「ソニー」の記事

ソニーがセンサーで生み出す「ロボットと共生する世界」

ソニーがセンサーで生み出す「ロボットと共生する世界」

ソニーがイタリア・ミラノでユニークな体験を展示

実は「センサーの会社」といえるソニーの見せる未来とは?

センサーで、人とロボットの共生する世界を表現した

イタリア ミラノで4月9日より「ミラノデザインウィーク 2019」が開催された。これはミラノサローネ国際家具見本市の開催に合わせたデザインのイベント。ミラノ市内のいたるところで様々なデザイナーや企業が思い思いの展示を行うものだ。

そこへソニーが、人とロボットが共生していく、これからの社会についてのインスタレーションを出展した。今回は、ソニー株式会社クリエイティブセンターのアートディレクター前坂大吾さんに解説してもらいながら、インスタレーションを拝見した。

最初に理解しておきたいのが、「現在のソニーの主要製品が何であるか」ということだ。それはデジタルカメラであり、スマートフォン、そしてスマートフォンに搭載されている小型のカメラセンサーそのものだ。さらにはセンサーの塊だというペットロボット「aibo」や、自動車に取り付ける車載用センサーも手がけている。

ソニーを代表するプロダクトには様々なセンサーが含まれている。それがこれからのロボットとの共生を実現していく

つまり、今のソニーは「センサーの会社」なのだ。そう考えて「Affinity in Autonomy(自律性における親和性)」を全体のテーマとするインスタレーションの会場に入っていこう。

ソニーがセンサーで見せたかったもの

会場は大きく分けて5つに分かれていた。1つ目のキーワードは「Awakening<意識>だ。入り口からまずは暗い部屋に入り、そのまま暗い廊下を通過すると、壁には僅かに光が映る演出が出迎えてくれる。移動している人を認識して行動を光として表示している。入り口近くはほんのわずかな光だが、出口に近づくにつれて光がだんだん大きくなり、手足の動きに追随してくる意識がよりはっきりしてくるイメージだ。暗闇の中でしっかりと人をセンシングしていく。

2つ目の部屋に入る。部屋には透明の大きな球体が設置してあり、その中を先端が光る振り子が自由に動いている。キーワードは「Autonomous<自律>」。球体の中にある振り子は大きく揺れながら、球体の外にいる人を認識し、追随して動く。センサーが人を認識することにより、振り子はまるで意思を持ったかのように動き始める。多くの人が球体を囲む中で、振り子が自ら意志をもって自分を見つけてくれたように感じたとき、不思議な感覚を体験できた。

大きなかごの中、振り子が人を認識して動いている。そこには振り子の自我すら感じられる

3つ目の部屋では何体もの球体のロボットが床に転がっている。キーワードは「Accordance<協調>」だ。近寄ろうとするとこの球体たちも近づいてきて、そばでふわふわと揺れてくれる。その姿に癒やされ、立ち上がると球体たちは離れていった。球体ロボットそれぞれに異なった個性があり、異なった行動をとる。それでいて集団としてはまとまりのある行動にも感じられる行動を見せる。

ゆらゆらと揺れながら近づいてくる球状のロボット。素早く近づく子、距離を保つ子など、個性の違いにかわいらしさを感じられる

4つ目の部屋では見慣れたロボットに出会った。昨年発売された「aibo」だ。キーワードは「Affiliation<共生>」。aiboには様々なセンサーが内蔵されており、それらを元にaiboは8つの感情を持つようになっている。ここでは、そのときaiboが感じている感情を可視化し、部屋の床面にグラフィックで表示していた。

例えば、多くの人が突然現れたときは恐怖心(Fear)のグラフィックが現れ、優しくなでてもらうと喜ぶ(Joy)。叩かれると怒り(Angry)、びっくりしたり、寂しがったりもする。それらはセンサーが生み出すものではあるが、生き物が表す感情表現と変わらないようにも感じられた。ロボットが感情を表現したときに、人とロボットは自然に共生できるようになっていくのかもしれない。

