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スタートアップW杯が開幕! 150社の中から日本代表に選ばれた企業は?

スタートアップW杯が開幕! 150社の中から日本代表に選ばれた企業は?

2018.10.18

スタートアップW杯の日本予選が開催された

150社以上の応募の中から選ばれたファイナリスト10社が集結

各社プレゼンによって日本代表の1社が決定する

日本にシリコンバレーのような街はまだない。それでも、最新テクノロジーを駆使したサービスや、思いもよらない斬新なアイデアで、会社を立ち上げる人がいる。

多種多様なスタートアップが生まれる中で、最もすばらしいイノベーションを起こす企業はどこだろう――。

企業規模だけでは勝負できない時代になったことで、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に加えて、競争力を手に入れたい大企業も、そんなことを考えているのではないだろうか。

「魅力的なスタートアップはどこか」という問いに、1つの答えを提示してくれるのが、2017年から開催されている「スタートアップワールドカップ」だ。この大会は、世界40カ国以上のスタートアップから最も優れた1社を決めるという、Fenox Venture Capital主催のグローバルビジネスコンテスト。2018年10月5日に、2019年にサンフランシスコで行われる世界大会の日本予選が行われた。

予選では、応募のあった150社以上のスタートアップのうち、書類選考を通過した10社の精鋭たちがステージ上でプレゼンテーションを実施。事業化の経緯やビジネスプラン、プレゼンテーションの出来などに加え、SNSによる一般ユーザーからの投稿によって点数を導き出し、最も高かった1社が世界大会への切符を手にする。今回は、世界大会に進む日本代表を決めるだけでなく、スポンサーのサントリー、セガサミーホールディングスからそれぞれの企業賞も贈られた。

まずは、日本予選のファイナルに進出した10社を簡単に紹介しよう。以下、セリフは各社プレゼンテーターのものである。

ツールや言語の壁を超えたコミュニケーションを実現する「Kotozna Chat」

トップバッターを務めたのは、Kotoznaだ。同社が提供している「Kotozna Chat」は、QRコードを読み取ることで多言語のコミュニケーションを促進するチャット翻訳サービス。LINEとWeChatなど、異なるSNSのやり取りでもリアルタイムの翻訳が可能だ。

プレゼンテーションでは「国際コミュニケーションで最も大きな問題は言葉の壁。また、近年メッセージングのプラットフォームが存在しますが、個々のシステムが孤立していることも問題です」とグローバルなコミュニケーションにおける課題を提示し、自社のサービスを紹介した。

独自の技術で古着から質の高いポリエステルを生み出す

続いて登場したのは日本環境設計(JEPLAN)。古着からポリエステルを生成する技術でサービスを提供している。一般的な熱によって溶かすリサイクル方法とは異なり、ポリエステルを分子レベルまで分解してから不純物を取り除くことで、質の高いポリエステル繊維を生み出すことができるという。

「私たちが日々着ている洋服は、ポリエステルからできています。そのため、服を捨てることは、石油の廃棄と同義。エネルギーになるはずのものが、何万トンというゴミになっているのです。繊維業界の市場は大きいのですが、リサイクル技術は発達していません。そこで我々は、衣服から衣服を生み出す技術を開発しました」と、ビジネスの意義をプレゼンテーションで述べた。

ブライダルSNSのリファラル集客で、粗利重視から品質重視の挙式へ

結婚情報ソーシャルニュースアプリを提供するオリジナルライフ。国民生活センターには、「見積りから100万円以上も高い結婚式費用がかかった」「挙式プランの条件が人によって大きく異なる」といった結婚式に関するクレームが年間で1600件以上届くといわれており、同社はそのトラブルを回避できるよう、挙式の準備状況に合わせてパーソナライズ化された情報が届くサービスを開始した。

発表の中では「我々は、先輩花嫁が後輩花嫁に結婚式場を紹介する“リファラル集客”のプラットフォームを提供しています。従来、広告で顧客獲得を行っていた式場は高い粗利を求めていましたが、リファラルで集客するようになれば、多くの推薦を得るために良い結婚式を実現するようになるでしょう」と、同社のビジネスによってもたらされる効果をアピールした。

