打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

復活のテクニクス、世界待望のDJターンテーブル「SL-1200 MK7」投入の真意

復活のテクニクス、世界待望のDJターンテーブル「SL-1200 MK7」投入の真意

2019.01.11

みんなが待ってた「SL-1200 MK7」を今夏に製品化

より多くの音楽を愛する人へ、テクニクスの取り組み

2019年はパナソニックそのものが変わる節目になる

パナソニックは、「テクニクス」ブランドの新製品として、DJなどを対象にした「SL-1200 Mark7 ダイレクトドライブターンテーブル」を発表した。2014年にテクニクスが復活して以来、登場が期待されていたDJ向け製品だ。これによって、テクニクスの事業が新たなフェーズに入ったことを示すことになった。

DJ向けに発売する「SL-1200 Mark7 ダイレクトドライブターンテーブル」

あわせて、Grand Classのネットワーク&スーパーオーディオCDプレイヤー「SL-G700」、Premium Classのダイレクトドライブターンテーブルシステム「SL-1500C」も投入する。これによりテクニクスブランドの製品は23機種にまで広がり、より多様なユーザーに音楽を楽しむ環境を提案できるようになる。

ネットワーク&スーパーオーディオCDプレイヤー「SL-G700」
ダイレクトドライブターンテーブルシステム「SL-1500C」

これらの新製品の発表の場となった家電見本市「CES 2019」(米ラスベガス 1月8日~11日開催)の会場で、テクニクス事業を統括する小川理子執行役員と、パナソニック アプライアンス社 テクニクス CTOの井谷哲也氏に、新製品と事業展望について聞いた。

SL-1200 MK6生産終了から8年、MK7が登場

――2018年は、テクニクスにとってどんな1年でしたか

小川:2018年春に発売した、リファレンスクラスのターンテーブル「SL-1000R」が大きな話題を集めたことがトピックでした。SL-1000Rで実現する音に関しては、技術や企画、デザイン、マーケティングなど、テクニクスに関わるすべての人たちが自信を持って、市場投入したものであり、「この音が、テクニクスの音である」ということを明確に示すことができたといえます。

テクニクスの復活を主導したパナソニックの小川理子執行役員。ジャズピアニストでもある

実際、SL-1000Rは計画の3倍という売れ行きを示しました。アナログの音を最高の環境で楽しみたいというユーザーが多かったことを感じました。最上位のアナログオーディオを実現したことで、「いままでに体験したことのない音が聴こえる」、「アナログの概念を超えた」といった声を、ユーザーの方々やディーラーの方々からいただきました。この製品に象徴されるように、2018年は、テクニクスの取り組みの蓄積がいよいよ実ったといえる1年でした。

――2018年のテクニクス事業全体を振り返って自己採点すると何点になりますか

小川:100点満点で、85点ですね。昨年からは5点ほどあがった感じです(笑)。

2018年は、SL-1000Rによって、テクニクスの音はこういうものだということを定義できましたし、自信をもってお勧めできるものが完成しました。「まずは、ここまでやりたいな」と思った音が実現できました。ただ、やることはまだまだありますから、そのあたりが15点のマイナスになります。

――今回、新たにDJ向けのダイレクトドライブターンテーブル「SL-1200 Mark7」を、2019年夏に発売すると発表しました。この製品はテクニクスにとって、どんな意味を持ちますか

小川:2014年にテクニクスの復活を発表したときに、DJの方々から嘆願書をいただくなど、登場が期待されていたのがDJ向けのダイレクトドライブターンテーブルでした。私たちも、「いつかは製品化したい」と考えていました。その「いつか」というタイミングが、いま訪れたというわけです。このSL-1200 MK7の開発をスタートしたのは2018年1月頃でしたが、このタイミングで様々な要素が揃って、今ならばDJにとって一番いいターンテーブルが投入できると判断し、製品化しました。

