「マーケティング」の記事

原宿「Galaxy」ビルで見た、サムスン日本戦略の変化

原宿「Galaxy」ビルで見た、サムスン日本戦略の変化

2019.03.15

サムスンが常設型ショーケース「Galaxy Harajuku」開設

高東眞CEOに聞く、変革期のスマホ市場、日本での成長戦略は?

5G移行と分離プラン、今後は「ブランド力向上」が不可欠に

サムスン電子ジャパンが常設型ショーケース「Galaxy Harajuku」を原宿にオープンした。最新スマホやVRコンテンツを楽しめる施設として、同社が展開するものとしては世界最大級となっている。

サムスンのショーケース「Galaxy Harajuku」がオープン

オリンピックの公式スポンサーでもあるサムスンは、2020年の東京五輪でも存在感を示している。日本でも5Gサービスの開始に伴い大きな変化が予想されるスマホ市場だが、今回の新拠点でサムスンの狙いはどこにあるのか。

常設型のショーケースが原宿に出現

サムスンは2018年に世界のスマホ市場でシェア20.8%を占め、首位の座を維持した(IDC調べ)。2位のアップルに肉薄するファーウェイなど中国勢の台頭が目立つものの、サムスンは価格帯ごとのラインアップが厚く、家電製品とともに海外では高いシェアを誇っている。

日本国内ではiPhoneが市場シェアの半数を占め、国内メーカーがそれに続いていることから、サムスンのシェアは大きくない。だが近年はミッドレンジのGalaxy Feelシリーズが伸びており、MM総研によればサムスンの2017年のスマホシェアは5位、2018年は4位にまで上がってきた。

そのサムスンはこれまで、世界各地で製品を体験できる施設「Galaxy Studio」を展開してきた。それらは数カ月限定の施設だったが、今回は常設型として原宿の明治通り沿いにオープンしたのが「Galaxy Harajuku」というわけだ。

Galaxy Harajukuの1階の様子

ビル内は地上6階、地下1階の7フロア構成で、スマホやVRの体験ゾーンが多数設けられている。1階には国内未発表のフラグシップ「Galaxy S10」、折りたたみスマホとして話題の「Galaxy Fold」が展示されており、原宿を訪れた若者に最先端のスマホ体験をアピールしている。

折りたたみスマホ「Galaxy Fold」の展示も。ただしガラスケースに入れられ触ることはできない

Galaxy製品は携帯ショップなどにも置かれているが、よりGalaxyに特化して体験しやすい環境を設けたGalaxy Harajukuでは、例えば「Galaxy Note9」のペン入力の書き心地や、VRコンテンツといった凝った機能をじっくり試すのに向いている。外部ディスプレイにPCのようにスマホ画面を出力できる「DeX」技術の試用コーナーも設置されており、こうした大掛かりな機能を購入前に試したい人には貴重な施設といえる。

スマホを外部ディスプレイとキーボードで使える「DeX」コーナー

国内キャリアと連携しつつブランド力向上へ

Galaxy Harajukuのオープニングイベントで来日したサムスンのモバイル部門CEO、高東眞氏はグループインタビューに応じ、「次の2〜3年には、5GやAI技術を中心に過去10年分を上回る技術革新が起こる」と、日本を含む世界中で業界が変革期を迎えつつあるという認識を示した。その中で、最新のGalaxy製品を最初に展示する場所として、Galaxy Harajukuを位置付けた。

サムスン電子 CEO 兼 IT&モバイルコミュニケーション部門社長の高東眞(コ・ドンジン)氏

近年の国内市場で懸念されるのが、政府主導で進む端末代金と通信料金の「完全分離」議論だ。今後は携帯キャリア各社による端末購入補助が難しくなると予想されるが、高機能(つまり高額な)端末を売りとするサムスンに影響はないのか。高氏は「分離制度は韓国で経験済みだ。良い製品を作り続けていれば、制度に少しの変化があっても受け入れてもらえる」と話す。

