「スマートスピーカー」の記事

「IoT後進国日本」攻略への一手 - ソフトバンクが元アリババの起業家と提携

「IoT後進国日本」攻略への一手 - ソフトバンクが元アリババの起業家と提携

2018.10.19

スマートホーム市場で世界に後れを取る日本

ソフトバンクがIoTソリューション提供の中国企業と提携

自社ブランド「+Style」で先行事例の3製品を発表

日本でのスマートホーム市場がイマイチ盛り上がらない。

ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンク C&S) 上席執行役員 コンシューマ事業本部長 瀧進太郎氏は、同社が開催した記者会見にて「スマートスピーカーの所有率は、ほかの先進国に比べてはるかに低い」と現状を嘆き、それを打破するための攻めの一手を発表した。

「国内トップクラスのディストリビュータ企業として、中国・Tuya Globalとパートナーシップを結ぶことで、日本におけるIoT製品の普及を促進させ、スマートホーム市場を拡大させていく」(瀧氏)

Tuya Global VP of Strategy and InvestmentのMengda Zhao氏(左)、ソフトバンク C&S 上席執行役員コンシューマ事業本部長の瀧進太郎氏(中)、プラススタイル 取締役社長の近藤正充氏(右)

Amazonが日本向けにスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズの最新モデルを発表するなど、米国を中心に、日本におけるスマートホーム市場の開拓を狙う企業が増えている中で、ソフトバンク C&Sは、国内から市場の成長促進を目指す。

パートナーは元アリババのやり手起業家

ソフトバンク C&Sの記者発表会の要旨は以下の2点。

・ソフトバンク C&Sは、中国Tuya Globalとパートナー契約を締結。Tuya Globalが手掛ける”製品のIoT化ソリューション”「Tuya Smart」の国内販売を開始する

・Tuya Smartを用いたIoT製品の先行事例として、ソフトバンクのIoT製品販売プラットフォーム「+Style」から、オリジナルのスマート家電3製品を発売する

「Tuya Global」とは聞き慣れない企業だが、CEOの王学集氏は、かつてIT巨人・アリババで事業責任者を務めた人物。2014年に設立されたTuya Globalは、わずか数年ですでに中国、米国にオフィスを、中国、米国、ドイツにデータセンタを構え、200以上の国へとその販売網を伸ばしている。また2018年7月にはオーストラリアのベンチャーキャピタルなどから約2億ドルを調達するなど、現在急成長を遂げている企業だ。

IoT製品開発コストを削減する「Tuya Smart」

ではソフトバンク C&Sが目を付けたTuya Smartとはいったい何なのか。

Tuya Smartは、製品のIoT化に必要な通信モジュール、およびクラウド環境の構築、スマホアプリの開発をワンストップで提供するソリューション。これにより、Tuya Smartの導入企業はIoT化にかかる開発期間を最短15日まで短縮できるほか、開発コストの削減も実現できるという。

「日本のメーカーは、スマート家電に興味こそ持っているものの、『売れるかわからない』という理由で、イマイチ開発に力を入れられていない現状にある。また、ユーザーは『すでに今の家電が便利だから、スマート家電への魅力を感じない』という状況にあるようで、なかなか市場が活性化しない。この状況を打破するのがTuya Smartだと確信している」(瀧氏)

「Tuya Smart」モジュール

具体的に、Tuya Smartを導入する企業については説明できないとのことだったが、現在は住宅メーカーや家電メーカーなどとの話し合いを進めている状況だという。

「Tuya Smart」で供給を、「+Style」で需要をつくる

またソフトバンク C&Sは、Tuya Smartを利用した先行事例として、「+Style」から、オリジナルのスマート家電「スマートロボット掃除機」「スマート加湿器」「スマートアロマミストポッド」の3製品を発売。+StyleとAmazon、Yahoo JAPANショッピングにて予約を開始した。

左から「スマートロボット掃除機」(18,800円)、「スマート加湿器」(5,800円)、「スマートアロマミストポッド」(4,500円)

これら製品の特徴の1つは、価格だ。どの製品もインターネットにつながることを前提にしたスマート家電にありがちな「割高」な価格設定ではなく、比較的買い求めやすい値段となっている。そこにはソフトバンク C&S、+Styleの狙いがある。

「まず製品が出回らないことには、ユーザーからのフィードバックを得ることができない。多くのユーザーに使ってもらえれば、メーカーは多くのデータを得ることができ、『どのボタンが多く使われているか』『どのくらいの頻度で使われているか』ということがわかる。その後、ディープラーニングを用いてその原因を突き止めることも可能だ」(瀧氏)

