「ヤマハ発動機」の記事

「Z900RS」だけが原因? レトロデザインのバイクが増えている理由

「Z900RS」だけが原因? レトロデザインのバイクが増えている理由

2018.04.28

1960~70年代のデザインを今に蘇らせたような姿のバイクが、新型車として登場することが目立ってきた。なぜこうしたバイクが増えてきたのだろうか。この傾向はすべてのクラスについて言えることなのか。販売台数やユーザー層のデータを見ながら考えた。

なぜレトロなデザインのバイクが増えているのだろうか(画像はカワサキ「Z900RS CAFE」)

ガラリと変わった小型二輪の販売状況

全日本軽自動車協会連合会(全軽自協)が発表している二輪車の月別販売台数で、去年の暮れから数字が激変している。

我が国の二輪車は、50cc以下が原付一種、51~125ccが原付二種、126~250ccが軽二輪、251cc以上が小型二輪に分かれており、運転免許は原付一種が原付、原付二種は普通二輪小型限定、126~400ccが普通二輪、401cc以上が大型二輪になっている。微妙な違いがあるのは、免許は道路交通法、登録は道路運送車両法と異なる法律でルールが決まっているためだ。

前述の全軽自協が統計を取っているのは、このうち軽二輪と小型二輪だ。後者で昨年12月以降、状況がガラッと変わった。日本には本田技研工業(ホンダ)、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業(カワサキ)の4メーカーがあり、このクラスではホンダが1位になることが多い。ところが昨年12月以降は、カワサキがトップをキープしている。

カワサキの人気上昇を牽引する「Z900RS」

最も驚くのは前年同月比の数字で、昨年12月以降、カワサキの伸び率は軒並み200%を超えている。つまり、昨年の倍以上を売っているのだ。おかげで2017年度は、小型二輪全体でもこの5年間で最高の販売台数を記録した。伸び率のトップはもちろんカワサキで136%をマークした。

なぜここまで変わったのか。かつての名車「Z1」を彷彿とさせるカワサキ「Z900RS」が昨年の東京モーターショーで発表された効果だろう。

「Z900RS」の登場でカワサキの状況は変わった

カワサキは1989年にも「Z1」を彷彿とさせるスタイリングの「ゼファー」シリーズ、5年後には“ローソンレプリカ”の愛称を持つ「Z1000R」のイメージを継承した「ZRX」シリーズを登場させ、1998年には60~70年代の名車「W」シリーズの復刻版と言える「W650」を発表するなど、往年の名車のエッセンスを今に蘇らせた車種を送り出しヒットにつなげてきた。でも、「Z900RS」ほどの人気ではなかったという記憶がある。

懐かしさだけではない「Z900RS」人気の理由

なぜ「Z900RS」の人気がここまで高まっているのか。理由を自分なりに考えれば、アドベンチャーツアラーの記事でも書いたように、まず背景として、大型バイクのライダーは高齢化し、マシン選びはスピードよりも乗りやすさ重視に変わりつつある。そんな中、彼らが若い頃に憧れたマシンに乗りたいと考えたとしても、近年「Z1」の中古車価格は高騰しており、程度の良い個体だと200万円以上の値がつく状況にある。そこに登場した「Z900RS」にライダー達が注目したのではないだろうか。

しかも「Z900RS」、見た目は懐かしさを感じるけれど中身は最新だ。エンジンは「Z1」や「ゼファー」のような空冷ではなく、モダンなロードスポーツ「Z900」と基本的には共通の水冷並列4気筒を搭載する。電子制御による安全装備も、ABSとトラクションコントロールを備えており平均以上と言ってよい。旧車のような不安感はなく、逆に安心感を抱かせる内容だ。

見た目はレトロでも「Z900RS」の中身は最新だ

もうひとつ、レトロなデザインの新型車が登場しているのは外国車が作った流れでもあり、ベテランライダーたちが気になっていたところにカワサキから「Z900RS」が登場し、決断に至ったというケースもありそうだ。

