「マーケティング」の記事

gooが目指す、誰でも「AIチャットボット」を作れる近未来

gooが目指す、誰でも「AIチャットボット」を作れる近未来

2019.04.17

人手不足を背景に「チャットボット」に注目が集まる

NTTレゾナントがAIを活用した新サービスを発表

チャットボットを活用した新たなビジネスモデルの構築へ

4月16日、NTTレゾナントはAI技術を活用したチャットボットの新サービスを発表した。ポータルサイトであるgooの技術を背景に、従来の法人向けのサービスを強化しつつ、新たに個人向けサービスにも参入する。

gooのAI技術を用いたサービスをBtoB、BtoC向けに展開

日本の人手不足などを背景に、ユーザーの問い合わせにAIが答えるチャットボットが大きく注目されている。その中でNTTレゾナントは既存業務の効率化にとどまらず、新たな付加価値の提供にチャットボットを応用していく構えだ。

「本音」を引き出す“チャットボットならでは”の魅力

チャットボットは、メッセージに反応して自動的に返事を返してくれる会話プログラムだ。かつては単純な受け答えしかできなかったが、ここ数年、機械学習などのAI技術を用いて学習を積み重ねることで、急速に進化している。

この分野において、検索エンジンやQ&Aサイト蓄積されたデータに基づく「gooのAI」技術を保有するNTTレゾナントは、企業向けにAI技術を用いたチャットボットをセミオーダーで提供するサービスを展開してきた。

たとえば日本テレビのドラマ向けには、登場人物を模したAIキャラクターとLINE上でチャットを楽しめるサービスを提供した。AIはドラマの内容を学習することで、設定に沿った受け答えができるという。

日本テレビ『家売るオンナの逆襲』のチャットボットサービス

さらに今年の3月1日には、日本航空が就活生向けのAIチャットボットにgooのAI技術を採用した。実際のOB訪問では聞きにくい質問でも、AIが相手なら気軽に聞ける。日本航空は個人を特定しない形でデータを分析し、就活生たちの「本音」を探れるというわけだ。

日本航空による「JAL就活AIチャットボット」

さらにNTTレゾナントは、チャットボットを販促やマーケティングに活用する「対話AI型Web接客支援プラン」を発表。消費者と雑談しながら商品提案や販売につなげていく方向性を打ち出した。

その背景には、これまでチャットボットは問い合わせ業務の効率化など「守り」を主体に活用されてきたが、今後はニーズの発掘やアップセルなど「攻め」のツールとして訴求したいとの狙いがあるという。

チャットボットは「守り」から「攻め」のツールに

個人向けサービスは成り立つか

次に、NTTレゾナントはコンシューマー向けのサービスも発表した。gooのAI技術を活用したチャットボットをエンドユーザーが簡単に作れる「goo botmaker( グー ボットメーカー)」だ。

goo botmaker

これまで企業向けのチャットボットは、NTTレゾナントのAI技術者が開発してきた。goo botmakerは、これをエンドユーザーに開放するものだという。高度な作り込みは難しくなるが、多くのユーザーの集合知を利用して面白いボットを作り出す仕組みだ。

将来的には家族やペット、架空のキャラクターなどを自由にチャットボット化することも視野に入れる。ただ、こうしたサービスを広く提供するには権利関係などの課題が多いという。同社はまず、この取り組みの第1弾として6月公開予定のアニメ『フレームアームズ・ガール』とのコラボレーションする。

アニメ『フレームアームズ・ガール』に登場するキャラクターをチャットボット化する

プロジェクト開始にあたって、NTTレゾナントはチャットボットに学習データを入力する「研究員」を100名募集。さらにそこから5,000円の参加費を徴収することで、ビジネスモデルやサブスクリプション化の可能性も検証するという。学習データは承認制にすることで、アニメの世界観を守っていく構えだ。

実際に100名のユーザーで魅力的なチャットボットを作れるかどうかは、手探りの部分が多い印象だ。だが、最近ではVTuberの人気が高まっているように、リアルとバーチャルの境目で活躍するキャラクターは増えている。gooのAI技術により、こうしたキャラクターたちが新たな進化を遂げる可能性が見えてきた。

バズらせ屋メルカリが「新元号の発表」を見逃すワケがなかった

バズらせ屋メルカリが「新元号の発表」を見逃すワケがなかった

2019.04.02

新元号発表の2時間後、メルカリが新元号イベントを実施

「令和」の文字をプリントしたTシャツを配布

このプロモーションの目的は? 仕掛け人に話を聞いた

昨年末、リアル店舗のような折込チラシを配布してSNSで“バズった”メルカリ。これまでも、何度も巧みなプロモーションを仕掛けてきた同社が「新元号の発表」という国民的イベントで黙っているワケがなかった。