叩かれる怒りの感情を明らかにしたaibo。新型ではこの感情の履歴により、性格が変わっていくという

さらにこの部屋では、ロボット視点の映像も投影して見せる試みも行っていた。人を認識し、物や街を認識していく様子をロボットの視点から見ることができる。ロボットはaiboだけでなく、さらに小さな昆虫サイズだったり、空に浮かぶドローンだったりする。それらに搭載されたセンサーが、人間とは違う視点で世界を見ているところが楽しめた。

ドローンに搭載されたセンサーが、上空から人を認識しているところ

そして最後に、5つ目の部屋のキーワードは「Association<連帯>」。部屋の中ではキューブ状のロボットが動き回っており、人を認識するとそばに寄ってくる。キューブの天面にはペンが刺さっており、ディスプレイに表示されたアンケートに答えるようお願いしてくる。この部屋ではロボットに役割が与えられ、社会インフラの一部になっていることが示されているのだ。

キューブ状のロボットが近づいてきて、アンケートの記入をお願いしてきた。天面はその人の身長に合わせて自動的に昇降する仕組みだ

ロボットと共生する世界は思ったより近い

前出の前坂さんは、今回のソニーのインタラクションの中心に、あえてロボティクスを選んだ理由として、今年が初代AIBOの発売から20周年の節目であることと、それが昨年「aibo」として復活したことを挙げた。

今年が元年といわれる5G時代は、同時にセンサーの時代でもある。5つの部屋を抜けた出口には、インタラクション会場全体をセンシングした映像が流れていた。さっきまで自分がいた空間がセンサーによって事細かに検知されていることが可視化されていた。

最後に、イベントスペース全体に数多く設置されたセンサーが、人とロボットの動きを捉えているところが見られた

真っ暗な1部屋で目に光を感じ、2部屋目で人間は振り子の周りに並んでセンサーから認知されることを望んだ。さらに3部屋目からは、意思を持ったロボットの動きを見た。様々なセンサーによって生命観を備えたロボットと共生する世界は、もはや未来ではない。そう感じさせるインストラクションだった。

ソニーはエレクトロニクス部門の統合でXperiaを立て直せるのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第36回

ソニーはエレクトロニクス部門の統合でXperiaを立て直せるのか

2019.04.15

不振のスマホ部門がテレビ・カメラ部門と統合した理由

新型スマホ「Xperia 1」から見えてくる統合の効果

Xperiaが失った魅力を取り戻せる可能性はあるのか

ソニーは2019年4月1日付けで、スマートフォン部門を、カメラやテレビなどを手掛ける部門と統合し、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業としてスタートする。エレクトロニクス関連部門の統合による連携強化で、赤字続きのスマートフォンを立て直せるのだろうか。

テレビ・カメラ主導の事業再編

ソニーは2019年3月26日、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)、そしてモバイル・コミュニケーション(MC)の3つの事業を統合し、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)事業とすることを発表した。統合は2019年4月1日付けだ。これをもってソニーの持つエレクトロニクス関連3事業が1つに統合されたことになる。

HE&Sはテレビの「BRAVIA」やオーディオ、IP&Sは「CyberShot」「α」などのカメラ、そしてMCはスマートフォン「Xperia」を主に手掛けていた。それら複数のエレクトロニクス事業を統合することで、製品開発や調達などで横の連携を深めるというのが、事業再編の狙いと考えられる。

だが発表内容を細かく見ると、EP&Sを統括するのはIP&Sの石塚茂樹専務で、それを補佐するのはHE&Sの高木一郎専務となっている。つまりIP&SとHE&Sが事業を主導する形となっており、MCが存在感を大きく落としている様子が見えてくる。

もっとも直近の業績を見れば、それはある意味やむを得ない部分もある。ソニーの2018年度第3四半期決算を見ると、HE&Sは475億円、IP&Sは342億円の営業利益を出しており、共に増益を果たしている。一方MCの営業利益はマイナス155億円で、前年同期比でも大幅なマイナスを記録している状況だ。好調が続く他の事業とは対照的に、スマートフォン事業だけが赤字で、その改善の兆しさえ見られない状況が続いている。

