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大幅改良のマツダ「CX-3」、試乗で探る不振の理由と反撃の可能性

大幅改良のマツダ「CX-3」、試乗で探る不振の理由と反撃の可能性

2018.06.19

コンパクトSUVは日本でも流行していて、2017年はトヨタ自動車「C-HR」が大いに売れた年となったが、その割にマツダ「CX-3」は大ヒット商品になっていない。その理由をマツダはどう分析し、今後の反転攻勢を狙うのか。大幅改良を受けたCX-3の試乗会で探った。

マツダが大幅改良を施した「CX-3」に試乗した(画像はガソリンエンジン車「20S L Package 4WD」)

相手が悪かった側面もあるが……

コンパクトクロスオーバー車のマツダ「CX-3」は、3年前の2015年2月に発売となった。クロスオーバー車とは複数の車種の利点をあわせもったクルマを指すのだが、CX-3は小柄なSUVと見え、その寸法は日本の道路事情に最適なようだ。

しかしながら、2017年の国内販売台数は約1万5,000台で、月平均1,250台の水準にとどまっている。これに対し、欧州市場では同年に約5万7,000台が売れており、国内市場での不振が目立つ。その理由をマツダは、競合のホンダ「ヴェゼル」やトヨタ「C-HR」に圧倒されていると分析する。

トヨタ「C-HR」は2017年(暦年)に最も売れたSUV。販売台数は11万7,299台だった。「CX-3」が属する市場には追い風が吹いている

ヴェゼルは2013年12月の発売でCX-3より先だが、C-HRは2016年12月の発売であり、ヴェゼル人気を見ての登場である。したがって、CX-3が市場導入で特に出遅れたわけではない。競合2車と異なる点があるとすれば、CX-3が当初、ディーゼルエンジン車のみで発売されたことだろう。それが販売に影響したのではないかと考えられる。

マツダは新世代商品群の第1弾である「CX-5」を発売した際、「SKYACTIVエンジン」としてガソリンとディーゼルの双方を刷新した。そのディーゼルエンジンはマツダの想像を超える人気となり、東京都が1999年に施行した「ディーゼル車NO作戦」以降のディーゼル乗用車の不振を払拭する勢いを得た。そしてCX-3では、ガソリンエンジン車を用意しない策をとったのだ。

発売当初はディーゼルエンジン車のみだった「CX-3」(画像はディーゼルエンジン車「XD L Package 2WD」)

ディーゼルのみで発売した戦略の是非

乗用車用ディーゼルエンジンとしての「SKYACTIV-D」は、排ガス対策も十分に行われ、ディーゼル本来の力強さをいかした走行性能が人気を集めた。とはいえ、その良し悪しではなく、ディーゼルエンジンそのものに対する好き嫌いは消費者にあったはずだ。

CX-3が登場した当時にも試乗したが、そのディーゼルエンジンは「ナチュラル・サウンド・スムーザー」の搭載により振動・騒音が低減されていて、CX-5と比べても洗練されているとの印象を受けた。しかし、CX-3が特長としたお洒落なデザインのクロスオーバー車という魅力に対しては、ガソリンエンジンが合うのではないかと思ったことも覚えている。

洒落たデザインのクロスオーバー車にはガソリンエンジンが適しているのでは

欧州市場では、CX-3の販売に占めるガソリンエンジン車の比率が6割に達するとのこと。これにはフォルクスワーゲンのディーゼル排ガス問題も影響しているだろうが、このクルマに適したパワートレインが選ばれているとの見方もできそうだ。

今回は、マツダが2017年に満を持してCX-3に追加したガソリンエンジン車に試乗し、大幅改良の成果と共にその感触を体感してきた。

上級車種の雰囲気をまとった新しい「CX-3」

今回はモデルチェンジではないにもかかわらず、デザインの美しいCX-3のため、説明・試乗会を普段の横浜研究所ではなく、みなとみらい地区の結婚式場で開催する力の入れようだった。

一括企画という独創の開発手法によりマツダは、新たに開発して市場導入した機能や装備を、フルモデルチェンジを待たずに、できるだけ早く全ての車種へ展開することを新世代商品群から始めている。そして、各車種で改良車種の導入を行っているが、CX-3は特に改良回数が多く、さらに今回の大幅改良となった。CX-3の開発を担当する冨山道雄主査は「競争力向上のため、愚直に改良していくのみ」とする。