欧米のレトロデザインバイクも選択肢が充実

バイク人気について書いた記事の中で、二輪車の世界は日本メーカーが主役であり、欧米のブランドは昔から使っているエンジン型式を核とした、味で勝負する車種が中心になっていると書いた。

米国のハーレーダビッドソンはその代表だろう。懐かしさを感じるデザインに、大排気量のV型2気筒エンジンを組み合わせ、ゆっくり走っても満足できる車種が中心となっている。

ハーレーダビッドソンの「ロードキングスペシャル」

英国のトライアンフも、モダンな車種と並行して、1959年にデビューした空冷並列2気筒「ボンネビル」の復刻版を2001年に発表。水冷化された近年はモダンクラシックシリーズとしてバリエーションを増やしている。

トライアンフのモダンクラシックシリーズ

さらに2013年には、ドイツのBMWが1970年代の高性能車「R90S」に範を取った「R nineT(ナインティ)」シリーズを登場させた。イタリアのドゥカティも、1960年代に米国で人気を博したオフロードも走行可能なスタイルを、2015年に昔と同じ「スクランブラー」の名前で復活させた。

左がBMW「R nineT」、右がドゥカティ「スクランブラー」

アドベンチャーツアラーについて書いた記事では、ライダーの高齢化が日本だけでなく欧州でも進んでいることにも触れた。昔から変わらぬスタイルを貫いているハーレーやトライアンフはともかく、近年、BMWやドゥカティがレトロデザインのモデルを送り出したのは、現地の事情も関係しているだろう。

様相を異にする軽二輪カテゴリー

しかし、このレトロデザインブーム、カテゴリー別では小型二輪に限った現象だと思っている。同じバイクでも軽二輪のカテゴリーは、やはり前年度比で販売台数を伸ばしているものの、レトロデザインはほとんどないからだ。

メーカー別に前年度比の販売台数を見ると、ホンダの149%、スズキの169%が目立つ。スズキは150ccの「ジクサー」など、安価な車種をいくつか送り出したことが効いているようだ。一方のホンダは、クラストップの38psエンジンを積み、価格も75.6万円と飛び抜けた「CBR250RR」が注目されている。

スズキの「ジクサー」

ホンダによれば、この「CBR250RR」の購入者の約半数は、驚くことに20~30歳代だという。ライバルのヤマハ「YZF25R」も若いライダーが多いそうだ。

ユーザー別の商品開発が可能な小型二輪と軽二輪

日本自動車工業会が4月に公表した2017年度二輪車市場動向調査によると、原付を含めたバイクの購入理由として多く挙がったのは、「身軽に動ける」「移動の時間が短縮できる」「自転車より楽」「燃費が良い」などだった。

昔はバイクに乗りたい理由として、スピードや爽快感という理由が多かったという記憶があるけれど、現在は機動的かつ経済的という、自転車に近い理由で選ぶ人が多くなったということになる。

ホンダの「CBR250RR」

いずれにしても軽二輪と小型二輪とでは、ユーザー層が異なるようだ。ただ、車検がないなど維持費が安い軽二輪が若者向け、輸入車の選択肢も多い小型二輪がベテラン向けというのは理にかなっていると思うし、ユーザーの好みに特化したものづくりができるので好ましいのではないかという気もする。

警察庁は最近、原付二種AT車の教習所での技能教習を最短3日間から2日間に短縮する検討を進めるとともに、二輪車用駐車場の整備を働きかけ、道路状況によっては駐車禁止規制を緩和していくとの姿勢を示している。今までがバイクに対して厳しすぎた反動とも取れるけれど、これらも若者をバイクの世界に呼び込むきっかけになりそうだ。

“クルマ離れ”より厳しい状況は本当か、バイクの今と未来を考える

“クルマ離れ”より厳しい状況は本当か、バイクの今と未来を考える

2018.04.05

毎年3月、大阪と東京でモーターサイクルショーが開催される。クルマ以上にユーザー離れが激しいといわれる二輪業界だが、来場者数は少しずつではあるが増えている。海外事情やクルマ業界との違いを考えながら、「バイクの魅力とは何か?」をもう一度見つめ直してみた。