続けて+Style取締役社長の近藤正充氏もコメント。

「これまで当社では、100を超えるIoT製品を販売してきた。しかし、まだまだITリテラシーの高い人にしか広まっていないのが現状。そこで『これ、IoT商品ですよ』と売るのではなく、買ってみて『あ、これIoT商品なんだ』と思ってもらえるような製品を作ろうと考えた」(近藤氏)

つまり、今回発表された3製品は、今までよりも多くのユーザーにスマート家電を手にしてもらうことを目的として販売するもの。ITリテラシーの高い「アーリーアダプター」ではなく、その先のマジョリティ層を狙う考えだ。比較的安価な価格設定も、まずは製品を手に取るユーザーを増やすことが目的だろう。

なお、今年中にスマート家電をさらに15製品以上発売する予定であるといい、徹底的に新たな客層を狙おうという同社の考えが窺える。

+StyleでIoT商品を売ることで市場を成長させ、Tuya Smartというソリューションをメーカーに訴求する。この2つの相乗効果によって、日本におけるスマート家電市場を成長させていくというわけだ。

IoT先進国への遅れを取り戻せるか

「日本におけるIoTの流行りはほかの先進国と比べて、3~4年遅れているのが現状」(瀧氏)

スマート家電やスマートスピーカーの認知こそあるものの、普及が遅れているのは、日本人のニーズに合った家電がまだまだ少ないことが原因だ。しかし、この状況が進まないままでは、他国に市場を荒らされてしまうのは目に見えている。

現にAmazonはすでに、スマートホームの中枢を担う「Alexa」の普及を図るために、同社のクラウドとの接続に必要な部品をモジュール化し、容易に組み込めるキットとして売り出し始めている。これは、家電メーカーに「早くAlexaに対応した家電を作ってくれ」という圧力とも考えられ、今後Alexaに対応したスマート家電が大量に登場することを予測させる。

残念ながら、日本企業からは世界に打って出れるようなスマートスピーカーは誕生していない。これからの成長が見込まれるスマートホーム市場の波に上手に乗るためには、メーカー各社が少しでも早くスマート家電の開発に力を入れることが求められることだろう。

日本でのスマートホーム市場の盛り上がりを測る上で、「Tuya Smartの導入企業がどれだけ増えていくか」は1つの判断材料となりそうだ。

今回発表された3製品はCEATEC JAPAN 2018でも展示された
電子レンジにもAlexa―「Echo Show」上陸に見るAmazonの”スマート”な市場戦略

電子レンジにもAlexa―「Echo Show」上陸に見るAmazonの”スマート”な市場戦略

2018.10.16

「Echo Show」が日本上陸、スマートディスプレイ市場を切り拓けるか

従来製品もモデルチェンジし”買い増し需要”を狙うAmazon

狙うは「Alexa」採用製品の増加、独自開発の電子レンジも発表

10月11日、アマゾンジャパンはスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズの最新モデルを国内向けに発表した。注目は、日本に初めて上陸する画面付きモデル「Echo Show」だ。

こうした、スマートスピーカーに画面を付け加えた「スマートディスプレイ」製品には、アマゾン以外にも参入が相次いでいる。日本ではまだまだ馴染みの薄い製品だが、果たして市場を切り開く存在になるのだろうか。

アマゾンが「Echo」シリーズの新製品を国内投入

1部屋に1台、スマートスピーカーという近未来

米国で2017年に登場した初代のEcho Showは、スマートスピーカーに画面を搭載した新しいデバイスだ。見た目はタブレットに似ているが、据え置きで使うのが特徴だ。

料理のレシピのように、読み上げよりも動画で見たほうが一目瞭然という用途において、音声での操作ができ、かつ動画を再生できるスマートディスプレイは非常に便利だ。ではタブレットとは何が違うか、というと、画面表示やタッチ操作は補助的なもので、あくまで音声での操作が主であるという点にある。

第2世代モデルの「Amazon Echo Show」

スマートディスプレイ市場は英語圏を中心に徐々に熱を帯びており、グーグルは2018年1月のCESでサードパーティと組んでスマートディスプレイに参入。さらに10月には自社製の「Google Home Hub」を投入した。Facebookもビデオ通話に特化した「Portal」を発表している。

いずれも英語圏向けの製品だが、アマゾンは7月に小型モデル「Echo Spot」を日本に投入。そして今回、10インチの画面を搭載したEcho Showの第2世代モデルを日本で発売するに至った。

Echo Showでは、新たに決済サービス「Amazon Pay」と連携したことで、音声だけで旅行のチケット手配や出前の注文ができるようになった。スマートホーム向けの機能がエンタメ機器にも対応しており、ソニーや東芝のテレビなどの音声操作も可能だ。