メルカリは新元号の発表後間もなく、渋谷ストリーム前にてイベントを実施した

「速さ」で注目を奪った、巧みなプロモーション

4月1日14時、新元号が「令和」と発表されてからわずか2時間半後、国民の興奮冷めやらぬ頃に同社は、渋谷で「メルカリ新元号発表イベント」を実施した。

イベントで行われたことは2つ。まず1つ目は、「美しすぎる書道家」こと涼風花氏の書道パフォーマンスだ。力強く「令和」の文字を書くそのパフォーマンスは、通行人の目をくぎ付けにした。

書道パフォーマンスを行う、書道家の涼風花氏

もう1つは、事前に涼氏が書いていた「令和」の文字をプリントしたTシャツの無料配布だ。この「令和Tシャツ」は元号の発表後、急ピッチで大勢のスタッフによって制作され、合計500人に渡された。

パフォーマンスに足を止めた人たちがTシャツを受け取るための列に並び、またそれを見た人が後列に続く。時間が経つごとに人が集まってきて、会場には長い行列ができていた。

「令和」プリントTシャツの受け取り時には人が多く集まりすぎて、ちょっとしたパニック状態に

新元号発表直後ということもあり、このイベントには多くの報道陣が参加した。さらには渋谷の通行人を巻き込み、SNSでの発信にもつなげさせるという、メルカリの上手なプロモーションを見せつけられた。

このイベントは、どのように企画され、何を狙って行われたのか。イベント終了後、この企画の担当者であるメルカリ マーケティング部 マーケティングスペシャリストの星賢志氏に話を聞いた。

メルカリ マーケティング部 マーケティングスペシャリストの星賢志氏

服が情報を伝える、再利用可能な「新しい号外」

――今回のイベントの狙いはどういったものだったのでしょう?

星賢志氏(以下、星):日本中が盛り上がる新元号の発表を、メルカリがいち早くお祝いしよう、というのが今回の企画でやりたかったことです。

涼さんの巨大な書き初めは、新しい時代が始まることを示したいという想い、そしてTシャツの配布は、これまでなかった「号外の新しい形」を提案したいという想いのもとに実施しました。

配布された「令和」Tシャツ

――号外の新しい形とは?

星:今まで「号外」というと、主に新聞などの紙媒体で配布されることが多かったかと思います。しかし、それらは渡されたあとには使い道がなくて、ゴミになってしまうことが問題でした。

そこで今回メルカリが配布したのは、新元号を伝えるための情報をTシャツにプリントした「再利用可能な号外」です。Tシャツを着たり、写真を撮ったりして楽しめるので、受け取ったあともゴミになりません。

また、このプロモーションには、当社が提供する「メルカリ」のサービスのメッセージも込めています。メルカリによるCtoCのマーケットプレイスは、本来価値のなくなったものをゴミとして捨てるのではなく、次の人に渡す、という仕組みを作り出しています。

Tシャツを受け取った人の中には、その場で着用して写真を撮る人もいた

――元号の発表後に、すぐ配布用のTシャツの制作に取り掛かったとのことですが、イベントの準備時間が短く、トラブルもあったのではないですか?

星:もともと、「新元号が発表されてすぐに動く」という前提で組んだ施策だったので、大きな問題はありませんでしたね。むしろ、イベント運営側の「ドタバタ」を絵にできたのも、面白かったんじゃないでしょうか。

元号の発表後、数十人のスタッフが1枚1枚のTシャツに「令和」の文字をプリントする様子も、メディアに公開されていた

メルカリは、世間を投影するプラットフォームに

――イベントを終えたばかりで、まだ確認できていないかと思いますが、元号発表直後から、メルカリで「令和」関連の商品が売れていることが話題になっています。こうした盛り上がりについてはどう捉えていますか?

