクルマに対する日本国内の需要はどうなのだろうか。ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部でディレクターを務める若林敬一氏に聞いてみた。

「売ることより確保することの方が難しい」

「『レンジローバー/レンジローバー スポーツ』の顧客から、PHVが欲しいという声は聞いていた」。若林氏は日本でレンジローバーPHVが待ち望まれていた状況に言及し、日本のPHV市場については「伸びていくと見ている。『EV化』と言われるが、まずは『PHV化』」との認識を示した。

「レンジローバー」のPHVは1,508万円から、「レンジローバー スポーツ」のPHVは1,185万円からという価格設定だ

ただ、日本市場はEVの充電インフラが整っているので、PHVの時代は短命に終わり、早期にEVが主流になる可能性もあると若林氏は見る。ジャガー・ランドローバーはPHVとEVの両にらみでいくそうで、ランドローバーでもEVを検討中だが、まだ詳細は話せないとのことだった。ちなみに、ジャガーではSUVのEV「I-PACE」の発売が決まっており、日本にも導入する計画だという。

「JAGUAR LAND ROVER STUDIO」発表会に登場したハンソン社長(右)と若林ディレクター

レンジローバーPHVの日本導入には苦労もあるようだ。欧州では現在、ディーゼルの人気が落ちている一方で「PHVのブーム」(若林氏)が起こっているそうで、レンジローバーPHVも「待ち」の状態になっているとのこと。「売ることよりも(日本向け車両の割り当てを)ゲットすることの方が難しい」と若林氏は話していた。

「E-PACE」を日本で発売! ジャガーがSUVを作る2つの理由とは何か

「E-PACE」を日本で発売! ジャガーがSUVを作る2つの理由とは何か

2018.02.23

高級サルーンやスポーツカーのイメージが強いジャガーが、同ブランドで2台目となるSUV「E-PACE」を日本で発売する。伸びる市場に商品を投入するビジネス上の判断は理解できるが、それ以外に、ジャガーがSUVを作る理由はあるのだろうか。SUVを作るのであれば、ジャガー・ランドローバーには、この車種を専門とするレンジローバーというブランドがあるにも関わらずだ。その理由を新車発表会で聞いてみた。

“サイズが小さい”ことと“新しく生まれたジャガー”であることを踏まえて、「BABYJAGUAR」(ベイビージャガー)とも呼ばれる「E-PACE」。サイズは全長4,410mm、全幅1,900mm、全高1,650mmだ

先入観をくつがえす2台目のSUV、狙うは新規顧客の開拓

ジャガー「E-PACE」は、ブランド史上最速のペースで販売台数を伸ばすSUV「F-PACE」に続き、同社が市場投入するコンパクトSUVだ。新車発表会に登壇したジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長によると、E-PACEはジャガーらしいスポーティーなキャラクターと実用性を兼ね備える日本市場に適したクルマだという。デザインはジャガーのスポーツカー「F-TYPE」にインスパイアを受けている。クルマの性能についてはこちらの記事を参考にしていただきたい。

左が「F-PACE」、右が「F-TYPE」だ

ジャガー初のSUV「F-PACE」はハイペースで台数を伸ばしているそうだが、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部でディレクターを務める若林敬一氏は、E-PACEがF-PACEを超えて「最も売れるジャガー」になると予想する。

F-PACEより小型で価格もこなれたE-PACEでは、「ジャガーは値段が高くて、大きくて、自分よりも年上の人が乗るもの」というような先入観を持つ人にアピールし、新規顧客を開拓する構え。狙うのは30~40代だが特に30代とし、世帯年収としては1,000万円以下の顧客の割合を6割くらいにしたいとする。また、主に男性が乗るものとの固定観念にも挑戦し、女性比率で4割くらいを目指したいとも若林氏は語っていた。

SUVを作る1つ目の理由は「市場の声」、2つ目は…

では、より具体的に、E-PACEではどのくらいの販売台数を狙うのだろうか。数値目標を掲げることは避けた若林氏だが、ヒントはくれた。まず、日本自動車輸入組合(JAIA)によると、2017年の日本におけるジャガーの新規登録台数は2,614台。販売台数の内訳では同ブランドで最も売れている「F-PACE」と「XE」がトップ争いを繰り広げており、この2モデルで総販売台数の7~8割を売っているという。そして、E-PACEはF-PACEよりも売れるというのが若林氏の見立てだ。

「E-PACE」の日本における受注受け付けは始まっている。3つのグレードのスタート価格は「E-PCAE」が451万円、「E-PACE R-DYNAMIC」が504万円、「E-PACE FIRST EDITION」が738万円だ(左は若林氏、右はハンソン社長)