農業フランチャイズ「LEAP」を進めるアグリベンチャー

seakは農業プラットフォーム「LEAP」を運営しているスタートアップだ。同プラットフォームでは、農地の開拓から施設の構築、栽培技術の提供、販路の確保、資金の斡旋までをパッケージで提供。フランチャイズモデルで、契約者(フランチャイジー)はパッケージに対する原価と15%の手数料を支払う仕組みだ。

プレゼンテーションでは「LEAPでは土を袋に入れて苗を植える『袋栽培』という独自の栽培体系を用いており、従来の2.4倍の収穫が可能です。また、我々の持っている調達プロセスで、一般的な見積りと比べて約45%のコストカットにも成功しました。すでに収益性は確認できており、高島屋などのデパートも私たちの野菜を取り扱ってくださっています」と、袋栽培のサンプルを提示しながら、効果や実績などを説明した。

ディズニーのコラボとエンタメ性で学ぶ体験を高める

中高生向けの教育プログラムを開発・運営しているLife is Techは、ウォルト・ディズニー・ジャパンと協力して「テクノロジア魔法学校」というプログラミング学習教材を開発。用意された100時間以上のカリキュラムについて、4カ国語で学習することができる。

プレゼンテーションでは「コーディングのエデュケーションに関してはさまざまな問題があります。収入レベルの差や地域の差を埋めるためにはオンラインの教育が不可欠ですが、現状は効果があまり高くありません。そこで、テクノロジア魔法学校では、スクウェア・エニックスの元CTOに開発ディレクターを担当してもらいました。エンターテインメントは学ぶという体験を高めるうえで非常に重要です」と、教材の学習率を高める工夫を紹介した。

スペースエージェントが提供する“投資の成功体験”

続いて登場したのが、民泊運営物件ポータルサイト「民泊物件.com」や、不動産投資アプリ「収益物件.com」を運営しているスペースエージェントだ。

「日本では現在820万件の空き家があります。その原因は、人口減少と利益重視の不動産業界の体質、そしてアセットマネジメントの教育が日本で行われていないことにあるのではないでしょうか」と空き家が多く存在する理由を分析し、「私たちは物件情報を提供するだけでなく、スコアリングシステムを提供することで不動産投資の成功体験を提供できます」と、自社の強みを語った。

海外から優秀な人材を集めるAI-OCRベンチャー

識字認証AIサービスによって日本からムダな業務を排除しようと試みるCinnamonは、AI-OCRソリューション「Flax Scanner」を提供している。請求書のように、取引先ごとでレイアウトの異なる非定型帳票でも、学習によって自動で読み取ることができるサービスだ。

「我々の強みは人的資源。すでに経験豊富なAIのプロフェッショナルであるメンバーが集まっているだけでなく、ベトナムや台湾といった海外からも優秀な人材を積極的に採用しています」と、会社のストロングポイントを述べるとともに、「日本には紙の資料が多く残っていることもあり、ポテンシャルは非常に大きいと感じています」と、ビジネスの可能性を示した。

これからは空気を選ぶ時代。エアロシールドで無菌の空間を

エネフォレストは、紫外線殺菌装置「エアロシールド」を提供している。同製品はティッシュボックスほどの大きさの装置で、紫外線によって空気中のウイルスを殺菌することが可能だ。クライアントは人が集まる場所すべてが対象。デパートや鉄道インフラ、学校やオフィスなども含まれる。

プレゼンテーションでは「風邪とは200種類以上のウイルスなどの総称。そう考えれば、みなさんも何らかの形で感染症にかかったことがあるのではないでしょうか。感染症は同じ空間を共有しただけで、空気感染を引き起こしてしまう可能性があります。それを防ぐために我々は『エアロシールド』を開発しました。これからは空気を選ぶ時代になるでしょう」と開発の背景や製品の効果を述べた。

ソニーとZMPのジョイントベンチャーがドローン事業に参入

ドローン(UAV)を使った空撮測量を実施するAerosenseは、ソニーとZMPのジョイントベンチャー。ソニーのセンシングロボティクス技術と、ZMPの自動運転技術を活用して、企業向けのソリューションを提供している。ドローンの飛行からデータ処理まですべて自動で行うので、オペレーションは簡単。システムソリューションとして提供することもできるという。

