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「白くまくん」の日立アプライアンスが再生医療に参入、日本橋に拠点開設

「白くまくん」の日立アプライアンスが再生医療に参入、日本橋に拠点開設

2018.12.11

日立製作所の家電子会社が再生医療分野に進出

会社の第2の柱として積極的に投資を進める

新拠点のキーワードは製薬会社や大学との「協創」

日立アプライアンスは、再生医療分野向けに、クリーンルーム総合ソリューションの提供を開始する。これにあわせて、セントラル化した過酸化水素滅菌装置などを導入した再生医療技術支援施設を東京・日本橋に開設した。

日立グループで家電事業を手掛ける日立アプライアンスが、再生医療市場に参入する。2014年11月の再生医療法の施行によって、この分野に対する民間企業の参入障壁が低くなったことが参入のきっかけとなった。再生医療分野という特定領域における事業での成長を目指しており、再生医療分野における構造設備の市場規模は2021年度には約200億円を想定し、そのうち30億円超の事業規模を見込んでいる。

東京・日本橋に開設した日立アプライアンスの再生医療技術支援施設

今回の再生医療技術支援施設では、米STERIS製の過酸化水素滅菌装置をセントラル化して、滅菌のグレードが高い調製室、脱衣室、着衣室、AL室の4つの部屋の一度に無菌化。調製室では、日立産機システムの再生医療用キャビネットを導入したほか、遠隔監視による予兆診断システムにより、空調システム全般の異常を検知するサービスを提供。加えて、空調機の保守点検や保全メンテナンスのトータルサポートなども提供する。

さらに、クリーンルーム内の壁には日軽パネルシテムが開発したフラットパネルを採用。一般的なパネルは目地幅が7mmであるのに対して1mmとし、ホコリや汚れが溜まりにくい構造にした。床と壁のつなぎ目も丸みを持たせたり、ガラス窓のつなぎ目もフラットにしたりといった工夫も施されており、清掃しやすさを追求している。

こうした設備全体とサービスを組み合わせて、同社は「クリーンルーム総合ソリューション」と位置づける。それを体験できるのが、今回解説した再生医療技術支援施設というわけだ。

家電の会社からソリューションの会社へ

日立アプライアンスは日立製作所の100%子会社で、2019年4月には日立コンシューマ・マーケティングと合併し、新会社を発足する予定だ。新会社は売上高5,000億円以上、従業員1万人以上の企業となり、家電、照明・住宅設備機器の開発、製造、販売、エンジニアリングおよび保守サービス、冷凍・空調機器の販売および保守サービスを展開することになる。

現在の日立アプライアンスの主力事業は白物家電であり、新会社になっても家電事業が売上高の約5割強を占める見込み。一方で空調システムの販売、保守などが4割強を占め、その多くがBtoBといえる店舗・オフィス向けエアコン、設備用パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン、チラーユニットをはじめとする業務用冷凍・空調設備など。BtoBの空調システムでは、すでに多くの実績がある企業ともいえるのだ。

同社には、家庭向けルームエアコン「白くまくん」をはじめとする空調製品の開発、生産を、グループの日立ジョンソンコントロールズ空調に移管した経緯もある。2015年10月に設立した日立ジョンソンコントロールズ空調は、ジョンソンコントロールズが60%、日立アプライアンスが40%の株式を保有しており、ルームエアコンのほか業務用冷凍・空調設備、大型冷熱システム、圧縮機などの事業に取り組んでいる。

日立アプライアンスは、日立ジョンソンコントロールズ空調が開発、生産した空調関連製品の販売を行っており、今回の再生医療技術支援施設でも日立ジョンソンコントロールズ空調の冷凍機を使っている。

記事初出時、日立アプライアンスの会見での説明に従い、日立ジョンソンコントロールズ空調の製品をまったく使用していないと記載していましたが、その後、新晃工業の空調機の熱源に日立ジョンソンコントロールズ空調製の冷凍機を使用していることがわかり、本文を修正をしました。(2018年12月11日18時)

今回のクリーンルーム総合ソリューションは、前述のように米STERISや日軽パネルステムをはじめとする様々な企業の設備機器を導入し、再生医療用キャビネット、セルソーターといった調製に必要とされる各社の機器、さらには、日立ジョンソンコントロールズ空調の技術、日立アプライアンスのIoTソリューションであるExiidaによる監視サービス、そして、設備の施工までを組み合わせた提案となっている。同社が単なる機器販売から、ソリューション販売としての事業展開を開始するきっかけになる。