高氏が何度も言及したのがキャリアとの関係の重要性だ。今後の製品づくりでは、キャリアが直面する課題に触れ、「耳を傾けることが重要だ」と言う。

Galaxy HarajukuのオープニングテープカットではドコモとKDDIの幹部が高氏の両脇を固め、施設内の端末販売カウンターは実際にはキャリアの窓口としても機能するなど、この場所自体もキャリアとしっかり連携している。

テープカットにはドコモ、KDDIの幹部も加わった

日本では2019年に5Gのプレサービスが始まり、2020年には正式サービスに移行する。目前に迫った5G移行という大きな変革期を生き残っていくためにも、まずはキャリアとの連携をより強めていくというのが同社の基本戦略のようだ。

ただ、完全分離プランにより、キャリアは以前ほど端末販売に傾倒しなくなるのではという見方も出てきている。サムスンが自前で展開するGalaxy Harajukuの存在は、自らブランド力を高めなければ埋もれてしまうという、サムスンの危機感を象徴しているのかもしれない。

過去10年で最速の累計販売数を記録した「本麒麟」の強みとは?

過去10年で最速の累計販売数を記録した「本麒麟」の強みとは?

2019.02.22

本麒麟が登場から1年も経たず1,000万ケース達成

なぜ本麒麟は受けたのか? 開発者に直接聞いてみる

開発に妥協せず、気合いの入ったブランディングで勝負

2018年3月に発売されたキリンビールの「本麒麟」。1月下旬には1,000万ケースを突破し、過去10年間にリリースされた商品のなかでは累計販売数最速を記録したという。では、なぜ本麒麟がこれほど支持されているのか……キリンビールにその秘密を聞いてきた。

真っ赤な缶が目立つ本麒麟
キリンビール横浜工場の入り口

訪れたのは、キリンビール横浜工場。薩英戦争(薩摩藩×英国)勃発のきっかけになった「生麦事件」が起こった場所の至近にある。そのため「生麦工場」と呼ばれることも多い。

そもそも横浜は1870年にノルウェー系アメリカ人により、日本で初めてビールの醸造・販売が行われた「スプリング・バレー・ブルワリー」が創設された場所。この、スプリング・バレー・ブルワリーが現在のキリンビールの前身である。

本麒麟が支持されている理由は何か

お話をうかがったのは、キリンビール マーケティング本部 マスターブリュワー 田山智広氏と同商品開発研究所 中村壮作氏のお二人だ。

キリンビール マーケティング本部 マスターブリュワー 田山智広氏(左)と、キリンビール マーケティング本部 商品開発研究所 中村壮作氏(右)

単刀直入に「本麒麟の何が支持されているのか?」と問うと、二人とも「味わいです」と口をそろえる。それほどまで味に自信のある本麒麟。こだわりも強いのだろう。

田山氏は「五感を駆使して酵母をコントロールしています。自然のものである酵母をコントロールするなんておこがましいですが……。ビールは工業製品などと異なり、紛れもなく農作物なのです」と話す。

ビールは試験プラントで味を見定めるが、多い場合、1日で10種類ほど仕込まれるという。それをタンクで数十日熟成させるので、時間もかかる。ひとつのテイストを試すのに、約1カ月、あるいはそれ以上の期間を要することもあるそうだ。しかも、こだわりを優先し、仕上がりが気に入らなければ、またイチからやり直す。

横浜工場にある試験プラント。プラントの1基のふたを開けると仕込まれたビールが確認できる
ドイツ産ヘルスブルッカーホップ

100年以上ラガービールを生産してきた知見を、新ジャンルの本麒麟には惜しげもなく投入した。キリンがこだわる「長期低温熟成」によるラガービールの製法がそのまま生かされている。また、ドイツ産ヘルスブルッカーホップを使用することにより、スッキリとした味わいを目指した。

しかし、本当においしいという理由だけで“過去10年間で累計販売数最速”を達成できたのか。きっと、ほかにも理由があるはずだ。

田山氏は「安くておいしいものという、根源的な要求に応えられるからこそ本麒麟は売れているのでしょう」と分析する。

本麒麟は「新ジャンル」に分類される商品。日本ではビールに課せられる酒税が高く、現在350mlあたり約77円の税金がかかる。そうした税金の高さを回避するために生まれたのが発泡酒で、350mlあたり約47円の酒税となっている。そして発泡酒よりもさらに酒税が低いのが「新ジャンル」(第3のビール)と呼ばれるもので、350mlあたりの税金は約28円だ。