改良を重ねてきた「CX-3」。今回は安全装備も充実した

改良の主な内容だが、まずは操縦安定性と乗り心地が改善している。また、ガソリンエンジンでは燃費を向上させ、ディーゼルエンジンでは排気量を増やすことにより今後の規制対応を行った。ガソリンとディーゼルは共に、アクセル操作への応答性を高めた。

デザイン面ではフロントグリルなどを改め、室内もより上質にして、全体的な車格感を上げた。もともとのデザインの良さにさらに磨きがかかった印象で、より上級な車種の雰囲気をまとっている。こぢんまりとした車体寸法ではあるが、CX-5に比べお洒落で、それでいて存在感がある外観になったと感じた。

室内も、スウェード調のダッシュボードのパッドの見栄えや手触り、駐車ブレーキをレバー式から電気式に変更したことによる上級車種感覚など、誕生から3年を経ても古さを感じさせないところが魅力だ。

室内も上級車種の雰囲気(画像提供:マツダ)

ガソリンエンジン追加で取捨選択が可能に

試乗ではガソリン車とディーゼル車の双方を運転できたが、少なくとも、市街地を中心に日常的に使うのであれば、ガソリン車の方が圧倒的に乗り心地と静粛性に優れ、CX-3に合った雰囲気を生み出していた。ディーゼル車も改良されているが、乗り比べればガソリン車が大きく上回る。

もちろんディーゼル車も、例えば長距離移動の多い使い方であれば、低いエンジン回転数から大きな力を発揮するディーゼルターボの特性によって、アクセルペダルをあまり深く踏み込まなくても高速巡行ができて、楽な移動が可能になる利点がある。

自らの使い方に合わせてパワートレインを選べる

「CX-3」ではガソリン車の登場により、利用の仕方に応じた取捨選択が可能になったといえる。ガソリン車の登場に続く今回の大幅改良もあって、CX-3の魅力は決して衰えていないことを実感することができた。

HV車との燃費競争は難しいが……

今回の改良でマツダが改めて表明したのは、カタログ上の燃費性能の表示について、日本国内専用の「JC08モード」表記を止め、全て国際的な「WLTC」で表すとし、それをこの先、全ての車種に適用するという方針だ。

日本におけるWLTCの全面的な導入は2018年秋の予定で、現在はJC08モードとの併記が可能となっている。しかしマツダは、一足先にWLTCに統一すると決断したのだ。それによって、実用燃費により近い表示になるという。

マツダがWLTCを導入することについては以前、CX-3のガソリン車追加の折、マイナビニュースの記事で紹介した。今回、あえてマツダがWLTCのみに統一するとした背景には、燃費に対するマツダの真摯な姿勢が表れている。

「CX-3」にガソリンエンジン車を追加した時に「WLTC」への表記統一を打ち出したマツダ

マツダがWLTCに統一する別の理由を想像することもできる。同社のラインアップを見ると、「アクセラ」の一部車種以外にはハイブリッド車(HV)などリッター30km以上を達成できる超燃費車がないし、今後の電動車導入計画も、国内にはいつ、どのような形でという明確な表明がない。そうした状況であるゆえに、JC08モードという他社と同じ土俵の上で、HVと燃費で競うのを避けたのではないだろうか。ただ、いずれ秋になれば、どのメーカーもWLTCを使ってくるのだが。

カタログ表記と実用燃費との乖離という問題はともかくも、HVは容易にリッター20kmほどの実用燃費を出すことができる。これに対し、SKYACTIVのガソリンエンジンは、WLTCでもその性能には追いつかない。一方のディーゼルは、カタログ数値上でHVに肩を並べ、また燃料代においても、レギュラーガソリンに比べ軽油は1リッターあたり20円ほど安く経済的だ。

とはいえ、今回の試乗でも感じたことだが、市街地などで日々利用するのであれば、ガソリン車の方が圧倒的に快適だ。

ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 1.8」(左)とガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 2.0」(画像提供:マツダ)

このところのマツダは、CX-5、CX-3、「アテンザ」と大幅な商品改良を相次いで実施している。その商品戦略について猿渡健一郎商品本部長は、「昨年『サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030』を発表し、人に寄り添うクルマ開発をしているが、次世代車を一気に切り替えるのは難しく、次世代商品の考え方や技術を現行商品に前倒しで入れていきながら併売していくことになる」と話していた。