ダイレクトドライブのモーターを新たに開発したり、DJ向け製品として搭載する新機能を追加できたりしたことに加え、コストダウンした上でもテクニクスの音を出せるようになったことが大きな要素です。

CES 2019のテクニクス プレスカンファレンスでは、レジデントDJであるSkratch Bastid氏によるデモプレイも披露

テクニクスの再参入当初は、マーケティングの観点から、Hi-Fiオーディオとしてのブランドを確立することを優先し、DJ向け製品の投入は先送りしてきた経緯があります。しかし、この3年間の取り組みを通じて、アナログに対する揺るぎない自信ができたこと、Hi-Fiオーディオとしてのモノづくりをしっかりとやってきたからこその技術やノウハウが確立できました。

そして日本国内のDJを中心に、カナダや英国など世界中のDJの意見も聞き、操作という点での心地よさを追求し、使いやすいものを開発できる環境が整いました。加えて、新たにマレーシアの製造拠点で生産できる体制を敷いたことで、1,200ドル以下という購入しやすい価格の実現にもめどがたちました。さらに楽器店などの新たな販売ルート開拓の体制もできつつあり、DJ向けダイレクトターンテーブルを市場投入するための土壌を、あらゆる観点から整えられたことが背景にあります。

――DJ向けダイレクトドライブターンテーブルは、Hi-Fiオーディオとはモノづくりの手法が異なるのですか

小川:ターンテーブルの技術者は一緒です。そして、SL-1200 MK6の開発者も、今回の新製品の開発に携わっています。ただ、私が開発チームに言っていたのは、これは「楽器」であるということでした。楽器を使う人の声を聞くことが大切であり、それをもとに、楽器として、どんなモノづくりをすればいいのかを追求してほしいといいました。私を含めて、テクニクスの開発メンバーには楽器をやる人が多く、楽器とはどういうものかを知っていますから、この言葉の意味することについては、理解が早かったですね。

井谷:2014年のテクニクスの復活以降、ラインアップしてきたターンテーブルは16ビットのCPUを採用していましたが、今回のSL-1200 MK7では32ビットのCPUを採用しました。また、トルク・ブレーキスピードの調整機能や逆回転再生など、パフォーマンスの可能性を広げる新たな機能も搭載しています。

一方で、新生テクニクスとしての3年間に渡る蓄積も生かされています。2016年に製品化したSL-1200Gをはじめ、アナログオーディオで培ってきた技術を用いて音質を高めています。そしてボタンレイアウトやプラッターの慣性質量など、DJパフォーマンスに影響する仕様についてはSL-1200 MK6を踏襲しているので、過去の製品を使い慣れているDJでも、同様の操作感で使ってもらえます。「楽器」という位置づけですから、手触り感や使い勝手といった点はとてもこだわりました。

2010年に生産終了となったSL-1200 MK6までのシリーズ累計の販売台数は350万台を超えており、いまでも多くのDJに愛用されていますが、そうした方々にSL-1200 MK7を使ってもらったところ、「MK5やMK6に比べて音質がかなり良くなっている」という声をいただけました。

小川:製品化の経緯のなかで、型番に「DJ」と名称をつけようという話もあったのですが、最終的には、これまでの継承性を感じていただけるMK7の型番としました。DJの方々にとって、いままで使っていたものと操作が変わっては使いにくくなってしまうので、その点は継承し、そこに、テクニクスとして新たな機能を搭載しました。継承はしているが、進化をしているというのが、SL-1200 MK7です。

CES 2019の会期中、テクニクスはホテル「ベラッジオ」のナイトクラブを貸し切って「Technics 7th イベント」を開催。多くの招待客で賑わった

2019年は、音楽を愛する多くの人をファンに

――2019年は、テクニクスの復活から5年目を迎えます。どんな1年になりますか

小川:もっと裾野を広げたいですね。昨年後半には、ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン「EAH-F70N」や、ワイヤレスヘッドフォン「EAH-F50B」を投入し、ヘッドフォンのラインアップも増やしました。より多くの人にいい音で、音楽を聴いていただきたいという狙いからです。また、今回のCES 2019にあわせて、Premium Classのダイレクトドライブターンテーブルシステム「SL-1500C」と、Grand Classのネットワーク&スーパーオーディオCDプレイヤー「SL-G700」を発表し、ラインアップを拡充しました。

ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン「EAH-F70N」

テクニクスは、特定の人たちだけにいい音楽を楽しんでもらうのではなく、まさに、「くらしにもっと音楽を」という考え方で製品を投入していきます。現在、23機種のラインアップを、29カ国で展開しています。これをベースに、いままで以上に多くの人にテクニクス製品を届け、ファンになってもらいたいと考えています。

井谷:SL-1500Cには、コアレスダイレクトドライブモーターや高感度トーンアームなど、テクニクス独自の技術を数多く搭載しています。さらに、フォノイコライザーアンプを内蔵するとともに、Ortofon 2M Redフォノカートリッジも付属し、それでいながら、コストを抑えることにも成功しました。

フォノイコライザーを内蔵することで、配線を短くできるというメリットがありますが、一方で、回路が集中することで発生する課題を解決しなくてはならないという難しさがあります。そこで、フォノイコライザー用の専用電源については、ノイズの影響を軽減するためにモーターや制御回路用の電源から絶縁し、さらに、シールド構造により、外来ノイズの影響を抑制しています。「内蔵でありながら、こういう音まで出せるんだ」ということを言ってもらえるほど、追いこんだ作りになっています。これは大きな挑戦ではありましたが、自信を持ってお勧めできる性能を実現しました。

しかもカートリッジもついていますし、フォノ入力端子のないオーディオ機器につなげても、すぐに聴いてもらえます。これによって、アナログレコードを簡単に楽しんでもらうという新たな提案ができるようになります。

――テクニクスは、2014年に、「Rediscover Music」をメッセージに掲げ、「音楽を愛する人たちに向けたHi-Fiオーディオの実現」を目指してきました。今回のDJ向けダイレクトドライブターンテーブルの投入によって、ユーザーターゲットが広がります。このメッセージも刷新となるのでしょうか

小川:それは変わりません。DJ向けダイレクトターンテーブルも音楽を愛する人に向けた製品のひとつです。むしろ、多くの人に音楽を楽しんでもらう方法はまだまだあると考えています。

次のステップでは、パナソニックのアプライアンス社全体で取り組んでいるスマートホームとの連携などを通じて、「くらし」のなかでさりげなく音楽を楽しんでもらう取り組みや、クルマと家をつなぐなどし、様々な空間にテクニクスの世界観を広げていくことも考えたいですね。クルマは、電動化が進んでいますが、それに伴い、軽量化が課題になっています。車内に重たいスピーカーを10個搭載して高音質を実現するのではなく、音場制御をはじめとしたデジタル技術を活用することで、軽いシンプルな構成で、いい音を鳴らすといったこともできるでしょう。そこにはテクニクス独自のLAPC(Load Adaptive Phase Calibration)の利用も有効だと思っています。

私はテクニクスを復活させてから、毎年のように、「飛躍の年にしたい」と言い続けてきました。2019年も、さらに飛躍する1年にしたいですね。これまでにも、私たちなりには飛躍をしてきたつもりですが、外からみると、小さな飛躍にしかみえないかもしれません。外から見ても、大きく飛び始めたといえるように、さらに大きな飛躍をしたいと思っています。

パナソニック全社が次の100年に向かう節目

――小川執行役員は、2018年1月から、パナソニック アプライアンス社の技術担当副社長および技術本部長も兼務しています。この1年の成果はどうですか

小川:2018年は、パナソニックが会社として100周年を迎え、様々な取り組みが行われた1年でした。「くらしアップデート業」や「知能化」といった新たなキーワードも出しました。そうした節目において、技術本部では、これまで100年の家電のモノづくりを、次の100年のモノづくりにどうつなげていくかということを考えはじめました。