新会社の新たな柱に、単品売りからの脱却を目指す

今回のクリーンルーム総合ソリューションおよび再生医療技術支援施設では、注目すべきポイントを3つ挙げることができる。

1つは、2019年4月からスタートする新会社で、第2の柱にすると宣言していた「ソリューション事業の創生」における最初の製品として、このクリーンルーム総合ソリューションが位置づけられたことだ。

この「ソリューション事業の創生」では当初、具体的な取り組み項目としてスマートライフ事業の創生、スマートシティおよびスマートホーム事業の立ち上げを掲げていたが、新たに、今回のような再生医療分野向け製品が加わったことになる。

日立製作所 生活・エコシステム事業統括本部長 兼 日立アプライアンス社長の徳永俊昭氏

日立アプライアンス社長(日立製作所 生活・エコシステム事業統括本部長を兼任)の徳永俊昭氏は、「日立グループでは、世界中の人々のQoL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させる取り組みを重視している。それは家電事業もソリューション事業も同じ」と前置きし、「スマートシティやスマートホームも、直接的な取引相手は企業だが、その先にいる人々の生活を豊かにするビジネス。再生医療分野も製薬会社や病院、研究所などが対象のビジネスになるが、その先には人がいて、人々の健康に貢献できる。つまり、QoLを高めるために重要な取り組み」と説明している。

2つめは、単品売りからの脱却という、新会社が目指す方向性に則ったビジネスであるという点だ。

プロダクト事業の強化および拡大は、新会社でも引き続き重視はするものの、目指すビジョンは「生活ソリューションカンパニー」だ。サービスとの組み合わせや、日立グループの企業、外部企業との連携による新たなソリューションの創出によって、これを実現しようとしている。

クリーンルーム総合ソリューションは、日立アプライアンスや日立グループの企業が開発、生産した製品を販売するというよりも、他社製品を組み合わせた提案や、日立アプライアンスが持つ遠隔監視サービスなどを組み合わせた運用および保守などの提案が柱になっている。実際、再生医療技術支援施設では、「HITACHI」のロゴが入った機器をほとんど見かけない。

米STERIS製の過酸化水素滅菌装置
新晃工業製の空気調和機
調製室には、非接触型の生体認証システムを採用
滅菌グレードに応じて部屋を色分け。扉も確実にロックできる構造を採用
作業を行う日立産機システムの再生医療用キャビネット
ソニー製のセルソーターを導入

「細胞操作や培養などの作業品質の安定化と、安全性を追求した環境を、ソリューションとして提供することになる」(日立アプライアンス 空調サービスシステムエンジニアリング本部 東日本システムエンジニアリング部の佐藤祐一担当部長)とし、機器販売のビジネスではなく、ソリューション型ビジネスであることを強調する。

これも、日立アプライアンスにとっては、これまでにあまり例がなかった新しいビジネスの形だといえる。

キーワードは「協創」、施設の立地にも意味がある

最後の3つめは、「協創」を重視した拠点づくりをしているという点だ。

今回の再生医療技術支援施設は、236平方メートルの面積を持ち、最新設備の導入などに約2億円を投資した。それを製薬会社のほか、大学や研究所などのアカデミア分野、関連学会や団体などが無料で利用できるようにしている。東京・日本橋という立地を選んだのも、製薬会社が集中しているエリアだからだ。

すでにアカデミア関係で約20社、製薬会社で約5社、学会による見学申し込みが2件あるなど、あわせて30件程度の問い合わせがあるという。

日立アプライアンス 空調サービスシステムエンジニアリング本部 東日本システムエンジニアリング部の佐藤祐一担当部長

「利用はすべて無料。再生医療に必要な環境を確認したいという導入見込み顧客の利用だけでなく、空いていれば、実際に培養などの作業を行いたいという要望に対しても、無料で貸し出すことを考えている」(日立アプライアンスの佐藤担当部長)としている。

最新の設備が整っている施設だけに、製薬会社や研究機関に、有料で貸し出すことも可能だといえるが、あくまでも、「儲けない施設」というのが基本方針だ。

「顧客の声を収集して、それを製品やサービスの創出に反映。さらに、実験を繰り返すことで、最適な除菌のサイクルを導き出したり、国内外のメーカーの機器との組み合わせやサービスとの組み合わせなどによって、新たなソリューションを生み出すための協創の場として、積極的に活用したい」(同)と語る。

総合すると相当な規模の投資になっており、再生医療分野における「協創」にかける日立アプライアンスの本気ぶりが伝わってくる。

再生医療分野への取り組みは、「生活ソリューションカンパニー」を目指すとした日立アプライアンスにとって、その枠から離れているように見えるが、ストライクゾーンのひとつに位置づけた。再生医療技術支援施設への積極的な投資姿勢からもそれは明らかだ。

