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鋭すぎる言葉で物議を醸す「子供部屋おじさん」論議

カレー沢薫の時流漂流 第32回

鋭すぎる言葉で物議を醸す「子供部屋おじさん」論議

2019.03.18

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第32回は、実家暮らしの男性に降りかかる「子供部屋おじさん」論議について

「子供部屋おじさん」という言葉が注目されている。言葉自体は2014年あたりからあったそうだが、今また脚光を浴びているそうだ。

「○○おじさん」「○○おばさん」という呼称には、「アイカツおじさん」のように秀逸かつもはや「Sir」級の「称号」と言って良いものもあるが、大体が蔑称である。

その中でもこの「子供部屋おじさん」の蔑視ぶりたるや、である。意味はわからなくても本能で「馬鹿にされている」と察することができる。

「子供部屋おじさん」とはどんなおじさんを指すかというと、成人しても親元を離れず実家の「子供部屋」で暮らし続けるおじさんのことである。「パラサイトシングル」を、言われた相手の血管が切れるように魔改造した言葉だ。言葉としては「上手いこと言うな」と感嘆するしかない。

単に「実家住みのおじさん」という意味ではなく、「いい年をして親から自立せず、自分では何も出来ない、中身は子どものままのおじさん」という痛烈な批判が込められている。

この「子供部屋おじさん」は、ひきこもりやニートとは違い、仕事はちゃんとしている場合が多い。だが逆に「実家を出ようと思えば出られるのに出ない」という点が余計「甘え」と見なされ、ここまでの鬼煽りを食らう羽目になったとも言える。

このように世間からみっともないと思われがちな「実家住みの成人」だが、本当に彼らは社会の病巣であり、親から見れば寄生虫なのだろうか。

一人暮らしは今や「修行」かもしれない

子供部屋おじさん含むパラサイトシングルにも言い分はある。まず「実家から出るメリットが見いだせない」という理由だ。

実家が持ち家の場合、一人暮らしをするよりも実家住みの方が経済的には圧倒的有利だ。親側からしても、純粋に寄生されるのは厳しいが、生活費などを入れてもらえるなら、逆に助かるという場合もある。

また職場からの距離も実家から通った方が近いと言うなら、わざわざ経済的負担を負いながら、場合によっては遠距離通勤をする「一人暮らし」というのは「修行」という意味しかなく、昨今盛んに言われる「コスパ」「合理化」という観点から見ると「正気か」というような無駄でしかない。そのため、インフルエンサー的な人が一発「まだ一人暮らしで消耗してんの?」と言えば、容易に世論が傾いてしまいそうな気がする。

しかし「修行という意味しかない」と言っても、その「修行」に意味がないわけではない。一人暮らしが人間に自立と成長を促すのは確かである、自分のことは全て自分でやらなければいけないのだから当然だ。

逆に、衣食住が保証された実家で、お母さんにご飯と身の周りの世話を全部やってもらっていたら確かに子供となんら変わりないし、もし仮に結婚して家を出たとしても、今度は嫁に母親と同じことを求めるだろう。

結果として、「見た目は中年、中身は子供、価値観は団塊」というバランス感覚皆無の生物が爆誕することになりかねない。そういった意味では、いかに合理的でなかろうが、一人暮らしをする意味はあると言える。

だが、親の方が子どもに「実家にいてほしい」と望むケースもある。

前に「増加する共倒れ家庭」という、タイトルからして明るい要素皆無のテレビ番組を見たことがある。老齢一人暮らしの父親の元に、非正規雇用で自活できない息子が帰ってきて、そのせいで生活保護が打ち切られ、ますます困窮するというマジで暗い所しかない話だった。

しかし、父親の方が息子に対し「迷惑だから出て行ってほしい」と思っていたかというと、そうではなく「自分が老齢で何があるかわからないので居てほしい」と言っていたのだ。

このように、高齢の親からすれば、子供がいてくれるのは「安心」という面もある。ほかにも、介護のために実家に戻って来た者もいるのだから、一概に「子供部屋おじさん」とバカにすることはできない。

「子供部屋おじさん」がここまで燃える理由

そして、この「子供部屋おじさん」に今更激烈な反応が起こっているのは、「おじさん」と性別が限定されているからだろう。

当然「子供部屋おばさん」だって存在する。私も結婚して家を出るまで実家にいたし、成人すぎても小学校入学の時買ってもらった学習机を使っており、もちろん身の周りのことは母親を越えてババア殿にやってもらっていたという、どこに出しても恥ずかしくない「子供部屋おばさん」だった。親は私を家から出すのに相当勇気がいったと思う。

