「バイク」の記事

“転ばないバイク”にスポーツモデル登場! ヤマハが新型三輪「NIKEN」を発売

“転ばないバイク”にスポーツモデル登場! ヤマハが新型三輪「NIKEN」を発売

2018.09.25

転倒リスクを抑えた大型三輪バイクが誕生

転ばないバイクを目指すNIKENが新たに搭載するテクノロジーとは

LMW市場の広がりと今後の展望

ヤマハ発動機は9月13日、独自のフロント二輪機構「LMW」(リーニング・マルチ・ホイール)を採用する大型三輪バイク「NIKEN」(ナイケン)を発表した。販売価格は税込み178万2,000円。同日より全国のNIKEN取扱店にて予約受付を開始した。納車は年内の予定だ。

「第45回東京モーターショー2017」に登場して注目を集めた「NIKEN」がいよいよ市場に

しっかりと路面を掴むLMWでリスク低減&安定性向上

「トリシティ125」「トリシティ155」に続き、バイクのように傾斜して旋回するLMWを採用した前二輪のモーターサイクルとして市場に登場するNIKEN。845ccの水冷直列3気筒エンジンを搭載する前二輪初の大型スポーツモデルだ。

搭載するエンジンは現行モデル「MT-09」用のエンジンをベースとし、クランク慣性モーメントを最適化。粘り強いトルクを引き出し、スムーズに吹け上がる

前二輪という独特の形状を持つLMWは、滑りやすい路面コンディションでも前輪のいずれかが路面をグリップすることで、前輪のスリップによる転倒リスクを抑える。また、突然の横風で煽られるシーンや段差を乗り越える際の衝撃、直進時の強いブレーキ操作など、運転中にバランスを崩すさまざまな場面において、抜群の安定性を発揮するという。つまり、NIKENが目指すのは“転ばないバイク”であり、そのためにライダーをアシストするテクノロジーがLMWというわけだ。

転倒のリスクを低減し、安定感のある走行を実現するのがLMWだ

ヤマハの新たなチャレンジ! NIKENが搭載する新技術とは?

転ばないバイクの実現に向けて、ヤマハはNIKENに新たなLMWテクノロジーを投入した。その1つが、自然なハンドリングと傾斜特性に貢献する「LMW アッカーマン・ジオメトリ」と呼ばれる技術だ。

ヤマハでNPM事業統括部長を務める花村直己氏は、「NIKEN」が搭載する新技術を明らかにした
ヤマハ独自のパラレログラムリンクを用いたサスペンション・ステアリング機構「LMW アッカーマン・ジオメトリ」

同技術のポイントは、旋回時に車体が傾斜している状況で、車輪が向く方向をコントロールできるところ。通常、前二輪の車両を大きくバンクさせるとタイロッド(ステアリング操作をタイヤに伝える棒状の部品)も傾き、前左右輪の方向性に差が生じてしまうが、「LMW アッカーマン・ジオメトリ」は常に同じ旋回方向を向くような設計となっている。これにより、車両を大きくバンクさせた場合でも前後左右輪は同心円を描くので、スムーズな旋回と自然なコーナリングを実現できるそうだ。

中空構造パラレルアームや前後倒立式サスペンションを採用することで、優れた剛性バランスに仕上がったフロントまわり

エキサイティングな走りが楽しめるよう、バンク角は45度まで傾向可能となっている。これは、フロントフォークを車輪の外側に配置し、左右のタイヤ間隔を410mmに設計することで実現した角度だ。加えて、前後の重量バランスを理想とする前後50:50に配分するため、ヤマハは新たな二軸ステアリングシステムも開発した。

「NIKEN」のリアビュー。前後の重量バランス50:50を実現するため、ライディングポジションが後ろ寄りになるように調整してある

そのほか、唐突なエンジンブレーキの発生を解消する「アシスト&スリッパークラッチ」や、シフトアップ操作を支援する「クイック・シフト・システム」、路面状況やライダーの好みに合わせて制御の強さを調整できる「トラクション・コントロール・システム」、長距離走行時の疲労低減に貢献する「クルーズコントロールシステム」などを搭載するNIKEN。ライダーをサポートする機能が充実している印象だ。

剛性バランス・コンパウンドを最適設計した「NIKEN」専用の120/70R15のVレンジタイヤをフロントに採用

トリシティがあくまでもコミューターであるのに対し、NIKENはバイクの特性を熟知したライダーでも、ロングツーリングやワインディングでの走りが楽しめる作りとなっている。

「NIKEN」登場で今後のLMW開発が加速?

