「パソコン」の記事

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

新型VAIOの攻め手は十分か? 日の丸パソコン再起の展望

2018.11.14

VAIOが独自機構の新型モバイルPC「A12」を発表

パソコン事業の成長は数年続き、海外展開も拡充

パソコンのVAIOから、ITブランドのVAIOを目指す

VAIOが業績が好調だ。2017年度は売上、利益ともに2ケタ成長となる増収増益を達成した。PC事業が順調なことに加え、EMS事業も進展したことが奏功したという。11月22日にはオールラウンダーPCというコンセプトを打ち出した新型モバイルパソコン「VAIO A12」を発売する。国内PC事業は合従連衡や海外への売却が続くが、数少ない「純国産」のPCメーカーであるVAIOの今後の戦略とは。

VAIO A12

働き方改革を追い風に地固め、今後は拡大を目指す

VAIOは、ソニーから独立後、法人向けビジネスを中心に据えたことで、早くから黒字化を実現しており、今期も順調な決算となった。売上高は前年同期比10.8%増となる214億8,800万円、営業利益は同13.9%増となる6億4,800万円で、過去最高益を達成した。

PCの法人需要が旺盛で好調な決算となった

法人向けモバイルPCの伸びが前年比30%増と順調だった点が特徴で、その背景にあるのが昨今のトレンドとなっている「働き方改革」だ。テレワークやフリーアドレスなど、それまでの決まったデスクに座ってデスクトップPCを操作するという環境から、ノートPCを持ち歩いて仕事をするという環境に移っていくなかで、VAIOの製品構成がこれに上手くはまった。

VAIO株式会社 代表取締役 吉田秀俊氏

VAIOでは、2017年から11~15インチのモバイルPCでラインアップを構築しており、今年はその後継機種を投入していた。パフォーマンスに特化したVAIO True PerformanceやVAIO Premium Editionといったバリエーションモデルも提供してはいるが、一方でVAIO ZやVAIO Z Canvasといった過去のハイエンドモデルに相当する製品はなく、あくまで「メインターゲットは法人ユーザー」を想定していることが伺える。

同社の吉田秀俊代表取締役は、今後も数年はPC事業が伸長を続けると想定している。働き方改革の拡大を受けて法人需要がさらに伸びることに備え、ラインアップをさらに拡充することで売り上げを伸ばしたい考えだ。

構想3年、開発2年の「VAIO A12」

これを目指して今月発売する新ラインアップが、12.5インチサイズのデタッチャブルWindows PC「VAIO A12」だ。市場にある課題とその解決を徹底的に図ったという製品で、求められているPCはクラムシェルか2in1か、タブレットタイプかコンバーチブルかデタッチャブルか、そういったゼロからの検討を行った結果、「構想3年、開発2年」を費やして仕上げたモバイルPCだという。

VAIO A12は、既存のカテゴライズでは、タブレットとキーボードの着脱機構を備えたいわゆる2in1モバイルPCだ
「膝上で使える」問題の解決や、まともなキーボードの搭載など、クラムシェルPCの使い勝手を求めた

前提とした課題がすべて解決しない限り製品化を見送るという強い意識で開発されたのがA12であり、それには新たな技術的ブレークスルーが必要となった。それが「Stabilizer Flap」と呼ばれる新たなデタッチャブルの機構だ。

「Stabilizer Flap」と呼ばれる独特のデタッチャブル機構が最大の特徴

きっかけは書籍の背の動きだったそうだが、軽量なPCを実現しながら、クラムシェル型と同等の使い勝手を実現した。キーボード部にはVGAやLAN端子を含む多くの端子類を装備して、周辺機器との接続性を求める日本の法人ユーザーのニーズに対応させた。実際、すでにA12導入に向けて動いている法人の中には、「VGAがあるのが選択の決め手」というところもあるそうだ。

機能はとにかくニーズの実現を徹底し、端子が豊富という今では貴重な仕様。手持ちのモバイルバッテリで本体を充電できる5V充電機能もいざというときに役立つ

コンシューマ向けで考えると、端子を減らしてスッキリとしてさらに薄型化、軽量化、低価格化も期待したいところだが、豊富な端子に対する法人ニーズは根強く、その点はVAIOとして譲れない線ということだろう。ただ、薄型軽量であることにはこだわり、タブレットとしては重さ607グラムで薄さ7.4ミリ、キーボードユニットを装着しても重さは1,099グラムまで抑え込んだ。