今回の統合は不振が続くMCの救済という見方もできるかもしれない。赤字が続くMC事業に関しては、かねてより投資家などから撤退を求める声が挙がっていたし、実際この統合が発表された直後から「スマートフォン事業の赤字隠しではないか」という声も挙がっていた。

ソニーの2018年度第3四半期決算説明会資料より。8つの事業セグメントで唯一、MC事業だけが赤字を記録しているなど、不振が続いている

「Xperia 1」に見る事業再編の効果

だが事業を統合したからといって、スマートフォンにおける市場環境の厳しさが改善する訳ではない。世界的に多くの人にスマートフォンが行き渡り、なおかつコモディティ化と低価格化が急速に進んでいる現在、どのメーカーにとってもスマートフォンの販売を大きく伸ばすのは難しくなっている状況だ。

実際、最近ではアップルがiPhoneなどの販売台数を非公開にしたことが大きな話題となったし、急成長を遂げてきた中国のスマートフォンメーカーも、いくつかが破たんしたり、買収されたりするなど再編が進みつつある。そうした中にあって、スマートフォンの販売を減少させ続けてきたソニーが復活するのは容易ではない。

では、事業統合したソニーはどうやって、この苦戦しているスマートフォン事業を立て直そうとしているのだろうか。そのヒントは、2019年2月に発表されたソニーモバイルコミュニケーションズの新しいスマートフォン「Xperia 1」から見て取ることができる。

Xperiaシリーズはかねてより、イメージセンサーやディスプレイなど、ソニーグループが持つ技術を結集して開発している所に強みがあった。Xperia 1ではそれをさらに推し進め、プロ向けの映像機器開発を手掛ける、ソニーの厚木テクノロジーセンターに協力を依頼している。映画に合わせた21:9比率のディスプレイを搭載したのに加え、プロ用のマスターモニターの発色に近づけた「クリエイターモード」を搭載し、ソニーピクチャーズの映画製作者に評価してもらうなどして、映像に強いこだわりを持つスマートフォンへと仕上げられているのだ。

21:9のディスプレイを搭載したことで注目された「Xperia 1」。プロが使うマスターモニターの発色を実現する「クリエイターモード」を搭載するなど、映像の視聴に強いこだわりを持って作られている

そもそもXperiaシリーズの評価が大きく落ちたのは、2014年に中国メーカーとの低価格競争に敗れスマートフォンの販売が不振となったことを受け、ソニーモバイルが現在ソニーの代表執行役専務CFOを務める十時裕樹氏の体制に代わるなど、大規模な再編がなされて以降のことだ。実際にXperiaシリーズは2016年を境目に、これまでの最先端技術を重視した「Xperia Z」シリーズから、手ごろさや使い勝手を重視した「Xperia X」へと路線を大きく切り替えている。

だがそれ以降、苦戦していた低価格モデルだけでなく、ハイエンドモデルでも急速に製品の魅力を失い、シェアを激減させていった。「明確な理由がない限り複眼カメラは搭載しない」など特定のこだわりを見せるあまり、消費者ニーズやトレンドから離れた端末しか提供できなくなっていたことが、その要因のひとつといえるだろう。

2016年の「Xperia X」シリーズ以降、Xperiaはハイエンドモデルでも市場ニーズとかけ離れた端末が目立つようになり、急速に魅力を失っていった

それだけに、MC単体では難しくなっていたソニー全体の力を生かしたスマートフォン開発ができるようになる今回の統合は、スマートフォン事業を再建する上でメリットに働く可能性が高いといえる。かねてよりソニーはスマートフォンから「撤退しない」と宣言しているだけに、今回の再編によって魅力あるスマートフォンを生み出し、販売改善を図ってくれることを期待したい。

ソニー渾身の「Xperia 1」は素晴らしいが、日本では苦戦する?

ソニー渾身の「Xperia 1」は素晴らしいが、日本では苦戦する?

2019.02.28

MWC 2019でソニーが新型スマホ「Xperia 1」を発表

機能の先進性、本体デザインの原点回帰が好評

日本市場の変化を受け、「ミッドレンジ戦略」を見直し?