自身もバイク乗りであるヤマハ代表取締役社長の日髙祥博は発表会で、NIKENに試乗した感想を「フロントの接地感がコーナリング中で最も気になるところですが、前二輪の場合、手に伝わってくるグリップ感が全く違ってくる」と語った。

発表会に登壇した日髙社長。「NIKEN」に試乗した際、手に伝わるグリップ力の確かな違いを感じ取ったという

LMW初の三輪バイク「トリシティ125」には発売当初、想定を大きく上回る注文が殺到。新たな乗り物に対するファーストインパクトは絶大だったそうだ。その後、勢いはいったん落ち着いたものの、売れ行きは緩やかな右肩上がりの曲線を描いているという。日髙社長は、安全性の高さをはじめとするLMWの周知が広がっていると見る。

現在、国内の二輪年間需要が約36万台という状況の中で、トリシティは「125」と「155」を合わせて約5,000台を販売するなど、着実にシェアを広げている。今回のNIKEN発売で、ヤマハが一気にシェア拡大を狙ってもおかしくないが、日髙社長の考えは少し違う。

「初年度の全世界販売目標は2,500台、そのうち国内では400台~500台を販売したいと我々は計画しています。400ccを超える自動二輪の需要が約6万台の中で、まずは400台~500台ということですので、急激にこのセグメントが拡大するというのはないと考えています」と語った日髙社長は、今後について「実際に使用されたユーザーから今後、さまざまなフィードバックがあると思います。それを二輪や三輪、もしくはそれ以外の四輪、五輪、六輪の技術革新へとつなげていきたい」と続けた。

二輪の走る楽しさを三輪で再現する「NIKEN」。車体が安定して疲れにくいため、ロングツーリングにもぴったりだ

新しい価値や楽しみ方を提供するLMWのラインアップに、NIKENの登場で大型スポーツモデルが加わった。ユーザーにとって、選択肢の充実は歓迎すべきことだろう。NIKENの登場により、不振が叫ばれる二輪市場にはどのような影響があるのか。LMWの今後の展開とともに、注目していきたいところだ。
 

「Z900RS」だけが原因? レトロデザインのバイクが増えている理由

「Z900RS」だけが原因? レトロデザインのバイクが増えている理由

2018.04.28

1960~70年代のデザインを今に蘇らせたような姿のバイクが、新型車として登場することが目立ってきた。なぜこうしたバイクが増えてきたのだろうか。この傾向はすべてのクラスについて言えることなのか。販売台数やユーザー層のデータを見ながら考えた。

なぜレトロなデザインのバイクが増えているのだろうか(画像はカワサキ「Z900RS CAFE」)

ガラリと変わった小型二輪の販売状況

全日本軽自動車協会連合会(全軽自協)が発表している二輪車の月別販売台数で、去年の暮れから数字が激変している。

我が国の二輪車は、50cc以下が原付一種、51~125ccが原付二種、126~250ccが軽二輪、251cc以上が小型二輪に分かれており、運転免許は原付一種が原付、原付二種は普通二輪小型限定、126~400ccが普通二輪、401cc以上が大型二輪になっている。微妙な違いがあるのは、免許は道路交通法、登録は道路運送車両法と異なる法律でルールが決まっているためだ。

前述の全軽自協が統計を取っているのは、このうち軽二輪と小型二輪だ。後者で昨年12月以降、状況がガラッと変わった。日本には本田技研工業(ホンダ)、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業(カワサキ)の4メーカーがあり、このクラスではホンダが1位になることが多い。ところが昨年12月以降は、カワサキがトップをキープしている。

カワサキの人気上昇を牽引する「Z900RS」

最も驚くのは前年同月比の数字で、昨年12月以降、カワサキの伸び率は軒並み200%を超えている。つまり、昨年の倍以上を売っているのだ。おかげで2017年度は、小型二輪全体でもこの5年間で最高の販売台数を記録した。伸び率のトップはもちろんカワサキで136%をマークした。

なぜここまで変わったのか。かつての名車「Z1」を彷彿とさせるカワサキ「Z900RS」が昨年の東京モーターショーで発表された効果だろう。

「Z900RS」の登場でカワサキの状況は変わった

カワサキは1989年にも「Z1」を彷彿とさせるスタイリングの「ゼファー」シリーズ、5年後には“ローソンレプリカ”の愛称を持つ「Z1000R」のイメージを継承した「ZRX」シリーズを登場させ、1998年には60~70年代の名車「W」シリーズの復刻版と言える「W650」を発表するなど、往年の名車のエッセンスを今に蘇らせた車種を送り出しヒットにつなげてきた。でも、「Z900RS」ほどの人気ではなかったという記憶がある。