日立の家電会社が目指すソリューションビジネスの新たな姿のひとつが、公けになったといえる。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。

「技術の東芝」は再び“明日”を作れるか、リストラ軸に再建計画

「技術の東芝」は再び“明日”を作れるか、リストラ軸に再建計画

2018.11.09

爪あと残る決算内容も、3年で業界トップの収益体質を宣言

5か年の再建計画、まずは人員削減や拠点削減を含むリストラ

メモリ売却後の成長事業を構築すべく、「技術の東芝」へ立ち返り

東芝が発表した全社変革計画「東芝Nextプラン」は、”つなぎ”の計画ではなく、東芝の完全復活を目標としたものだ。

「3年で業界トップの収益体質」を宣言

東芝 代表執行役会長兼CEO 車谷暢昭氏。銀行出身で、今年4月に東芝へ

中期経営計画を発表した際、車谷暢昭代表執行役会長兼CEOは「2020年度までに赤字事業を撲滅し、すべての事業でROS(売上高経常利益率) 5%以上を目指す。そして、最初の3年(2021年度)で、業界トップレベルの収益体質に移行する」と宣言する。2021年度には、売上高3兆7,000億円、営業利益2,400億円、ROSで6%以上、ROE(自己資本利益率)で約10%を目標に掲げ、2023年度のターゲットとして、売上高4兆円、営業利益率8%以上、ROSで10%、ROEで15%レベルにまで高める計画だ。

現時点の通知表とも言える2018年度通期の業績見通しは、5月15日の前回公表値を修正。売上高は前年比8.8%減の3兆6,000億円と据え置いたものの、営業利益を100億円下方修正し前年比14.3%減の600億円、継続事業税引前利益は1,300億円下方修正し400億円の赤字だ。当期純利益は1,500億円下方修正し前年比14.0%減の9,200億円とした。

2023年度までの業績目標。特に営業利益率は大幅な伸びを目指す

決算内容には、大なたを振った爪痕が残る。最終利益には、メモリ事業売却で得た1兆円を超える売却益が大きく反映されている。一方で、米国での液化天然ガス(LNG)事業をENNエコロジカルホールディングスに売却し、英国で展開していたNuGenを清算して、海外原子力新規建設事業から撤退。この影響で1,000億円規模の損失が発生している。

2018年度業績見通しで1.7%だった営業利益率を、3年で6%以上に、2023年度には8%以上とし、「業界トップレベルの収益体質」を実現することができるのか。車谷会長兼CEOの手腕に注目が集まる。

非注力事業から撤退し、7,000人の人員を削減

東芝Nextプランの柱になるのは、「構造改革」、「調達改革」、「営業改革」、「プロセス改革」の4つの改革だ。

「構造改革」では、先に触れたように、液化天然ガス(LNG)事業をENNエコロジカルホールディングスへ売却し、英国で展開していたNuGenの解消による海外原子力新規建設事業といった非注力事業からの撤退。加えて、今後5年間で7,000人の人員減少を図る。さらに、15%の生産拠点を対象にした閉鎖および再編や、国内外約400社にのぼる子会社の25%削減も実施する。

一部部門での早期退職優遇制度を実施し、2018年度も、1,000人強の人員削減を予定している。

車谷会長兼CEOは、「東芝の将来に向けては、事業および人員の適正化が前提となるが、東芝には、2年、3年かかる足の長いビジネスがあり、人員を一気に適正化することができない。それをすれば、企業価値の損失につながる。これから、年間3,000人~4,000人の(定年退職など)自然減が発生するタイミングに入ってくる。一部部門での早期退職優遇制度を実施するが、基本的には、自然減が中心になると考えている」と人員削減の計画を明らかにした。。

2つめの「調達改革」に関しては、「東芝は、競合他社に比べて原価率が高い。いわば改善余地が存在する」と指摘。素材や電気・電子部品といった直接材と、通信費、オフィス賃料といった間接材の双方にメスを入れ、約650億円の改革効果を見込む。最終の2023年度までには1,000億円の効果に達するという。

3つめの「営業改革」では、価格を含む契約条件の再確認と適正化、低収益製品の棚卸しなどの営業リターン改善により、約300億円の改善機会を追求する。ほか、CRMの活用による営業体制の強化による顧客およびマーケットとの関係強化などを通じて、営業活動の効率化、営業体制の強化、プロジェクト受注時における審査の強化に取り組む。

そして、4つめの「プロセス改革」では、IT基盤の整備に挑む。次世代IT投資計画として、2023年度までに1,100億円の投資を計画しており、老朽化したシステムの80%以上を刷新し、90%以上のサーバーをクラウド化するという。「CPSテクノロジー企業への変革を支えるにふさわしいIT基盤の構築を図り、グループ全体で業務を効率化し、生産性の改善を図る」という。