さて、なぜジャガーがSUVを作るかという冒頭に掲げたテーマに戻ると、まずは「売れるクルマだから」というのが1つ目の理由のようだ。実際のところ、世界的にクルマの需要はセダンタイプからSUVにシフトしているのが現状。日本でもミニバン、セダン、ハッチバックなどからの乗り換えが増えていると若林氏は分析する。シートが高く、荷室の広いSUVは「日本を含め、全世界の顧客が本当に欲しがっている種類のクルマだ」とはハンソン社長の言葉だ。ただし、ジャガーは市場の声に従って、仕方なくSUVを作っているのではない。

SUVでもジャガーライクな走りを追求

ジャガーがSUVに参入した理由の2つ目としてハンソン社長は、「最近は技術がとても進歩して、このタイプのクルマを、ジャガーとしてのキャラクターを保ったまま開発することが可能となった。例えばシャシーやボディなどの部分でだ」と語った。「車高が高いクルマであっても、“ジャガーライク”な走りを実現することができるようになった」として、ハンソン社長はジャガー製SUVの出来栄えに自信を示す。つまり、売れるタイプのクルマを、ジャガーらしさを損なうことなく作れる環境が整ったことが、同ブランドがSUV市場に参入した理由というわけだ。

発表会の会場となった「1 OAK TOKYO」の外に展示されていた「E-PACE」

では、ジャガーらしいSUVの乗り味とはどんなものなのか。若林氏はジャガーの創業者であるサー・ウィリアム・ライオンズ氏の「車とは我々が創造しうるものの中で、最も生き物に近い」という言葉を引き合いに出しつつ、「ジャガーは動物のようなクルマといっているので、乗ってワクワクするとか、楽しいとか、癒されるといった効果も期待できる。E-PACEを選んでもらえれば、人生が豊かになる」とする。

クルマを動物のジャガーに見立てたのか、檻に入っているような感じだ

SUV市場はまさに群雄割拠の様相を呈しており、価格帯やセグメントの分け方で考えた場合、E-PACEはBMW「X1」、ボルボ「XC40」、メルセデス・ベンツ「GLA」、レクサス「NX」、アウディ「Q3」などと競合するというのが若林氏の予想だ。しかし、選択肢が飽和状態のSUVセグメントで、あえてスポーティーな部分を突出させて商品化したE-PACEである以上は、「ポルシェの『マカン』とガチンコ勝負」(若林氏)をしたいという思いもあるようだ。

伝統から革新へ? レンジローバー「ヴェラール」が示す英国SUVの今

伝統から革新へ? レンジローバー「ヴェラール」が示す英国SUVの今

2017.12.21

英国のSUV専門メーカーであるランドローバーの「レンジローバー」に、4番目の車種として「ヴェラール」(VELAR)が今年、加わった。そして今回、遅れて日本市場に導入されたディーゼルエンジン車に試乗し、ヴェラール誕生の意味をようやく理解できたように思う。

レンジローバー「ヴェラール」のディーゼルエンジン車に試乗

レンジローバーで4番目の車種はどんな性格か

今後のレンジローバーにおけるデザインの方向性を示すとされる先進的なデザインと、デジタルテクノロジーを兼ね備えた“ミッドサイズラグジュアリーSUV”という触れ込みで誕生したヴェラールであったが、当初導入されたV6の3リッターガソリンエンジンを搭載した車種に試乗したときは、わざわざ4番目の車種として、ヴェラールがなぜレンジローバーに加わったのか、分かり難かった。

ヴェラールは、見た目のデザインは新しく、確かにこれまでのレンジローバーや、「レンジローバースポーツ」の角張ったスタイルとは違った、やや丸みのある先進的なデザインではあるが、見た目の新鮮さという点では、クーペのようなスタイルを採り入れた「イヴォーク」のほうが独特さは伝わってきた。

「スポーツ」(左)、「イヴォーク」(右)、「ヴェラール」は同じSUVでも雰囲気が異なる

また、スーパーチャージャーという過給器を備えたV型3.0リッターガソリンエンジンがアクセルを全開にすれば猛烈な加速を体験させたものの、全体的に重々しい走行感覚は、レンジローバーやレンジローバースポーツはもちろん、レンジローバーイヴォークとの違いをそれほど印象付けなかった。

ところが、今回試乗した直列4気筒で排気量2.0リッターのディーゼルターボエンジンを搭載した車種は、明らかに新鮮さを覚えさせたのだった。それは、V型6気筒より軽い直列4気筒のエンジンを積んだことで獲得した、軽快さによる乗り味の違いといえるだろう。なおかつ、このディーゼルエンジンは、いわゆるディーゼルらしい振動や騒音が少なく、強い加速をさせた際にも高回転へ伸びやかに回り、壮快な速度感覚を味わわせたのであった。