プレゼンテーションでは「例えば、除染土壌のカバーシート点検などは手間がかかるだけでなく、健康の被害を受ける可能性がありますが、ドローンを使うことでそのリスクを回避することができます。また、もともと6週間かかっていた90haの測量を、わずか1週間で完了するという効率化にも成功しました」と事例を交えながら、メリットを訴求した。

セキュリティでコネクテッドカーを守る「Trillium Secure」

最後はTrillium Secureの発表だ。コネクテッドカーやIoT接続機器をハッキングから守るセキュリティサービスを提供している。

プレゼンテーションでは「古い車はすべてハッキングされる可能性があります。しかし、新しいからといって安全だとは思わないでください。多層的なセキュリティプラットフォームを実現することが大事です。Trilliumは車両や航空機などの運輸システムをセキュアにすると同時に、サイバー攻撃からネットワークを守ります」と、自動車の安全性の大事さを強調した。

世界大会への切符を手にしたスタートアップは?

10社のプレゼンは非常に緊張感ある中で行われた。世界大会であるため、もちろん発表はすべて英語。プレゼンテーションも質疑応答も時間にはシビアで、話し中だろうが質問中だろうが、時間になったら強制終了という印象だった。

審査員を務めたメンバー。写真左の左側から順に、Plug and Play Japan Managing Partnerのフィリップ 誠慈 ヴィンセント氏、We Work Japan CEO クリス ヒル氏、内閣府 科学技術・イノベーション担当の石井芳明氏、アステリア 代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏、日本マイクロソフト 業務執行役員 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 サイバークライムセンター 日本サテライト責任者の澤円氏、ZUU 代表取締役の冨田和成氏、ボードウォーク・キャピタル 代表取締役社長の那珂通雅氏、デロイトトーマツベンチャーサポート 事業統括本部長の斎藤祐馬氏

そんな雰囲気の中、いよいよ受賞者発表の瞬間が訪れた。

まずはサントリー賞だ。受賞企業には、サントリーと事業提携のための面談機会が提供されるという。

みごとサントリーのハートをつかんだのは、Kotozna。サントリーとチャットサービスの連携と言われてもピンとこないが、サポートセンターや問い合わせの窓口を多言語化するといった連携があるかもしれない。広報にバーチャルYouTuberを起用したり、ブロガー向け工場見学を実施したりと、何かと新しいことにチャレンジするサントリー。おもしろい化学反応が起きることに期待したい。

次に発表されたのが、セガサミーグループ賞。特別投資賞金5000万円を勝ち取ったのは、Life is Techだ。セガサミーグループといえば、エンタメの企業。スタートアップへの投資は、将来のエンタメの種を見つけるために行っているという。プログラミング学習教材の開発ディレクターにゲームメーカー出身者を採用するなど、Life is Techの「学習×エンタメ」という考え方に共感したのだろうか。

ちなみに、大崎にできたセガサミーの新しいオフィスでは、コワーキングスペースを設けるなど、イノベーションの創出にも力を入れている。2018年10月16日には、今回スタートアップワールドカップを開催しているFenox VCと約22億円のファンドを締結した。世界規模でのイノベーションが活発になりそうだ。

そして、スタートアップ日本代表の発表である。

150社以上の中から、みごと日本一の座に輝いたのは、古着からポリエステルを生成する日本環境設計(JEPLAN)だ。2019年5月にサンフランシスコで開催される決勝大会への切符を手にした。

並みいる強豪を抑え、日本代表のスタートアップとなった日本環境設計。だが、もちろんこれで終わりではない。決勝大会では世界40以上の国と地域の精鋭スタートアップたちが待ち構えている。まさに、「彼らの本当の戦いはこれから」だろう。

「信用経済」に続く”感謝で回る経済圏”、その現状と展望

「信用経済」に続く”感謝で回る経済圏”、その現状と展望

2018.10.04

個人の”信用”にフォーカスしたサービスが普及

VALU 小川社長や評論家 森永卓郎氏らが「信用経済」を語る

信用経済の仕組みに似た「感謝経済」を回す仕組みが登場した

「信用経済」という概念が注目を集めている。

日本では、「VALU」や「タイムバンク」といった、個人の”信用”にフォーカスしたサービスが登場。中国では、個人の信用をスコア化する「芝麻信用(セサミクレジット)」の登場が社会にインパクトを与えた。