クルマ以上にユーザー離れが進んでいるといわれるバイク業界だが、その実態は(画像はカワサキモータースジャパンの「Z900RS CAFE」)

来場者と車両の距離が近いショーの姿

筆者はジャーナリストとしてはクルマがメインとなっているが、運転免許は四輪車より先に二輪車を取得しており、この仕事に関わる契機になった学生時代のアルバイトも、バイクの書籍の編集手伝いだった。

その後ももっぱら趣味として二輪車に接し続けているので、業界の動向も気になっている。クルマ以上にユーザー離れが厳しいといわれるバイクだが、人気は底を打って上昇に転じているように感じる。

それを実感する場の1つが、毎年3月に大阪と東京で開催される「モーターサイクルショー」だ。筆者は東京在住なので、東京ビッグサイトで開催される後者にここ数年通っているが、年々盛り上がりが高まり、しかも子供や女性など、来場者の層も幅広くなっていることを実感している。

東京モーターサイクルショーで盛り上がった東京ビックサイト。来場者の特徴の1つは“熱心”なことだろう

統計を見ると、予想は当たっていた。過去4年間の東京モーターサイクルショーの来場者は少しずつ増えており、今年は14万6,823人を記録していたのだ。開催が3日間であることを考えれば相応の集客力ではないだろうか。

モーターサイクルショーで毎回感じるのは、来場者と実車の距離の近さだ。多くの市販車に実際にまたがることができることが効いている。

会場では、実際にまたがってみる来場者の姿を多く見かけた。「ハンドルが拳1個分、奥だったら…」など、バイクの購入に向けて品定めをしているようなせりふも耳にした(画像は本田技研工業の「スーパーカブ C125」)

クルマが展示されるモーターショーも、市販車であればドアを開けて運転席に座ったりする機会はあるけれど、「またがる」という行為は密着度がはるかに上だし、エンジンやサスペンションといったメカニズムを間近に観察できるのもモーターサイクルショーならではだろう。

バイク乗りに厳しい日本の現状

バイクのユーザー離れはクルマ以上に厳しいと前に書いた。それは、クルマ以上に理由がたくさんあるからだ。筆者が考えるだけでも「3ない運動」「原付1種(50cc以下の第1種原動機付自転車)の道路交通法厳格化」「電動アシスト自転車の登場」「駐車取り締まりの激化」と4つが思い浮かぶ。

3ない運動は1970年代以降、事故減少や暴走族撲滅を狙って多くの高校で実施していた校則で、「免許を取らない」「買わない」「乗らない」という内容だった。二輪免許の取得可能年齢は16歳以上だが、これにより、事実上は四輪車と同じ18歳以上になり、バイクを体験しない人が多くなった。

若いうちにバイクを体験しづらい状況が日本にはある

原付1種は1986年、ヘルメットの着用と多くの交差点での2段階右折、つまり自転車と同じような右折方法が義務付けられた。ヘルメット着用は安全性を考えれば理解できるが、2段階右折は交差点通過に時間を要することになり、不便に感じた。

そして1993年になると、ヤマハ発動機が世界で初めて電動アシスト自転車を発売。時速24キロまでモーターがアシストすることにより得られる性能は、制限速度が時速30キロに据え置かれた原付1種と大差なく、しかもヘルメットなしで気軽に乗れることから、かなりのユーザーが移行した。

電動アシスト自転車の登場は原付1種にとって脅威だった(画像は本田技研工業「モンキー125」)

さらに21世紀になると、それまで路肩や歩道に気軽に停めていた車両を、警察庁が駐車違反として厳格に取り締まることになった。しかし当時、二輪車用の公共駐車場は皆無に近い状況。目的地でバイクを停められないとあっては乗ろうという気持ちにならず、バイクを手放す人が増えた。

世界で二輪車の売上高がもっとも大きいのは本田技研工業(ホンダ)であり、2位はヤマハだ。つまり、日本は産業面では二輪王国なのに、利用面ではむしろ冷遇に近い状況なのである。