星:メルカリでは昔からよく、世間の話題を投影するような現象が起こってきました。例えば、大坂なおみ選手が全豪オープンで優勝した時には、関連グッズが多く売れたり、検索されたりするようになりました。

そういった現象は、メルカリが世の中に浸透している証でもありますので、今回、メルカリ上でいろんな商品のやり取りがなされていることは嬉しいですね。

――最後に、イベントを実施した今の心境を教えてください

星:多くの方にイベントに来て頂き、非常にありがたく思います。

それと同時に、「新しい元号」「新しい時代の始まり」に多くの人が注目していることを客観的に感じられました。令和はいい時代になればいいなぁと、一個人として思いますね。メルカリでも、「新しい時代の日常的なマーケットプレイス」として、これからもさまざまなことに挑戦し続けたいと思います。

メルカリの存在感は、「新しい時代」でも増していきそうだ
全業界に迫る「デジタル化」の波―― 救世主はAdobe?

全業界に迫る「デジタル化」の波―― 救世主はAdobe?

2019.03.27

ラスベガスで開催された「Adobe Summit」で語られたこと

なぜ今「デジタルマーケティング」の必要性が増しているのか

企業は「デジタルトランスフォーメーション」を避けられない

米Adobeは、米ネバダ州・ラスベガスで3月26日~28日(現地時間)の3日間に渡り、同社のデジタルマーケティングプラットフォーム「Adobe Experience Cloud」に関するプライベートイベント「Summit」を開催している。

「Summit」基調講演時の様子

開幕日の26日には、Adobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏による基調講演が行なわれ、「Adobe Experience Platform(AXP)」の一般提供を開始することを明らかにした。

AXPは、Adobe Experience Cloudを支える基盤であり、複数のサービス(Creative Cloud for Enterprise、Analytics Cloud、Advertising Cloud、Marketing Cloud、Document Cloud for Enterprise)間でユーザーIDやプロフィールやデータ、コンテンツなどを共有するための仕組み。

従来は同じAdobe Experience Cloudの傘の下で提供されてきたサービスであっても、別々のサービスとして独立していたが、AXPによって各サービスが本当の意味で1つに統合される。

基調講演の中でAdobeは、家電小売企業のBest Buy、およびSunTrust銀行の事例を紹介し、これまでデジタルマーケティングと無縁だった企業であっても、Adobe Experience Cloudを活用すれば、デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げることができ、顧客に各種のデジタルサービスといった新しいユーザー体験を提供できるようになると強調した。

デジタルマーケティングの成長は加速する

Adobe Summitで講演するAdobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏

今、世界的に非常に熱いマーケティング手法として注目を集めているのが、インターネットを活用した「デジタルマーケティング」と呼ばれる手法だ。

CRM(顧客関係管理)、eコマース(電子商取引)、デジタルキャンペーン、ソーシャルメディアの利用など複数の手段を用いて、インターネットやクラウドを活用して顧客に対して各種のマーケティング活動を行うことで、企業の売り上げなどを伸ばす手法のことを指している。

例えば、電子メールアドレスに対してその電子メールの所有者が興味を持つような内容のメールを送って販売につなげたり、わかりやすいところではAmazonのようなECサイトで購入履歴からユーザーが欲しいと思われる商品をレコメンドしたりする。その裏側で動いているのがデジタルマーケティングの支援ソフトウェアということになる。

そうしたデジタルマーケティングは、IT系の企業で利用されてきた手法で、一般の企業ではあまり注目されてこなかった。しかし、この10年で状況は一変した。スマートフォンの普及率があがり、ほとんどの人がスマートフォンを持っているという状況が到来したのだ。今では、従来型の企業にとってもデジタルマーケティングは大きな効果があると考えられるようになってきている。

日本でもそれは同様で、IDC Japanによれば、2017年の日本でのデジタルマーケティングを支援するソフトウェアの市場規模は97億6,600万円。2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は5.5% になる見通しで、2022年には127憶7,700万円の市場規模に成長する見通しだという。

また、このうちクラウドサービスの形で提供されるものの成長率が高く、年間平均成長率24% で推移し、2022年の市場構成比43% に達すると予想されている。

Adobe Experience Cloudがもっと便利に

そうしたデジタルマーケティングのクラウドサービスは複数の企業から提供されている。その中でも代表的なのがSalesforceとAdobeだ。

CRMに強いSalesforceがデジタルマーケティング向けのツールへと発展するのは自然な流れだが、Adobeは元々、クリエイター向けツールをリリースする企業だった。そのAdobeがこうしたデジタルマーケティングの市場へと参入するのは意外に思われるかもしれない。

その背景には、デジタルマーケティング向けに利用するアセット(静止画や動画など)を編集するツールとして、AdobeのCreative Cloudが利用されていることがある。また、Adobe Experience Cloudはそうしたクリエイターツールと親和性が高いツールとして発展して採用されているという事情もある。