くらしに貢献する技術や製品、サービスのすべてが変換点を迎えていますが、最終製品が変化するためには、まずは技術から変わらなくてはいけません。しかし、100年に渡るモノづくりのプロセスを変えるのには、ものすごい力が必要になるのも確かです。

私たちは、この変化に挑戦していきます。技術本部のなかでは、変えなくてはならないという共通認識ができています。そして、変化をドライブするために開発体制も変更しました。現在、技術本部のなかに、エアコン・コールドチェーン開発センター、ホームアプライアンス開発センター、イノベーティブ・エンターテインメント開発センター、R&Dプランニングセンターの4つの開発センターを設置し、デジタルトランスフォーメーションを推進したり、ソフトウェア技術やネットワーク技術に明るい黒物家電の技術者に、白物家電の開発に取り組んでもらったりといったことをしています。

これまでは、ひとつひとつの商品に向き合って開発してきた人たちが、IoTや知能化、くらしという文脈から、横につながったり、サービスとつながったり、あるいはプラットフォームを活用した新たな開発に取り組むといったことをはじめています。

パナソニックの100周年という節目は、技術者の意識を変えるにはいいタイミングでした。そのきっかけによって、次の100周年に向けて、変革をしていくという意識が共通認識として浸透しはじめています。

――パナソニック アプライアンス社では、2021年までに、家電製品の”すべて”のカテゴリーにおいて、知能化した製品を投入する姿勢を明らかにしています

小川:もはや、ハードウェア単品での性能向上や機能強化には、限界があります。ハードのなかに詰め込もうとしていた機能、性能を、クラウドとつないでソフトウェアでアップデートし、ハードウェアを買い換えることなく、くらしに寄り添った家電へと進化させる必要があります。

家電の「知能化」においてはネット接続が前提となり、人の気持ちを察して、ちょうどいいアップデートをしていかなくてはなりません。これをすべてのカテゴリーで展開していきます。また、地域ごとに見ても差がありますから、地域×商品のマトリクスで「知能化」をする必要があります。優先度を考えながら、「知能化」に取り組んでいきます。

パナソニックが、家電業から「くらしアップデート業」に変わって行くには、「100年続いた家電をどう変えていくのか」という意識を全員が持つ必要があります。そして、世界の技術の変化の激しさや、スピードに追随しなくてはなりません。その点では、まだまだ足りないことばかりです。ダイナミックさも足りていません。世界という観点でみると、もっと変えないと変化にキャッチアップできない。今年は、よりダイナミックに、よりスピード感をもって変えていきます。

価格とサイズが日本にピッタリ? フランスの高級車「DS」が東京に旗艦店

価格とサイズが日本にピッタリ? フランスの高級車「DS」が東京に旗艦店

2018.12.28

フランスの高級車ブランド「DS」が東京・南青山に旗艦店

「DS」とは何者で、どこへ行くのか…デザイン部長を直撃!

ドイツ車が優勢の日本にフレッシュな選択肢が登場

美術館やアパレルショップなどが立ち並ぶ東京・南青山。ジャズ・クラブ「ブルーノート」の隣に、ブティックのような外観の自動車ショールームがオープンした。フランスの高級車ブランド「DS」のフラッグシップショップ「DSストア東京」だ。店舗前には駐車場もなく、ちょっと型破りな印象のショールームではあるが、その佇まいも、独自性の高いフランス車を扱っていると思えば違和感がなくなるのは不思議だ。

2018年11月、フランスの高級車ブランド「DS」のフラッグシップショップ「DSストア東京」が東京の南青山にオープンした

DSってどんなクルマ?