スペイン・バルセロナで開催されたモバイル業界最大の展示会「MWC19 Barcelona」で、ソニーモバイルコミュニケーションズがXperiaシリーズの新製品「Xperia 1」を発表した

Xperia 1

ソニーの技術を結集した「シネマ体験」が売りのハイエンドスマホだが、国内市場ではより手頃な端末の需要が伸びる傾向にある。モバイル事業が苦境に陥っている中、ソニーは新製品で起死回生を図れるのか。

ソニーのプロ用機器の知見をスマホに投入

ソニーが2月1日に発表した2018年度第3四半期決算では、モバイルの苦境が明らかになった。通期での予測は650万台に下方修正し、1350万台を出荷した2017年度から半減する見通しだ。同社はコスト削減により収益改善を図るものの、商品展開にも抜本的な変革が求められていた。

これを受け、MWC19で登場した新製品が「Xperia 1」だ。前モデルのXperia XZ3から製品名を一新し、シリーズで最もシンプルな名前になった。これまでにない縦横比「21:9」の縦長画面を搭載し、ソニーモバイルは「1から生まれ変わった」と自信を見せる。

縦横比「21:9」の画面を搭載

最大の特徴は21:9の4K有機ELディスプレイを中心にした「シネマ体験」だ。テレビや映画の制作現場で使われるプロフェッショナル機器のエッセンスを凝縮しており、シネマ映像やシネマ撮影を楽しめるという。

新たに搭載したディスプレイの色設定機能「クリエイターモード」では、映像制作の現場で使われる「マスターモニター」の技術を投入することで制作者の意図を忠実に再現。

制作者の意図を忠実に再現する「クリエイターモード」

カメラの新機能である「Cinema Pro」では、映画撮影機材と同じカラー設定が用意され、映画のワンシーンのような映像を手軽に撮影できる。誰もがスマホのカメラで写真や動画を撮る時代だが、Xperia 1を手にしたことをきっかけに映画制作に目覚める人が出てきてもおかしくなさそうだ。

映画のような動画を簡単に撮れる「Cinema Pro」

このようにXperia 1は、単にスマホの流行を追うのではなく、ソニーが蓄積してきた強みを投入することで差別化した端末といえる。本体デザインはフラットな一枚板に戻り、全盛期に人気を誇った「パープル」の復活など、基本に立ち戻った仕様はMWC19会場でも好評だった。

だが、2019年の国内スマホ市場は状況が一変しつつある。それが端末販売と回線契約を分けた「分離プラン」の拡大だ。

日本市場の変化で注目される「ミッドレンジ戦略」

Xperia 1は、MWC19で話題の次世代通信「5G」にこそ対応しないものの、最新のSnapdragon 855、世界初の4K有機EL、3眼カメラなどスペックはてんこ盛りで、販売価格は10万円を超えてもおかしくないハイエンドスマホだ。

それでも、大手キャリアの端末購入補助があれば回線契約と引き換えに毎月2000〜3000円が割り引かれ、「実質3万円」程度で買うことができる。だが、総務省が進める「端末と回線の分離」では、端末の割引を制限し、代わりに毎月の通信料金を下げる方向に議論が進んでいる。

総務省の最終的な方針にもよるが、端末の「定価」販売が基本になれば、一括で買いやすい価格帯の端末が重要になってくる。すでにNTTドコモは「docomo with」で4万円以下の端末を揃えており、今後は各キャリアが中低価格の端末ラインアップを厚くしてくる可能性が高い。

そこで注目されるのが、端末メーカーのミッドレンジ戦略だ。これまでソニーモバイルはミッドレンジ製品を海外向けに展開し、日本市場への投入は否定してきたが、MWC19では初めて「日本市場にも導入を検討する」と姿勢を変えてきた。

MWC19で発表したミッドレンジ端末「Xperia 10」
欧州では199ユーロで売られている「Xperia L3」

ミッドレンジの新製品「Xperia 10」の欧州での価格は349ユーロ、「Xperia 10 Plus」は429ユーロと、いずれも魅力的な価格が設定されている。日本においても、大手キャリアやMVNO各社がミッドレンジのXperiaを広く取り扱う日が来るのか注目される。