そうした状況の中で、社会に新たな評価指標を根付かせようとしている企業がある。信用ではなく、”感謝”を軸にした経済圏の創出を図るオウケイウェイヴだ。

本稿では、オウケイウェイヴ 代表取締役社長 松田元氏の話と、すかいらーくホールディングス 取締役常務執行役員CMO 和田千弘氏、VALU 代表取締役社長 小川晃平氏、経済評論家 森永卓郎氏などが登場した「感謝経済プラットフォームローンチ発表会」での様子を合わせ、オウケイウェイヴが仕掛ける新たな経済圏の正体を紐解いていく。

オウケイウェイヴ 代表取締役社長 松田元氏。早稲田大学在学中にアズ株式会社を創業。2012年にアズグループホールディングス株式会社(現アズホールディングス株式会社)設立、代表取締役就任。2016年に株式会社創藝社代表取締役に就任。2017年9月オウケイウェイヴ取締役就任、2018年7月より現職

※以下、すかいらーくホールディングスの取締役常務執行役員CMOの和田千弘氏、VALU 代表取締役社長の小川晃平氏、経済評論家の森永卓郎氏らのコメントは9月20日の感謝経済プラットフォームローンチ発表会時のもの

感謝される人が報われる社会へ

――「感謝経済プラットフォーム」とは?

オウケイウェイヴ 松田氏「感謝経済プラットフォームは、感謝される人が報われる社会を目指す、”感謝で回る経済圏”をつくるための枠組みです。9月20日より発足して、現時点では19社が参画しています」

同氏によると、”感謝で回る経済圏”の仕組みはこうだ。まず、オウケイウェイヴが発行する「OK-チップ」と呼ばれるトークンをユーザー間でやり取りしてもらう(OK-チップは主に、同社運営のQ&Aサイト「OKWAVE」でのユーザー間の感謝のやり取りとして用いられる) 。ユーザーは、集めたOK-チップを使うことで、プラットフォームへの参画企業が出す優待や特典をゲットすることができる。

つまり、ユーザーが誰かに感謝してもらうような行動をとり、お礼としてトークンをもらうことで、それを自分の資産として使用できる、という仕組み。例えば、貯めたトークンをヘッドフォンと交換したり、IT機器の修理代金の一部にあてたりできるそうだ。

オウケイウェイヴの特設サイトでは、同社の提案する「感謝経済」に賛同した企業による優待や特典が掲載されている。協力企業は徐々に増えていく予定だそう

すかいらーくが「感謝経済」に賛同するワケ

この取り組みには、ファミリーレストラン「ガスト」などを運営するすかいらーホールディングスも参画している。同社では、感謝経済の仕組みを「人事評価」に活用する考えだ。同社の取締役常務執行役員CMOの和田千弘氏は、この構想を聞いて「まさにこれだ」と思ったそう。

すかいらーくホールディングス 和田氏「『感謝されている人』が多い店舗と、売り上げが高い店舗には相関性があるというデータが出ていることから、当社では、『他の社員からどれだけ慕われ、感謝されているか、さらには人徳を持って働いているか』ということを、人事評価の指標にしています」

すかいらーくが導入するのは、オウケイウェイヴの提供する、”感謝”のやり取りを「見える化」することのできる人事評価ソリューション「OKWAVE GRATICA(グラティカ)」。これは、感謝の気持ちを伝えられるオンライン上のメッセージングサービスだ。メッセージカードを送る際に「OK-チップ」を添えることができる。

和田氏「従業員同士、さらには従業員とお客様間でOK-チップをやり取りしてもらい、その数値を人事評価を組み込むことで、従業員の育成、および売り上げの拡大につなげたいと考えています」

9月20日に行われたオウケイウェイヴによる感謝経済プラットフォームローンチ発表会の様子 (写真左から6番目がすかいらーくの和田氏)