リチウムイオンなど、メモリ売却後の柱を模索

削減の一方で、成長分野への投資はどうだろうか。

2023年度までに8,100億円の設備投資を行うほか、主要研究開発テーマに対しては、2023年度までに9,300億円を投資する計画だ。

車谷会長兼CEOは、「M&Aへの投資よりも、自らが持つ技術や設備への投資を優先する。これまではメモリ分野への投資が優先され、次の成長が見込める分野に対して投資ができていなかった。10年後、20年後の東芝に向けた投資も行っていく」と話す。

成長領域のひとつに位置づけるのがリチウムイオン二次電池事業。ここでは、東芝が推進するのSCiBの特徴が生かせる市場を開拓。2030年に4,000億円規模の事業に成長させることを目指す。また、パワーエレクトロニクスでは、モビリティと産業システム市場に注力。さらに、精密医療分野では、重粒子線治療をはじめとして、予防から治療までの各フェーズにおける要素技術を保有している強みを生かし、がんの超早期発見と個別医療治療の実現を目指すという。

リチウムイオン二次電池を有望視
パワーエレクトロニクスと精密医療にも注力する

「現在、自社の技術者4万2,000人のうちデジタル技術者は7,000人だが、全員をデジタル技術者にしたい。デジタル文化を組織の隅々まで実装する必要がある」として、技術者のデジタルシフトを推進することに加え、社員全体を巻き込んだデジタルトランスフォーメーションを図る考えを示した。

その一方で、火力、システムLSI、産業モータ、モバイルHDDといったモニタリング対象事業は、事業構造転換により、収益を改善させることを基本方針とした。改善がみられない場合には、一部領域においては撤退を含め検討するという。

「明日をつくる技術の東芝」は戻るのか?

東芝の今後の企業像として、車谷会長兼CEOは、「世界有数のCPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジー企業になる」と位置づけた。

CPSとは、フィジカル空間である現実世界における多様なデータを、IoTなどを通じてデジタルデータとして収集し、これをサイバー空間で、AIなどを活用して蓄積、分析。その結果を活用して、社会課題の解決や産業の活性化につなげるというコンセプトだ。日本では経済産業省などが、この言葉を積極的に使用しており、先頃開催されたCEATEC JAPANも、「CPS/IoTの総合展示会」を標榜していた。

「GAFAなどの巨大なサイバー企業は、既存の業界を、データの世界にリプレイスし、デジタルの世界のデータを独占し、巨大な事業を生みだしてきた。だが、もはや、サイバー世界だけの事業モデルは限界にきている。フィジカルサイドにいかないとこれ以上のデータは取れない。ここが、これからのサイバー事業の本丸だと思っている。フィジカルのデータを効率的に取得し、社会を最適化する。これを成し遂げた企業が次のフェーズで勝つことになる。東芝はそうした企業になりたい」(車谷会長兼CEO)

これまでの東芝にはない、新たな姿が描かれることになる。

今回の会見の冒頭、東芝の車谷会長兼CEOは、「私は企業にはそれぞれにDNAがあると思っている」と切り出し、次のように話している。

「2018年4月に東芝に入社してから、すべての支社、工場をまわり、数1,000人の従業員と話をしてきた。その活動を通じて、東芝の強さの源泉はなにか、DNAはなにかということを探してきた。その結果、東芝という会社は、人の物真似ではなく、他社の技術をM&Aで取得するということでもなく、革新的な独自の技術開発を基盤としたベンチャー型の事業モデルで発展してきたテクノロジー企業であることに気がつかされた。東芝は、143年間、革新的な技術開発力をテコに、社会に貢献してきた企業である。それが東芝のDNAである。東芝には、からくり儀右衛門といわれた田中久重、日本のエジソンといわれた藤岡市助という2人の創業者によるベンチャースピリットがある。これを復活させて、多くの社会課題の解決に取り組み、社会に貢献したい」

今こそ2人の創業者、田中久重と藤岡市助のスピリットを蘇らせたいと話す

かつて東芝が1社提供していた日曜夕方の国民的アニメ「サザエさん」では、毎回、「明日をつくる技術の東芝がお送りいたします」とサザエさんが語り、横にいるタラちゃんが「いたしまーす」と言って、番組が始まっていた。

東芝はテクノロジー企業であり、それを成長基盤として社会貢献をするのが東芝の存在意義とすれば、まさに、このサザエさんの言葉が、東芝Nextプランの方向性をひとことで表現するキーワードなのではないだろうか。