ソニー時代から同社が得意とする高密度実装技術を活かし、薄型軽量化にもこだわった

海外市場に再挑戦、PCラインアップも早々に増やす

PC事業では、一度は撤退した海外市場に向けて再挑戦にも乗り出している。販売エリアを順次拡大しており、今年は12カ国まで拡大した。今後は北米、中国、欧州での展開を計画している。特に欧州へは「検討中というわけではなく、決めている。来年早々にも展開する」(吉田氏)という。

PC事業の勝算はあるのか。吉田氏は、会社としてのVAIOが240人体制になり、「(ソニー時代に比べ)限られたリソースの中でどう成長戦略を描けるか」が課題であったと振り返る。この1年は「足りているもの、足りていないものを見極める」ことに集中し、独立後1~3年という「短期決戦を乗り切った」と話す。

引き続き、「VAIOはPC事業だけで将来生き残れるのか、という(市場の)問いに答えなければならない」としており、その答えとしては、「ビジネスユーザーにPCは必要なので、PCが大きな核としてVAIOを支えるのは間違いない」とするが、それだけではPC事業としての生き残りには不十分というのが吉田氏の認識だ。

そのため、技術革新や世の中の進化に伴って、ユーザーの生産性をいかに高められるかという観点で新しいPCを打ち出し、生き残りを図っていく考え。その一つの回答が「VAIO A12」となるが、来年以降の新製品でもそうした点を踏まえた新製品を投入していく。「来年度はもう少し違った形で生産性を高める製品を提供していく」という意向を示しており、年明け早々には今までとは異なるタイプの製品を企図しているようだ。

現行のラインアップ。最上部にあるのがVAIO A12で、来年さらなる新ラインアップを展開する

PCはVAIOのコアだが、VAIOはPCブランド脱却目指す

吉田氏は「貪欲な姿をもちながら、VAIOのブランドを伸ばす」と話すが、ここで大きな戦略の柱となるのは、「PCブランド」としての「VAIO」ブランドからの脱却だという。PC事業は順調とは言え、ライバルも多い。MicrosoftのSurfaceだけでなく、レノボとその傘下のNEC、富士通、鴻海傘下のシャープ、東芝、そしてデル、HPといった米国勢もあり、働き方改革の影響で伸びた市場をどこまで獲得できるかは未知数だ。

吉田氏は「次世代ITブランドとしてのVAIOを目指す」としており、単にPC単体を売るのではなく、セキュリティやキッティングといった付加価値サービスも盛り込むことで、トータルソリューションとしてのPC事業を展開する。

これに、EMS事業でのシナジーも追加していきたい考えだ。あわせてPCの周辺機器などを扱うことで、PC事業の強化にも繋げていき、市場全体の活性化も狙える。ハード、ソフトの両面から事業領域を拡大していく。

PC事業は、周辺機器やセキュリティソリューションなどでさらなる拡大を目指す

EMSやパートナーの強化、IoTなどの新規事業など、ビジネス領域の拡大で企業としてのVAIO自体の強化を目指すが、今後も屋台骨となるPC事業で好調を維持できるか。ここまでの短期決戦を乗り切り、ここから一過性の盛り上がりではなく継続した強い事業構造への転換を図る、吉田氏が「フェーズ2」と呼ぶVAIOの新たな成長戦略がはじまったばかりだ。

なぜデルは働き方改革に合わせて「デスクトップPC」を売り込むのか

なぜデルは働き方改革に合わせて「デスクトップPC」を売り込むのか

2018.08.08

デスクトップPCが働き方改革で示す意外な役割

オフィスから動かさないのにノートPC、性能が犠牲に

狭額縁ディスプレイ普及はフリーアドレス潮流に合致

6月下旬、デルは法人向けデスクトップPCやディスプレイの新製品を発表した。その中で注目したいのは、デスクトップPCは「働き方改革」にも有効活用できるという、デルの意外な提案だ。