いずれにしても、今後実用化が予定されている「SKYACTIV-X」という新燃焼方式のガソリンエンジンと併行して、電動車の早い導入を消費者は待っているはずだ。また、静粛で快適な乗り心地と安心できる操縦安定性というマツダ車の魅力に、電動車はより適合するのではないかと思う。

今なぜ“改良”なのか、後輪駆動化の噂もある6年目の「アテンザ」

今なぜ“改良”なのか、後輪駆動化の噂もある6年目の「アテンザ」

2018.06.01

マツダは現行型になって6年目となる「アテンザ」(セダン/ワゴン)に3度目の商品改良を実施した。近い将来、縦置きエンジン後輪駆動ベースに転換するという噂もあるアテンザ。しかしマツダには、このタイミングで進化させる理由があった。

商品改良を受けたマツダ「アテンザ」のワゴン(左)とセダン

同期の「CX-5」はモデルチェンジを遂げたが……

マツダ「アテンザ」が商品改良を実施する。このニュースを聞いた時に「なぜ?」という思いを抱いたのも事実である。

現行アテンザは2012年の発表であり、今年で6年目を迎える。日本車のモデルチェンジのサイクルは長くなりつつあるものの、6年というのはロングセラーの部類に入る。しかも、同じ年に発表となった新世代商品の第一弾「CX-5」は、2016年にモデルチェンジを果たしている。同じサイクルで考えればアテンザも、一昨年にモデルチェンジするのが妥当だったということになる。

しかし今回、マツダは商品改良に留めた。この動きは、もうしばらく現行型が現役を務めるという意思表明と見ることもできる。

改良版「アテンザ」は今後しばらく現役を続けそうだ。後ろに見えるクルマは改良前の「アテンザ」

改良で商品を新鮮に保つマツダ

ちなみにここまで、マイナーチェンジという言葉を使ってこなかったのには理由がある。新世代商品群になって以降、マツダはマイナーチェンジという言葉は使わず「商品改良」という表現で統一しているからだ。2014年のアテンザの商品改良を取材したとき、無意識に「今回のマイナーチェンジは」と切り出したところ、「マイナーチェンジではなく商品改良です!」と指摘されたこともある。

マイナーチェンジは“マイナー”という言葉のイメージから、表面的な手直しと取られることが多い。しかし、マツダの商品改良では、デザインにしてもエンジニアリングにしても、その時点で最新のものをタイムリーに導入する。これにより、常にその車種をフレッシュに保ちつつ、ラインアップ全体に統一感を持たせることができる。

マツダの商品改良では、その時点で最新の技術とデザインを導入し、商品に新鮮さを与える

IT業界のアップデートに近いかもしれないが、これがマイナーチェンジという言葉を使わない理由なのである。

ではなぜ、アテンザはモデルチェンジしなかったのか。理由のひとつとして、次期アテンザはこれまでの横置きエンジン前輪駆動ベースから、縦置きエンジン後輪駆動ベースに切り替わるという噂がある。

「ビジョンクーペ」が示した後輪駆動化の可能性

このサイトでは2017年の東京モーターショーにマツダが出展したコンセプトカー「ビジョン・クーペ」について紹介したことがある。前輪とキャビンが離れたロングノーズのプロポーションは、縦置きエンジン後輪駆動の採用を匂わせた。

マツダが2017年の東京モーターショーで展示したコンセプトカー「ビジョン・クーペ」

また、マツダは新世代商品とともに「魂動(こどう)」と名付けたデザインコンセプトを導入しているが、このビジョン・クーペと、3年前の東京モーターショーで展示したコンセプトカー「RXビジョン」は、次世代の魂動デザインを提示していた。

マツダが2015年の東京モーターショーで展示した「RXビジョン」

この流れで今回のアテンザを見ると、モデルチェンジではないのでボディサイドは変えていないが、次世代につながる造形を取り入れるべく、エクステリアでは前後の造形に手を入れている。

「アテンザ」改良に見る次世代のビジョン

もっとも分かりやすいのはフロントマスクで、「シグネチャーウィング」と呼ばれるグリルからヘッドランプにかけてのライン両端が、ヘットランプの上に伸びるのではなく、下に沿って流れるようになった。

左が改良前、右が改良後。シグネチャーウィングの流れが大きく変わっている

リアもセダンについては同様に、クロームメッキのアクセントがリアコンビランプの上に跳ね上がるのではなく、中を貫くようになった。同時にリアバンパー下部を黒からボディ色にすることで跳ね上がり感を抑えた。