Adobeは年々Adobe Experience Cloudを拡張し続けており、さらに競合となる企業の買収などによりサービスのポートフォリオ(製品ラインナップ)を増やしつつある。昨年はMagento(マジェント)とMarketo(マルケト)の二社を買収し、それぞれの製品である「Magento Commerce」と「Marketo Engage」をAdobe Experience Cloudに統合している。

Adobe Experience Cloudの仕組み、一番下のレイヤーにAdobe Experience Platform(AXP)がある。ここにMagentoも今年から加わっている
昨年Adobeが買収を発表したMarketoもAdobe Experience Cloudに統合された

Adobe Experience Platform(AXP)の構想は、昨年のAdobe Summitで明らかになったものだ。このAXPが基礎となり、Adobe Experience Cloudが統合する複数サービスで、顧客のID、プロフィール、データ、コンテンツなどを共通化する。

Adobe Experience Platform(AXP)が一般提供開始へ

Adobe Experience Cloudでは古くからあるサービスと買収などで得た新サービスなどを徐々に統合してきたため、これまでは共通化が十分でなく、同じ傘の下で動くサービスであっても、統合したメリットのすべてを得ることができていなかったのだ。

そのAXPが今年のSummitにて、ついにベータ版から抜け、正式に一般提供を開始することが明らかになったわけだ(提供開始時期はリージョンにより異なり、まずは米国で開始予定)。これにより、AdobeがAdobe Experience Cloudで本当に実現したかった、真に統合された利便性の高いサービスが展開できるようになる。

破綻寸前だった家電小売を救い、銀行のDXを推進

今回、AdobeはAdobe Experience Cloudを利用したユーザー企業の事例をいくつか紹介した。その中でも印象的だったのはBestBuyとSunTrust銀行の事例だ。

BestBuyは米国の家電小売企業で、米国でのヤマダ電機やヨドバシカメラであると言えば理解しやすいだろうか。以前は家電の販売で全米1位の企業だったが、近年はAmazonなどに押されて、実店舗に展示している商品がeコマースのショールームとなる「ショールーミング」という現象に悩まされ、一時は経営難がささやかれたほどだった。

「その当時は本当に厳しかったよ」と苦笑しながら登場したBest Buy CEO ヒューバート・ジョリー氏は、Adobe CEOのサンタヌ・ナラヤン氏と一緒にBest BuyがExperience Cloudでどう変わったかを説明した。

例えばExperience Cloudの導入により、年間200ドルで家電の設定などを行なうサポートサービスを効果的に提供できるようになり、顧客との結びつきが強化できた。ショールーミングで破綻寸前だった同社がデジタル変革で大きく変わったことをアピールし、今後は、AXPをBest Buyのデジタルマーケティングの基盤として使っていく意向も述べた。

Best Buy CEO ヒューバート・ジョリー氏(左)とAdobe CEO シャンタヌ・ナラヤン氏(右)

一方のSunTrust銀行は、米国の中東部で支店を展開している銀行で、デジタルマーケティングにExperience Cloudを利用している。PC向けのWebサイトだけでなく、モバイルアプリでもExperience Cloudを利用して効率よく提供しているという。

SunTrust銀行ではデジタルマーケティングにAdobe Experience Cloudを採用
モバイルアプリにも対応している

伝統的大企業でさえデジタルマーケティング、況や――

SunTrust銀行のCMO(最高マーケティング責任者)のスーザン・ジョンソン氏は、実はかつてはエンジニアで、ITに深く関わっていたという。

この事が示していることは、既に伝統的な企業のマーケティング担当者でさえ、デジタルに精通していなければ、売り上げを伸ばすことはできない。徐々にそうした世界になってきているということだろう。

SunTrust銀行 CMO(最高マーケティング責任者) スーザン・ジョンソン氏(左)とAdobe CTO(最高技術責任者)のアベイ・パラスニス氏(右)

今後、音楽業界や動画業界が経験してきたようなデジタル化が、従来のITがターゲットにしたような世界から、新聞、テレビ、そして自動車といったこれまではデジタルとは無縁だったような企業にも広がっていくと考えられている。

そうした時が来てからデジタルマーケティングに取り組んで行くのか、それともまだ始まりの段階で積極的に取り組んで行くのか。2社の事例は、そうした問いを否応なく伝統的な企業に突きつけている、そう言えるのではないだろうか。

ナラヤン氏は「すべての組織にとって顧客のユーザー体験を管理していくことは必須になっていくだろう」と述べ、同社のAdobe Experience Cloudがその助けになるとまとめて講演を終えた。