しかし、バカにされているのは専ら「子供部屋おじさん」の方で、言葉自体も「ブサイク」には「ブス」ほどの破壊力がないように、「おばさん」より「おじさん」の方がどう考えても「強く」感じる。

「子供部屋おばさん」にパンチが足りないのは言外に「女はまあ実家住みでもいいんじゃね?」という見逃しがあり、逆に男には「男のくせにいつまでも親の世話になってみっともない」という、男女差別があるせいではないだろうか。

ネットを開けば、ジェンダー問題で毎日ひとつは村が燃えている昨今である。「子供部屋おじさん」が、そっちの観点でアンコール炎上しても不思議ではない。

当然だが、一家の家計を支え、親の介護をしながら家事までやっている「子供部屋おじさん」もいれば、ろくに家に金もいれず、親に三食用意してもらっている「子供部屋おばさん」もいる。もちろんこれはおじさん・おばさんを入れ替えたって言えることだ。

男だから、女だから、で言い切りが出来ないように「実家暮らし」という属性一つでは何も断言することは出来ないのである。

NHK受信料「ワンセグ携帯」に支払い義務、最高裁確定で注意すべきこと

NHK受信料「ワンセグ携帯」に支払い義務、最高裁確定で注意すべきこと

2019.03.13

ワンセグもNHK契約義務、初めて最高裁で認められる

テレビと無縁でも契約該当する可能性、心配ならiPhoneを

テレビ離れ進めば、徴収手段もどんどん広がる?

ワンセグ携帯を持っているだけで、NHKと受信契約を結ぶ義務が発生することが確定した。

ワンセグ携帯でのNHK受信契約義務をめぐる訴訟は複数起こされていたが、最高裁は3月13日、そのうちの1件について、契約義務があるとしていたNHKの勝訴を初めて確定した。スマートフォンや携帯電話といった、本来はテレビ視聴を目的としない機器であっても、ワンセグ機能を搭載していればNHKと受信料契約を結ぶ義務が生じると認められた。

NHKは、受信契約義務のある受信機の設置数のうち、「ワンセグ機能付き携帯電話のみを設置されている方の割合は約0.3%と推計しています」と、影響範囲の狭さを説明している。ただしワンセグ機能は、特に国内主要キャリアが近年取り扱った国内メーカー製のスマホ・携帯電話では、ほとんどの機種で標準搭載されてきた。実際には0.3%以上の人に影響が及ぶ恐れもある。

今回の件を受けてワンセグ所持により契約義務が発生した場合、NHKの定める「地上契約」に該当すると考えられ、月額で1,260円から、年額前払い割引でも13,990円の支払いが必要だ。

またNHKは受信料契約について、生計をともにする同一世帯では、受信機器の数にかかわらず1件の世帯ごと契約でかまわないとしているが、単身赴任や、大学生(未成年含む)の子供のひとり暮らし、2世帯家族で生活費が別々などの場合は、家族であっても別途の受信料契約が必要(家族割引あり)になる場合があるとしている。家族の所持するスマホについても、ワンセグ機能の有無を確認しておく必要があるだろう。

NHKの視聴はしないが、スマートフォンは無いと困るという場合は、海外メーカーのスマートフォンであればワンセグ機能を搭載しないモデルを選べることがあり、特にアップル社のiPhoneであれば全機種でワンセグ機能を搭載していない。スマートフォンの細かな機能などを把握できないのであれば、iPhoneを選んでおけば間違いないだろう。

NHKは従来から、「NHKのテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付携帯電話についても、放送法第64条によって規定されている『協会の放送を受信することのできる受信設備』であり、受信契約の対象」と説明してきた。

またNHKは、2019年4月の開始を目指し、テレビ放送のインターネット常時同時配信の準備を進めている。放送法の不備を指摘したい人々の間では「インターネットに接続するだけで契約義務が生じるようになる」と喧伝する声も根強いが、インターネットというネットワークの相互接続で成り立っているインフラを利用する側にいながら、その上でいちコンテンツ提供者以上の何らかの権利を主張できるはずがない。

“プロの犯行”が物議を醸した「Twitterマンガ」論争

カレー沢薫の時流漂流 第29回

“プロの犯行”が物議を醸した「Twitterマンガ」論争

2019.02.25

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第29回は、読む人と描く人の意識がすれ違った「Twitterマンガ論争」について

「ツイッター漫画」というものをご存じだろうか。ツイッターをやっている人なら、タイムラインに短い創作漫画が流れてきたことが一度くらいはあるだろう。

ツイッターの性質上、あまり長いページ数は載せられないため、大体4ページくらいで一区切りついており、ページ数が少ないが故に、その設定は出オチと言って良いほど斬新かつ簡潔なものが多い。