この軽快さは、市街地の角を曲がり、あるいは車庫入れをするといった日常の運転の中でも扱いやすさをもたらしてくれる。

つるりとした先進的な外観と、ディーゼルエンジンによる新鮮な走りが味わえるヴェラール。その上で、イギリスの高級車である「ジャガー」などからも感じられる、英国風の派手過ぎず目に心地よい色使いのインテリアは、気持ちを豊かにしてくれた。改めて室内を見回せば、簡素でありながら上質な作り込みや造形によって、心が癒されるのであった。

ブリティッシュなスタイルのインテリアから上質さを感じた

直列4気筒エンジンを得て本来の味を発揮

そもそも、レンジローバーの成り立ちは、日常的に乗る「ロールスロイス」や「ジャガー」と同じように、英国の貴族たちが彼らの領地を見回るための頑丈な四輪駆動車として誕生したと伝えられる。米国の「ジープ」と同じように、悪路を走るために生まれた四輪駆動技術を、より一般の人でも扱いやすくし、車体はアルミニウムで作って軽く仕上げられた。これが、米国のビバリーヒルズに住む人たちにも、高級セダンとは違うお洒落なクルマとして受け入れられ、今日のSUVブームの発端となっている。

そうした流れを汲むレンジローバーに加わったヴェラールは、軽量な直列4気筒エンジンを得て、目指した本来の味を発揮できるようになったのではないかと思う。2018年2月には、同じ直列4気筒のガソリンエンジン車も日本に届けられるようになる。

2018年2月には直列4気筒のガソリンエンジン車も日本に導入となる「ヴェラール」

ヴェラールは2017年9月の発売から約400台の受注を得ている。その多くは「50歳代以上のお客様」であると、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部、佐藤健プロダクトマネージャーは解説した。一方、当初の狙いとして想定した、イヴォークからの乗り換えは意外に少なかったともいう。

かつて、「いつかはクラウン」という言葉があったように、人生と共にクルマも出世して、大きな車種を選ぶといった買い方は、影を潜めはじめているのかもしれない。

英国ブランドに日本人を惹きつける魅力はあるか

また、一般的に輸入車ではドイツ車人気が続いており、英国車の存在を知る人が、どれほど若い世代にあるだろうかとの懸念も指摘される。

そもそも、英国に関する情報が日本では減っているように感じる。そうした中で、ヴェラールを購入する50歳代以上というのは、まさしくビートルズの影響や、その後1970~80年代のデヴィッド・ボウイ、80年代のカルチャークラブ、ワム、デュラン・デュランなどの音楽に親しんだ世代ではないだろうか。あるいは、アイルトン・セナが人気となったF1に熱狂した人は、ほとんどのF1チームが英国を本拠地とすることを知っていたはずだ。

英国ブランドに魅力を感じる日本人が以前より減っていそうなことが、「ヴェラール」を含む英国車にとって懸念材料ではある

今日の英国は、EU離脱や王室の話題が日本に伝えられる程度で、それもダイアナ妃が亡くなる前とは、情報量が比較にならないほど少なくなっているだろう。英国文化やファッションの情報も多くはなく、英国を意識したり、英国に魅了されたりする機会が減っているのではないだろうか。

引き算の美学が現代人の好みにマッチ?

それでも、レンジローバーイヴォークは、500万円台からの価格や、SUVでありながらコンバーチブル(オープンカー)もあるなど、ドイツ車一辺倒では飽き足らない人の関心を呼んだ。続いて、簡素なデザインの美しさを追求する「引き算の美学」のヴェラールは、同じように引き算の美学を語るマツダの「魂動デザイン」や、米国の電気自動車(EV)テスラのような、新しいクルマの美しさの在り方に通じ、惹きつけられる人はあるだろう。

ランドローバー初となるドアパネル格納式のデプロイアブル・ドアハンドル。ドアをロックするとハンドルが引っ込むので、車体の側面から凹凸がなくなる

独自性のある装備としては、クルマの中に貴重品を残したまま身軽に車外で活動することを助けるリストバンド式のアクティビティキーが挙げられる。ジャガー・ランドローバーの他にはない機能であり、一度使うと手放せなくなるのではないだろうか。

クルマに荷物を置いたまま、ジョギングやサーフィンなどを楽しむのに最適なリストバンド式アクティビティキー

ヴェラールは、存在を知れば選択肢の1つになりうるクルマなのではないだろうか。そして実際に運転してみると、今回の直列4気筒ディーゼルターボエンジン車のような、新鮮なクルマとしての乗り心地も体感することができる。

米国のキャデラック「XT5」も、いわゆる昔からの“アメ車”と言われてきた時代のクルマとは違った、軽妙さを備えた快適なSUVであった。国柄の違いはあるにしても、新たな時代を切り拓くクルマとして、レンジローバーヴェラールとキャデラックXT5は、いずれも心に響く何かを持った新感覚のSUVである。