「そもそもDSって、どんなクルマ?」と思われた方も多いかもしれない。DSはシトロエンから派生した高級車ブランドで、「シトロエンDS」として2009年に誕生した。日本への導入開始は2013年。2014年には「DSオートモビルズ」としてシトロエンから独立し、呼び方もシンプルに「DS」となった。

これまで、DSはシトロエン時代に生み出したモデルのみを取り扱っていたのだが、2018年7月には第2世代モデルの第1弾となるフラッグシップSUV「DS7クロスバック」を日本で発売した。DSにとっては、独立後に初めて独自設計したクルマだ。

DS第2世代モデルの第1弾となるフラッグシップSUV「DS7クロスバック」。グレードは「So Chic」「Grand Chic PureTech」「Grand Chic BlueHDi」の3種類で税込み価格は469万円~562万円からだ。サイズは全長4,590mm、全幅1,895mm、全高1,635mm

日本でDSを取り扱っているのは、シトロエン販売店、シトロエン販売店に併設される「DSサロン」、そして、独立店舗である「DSストア」だ。今回は、都心で初のDSストアがオープンした。開店記念パーティーには、フランス本国からDSオートモビルズのデザイン部長を務めるティエリー・メトローズ氏が出席。その機会を捉え、DSの魅力や将来のビジョンなどについて話を聞いてきた。

DSのデザイン部長を務めるティエリー・メトローズ氏

先進技術と職人技が融合したクルマ

DSの日本におけるラインアップは、第1世代のモデルから受け継がれる3ドアコンパクトハッチバック「DS3」とDS7クロスバックの2モデルのみ。極端な選択に見えるが、これもDSがラインアップの再構築を図っているためだ。2019年7月には、「パリサロン」(2018年8月)で世界初公開した小型SUV「DS3クロスバック」を日本に導入する予定。DS自体としては、毎年1台ずつ新型車を投入してラインアップを拡大し、最終的にはDS7クロスバックを含む全6モデルの体制を整えるという。2025年には全てのクルマを電動化するとのことだが、これにはハイブリッドも含まれる。

メトローズ氏にDSとは何かを尋ねると、「アヴァンギャルディズム」「リファイン(洗練)」「テクノロジー」の3つの価値を凝縮したものとの答えが返ってきた。これを成しえていないモデルは、DSにあらず……というわけだ。その実現のために大切にしているのが、先進技術の積極的な採用とフランスの職人技「サヴォアフェール(Savoir-faire)」だ。

「DS7クロスバック」も3つの価値を兼ね備えるクルマだ

最新型DS7クロスバックも先進技術を積極的に採用する。例えば、夜間に赤外線カメラで歩行者や動物を検出し、表示警告を行う「DSナイトビジョン」、カメラで路面をスキャンして、路面の凹凸に合わせてダンパーの減衰力を自動調整し、フラットな乗り心地を実現する「DSアクティブスキャンサスペンション」、渋滞時追従支援機能付きアダクティブクルーズコントロールと車線内維持支援機能を組み合わせた自動運転レベル2相当の運転支援機能「DSコネクテッドパイロット」などだ。

インテリアには職人技が光る。ウォッチストライプのレザーシートは1枚の革から作ったもの。革張りのドアパネルやダッシュボードなどは、実際にハンドメイドで仕上げている。ボタンなどに使う「ギヨシェ彫り」は、フランスの高級時計メーカー「ブレゲ」とのパートナーシップで実現。同じく同国の高級時計メーカーである「B.R.M」(ベルナール・リシャール・マニュファクチュール)のアナログ時計を装着するなど、随所でフランス生まれを主張しているところも特徴的だ。

職人技が光る「DS7クロスバック」のインテリア
「B.R.M」のアナログ時計がこのクルマの出自を物語る

DSで最大の特徴となっているのは、何といってもアヴァンギャルドなデザインだろう。DS7クロスバックとDS3クロスバックの内外装を見れば、かなり前衛的だと誰もが感じるはずだ。

一方で、前衛的であるがゆえに、陳腐化しないだけの鮮度を保てるのかどうかも気になるところ。その点についてメトローズ氏は、DSのデザインは単に奇抜さや目新しさを追ったものではないと語る。例えばボディのフォルムは、とてもシンプルな構成で、飽きのこないデザインにしてある。メトローズ氏いわく、「余計な凹凸はなく、シックなデザイン」に仕上げたとのことだ。