懐かしさだけではない「Z900RS」人気の理由

なぜ「Z900RS」の人気がここまで高まっているのか。理由を自分なりに考えれば、アドベンチャーツアラーの記事でも書いたように、まず背景として、大型バイクのライダーは高齢化し、マシン選びはスピードよりも乗りやすさ重視に変わりつつある。そんな中、彼らが若い頃に憧れたマシンに乗りたいと考えたとしても、近年「Z1」の中古車価格は高騰しており、程度の良い個体だと200万円以上の値がつく状況にある。そこに登場した「Z900RS」にライダー達が注目したのではないだろうか。

しかも「Z900RS」、見た目は懐かしさを感じるけれど中身は最新だ。エンジンは「Z1」や「ゼファー」のような空冷ではなく、モダンなロードスポーツ「Z900」と基本的には共通の水冷並列4気筒を搭載する。電子制御による安全装備も、ABSとトラクションコントロールを備えており平均以上と言ってよい。旧車のような不安感はなく、逆に安心感を抱かせる内容だ。

見た目はレトロでも「Z900RS」の中身は最新だ

もうひとつ、レトロなデザインの新型車が登場しているのは外国車が作った流れでもあり、ベテランライダーたちが気になっていたところにカワサキから「Z900RS」が登場し、決断に至ったというケースもありそうだ。

欧米のレトロデザインバイクも選択肢が充実

バイク人気について書いた記事の中で、二輪車の世界は日本メーカーが主役であり、欧米のブランドは昔から使っているエンジン型式を核とした、味で勝負する車種が中心になっていると書いた。

米国のハーレーダビッドソンはその代表だろう。懐かしさを感じるデザインに、大排気量のV型2気筒エンジンを組み合わせ、ゆっくり走っても満足できる車種が中心となっている。

ハーレーダビッドソンの「ロードキングスペシャル」

英国のトライアンフも、モダンな車種と並行して、1959年にデビューした空冷並列2気筒「ボンネビル」の復刻版を2001年に発表。水冷化された近年はモダンクラシックシリーズとしてバリエーションを増やしている。

トライアンフのモダンクラシックシリーズ

さらに2013年には、ドイツのBMWが1970年代の高性能車「R90S」に範を取った「R nineT(ナインティ)」シリーズを登場させた。イタリアのドゥカティも、1960年代に米国で人気を博したオフロードも走行可能なスタイルを、2015年に昔と同じ「スクランブラー」の名前で復活させた。

左がBMW「R nineT」、右がドゥカティ「スクランブラー」

アドベンチャーツアラーについて書いた記事では、ライダーの高齢化が日本だけでなく欧州でも進んでいることにも触れた。昔から変わらぬスタイルを貫いているハーレーやトライアンフはともかく、近年、BMWやドゥカティがレトロデザインのモデルを送り出したのは、現地の事情も関係しているだろう。

様相を異にする軽二輪カテゴリー

しかし、このレトロデザインブーム、カテゴリー別では小型二輪に限った現象だと思っている。同じバイクでも軽二輪のカテゴリーは、やはり前年度比で販売台数を伸ばしているものの、レトロデザインはほとんどないからだ。

メーカー別に前年度比の販売台数を見ると、ホンダの149%、スズキの169%が目立つ。スズキは150ccの「ジクサー」など、安価な車種をいくつか送り出したことが効いているようだ。一方のホンダは、クラストップの38psエンジンを積み、価格も75.6万円と飛び抜けた「CBR250RR」が注目されている。

スズキの「ジクサー」

ホンダによれば、この「CBR250RR」の購入者の約半数は、驚くことに20~30歳代だという。ライバルのヤマハ「YZF25R」も若いライダーが多いそうだ。

ユーザー別の商品開発が可能な小型二輪と軽二輪

日本自動車工業会が4月に公表した2017年度二輪車市場動向調査によると、原付を含めたバイクの購入理由として多く挙がったのは、「身軽に動ける」「移動の時間が短縮できる」「自転車より楽」「燃費が良い」などだった。