左が改良前、右が改良後。リアバンパー下部の色が変わっているのが確認できる(左側の画像提供:マツダ)

これらの変更により、横から見た時の水平基調のラインが強調された。この新しい横顔は、車体の前から後ろに向けて水平に伸びるラインが印象的だったビジョン・クーペを連想させる。

左が改良前、右が改良後。水平基調を強調している(左側の画像提供:マツダ)

現行アテンザを一貫して担当してきたチーフデザイナーの玉谷聡氏は、「次世代の魂動デザインは、骨格から変えるのが筋」と語った上で、背骨の軸を強調するなど、今できる骨格的な進化は取り入れたと説明していた。

なお、ワゴンのリアはバンパーのお色直しに留めている。跳ね上がったアクセントにワゴンの大きなキャビンを支える役割を持たせているためだ。

ワゴンのリアデザインは、大きなキャビンを支えるという役割を考慮して大きく変えなかった

新素材を東レと開発、新たな内装色は日本建築から

驚いたのはインテリアだ。2014年に続いて2度目の刷新を敢行したからである。ひとつの車種が6年間で2回もインテリアに手を入れるというのはあまり記憶にない。

実は、これも次世代の先取りだった。エクステリアと同じ水平基調であり、インパネからドアトリム、リアへのつながりを強調するために、全面的に変更したとのことだ。エアコンスイッチも横長に仕立て直すというこだわりも見てとれる。

商品改良でインテリアも見直した(画像提供:マツダ)

ビジョン・クーペのインテリアを思い出してみると、たしかに水平基調で、インパネからドアトリムへのつながりを考えた、一体感のある造形だった。その領域へつなげていこうという意思が伝わってきた。

玉谷氏はこのインテリアについて、「生け花」を例に出して説明した。花や葉そのものではなく、空間全体を作っていくという発想で考えていったという。

空間づくりに生け花の考え方が息づく(画像提供:マツダ)

素材については東レの「ウルトラスエード・ヌー」を投入。光沢感がありつつ、スエードの感触も持ち合わせた不思議な素材だ。服飾の分野では数年前から使われているそうだが、自動車用となると耐久性や難燃性などの対策が必要であり、東レとの共同開発で採用にこぎつけた。

カラーも注目だ。近年のマツダ車でおなじみのホワイトに加え、ブラウンを起用したからだ。しかもそれは赤みのある茶色ではなく、古い日本建築の木材をイメージした色味となっている。フラッグシップにふさわしい色という観点での起用だそうだ。

赤みがかったブラウンが多い中、「アテンザ」のそれは日本の古い寺院の木材を思わせるような色合いだ(画像提供:マツダ)

既存メカニズムで次世代の乗り心地を

エンジニアリングについても、新型アテンザは次世代のビークルアーキテクチャーを一部、先取りしている。

マツダは昨年、次世代技術の体験会をテストコースで開催した。その模様もこのサイトで報告しているが、このとき「SKYACTIV-X」と呼ばれる次世代エンジン技術とともに感心したのが、滑らかなハンドリングと乗り心地だった。

新型アテンザでは既存のメカニズムを用いつつ、この領域を目指した。マツダではこれを「エフォートレスドライビング」と呼ぶ。苦労しない、努力を要しないという意味の言葉を用い、意のままのハンドリングと人に優しい乗り心地を表現した。

走りの面で目指したのは「エフォートレスドライビング」だ(画像提供:マツダ)

シートのデザインも改めているが、これも次世代技術を先取りしている。従来より落ち着きのある見た目になっているだけでなく、薄くタイトだった形状を厚みのある包み込み重視のフォルムに換え、座りたくなるデザインを追求したそうだ。

これ以外にエンジンもガソリン、ディーゼルともに手を加えてある。次世代への切り替えが明らかになると、現行型を放置状態にするブランドもある中、マツダはマイナーチェンジとは一線を画す商品改良で、アテンザを更に魅力的な存在とした。このひたむきさが、ブランド高評価の源泉なのだろう。