――すかいらーくのほかにも、医療法人やマーケティング企業などもプラットフォームへの参画を発表しています。参画企業の選定基準はあるのでしょうか

松田氏「我々の理念を理解してくれるかどうか、が一番重要な選定基準です。当社では発表会以前より、感謝経済プラットフォームについての構想を発表していました。今回発表した19社はすべて、その構想に共感していただいた企業。私達から声を掛ける前に、『協力したい』と手を挙げていただいた企業も少なくありません」

”感謝”を人事評価に組み込む、優待・特典に換える、というのは、あまり聞いたことのない仕組みだ。その構想を聞き、価値観を共有できない企業は、プラットフォームへの参画に二の足を踏むことだろう。そこで、プラットフォームの土台を固めるためにも、まずはオウケイウェイヴの目指す世界観を理解してくれる企業に協力を仰いだ。

腕の立つラーメン屋が、1億円調達できる仕組み

これまで、「人からどれだけ感謝されているか」という考え方が経済に組み込まれる仕組みはなかった。新たな評価指標が受け入れられつつある背景には、VALUを代表するような「他人からの評価」を経済に組み込む仕組みをつくった新興サービスプロバイダーの貢献は大きい。

小川氏は、「信用経済」という概念が普及したのは、既存の評価軸で個人を評価することに限界があったためだと語る。

VALU 小川氏「これまで、『信用』というものは中央集権的でした。ことお金に関して考えてみると、流れの中心には中央銀行があり、そこからメガバンク、地方銀行へと移っていくイメージです。しかし、現代において信用は、大きな組織から受け渡されるものに加え、周囲の人から積み上げられるようになってきている」

VALU 代表取締役社長の小川晃平氏

小川氏「例えば、ラーメン屋の店主が銀行からお金を借りようとすると、せいぜい4,000万円~5,000万円が限界。ただその人は相当な腕があって、本来は数億円の融資を受けられるポテンシャルを持っているかもしれない。そう考えると、今の金融機関における評価軸は、必ずしも時代に合っているわけではないんです。個人のスキルが真っ当に評価される世界を実現させたい、その考えのもとに生まれたのがVALUというサービスでした」

「私はSNSでフォロワーが10万人いるんだ」「オンラインサロンに1,000人もの入会者がいるんだ」と銀行にいっても、それが大金を融資する上での判断材料になるか、というと難しいだろう。しかし、YouTuberやInstagramerなどのインフルエンサーは、多くのファンを持ち、利益を生み出しているのは確かだ。

SNSの登場などをキッカケに、ここ数年で経済のトレンドは大きく変化している。それゆえ、既存の軸のみで人を評価するということは難しくなってきている。

――小川さんが話されていた内容について、どのように捉えていますか?

松田氏「信用の築き方がここ数年で大幅に変化しているのは、私も感じていることです。この変化の一番の要因は『ブロックチェーン技術の発達』にあると捉えています。今や、人々の行動が、ブロックチェーンによって残るようになっています。そうすると、悪い行動をした人や企業は信用を失うことになる。仮想通貨やICOといった、ブロックチェーンを用いた仕組みが一般的なものになってきたことで、これまであったような”金融機関的な”評価軸だけでは足りなくなってきています」

人からどれだけ感謝されているのか、ということも、これまでの評価軸では測れないものであった。感謝経済プラットフォームの登場で、これまでは評価されなかった人にスポットライトが当てられる世界は魅力的だ。

「1% の悪人」より「99% の善人」に焦点を

森永氏も、ローンチ発表会では「感謝経済プラットフォーム」の構想には賛同の意を見せていた。

森永氏「インターネットを利用する99% はいい人。でも、1% の悪い人が目立ってしまうんです。私がメルカリで欲しいトミカを購入しようとしていたとき、説明欄に『箱のみ』と書いてあることに気づいたんです。危うく、中身が無い物を購入してしまうところでした……。ビジネスにおいて、このような1% の悪人にフォーカスすると、窮屈なサービスが生まれてしまいます。『感謝経済』の考え方が普及し、『善意が経済を動かす』世の中になっていくことに期待しています」

経済評論家 森永卓郎氏

小川氏も、感謝経済への期待を述べる。

小川氏「いつだって、誰かの課題解決が仕事の源泉。しかし、これまではお金にならなかったような小さな課題解決が評価され、それが資本化されるというのは非常に良い仕組みだと思います」

日本ならではの"粋な文化"を取り戻したい

――「感謝経済プラットフォーム」によって、今後、社会にどのような変化がもたらされるのでしょうか?