デル「OptiPlex」シリーズのデスクトップPC

PCメーカー各社は、働き方改革の波に乗り、持ち運びしやすいノートPCを売り込んでいる。なぜデルは、このトレンドに反してデスクトップPCを推すのだろうか。

デルの法人向けPC事業が好調

スマホの勢いに押され、停滞していた世界のPC市場だが、Gartnerの調査では2018年に1.3%の増加に転じる見込みだ。PCはコモディティ化が指摘される一方で、法人向け市場は一定の規模を維持しており、毎年の買い換え需要が見込まれている。

その中でも、デルの法人向けPC事業は好調だという。IDCの調査では、日本での2017年の法人向けPCの出荷台数は対前年比で9.6%増、ディスプレイ製品は8%増となり、シェアも1ポイント近く増えている。

デルによれば、好調を牽引しているのはノートPCではあるものの、デスクトップPCの「OptiPlex」シリーズは国内1万3600社から38万9800台の受注があり、前年比で増加したという。

デルのデスクトップPCは、小さいものから「超小型」「省スペース」「ミニタワー」があり、ディスプレイを一体化した「オールインワン」を加えた4種類となっている。

誕生から25周年を迎えたデスクトップPC「OptiPlex」シリーズ

その中身も進化を続けている。CPUにはインテルの「第8世代Core」を搭載。HDDを高速化するインテルの高速キャッシュメモリ「Optane」の搭載も選択できる。クラウドではなくPC内にデータを保管する場合でも、安価で大容量のHDDを高速化できることがメリットだという。

ディスプレイの新製品の特徴は、コンパクト化だ。実はフリーアドレス席の増加などにより、ナレッジワーカーのデスクスペースは狭くなる傾向にあるという。そこでデルは底面積の削減や狭額縁化を進めてきた。同じ画面サイズでも、よりコンパクトに利用できるというわけだ。

2つのディスプレイを横に並べたデュアル利用でも、額縁が目立たない

「動かさないノートPC」よりはデスクトップPCを

デルはデスクトップPCを積極的に展開しているものの、時代の流れがノートPCにあることは否めない。最近では13インチ前後のモバイルノートが人気を集めており、停滞するPC市場でも出荷台数を毎年伸ばしている。

ノートPCを社外に持ち出せない職場は少なくないが、フリーアドレス席ではロッカーからPCを取り出し、会議室に持ち込むなど、社内でもモバイルノートが活躍する場面は増えている。

だが、ここでデルは「持ち運びをしないノートPC」に注目したという。たしかに、法人向けノートPCで主流を占める15インチ前後のモデルは、据え置き用途を前提にしたものが多い。

デルの調査では60%が「社内に持ち運ばないノートPCがある」と回答

この据え置き用途について、デルはデスクトップPCという選択肢を提案してきた。同じ価格なら、ノートPCよりデスクトップPCのほうが性能は高い。さらに大画面やデュアルディスプレイを駆使して、生産性向上も期待できるという。

画面サイズを重視するナレッジワーカーも多い。腰を落ち着けて仕事をするならば、ノートPCの狭い画面より大型ディスプレイのほうが効率が良いのは明らかだ。ビジネス向けのPシリーズのディスプレイも、24インチモデルが2万2980円、27インチモデルが3万480円(税別、送料込み)と、それほど高いものではない。

ノートPCでも大画面を活用したいという声は多い。デルのUSB Type-C対応ディスプレイなら、対応したノートPCとケーブル1本でつなぐだけで画面出力と65Wの給電が可能になる。頻繁にノートPCを持ち出す場合でも、ケーブルをつなぎなおす手間がかからないというわけだ。

ノートPCとディスプレイをUSB Type-Cケーブル1本で接続

働き方改革といえば、スタイリッシュなノートPCを持ち運ぶシーンが強調されがちだ。だが、本当に業務効率を上げたいなら、デスクトップPCの活用やノートPCと大画面ディスプレイの組み合わせにも目を向けてほしい、というのがデルの提案といえる。
 

インクジェットプリンターの主戦場は大容量インクタンクモデルへ

インクジェットプリンターの主戦場は大容量インクタンクモデルへ

2018.08.06

エプソンのプリンター、大容量インクタンク機の累積販売台数が3,000万台を達成

今後も従来のインクカートリッジから大容量インクタンクモデルへの転換を加速

インクカートリッジで収益を得る構造にかげり? キヤノンにも変化が

セイコーエプソンの大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターの世界累積販売台数が3,000万台に達した。そして同社は、今後も大容量インクタンクモデルの販売をさらに加速させる姿勢をみせる。