なぜマツダはセダンを作り込むのか、「アテンザ」開発主査に聞く

なぜマツダはセダンを作り込むのか、「アテンザ」開発主査に聞く

2018.05.27

SUVブームには逆行するように見えても、セダンの「アテンザ」に大幅な改良を加えたマツダ。クルマの基本ともいえるセダンを作りこむことで、SUVなど他の商品にも波及効果があるとの説明だったが、開発担当主査に話を聞いてみると、アテンザ改良にマツダが本気を出した理由は他にもあったようだ。

マツダが大幅改良を施した「アテンザ」

セダンの本質は重心の低さ

改良版「アテンザ」のお披露目会でマツダの小飼雅道社長は、「セダンを大切にして、最高のパフォーマンスを実現し、SUVなどの車種に展開する。その上で極めて重要なモデル」と話した。セダンの質が高まると、他のクルマにどんな影響が出るのか。アテンザの開発を担当した脇家満主査に聞いてみた。

改良版「アテンザ」お披露目会に登場した小飼社長

まず、セダンにしか持ち得ない本質的な部分は何か。脇家主査は「一番のキーは重心。重心の低さは、走行性能全般の中で、ポテンシャルを一気に引き上げられるものだ。それが基本となる」(以下、発言は脇家主査)とし、「また、背の高いクルマに比べると、パッケージングと呼ぶ部品を入れていく作業が難しい。すごく知恵を使う。そういうところから、ユニットの進化が始まったりする」と話した。

「セダンをベースに開発するという考え方はマツダの伝統だ。重心が低いと横G(クルマのステアリングを切った時、曲がる方向とは逆方向に発生する力のこと)に対するポテンシャルも間違いなく高く、そこで作りこむプラットフォームは間違いなくポテンシャルが高い」

「アテンザ」にはワゴン(左)とセダンがある

次世代商品群が世に出ると「アテンザ」はどうなるか

パッケージングは難しいが高い性能を追求できるのがセダンの開発であり、その作りこみで培った技術が他のクルマに展開できるというのは理解しやすい説明だ。ただ、脇家主査の話を聞いていると、アテンザ改良に力が入った別の理由も見えてきた。

まず大前提として、マツダは現在、「次世代商品群」という新しいクルマの開発を進めている。これはマツダにとって「第7世代」にあたる一群のクルマのこと。今のマツダが展開している「新世代商品群」のクルマは「第6世代」だ。大幅改良を受けたマツダのフラッグシップモデル「アテンザ」も当然、第6世代に属する。

陰影が映りこむと、また別の表情を見せた「アテンザ」

次世代商品群で最初の商品は2019年に発売となる。それがどんなクルマかは現時点で分からないし、マツダに聞いても教えてくれないのだが、普通に考えると、このタイミングで大幅な商品改良を受けたアテンザが、ガラッと姿を変えて次世代商品群の先陣をクルマになるとは考えにくい。

そのあたりについて脇家主査は、「次世代商品群は土台からしっかり変わって、ポテンシャルがぐっと上がっていることは間違いないわけだが、アテンザは次世代商品が出てもフラッグシップであり続けなければならない。中途半端なことがまず、できなかった」と述懐した。

次世代商品群が世に出てもフラッグシップとしての品質が求められ続ける「アテンザ」

マツダが骨組みからクルマを見直して、満を持して投入するのが次世代商品群というわけだが、そういうクルマが世に出た後も、その頃には旧世代に属することになるアテンザは、同社のフラッグシップとして君臨し続けねばならない。今回の改良に気合が入っている背景には、そういう事情もあるのだろう。脇家主査は「伝えたかったのは足回り、ボディ、シート、ここら辺に徹底的に手を入れたということ。エンジニアは大変だったと思うが、嬉々としてやってくれた」と話していた。こんな背景もあって進化したのが今回のアテンザだ。

セダンの面白さについて、「仕事柄、いろんなクルマに長く乗るが、ステアリングを切った瞬間のクルマの動き方は全然違う。セダンに乗り換えた瞬間、新しい世界が絶対に出てくるはず。SUVだとクルマが曲がり過ぎるようなシーンでも平然と曲がったり、限界のコーナリングスピード、ポテンシャルは全然違うと感じられる。運転して気持ちいいという状態をもっと知ってもらいたい」と語ったアテンザ主査の脇家氏。トヨタ自動車が新型「カムリ」を発売した際に使ったフレーズ「セダン復権」を引用し、それは可能かと最後に聞いてみると、「大仰なことは言わないが、自分はいろんな意味でムーブメントを起こしたいと思っている。アテンザのこれからの生き様も見ていて欲しい」と話していた。