昔はバイクに乗りたい理由として、スピードや爽快感という理由が多かったという記憶があるけれど、現在は機動的かつ経済的という、自転車に近い理由で選ぶ人が多くなったということになる。

ホンダの「CBR250RR」

いずれにしても軽二輪と小型二輪とでは、ユーザー層が異なるようだ。ただ、車検がないなど維持費が安い軽二輪が若者向け、輸入車の選択肢も多い小型二輪がベテラン向けというのは理にかなっていると思うし、ユーザーの好みに特化したものづくりができるので好ましいのではないかという気もする。

警察庁は最近、原付二種AT車の教習所での技能教習を最短3日間から2日間に短縮する検討を進めるとともに、二輪車用駐車場の整備を働きかけ、道路状況によっては駐車禁止規制を緩和していくとの姿勢を示している。今までがバイクに対して厳しすぎた反動とも取れるけれど、これらも若者をバイクの世界に呼び込むきっかけになりそうだ。

SUVブームがバイクにも? アドベンチャーツアラーに注目すべき理由

SUVブームがバイクにも? アドベンチャーツアラーに注目すべき理由

2018.04.14

バイクの世界でもSUVのような車種が人気なのをご存知だろうか。「アドベンチャーツアラー」と呼ばれるジャンルで、あのパリ=ダカールラリーをルーツに持ち、オン・オフ両用で長距離走行にも向く。近年はスモール~ミドルクラスも充実してきたこのカテゴリーに注目したい。

バイクの世界でも“SUVブーム”が起きている?(画像はスズキ「Vストローム 650XT ABS」)

クルマはSUVブーム、バイクは?

自動車業界ではSUVが大人気。先日取材で訪れた米国のニューヨーク国際オートショーでも、トヨタ自動車「RAV4」やスバル「フォレスター」の新型をはじめ、多くのSUVのニューモデルが発表されていたし、国内ではマイナビニュースでも紹介している三菱自動車工業「エクリプスクロス」、ランボルギーニ「ウルス」をはじめ、ジャガーボルボなどから新型車が登場している。

ところでバイクの世界でも、似たようなブームがあるのをご存じだろうか。SUVではなく「アドベンチャーツアラー」という名前だが、やはり近年人気が高まり、各社から新型車が続々と登場している。

クルマの世界ではSUVが各社から続々と登場しているが…(左は三菱自動車工業「エクリプス クロス」、右はボルボ「XC40」)

「アドベンチャーツアラー」とはどんなバイクか

車高が高めでハンドルも高い位置にあり、悪路走行を想定したブロックパターンのタイヤを履いた車種もある。「ツアラー」と付いているように、長距離走行を想定して風よけのスクリーンを装着し、荷物の積載を考えてシート後方にキャリアを用意するスタイルが一般的だ。

オン・オフ両用のスペックとそれにふさわしい高めのポジションを持ち、レジャーユースにも対応する快適性と積載能力を併せ持つ。こうした要素がSUVと共通していると感じる。

1960年代に生まれたSUVほどではないものの、アドベンチャーツアラーの歴史も長い。ルーツといえるのは、現在のこの分野の代表格であるBMW「R1200GS」の祖先に当たる1980年発表の「R80G/S」だ。興味深いのはこの「R80G/S」、少し前に始まった「パリダカ」ことパリ=ダカールラリー(現ダカールラリー)と深い関係があることだろう。

アドベンチャーツアラーの代表格「R1200GS」(画像提供:BMW GROUP)

ルーツは「パリダカ」にあり

1978年に始まったパリダカは、当初はタイヤのついた乗り物ならすべて出場可能という自由なカテゴリーに沿って、バイクも多数エントリーした。多くは軽い車体にシンプルな単気筒エンジンを載せた本田技研工業(ホンダ)やヤマハ発動機のオフロードバイクだったが、その中にBMWの姿があった。

パリダカに挑戦するBMW(画像提供:BMW GROUP)

伝統の水平対向2気筒エンジンの排気量は800ccで車体も大柄。砂漠を走破するラリーには向かないと考える人が多い中、健脚を披露した。すると1980年に「R80G/S」が生まれた。車名末尾の「G/S」は「ゲレンデ・シュトラッセ」の略。つまり当初から、オン・オフ両用であることをアピールしていたのだ。

するとBMWは翌年から、この「R80G/S」をベースとしたマシンでパリダカに挑戦。1985年までの5年間で4度の二輪部門優勝という偉業を達成する。これが現行「R1200GS」まで続く流れを作り出したのだった。