一方で、新ジャンルに人気が集まると「キリン一番搾り」や「キリンラガービール」といった本格ビールの需要が落ち込むのではないかという疑問が生じる。これに対し、田山氏は「決して新ジャンルが『THEビール』(本格ビール)の需要を蚕食するとは考えていません。THEビールはコクを味わいたい方、新ジャンルはスッキリした味わいを求める方と、棲み分けができるかと思います」と、見解を述べた。

おいしくて安いだけじゃない、本気のブランディング

新ジャンルといえど、強いこだわりを持って作られている「本麒麟」。2人の話から売れ筋の理由が垣間見えた気がするが、「新ジャンルで酒税が低い」「しっかりこだわって造る」というだけでは、ほかのビールメーカーも同様なのではないだろうか。

話を聞いていると、本麒麟が1,000万ケースを突破した裏側には2つの巧妙なブランディング戦略が見えてきた。

その1つがネーミングだ。「麒麟」という漢字は、同社のアイデンティティともいえるもの。それに「本」をつけて本麒麟とするには、「新ジャンルには過度なネーミングではないか」という意見もチラホラあったそうだ。

そしてもう1つが、真っ赤なパッケージ。赤というのはキリンビールのコーポレートカラーなので、麒麟という文字と合わせて、同社の代表的な商品として体現されることになるだろう。

「ネーミングも真っ赤なパッケージも、ユーザーの期待を裏切らない味わいであることを表したいためです」と田山氏は話す。

2019年は消費税増税が実施され、新ジャンルの人気に陰りが出る可能性がある。さらに、2020年10月に実施される酒税改正によって、ビール約55円(減税)、発泡酒約55円(増税)、新ジャンル約55円(増税)と、3ジャンルの酒税が横並びになる。そのため、新ジャンルの酒税におけるアドバンテージはなくなっていくだろう。

最近は、若者のビール離れが叫ばれて久しく、ビール市場を取り巻く状況は決して順風満帆とはいえないが、この逆境の中で本麒麟がどれだけ奮闘するか、見極めたいところだ。

プロゲーミングチーム「父ノ背中」と契約したアイ・オー、ゲーム領域にも本腰

プロゲーミングチーム「父ノ背中」と契約したアイ・オー、ゲーム領域にも本腰

2019.01.31

アイ・オー・データ機器が新たなスポンサードを発表

契約相手はプロゲーミングチーム「父ノ背中」

今後は新しいカテゴリーでのゲーミングデバイスも提供していく予定

アイ・オー・データ機器は1月29日に記者向けのセミナーを開催し、2019年の戦略を発表した。そのなかで、同社のeスポーツ市場への取り組みについても触れられたので、そちらを中心に紹介する。

2018年に売上が約2.5倍まで伸びたゲーム領域

同社はディスプレイやストレージ、ネットワークの商品を提供する精密機器メーカーだ。ゲームに特化したデバイスとしては「ゲームキャプチャー」と「ゲーミングモニター」の2つを展開している。

アイ・オー・データ機器が展開する2つのゲーミング製品

2017年に2.9億円だった同社のゲーミングモニター「GigaCrysta」の売上は、“eスポーツ元年”と言われた2018年に、12億円と4倍近くまで増加。キャプチャーデバイスを含めた売上では約2.5倍に成長した。2019年には、キャプチャーの売上が約7億円、モニターの売上が19億円まで伸びると予想している。

アイ・オー・データ機器のゲーム領域の売上推移

非常に成長している同社のゲーミング製品だが、おそらくゲーミングブランドとしての参入は業界でも後発組だ。なぜこの領域に力を入れるようになったのか。

アイ・オー・データ機器 執行役員 事業戦略本部 企画開発部 部長の加藤光兼氏は「キャプチャー製品は、もともとビデオの映像をデジタル保存する用途として販売していたのですが、実際は4割以上の方がゲームのプレイ映像を保存する目的で購入されていました」と、話す。