2018年度には販売総数の55%が大容量インクタンク機

セイコーエプソンは、2018年度の基本戦略として、従来のインクカートリッジモデルから大容量インクタンクモデルへの転換をさらに加速させる計画を明らかにしており、2018年度の年間販売計画は、前年比20%増の950万台。これは、同社のインクジェットプリンター販売総数の約55%を占めることになる。

2017年度実績は、50%弱としていた構成比は、いよいよ2018年度には過半数を突破。名実ともに、大容量インクタンク搭載プリンターが、エプソンのインクジェットプリンター事業の主軸になるというわけだ。

エプソンのインクジェット事業、ついに大容量インクタンク機が主軸に

セイコーエプソン 取締役 執行役員 経営管理本部長の瀬木達明氏は、「欧米などの先進国においても、2018年度には2割弱を大容量インクタンク搭載プリンターモデルが占めることになる。日本でも、2018年度には2割弱にまで引き上げ、今後、当社インクジェットプリンターの主流に位置づけたい」とする。

セイコーエプソン 取締役 執行役員 経営管理本部長の瀬木達明氏

大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターは、2010年10月に、インドネシアで発売したのを皮切りに、2017年度には、販売エリアを約150の国と地域にまで拡大。低プリントコストに加えて、使い勝手を向上させた製品を投入するなど、ラインアップを強化。大容量インクタンク方式の先駆けともいえるエプソンが、この分野では、圧倒的な世界ナンバーワンシェアを獲得している。

日本でも大容量インクタンク搭載プリンターのラインアップを強化しており、最大の需要期となる昨年の年末商戦でも、テレビCMでの積極的な訴求と、量販店店頭での展示に力を注いでいた。昨年は、日本における大容量インクタンク搭載プリンターの攻勢はわずか数%であり、残りの90%以上を占めるインクカートリッジプリンタの訴求はほとんど行わないという異例のマーケティング手法を用いていた。同社のコメントなどを聞くと、今年も同様の手法が取られるのは明らかだ。

ビジネスモデルを変え、台数減も増収

セイコーエプソン 取締役 専務執行役員 プリンティングソリューションズ事業部の久保田孝一事業部長は、「大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターは、レーザープリンターやインクカートリッジ方式のプリンターと比較して、印刷コストやインク交換の手間がかからず、環境負荷も低いことから、お客様に安心して印刷していただける製品」とし、「エプソンはプリンターのビジネスモデルを変革し、世界中のお客様が豊かな創造性と高い生産性を発揮できる、快適な印刷環境を届けたい」とする。

先頃、セイコーエプソンが発表した2018年度第1四半期決算でも、大容量インクタンク搭載プリンターの好調ぶりが示された。

前述の瀬木氏は、「大容量インクタンク搭載プリンターは、2018年度第1四半期の結果を見ても、好調に推移している。年間950万台の目標に向けて、順調なスタートを切った」とし、「競合他社も、大容量インクタンク搭載プリンターを投入してきたが、エプソンは、40機種以上のラインアップを持っていること、高い耐久性を持つエプソン独自のマイクロピエゾの優位性もあり、製品競争力が高い。レーザープリンターからの置き換えも増えているが、インクジェット同士の戦いに持ち込んでも勝てる」と自信をみせる。

2018年度第1四半期のプリンター事業の実績

同社の第1四半期におけるプリンターの売上高は、前年同期比12億円増の1,163億円。この成長のベースになっているのは、やはり大容量インクタンク搭載プリンターだ。

「ビジネスモデルを変革させる戦略で販売した結果、大容量インクタンク搭載プリンターが、新興国、先進国ともに伸張し、大幅な増収になった」と説明する。

新興国での販売がさらに拡大していることに加えて、すでに、欧州、米国では、2割近い構成比にまで拡大しているという。「今年は先進国での展開を強化していく考えだが、当初の計画よりも進んでいる状況にある」とする。