機動性の高さから実用目的でバイクに乗る人々

筆者が訪れた海外の都市でここまでバイクに厳しいのは、エンジンで走る二輪車の走行が禁止されている中国の上海ぐらい。逆に、タイのバンコクやフランスのパリでは、驚くほど多くのバイクを見かける。

海外では多くのバイクを見かける(画像はドゥカティの「Panigale V4」)

道端で観察していると、メインは趣味ではなく、実用としてバイクに乗る人々であることに気付く。機動性を評価して選んでいるのだ。ゆえに、バイクタクシーなる交通手段もある。1~2人で移動するなら、道路占有面積がクルマより小さいので渋滞解消に寄与するし、地球温暖化防止にもなろう。

大都市で生活する人にとっては参考にしていいと思うこの考え方が、少しずつ日本にも浸透してきているような感じがする。ここ数年、日本で売り上げを伸ばしてきたのが51~125ccの原付2種であり、主力がスクーターだからだ。

50ccという排気量を現在も主力としているのは日本ぐらいで、グローバルでは125ccが主流だ。大量生産によるコスト低下も期待できることから、国内向け車種も充実しつつある。警察も原付2種の免許取得を容易にするなどしており、主力が50ccからこちらに移行しつつあるという流れだ。

グローバルでは125ccが主流だ(画像はプジョーの125ccモデル「DJANGO」)

その上の126~250cc、軽二輪(二輪の軽自動車)も底を打って伸びはじめた。四輪の軽自動車と違って車検がないことに加え、アジアでは上級車種になる本格的スポーツモデルが充実していることが魅力だ。

こちらには若いユーザーも注目しているようで、ホンダやヤマハのスポーツモデルのユーザーの中心は10~20歳代と、高齢化が懸念される近年のバイク市場では異例と呼べる結果を出している。

操る喜びを前面に、クルマに比べ割安なところも魅力

クルマのニューモデルの多くが電動化や自動化、情報機器化を前面に押し出し、走る楽しみが重視されなくなりつつある中で、バイクは今も、操る喜びを前面に押し出した車種が多い。これが新鮮に映っているのではないかという気もする。

しかも、高性能スポーツカーともなれば1,000万円以上が当然という四輪車に対し、二輪車で同等の加速性能を持つ車種ならば、10分の1くらいの価格で手に入るという割安感も魅力に数えられるだろう。

操る喜びを前面に押し出す車種の多さがバイクの特徴(画像はスズキ「SV650X ABS」)

スポーツカーとは違う日本VS欧州の図式

前述したように、産業としての二輪車では日本車が主役である。これが四輪車との状況の違いに結び付いていると思っている。

欧州のものづくりは付加価値を与えて高価格で販売するのが得意で、それがスポーツカーの世界にも反映している。一方の日本は、安くて壊れず高性能が持ち味。同じ価格で脅威的なパフォーマンスを実現し、世界を驚かせてきた。

世界で最初に時速200キロ、300キロを実現した二輪の市販車は、いずれも日本から出ている。300キロのときは欧州勢が脅威に感じ、危険という理由でこれ以上の高性能車の販売を認めないという姿勢に出てきた。

ちなみに四輪車では欧州が先に300キロを実現したが、彼らが危険性に言及したことはないし、日本が文句をつけたこともない。

欧州勢にとってみれば、これが結果的に自分たちのものづくりを制限することにつながった。日本車を超える高性能車を高価で販売するという、四輪車と同じ図式が描きにくくなったのだ。よって現在、多くの欧米ブランドは昔から使っているエンジン型式を核とした、味で勝負する車種が中心になっている。

バイクにおける日本メーカーと欧米勢の戦いも面白い(画像はトライアンフ・モーターサイクルの「ボンネビル ボバー ブラック」)

日本車と外国車が優劣を競わず良いすみ分けができているし、外国車であっても飛び抜けて高価な車種は少ないから、同列比較もできる。機動性にも長けているけれど、趣味的にも好ましい。それがバイクの世界なのではないかとモーターサイクルショーを見ながら感じた。