アイ・オー・データ機器 執行役員 事業戦略本部 企画開発部 部長の加藤光兼氏

HDMIで映像を録画する「GV-HDREC」では、「1フレーム単位のコマ送り機能」や「キャプチャー時の低遅延」などが評価され、ゲーム動画を保存する目的で購入するユーザーが増えていったのだという。

元々ゲーム用デバイスとして販売していたわけではないが、ユーザーの声を聴いていくうちに、自社製品がゲーミング領域に適していると気づき、今ではゲーム実況者やコアゲーマーをターゲットとして商品を展開するようになったわけだ。

「特に格闘ゲームの復習に最適だというフィードバックをいただくことが多かったですね。そのように、ユーザーのご意見から気づきを得られたという背景があるので、今後も引き続きゲーマーとコミュニケーションを繰り返していき、eスポーツに貢献できるような製品を手がけていきたいと考えています」と、加藤氏は引き続きeスポーツ領域に力を入れていく姿勢を示した。

また今後は、ゲームをするうえで必要なSSDやハードディスクといった、すでにゲーミング領域として提供しているディスプレイ、キャプチャー以外のカテゴリーの製品でも、ゲーム領域にマッチする形に進化させて、提供していく予定だ。

新たにゲーミングチーム「父ノ背中」とスポンサー契約も

ゲーミング市場へのプロモーションの一環として、セミナーでは、プロゲーミングチーム「父ノ背中」とスポンサー契約を締結したことも発表された。

アイ・オー・データ機器 代表取締役社長の濱田尚則氏(左)と、父ノ背中 リーダーのてるしゃん選手(右)

すでにアイ・オー・データ機器は、『Overwatch』などで活動するプロゲーミングチーム「Green Leaves」と、北陸初のプロゲーミングチーム「TSURUGI TOYAMA」のスポンサードをしている。今回「父ノ背中」のサポートを開始することで、同社のスポンサードするチームは3つになる。

アイ・オー・データ機器 事業戦略本部 販売促進部 販売促進課の西田谷直弘氏は「父ノ背中がゲーミングディスプレイを買い替える際に、当社の製品を採用していただいたことがご縁になり、今回スポンサードさせていただくことになりました。父ノ背中はストリーミング配信などによるファンへの発信力が高いので、ファンの皆さんに当社の商品を伝えていければと考えています」と、契約の背景を語った。

アイ・オー・データ機器 事業戦略本部 販売促進部 販売促進課の西田谷直弘氏

また、同社はスクウェア・エニックス『FINAL FANTASY XIV』のファンフェスティバルへの協賛をはじめ、セガゲームスが開催する「ぷよぷよチャンピオンシップ」や、茨城国体の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」の『ウイニングイレブン 2019』予選大会でのゲーミングモニター提供など、イベントにも積極的に参加している。

eスポーツの盛り上がりをチャンスととらえ、今後も本腰を入れて取り組んでいく姿勢だ。

プロ2名による解説の様子

ちなみに、セミナーの後には、参加者による「ぷよぷよ大会」が開催された。しかも、『ぷよぷよ』のプロである、くまちょむ選手とKuroro選手を招待して、ゲームのコツを紹介してもらったり、解説をしてもらったりするという贅沢なものだった。筆者も参加させてもらったが、結果は惨敗。ろくに連鎖できず、プロの人が解説しにくいような地味なプレイをしていたに違いない。紹介してもらった連鎖のコツは、何1つ実践できなかった。

PCの周辺機器を手がけるメーカーの場合、やはりeスポーツの影響は大きいだろう。それは、実際にアイ・オー・データの売上が2.5倍になったことが物語っている。

しかし、一見親和性がなさそうな業界でも、eスポーツが新たなスポンサー先の選択肢として検討されるようになってきたとも感じる。最近では、サプリメント事業を展開するわかさ生活が、日本eスポーツ連合(JeSU)のスポンサーに就任したと発表された。それ以外にも、すでに日清やサントリーといった大手企業が、積極的にeスポーツをサポートしているのだ。

もちろん、ターゲットや戦略にもよるだろうが、いくつ広告を投下してもなかなか売上に結びつかないと悩んでいる企業は、eスポーツスポンサーという手段を候補の1つとして検討してみるのもいいかもしれない。