大容量インクタンク搭載プリンターの好調ぶりは、インクカートリッジモデルでのビジネスにも変化を与えている。

瀬木氏は、「インクカートリッジモデルは、価格維持施策によって販売が減少している」と前置きしながらも、「今年度は、他社のキャンペーンに追随するといった過度なことは行わない」として、インクカートリッジモデルで他社が仕掛ける価格戦略には対抗しない姿勢をみせる。

これが、結果として、プリンター事業の収益性の改善につながっているのだ。

「過度な戦いは避け、価格維持施策を堅持したことで、販売台数は減少しているが、プリンター本体合計では増収になっている」という。

インクカートリッジで収益を得るビジネスモデルに変化

欧米では、現在も、競合他社のインクジェットプリンターのプロモーションが継続しているが、エプソンは、これに対しても過度な対応は行っていないという。

実は、プリンターの最大の商戦期が含まれる2017年度第3四半期(2017年10~12月)に、エプソンは、競合他社のキャンペーンに対抗する形で、価格対応を図った。だが、このときに、低価格でプリンタを購入したユーザーは、大量に印刷するという用途よりも、年賀状印刷などのスポット利用が多く、インクカートリッジの追加購入が少ない傾向があるという。

本体を低価格で販売して、インクカートリッジで収益を得るモデルが、インクカートリッジモデルの収益構造だが、過度な低価格キャンペーンを打っても、本体購入後にはインクカートリッジを購入せず、収益を得にくいユーザーばかりが増えても収益構造を悪化させるだけだ。

エプソンは、大容量インクタンク搭載モデルという新たなビジネスモデルを構築したことで、インクカートリッジモデルでは無理な仕掛けをせずに済むというわけだ。

「第1四半期には、インクカートリッジそのものの販売数量は、前年同期比7%減となっており、とくに西欧では想定以上に落ちている。インクカートリッジモデルで過度な戦いは避けて、無理な仕掛けをしないことと、その一方で、大容量インクタンク搭載プリンターの販売が増加していることが、インクカートリッジそのものの販売数量の減少に影響している」という。

インクカートリッジの販売が減少したため、インク全体では減収となっているが、インクの下振れを、大容量インクタンク搭載プリンターがカバーしている格好だ。

インクカートリッジの販売減を、大容量インクタンクでカバーする格好に

エプソンは第1四半期においては、前年同期に比べて広告宣伝費や販売促進費を増やしているが、これは大容量インクタンク搭載プリンターをはじめとする戦略製品のプロモーション強化のための費用である。

また、在庫の回転日数は、2018年3月には74日間だったものを、2018年6月には83日間に増やしている。これも、大容量インクタンク搭載プリンターの在庫を増やしているのが要因だ。「部材確保が予想以上にスムーズであり、それが在庫の増加にもつながっているが、今後の大容量インクタンク搭載プリンターの販売拡大に向けて貯めているところである」と説明する。

今年の年末商戦、競合にも動きが

では、今年の日本の年末商戦では、どうなるのだろうか。

エプソンは、昨年同様、大容量インクタンク搭載プリンターの訴求を中心にする施策になりそうだ。年末年始に恒例となっているキャッシュバックキャンペーンにも、積極的には追随しない可能性も高い。

だが、対抗するキヤノンも、価格重視のキャンペーンや低価格モデルの販売には慎重な姿勢を、いまからみせている。

キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)が発表した2018年度上期(2018年1~6月)連結業績の会見のなかで、同社の松阪喜幸 取締役 専務執行役員は、「キヤノンは、大容量インクタンク搭載プリンターやビジネスインクジェットプリンターでは出遅れている」と前置きしながら、「ホームプリンターでは、年賀状での利用を含めて、ドキュメントボリュームが減っている。やみくもに台数シェアを追うのではなく、高付加価値モデルへのシフト、大容量インクタンクモデルへのシフトを行っていく」とする。

こうしたコメントを聞く限り、例年通り、各社のキャンペーンが実施されたとしても、その内容は少し変化しそうだ。

そして、今年の年末商戦においては、大容量インクタンク搭載プリンターで先行するセイコーエプソンの手の打ち方が、市場動向に大きな影響を与えることになりそうだ。

果たして、セイコーエプソンは、今年の年末商戦に、どんな手を打ってくるのだろうか。大容量インクタンク搭載プリンターを前面に打ち出したエプソンの戦略が、市場競争にどんな影響を与えるかが注目される。