「R80G/S」の誕生がBMWの偉業達成に結びついた(画像提供:BMW GROUP)

BMWを追ったライバル達

もちろんライバルが黙って見ているはずはない。日本勢では1988年にホンダが「アフリカツイン」、翌年にはヤマハが「スーパーテネレ」を送り出す。いずれもパリダカとつながりがあり、「アフリカツイン」は1986年から4連覇したマシンがベース。「スーパーテネレ」の技術は1990年代の7度の勝利に貢献した。

ホンダの「アフリカツイン」

近年、このラリーの二輪部門で17連覇を達成しているオーストリアのKTMも、同じ時期に「アドベンチャー」を投入している。英国のトライアンフは、かつてのスポーツモデル「タイガー」の名前をこのカテゴリーで展開し始めた。

さらに21世紀に入ると、この分野とは無縁に思えたイタリアのドゥカティが「ムルティストラーダ」を送り出し、スズキが「Vストローム」、川崎重工業(カワサキ)が「ヴェルシス」のネーミングとともに参戦。一時は生産中止となっていた「アフリカツイン」と「スーパーテネレ」も復活を果たしている。

スーパースポーツにはついていけない人も

なぜ、ここまでアドベンチャーツアラーが盛り上がったのか。バイクの高性能化とライダーの高齢化が進んだためではないかと筆者は思っている。

スーパースポーツの最高峰と言える1,000ccクラスは、車両重量200キロ前後の車体に約200psのエンジンを積んでおり、公道で性能を出し切るのは不可能に近い。しかも、運動性能を追求する過程でシートは高く、ハンドルは低く、ステップは後方になり、極端な前傾姿勢を強いられる。

ホンダのスーパースポーツ「CBR1000RR」(画像提供:本田技研工業)

一方、ライダーの高齢化は進んでいる。これは日本だけではなく、欧州にもいえるらしい。自分を含めて体力も反射神経も落ちた多くの熟年ライダーにとって、1,000ccのスーパースポーツは悲しいけれど、ついていけない世界なのである。

なぜ「アドベンチャーツアラー」なのか

対するアドベンチャーツアラーは、オフロード走行を考慮したためもあって、日常的なシーンでも扱いやすいエンジン特性を持ち、立ち気味のライディングポジションとストロークが豊富なサスペンションは、長時間乗っても疲れにくい。多くはスクリーンも備わるので高速道路も辛くない。

長い時間を乗っても疲れにくいのがアドベンチャーツアラーの特徴の1つだ(画像はスズキ「Vストローム 650XT ABS」)

しかも、アドベンチャーツアラーは大柄で堂々としている。ハーレーダビッドソンに代表されるアメリカンツアラーに匹敵する存在感だ(ちなみに、米国ブランドのアドベンチャーツアラーはない)。スーパースポーツやアメリカン以外で自己主張をしたいというライダーにも向く。この立ち位置もSUVに近い。

250ccから選べる品ぞろえ

しかし、アドベンチャーツアラーには問題もあった。多くの車種が1,000cc以上である上に、サスペンションストロークを長く取っているので、重くて背が高かったことだ。歳を重ねれば足腰も弱ってくるわけで、車両重量200キロ以上、シート高850mm前後という車体を支えるのは不安になる。

こうした中で最近増えてきたのが、250~900ccのアドベンチャーツアラーだ。こちらもBMWが早くからラインナップしてきたが、水平対向2気筒ではなかったので入門車的雰囲気が強かった。そこに参入したのが、アイデンティティである並列3気筒を搭載したトライアンフの「タイガー800」で、ローダウン仕様を用意したこともあり、我が国でもユーザーが増えている。

トライアンフの「タイガー800」

日本勢では昨年、バランスの取れた車種として評価が高いスズキ「Vストローム」の650cc版がモデルチェンジ。さらに、車検が不要な250ccにホンダ、スズキ、カワサキが新車種を投入し、BMWも310ccの「G310GS」を登場させた。

BMWの「G310GS」

126~250ccの軽2輪は、2017年度の新車販売台数が前年度比124.9%と人気が復活している。原動力となっているのはロードスポーツだが、アドベンチャーツアラーの新型車が登場した効果もあるだろう。

長距離での快適性や安定性、そしてステータス性では1,000ccクラスが優位だが、日本人が日本の道で走るには250ccや650~900ccのアドベンチャーツアラーが向いている。このクラスの車種がさらに充実すれば、ユーザー層の拡大が図れるのではないだろうか。