DS7クロスバックのアヴァンギャルディズムを強く印象づけるのは、ライトの意匠だ。回転式のフロントLEDヘッドライトやレーザーカット加工のテールランプなどが、デザイン上のアクセントとなっている。これがフランス流の「ウィンク」、つまり遊び心だとメトローズ氏は説明する。こういったデザイン上の強弱をバランス良く組み合わせることで、個性的でありながら古びないデザインを実現しているということなのだろう。

DSが"アクティブLEDビジョン"と呼ぶ先鋭的なヘッドライトユニットは、左右に3個ずつのLEDモジュールを内臓。リモコンキーで解錠した瞬間、180度回転しながら紫の光を放ってオーナーを迎える
レーザーカット加工のテールランプ

気になる今後のラインアップは?

SUV展開を進めるDSだが、今後のモデルラインアップなど、将来のビジョンにも興味がある。高級車ブランドの王道は象徴的なスポーツカーやクーペなどだが、メトローズ氏が必要と考えているのは意外にも「セダン」だった。具体的には、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」なども属する、「Dセグメント」と呼ばれる大きすぎないサイズのものだという。

ただしメトローズ氏は、これを願望というよりも必然だとする。SUVブームに押されてはいるものの、常に一定のニーズが存在することが、セダンを作るべきと考える理由だ。さらに高級車ともなれば、快適性が重視され、運転手付きで後席の利用がメインとなるケースも多い。そのため、後席の乗り心地に優れるセダンは、DSとしてマストな商品だというのだ。

今後のDSに必要な車種は意外にも「セダン」だと語ったメトローズ氏

また同氏は、セダンのニーズは今後、高まっていくだろうとも指摘する。その理由としては、ますます強まる環境規制と将来的に登場する完全自動運転車の存在を挙げた。

車体が高く、重量も重くなりがちなSUVは、空気抵抗が大きく、エネルギー効率では不利となる。そのため、いかに空気抵抗を減らし、効率よく快適なクルマ(自動運転車を含む)を作るかという視点でいけば、セダンの存在が重要になってくる。顧客のニーズに応じるためだけでなく、自動車メーカーが直面する環境問題に対しても、セダンが解決策のひとつとなりうるのだ。現在は確かにSUVブームだが、メトローズ氏は「流行には変化がある」と気にかけない。

ドイツ車が強い日本、DSの優位性とは

DSと日本のマッチングについてメトローズ氏は、日本には洗練されたものと先進技術を好む人が多いとの考えを示した上で、それらをクルマで融合させているDSと日本は相性がよく、必ず支持されるだろうと自信をのぞかせた。日本では今後、認知と販売ネットワークの強化に力を入れていくとのことだ。

新しいブランドであるDSは現在、世界中で販売ネットワークの強化を進めている。日本ではDSストアとDSサロンを含めて8店舗を展開しているが、2019年中には新たに4店舗をオープンする予定だ。さらに、近いタイミングで5~6店舗を追加することを目標に動いているという。

2019年に日本で4店舗を追加するというDS

出店ペースはかなりスローに感じるかもしれないが、日本ではフランス車がニッチな存在であることを考えると、このくらいが着実な動きと捉えることもできる。クルマとしてみると、DSのラインアップは日本でも扱いやすいサイズであり、価格も高級車としては現実的な設定となっている。

あらゆる輸入車が手に入る日本でも、やはり主力はドイツ車だ。いいクルマが多いのは間違いないが、都市部などではドイツ車が国産車同様にあふれていて、人とは異なる選択という輸入車の楽しみは薄れている。その点、ブランド自体が新しく、ラインアップも第2世代へと突入したばかりのDSは、全ての面でフレッシュなところが魅力といえるだろう。

生活に変化をもたらしたいと考える人には、DSに注目してみて欲しいと思う。アヴァンギャルドなDSは、いいエッセンスとなるはずだ。