松田氏「感謝の気持ちを『見える化』することで、形骸化してしまった、日本本来の”粋な文化”を取り戻せるのではないかと考えています。『2時間食器洗いするから』といってお金のない学生がタダ飯を食べられたり、『子どもが熱を出した』といって隣人に助けてもらったり。このプラットフォームによって、感謝すること・されることの価値を再確認する人が増えれば、人と人とが、今まで以上に密接に関わり合るようになっていくのではないでしょうか」

――今後の展望について教えてください

松田氏「まずはプラットフォームを拡大させるために、参画企業を増やしていきたいと考えています。将来的には海外展開も視野に入れています。このプラットフォームが日本ならでは”粋な文化”を世界に広めていくキッカケになるようにしていきたいですね」

"着る"空間「WEAR SPACE」製品化へ 巨人・パナソニックがアジャイル開発に挑む

2018.10.04

パナソニックから既存製品カテゴリ「外」のプロダクトが登場

パナソニックブランドは用いず、クラウドファンディングを開始

大企業にベンチャーマインドを注入するためのプロジェクト

集中力を高めるためのウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」。ややSFめいたような、見慣れない形状が目を惹くが、これはスタートアップ企業ではなく、家電業界の巨人・パナソニックから生まれた製品だ。

同製品は「WEAR SPACE project」発の製品として、クラウドファンディングで資金調達を行い、量産に着手する。パナソニックブランドを用いないプロジェクトとしてスタートしたその理由について、発表会の場で話を聞いた。

コワーキングの裏にある「一人作業」ニーズ狙う

パナソニックアプライアンス社 デザインセンター所長 臼井重雄氏

今回「WEAR SPACE」を企画したのは、パナソニックの中でも家電を手がけるアプライアンス社内のデザインチーム「FUTURE LIFE FACTORY」。同社 デザインセンター所長 臼井重雄氏の肝いりで立ち上がった所長直下の組織で、若手デザイナーのみで構成されている。

パナソニックでは製品ごとにチームが分かれており、たとえば炊飯器のチームが新製品を作る場合は、従来品をベースとした性能向上など、リニューアルのような格好で開発を行う。それとは逆に、既存の製品カテゴリと結びつかない、ゼロベースの製品開発を行うのが「FUTURE LIFE FACTORY」だ。

パナソニックアプライアンス社 デザインセンター 新領域開発課 FUTURE LIFE FACTORY 姜 花瑛氏

「WEAR SPACE」は、ノイズキャンセリング機能を搭載したワイヤレスヘッドホンと、ファブリックパーティションを組み合わせて出来ている。水平視野を6割カットし、目の前の作業への集中を促進するという。専用アプリでノイズキャンセリングを3段階で変更可能で、Bluetoothによる音楽のワイヤレス再生にも対応する。

開発の背景には、働き方改革により、パナソニックはじめ大企業の多くでフリーアドレスが導入されたことにあった。コワーキングがトレンドになる一方、一人で集中したいシーンは誰しもあるが、オフィス内に個人用ブースを確保するのはなかなか難しい。そうしたニーズを解決するためのプロダクトとして、「WEAR SPACE」が生まれた。

実際に装着してみたところ、装着時に「重い」と感じることはなく、側圧のみで固定された。現在、ヘッドホン部分はパナソニック製品を組み込んでいるが、製品版で同様の仕様とするか、同社傘下のshiftall(後述)が一から製造するかは現在検討中とのこと

コアターゲットは、ソフトウェアエンジニア、Webデザイナーなど、仕事道具にこだわりを持つデスクワーカーを想定。FUTURE LIFE FACTORY・姜氏は、「それ以外の人たちにも、図書館やスポーツ選手の集中、漫画家、漫画喫茶、図書館などで活用いただけるのでは」とコメントした。