そういったツイッター漫画は、「○○が××する話」というタイトルをつけられていることが多い。こうすることにより、どんな内容か一発でわかる上に「ナンバーガールが再結成する漫画だって!? 気になる!!」などと、ツイートを見た人の興味を引くことができる。

様々なものが流れてくるツイッターでは、まずは何より人の目を引き、その上で内容を読むまでに至らせないといけないので、タイトル付けが非常に重要なのだ。その点で、「○○が××する話」という定型は実に良くできている。

最近、その「○○が××する話」が物議を醸したのだそうだ。

実は私もこのツイッター漫画には腹が立っていたので「やっとか」という気持ちである。

何故なら1万リツイートとかされているツイッター漫画を見かけると、瞬時に「この漫画はこのまま書籍化し100万部売れてアニメ化するに違いない」とまで考えてしまうからだ。そうなると「汚ねえぞ!」と謎の義憤に駆られてくる。

よって今回、「○○が××する話」に憤った人がいると聞いて「わかる」と思ったのだが、その怒りは私とは全く別方向のものであった。

漫画は「自然に」売れない

そもそも「○○が××する漫画」は、プロではないアマチュア作家がやりだしたことだとされている。しかし今回物議を醸したのは、アマチュアではない商業作家が、ちゃんとしたタイトルがある自らの連載作を、「○○が××する話」というツイッター漫画の体で発表し、後から「実はこの漫画はこういうタイトルの商業作品です、気にいったら買ってください」とコメントした、つまるところ著作の宣伝に使った行為である。

もちろん漫画自体は本人が描いたものであり、違法性は全くない。つまりこのツイッター漫画形式を使った漫画家の宣伝ツイートに物申している人は、怒っているというよりはその行為に「モヤモヤしたものを感じている」と言った方が良いだろう。

まず、ちゃんとしたタイトルがある商業作品なのに、それをあたかもツイッター発の「ツイッター漫画」作品のようにして発表されたことに「騙された」と感じた人がいた、ということだ。

また、アマチュアがあげた漫画がツイッターでバズり、そこから商業化されるのが今までの定石だった。そのため、プロがその手法を宣伝に使う行為に違和感を持ったというのが、主なこのモヤモヤの正体ではないかと言われている。

これに対しては、自分が描いたものを、しかも無償で公開して何が悪いと擁護する意見も多い。だが、私は「同業者のサクセス」というもっとさもしい理由でツイッター漫画に怒っている人なので、「モヤモヤした」人の感覚も否定することはできない。

とはいえ、宣伝漫画苛立ち派の中には「○○が××する話」に限らず、漫画家がSNSで宣伝に奔走する行為自体が嫌な人も含まれているような気がする。そういう人は「面白けりゃ宣伝なんかなくても売れる」と思っているため、作家の宣伝を「面白くない作家の見苦しい悪あがき」と捉えてしまうのである。

しかし作家の立場から言わせてもらうと、どれだけ不愉快に感じ嘔吐する人がいても、SNS上での宣伝をやめることはできない。この出版不況なご時世、作者自身が宣伝しないと、そういう漫画が存在していることすら誰にも知ってもらえないことはザラにあるからだ。SNSは宣伝費をかけずに、上手く行けば作品のことを広く知らせることができる一攫千金ツールなのである。

面白い漫画は自然に売れるというが、いくら面白くても風に乗って広まることはない。口コミで広がろうにも、まず発信源である最初の数人に知られるための宣伝は必要なのだ。

しかしSNS上での宣伝に本当に効果があるかどうかは未知数であり、「場合による」としか言いようがない。

私の妄想通り、ツイッターでバズり単行本が100万部売れアニメ化するものも存在するが、ツイッターではバズったが書籍化したらそうでもなかった例もあるようだ。私も自分の著作のコマの一部がツイッターでバズったことはあるが、それで単行本自体が売れたかというと、今のところ手ごたえを感じたことはない。

だが「ツイッターでバズったことにより売り上げが下がった」ということは、よほどの大炎上でなければないだろうし、数字には出なくても、ツイッターでバズれば「とりあえず知ってもらう」ことができる、これは非常に重要なことだ。

よって、今の作家は「嘔吐する」と誰かに批判されても、そういう人には「それは失礼つかまつった」と言って、嘔吐せずに買ってくれる人に向けてSNSで宣伝をしていくべきだろう。

そうしないといずれは餓死し、宣伝よりももっと見苦しい「死体」をさらすことになる。

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