先ほどの発言で、姜氏が多様な活用シーンを想定した裏には、製品化が決定する前に、「SXSW 2018」などのイベントで「WEAR SPACE」を展示したことで生まれたコラボレーション企画にある。

たとえば日本酒のテイスティングを行う「YUMMY SAKE」とのコラボレーションでは、味覚に集中するために「WEAR SPACE」が使われた。また、ASD、ADHDボランティア「tentonto」とのコラボレーションで、ASD、ADHD当事者の装着感を実際に聞き取ることもできた。

大手メーカーとしては、開発過程をオープンにするのは異例のこと。だが、それによって開発側だけでは想像していなかった利用例が生まれたと語った。

量産を手がけるのは「帰ってきた」スタートアップ

「WEAR SPACE project」では、企画・デザインをFUTURE LIFE FACTORYが手がける一方、設計・製造・販売はパナソニック本体ではなく、その傘下のshiftallが手がける。

shiftall CEO 岩佐琢磨氏

shiftallは、「1/8タチコマ」などの製品で知られるハードウェアベンチャー・Cerevoの元CEOである岩佐琢磨氏が代表を務める、ハードウェアのアジャイル量産を手がける企業。キャリアをパナソニックからスタートし、独立してCerevoを立ち上げた岩佐氏にとって、古巣に帰ってきた格好となる。

企画と製造を分けた体制のメリットは開発期間の短縮。パナソニック社内で前例のない新製品を作るには「2年程度かかるケースもある」(姜氏)とのことだが、shiftallが設計・製造・販売を手がけることでその期間を短縮。約10カ月程度で製品化が可能になるとした。

また、岩佐氏はパナソニックに限定しない、メーカー系大企業についての話と前置きした上で「大企業がなくしたもの」と題したプレゼンを展開。「カッティングエッジなプロダクト」「小さなロットで迅速に市場投入するノウハウ」「ノンシリアル(非連続)なイノベーション」がそれにあたるとした。

「WEAR SPACE」について、「音楽を聴く機具から、集中するための機具に大きくアプローチを変えた」点が面白い、と語った岩佐氏。こうしたゼロからイチを生み出すような取り組みが最終製品に結びつくのは(大企業においては)難しいため、同プロジェクトの成り行きが、パナソニック内部にスタートアップマインドを作る上でも重要になると語った。

目標金額は1500万、実物展示も実施

「WEAR SPACE project」のクラウドファンディングは、10月2日からスタートしている。利用したサービスは、CCCの「GREEN FUNDING by T-SITE」。期限は12月11日まで、目標調達金額は1500万円。2019年8月以降にリターンとして製品を届ける想定だ。製品価格は3万5000円だが、支援プランによって割引が設定されている。

「ワークスタイリング 東京ミッドタウン」では、「WEAR SPACE」を体験できる

「WEAR SPACE」の実物は、発表会の行われた「ワークスタイリング 東京ミッドタウン」や「RELIFE STUDIO FUTAKO」「代官山ティーンズ・クリエイティブ」(Designart 2018開催時)など、都内各所で展示を予定している。

「これまで、デザインの提案は悪く言えば"絵に描いた餅"で、社内で提案して却下されたらそこで終わっていた」と姜氏。だが、今回のプロジェクトでは、クラウドファンディングで製品のあり方を市場に問いかけることで、新たな事業機会を素早く検証することを目的としている。最終的にはパナソニックが既存事業にとらわれない新商品を次々生み出せるような会社になっていければ、と抱負を語った。

また、shiftall・岩佐氏は、在席当時からパナソニックがどう変わったかという質問を受けて、「トップが危機感持っていること」と回答。同氏が退職した当時(2007年ごろ)、薄型テレビの好調で業績がV字回復している時と比較して、良い意味でトップダウンが効き始めていると評価した。その一方で「相変わらず(新規事業に対して)ブレーキ役も多い」とも指摘し、同社の関与によって、新事業の創出を後押ししていく姿勢を見せた。

クラウドファンディング開始から一夜明けた10月3日、最も安価に製品を入手可能な「Super Early Bird」プランは、定員100名に達していた。好調な出だしのまま進むことができるか、今後の動向にも注目したい。