「Amazon Pay」との連携で音声だけで出前を取ることも

また今回、音声で使うアプリともいえる「Alexaスキル」の開発環境も強化。これまでのスマートスピーカーは音声だけで操作をしていたが、画面が加わったことで、開発手順は複雑化している。そこでさまざまな画面サイズに対応できる開発環境が必要になったというわけだ。

異なる画面サイズに対応したスキルを作りやすくなった

従来のスマートスピーカー製品もモデルチェンジし、小型の「Echo Dot」、温度センサーを搭載した「Echo Plus」の新モデルや、低音を楽しむサブウーファー(低音域のみを担当して再生するスピーカー)「Echo Sub」が加わった。複数台のEchoを連携させると、家中で同じ音楽を流すことも可能だ。

音声アシスタントに興味を持つ人はまだそれほど多くないものの、Alexaの便利さを理解した人なら、部屋ごとに1台、さらにはキッチンや洗面台などに置くためにどんどん買い増していけるラインアップといえる。

Amazonはハードウェアを売りたい訳ではない

画面付きのEcho Showが新しいジャンルの製品とはいえ、すでにタブレットやテレビを持っている人にとって、その存在意義は分かりにくいかもしれない。だが、アマゾンはその垣根も取り払おうとしている。

そこで打ち出してきたのが、Echo Showのような製品をサードパーティが作れる「Smart Screen SDK」だ。レノボはこれをAndroidタブレットに、ソニーはスマートTV製品に組み込むことで、タブレットやテレビをEcho Showの代わりに使えるという。

ソニーのスマートTVをEcho Showのように使える

これではEcho Showが売れなくなるように思えるが、アマゾンの目的はEchoというハードウェアを売ることではなく、Alexaを普及させることにある。EchoのライバルとなるようなAlexa対応機器をどんどん作ってもらいたいというわけだ。

「家電にAlexa」という提案、まずは電子レンジから

アマゾンが次に狙うのが、家電メーカーのさらなる取り込みだ。Alexaに関心を持つ家電メーカーは多いものの、家電製品ごとにアマゾンのクラウドと接続する通信機能を組み込むには、開発コストがかかりすぎる。

そこでアマゾンは通信に必要な部品をモジュール化し、容易に組み込めるキットとして売り出した。米国ではアマゾン自身がその活用例として、安価な電子レンジ製品を発表している。

米国でアマゾンが発表した電子レンジ「AmazonBasics Microwave」

アマゾンが描き出すスマートホームの姿は、家庭内のあらゆる機器が音声操作に対応し、Echo ShowやEchoシリーズのスマートスピーカーを通してアクセスできるというものだ。グーグルやLINEも同じビジョンを持っている中で、スマートディスプレイの国内展開ではアマゾンがリードすることになりそうだ。

Googleのお仕事。【第3回】スマートスピーカー「Google Home」を支える、0歳児の母

Googleのお仕事。【第3回】スマートスピーカー「Google Home」を支える、0歳児の母

2018.04.04

特集「Googleのお仕事」の第3回は、Google APAC パートナーオペレーションマネージャーの津田 恵理子氏に話を聞いた。津田氏は、約7年半前にグーグルの日本法人へ入社、現在は Google の検索関連のプロダクトに関するパートナー企業への技術的な支援を担う。

【特集】Googleのお仕事。

スマートフォンを通して、多くのユーザーが Google のサービスを利用している。Google 検索はもちろん、Google マップや Gmail、果ては YouTube とさまざまな Google 製品が人々の生活に浸透しているはずだ。一方で、その製品を提供するグーグルの正体を知らぬ人も多い。
アメリカのネット企業は日本で働いていない……なんてことはなく、もちろんさまざまなグーグル社員が、さまざまな職種で六本木ヒルズに居を構える日本法人で働いている。この特集では、その彼ら、彼女らが日本法人でどんな仕事を、どういうモチベーションで、どうやってこなしているのか、問うた。

昨年10月に発売されたGoogle Homeでは、話しかけるだけで音声で様々な回答をくれる。その製品の裏には、スマートフォン向けに提供している「Google アシスタント」があるが、サードパーティが連携アプリを開発できる「Actions on Google」に関する、パートナー企業への技術的な支援を津田氏は行っている。その立場の醍醐味、仕事の中身について話を聞いた。

Google Homeを手に持つGoogle APAC パートナーオペレーションマネージャー 津田 恵理子氏

「効率よく仕事」「上下関係がフランク」というGoogle の社風

もともとは、金融系のシステムエンジニア(SE)をやっていたという津田氏。SEの仕事も楽しかったそうだが、その一方でさまざまなビジネスに携われる仕事に就きたいと思っていたという。「日本や世界にはいろいろな仕事がありますよね。それまで金融の世界しか知らなかったので、そこから離れていろいろな仕事に触れて、自分の知見を広げたいと思っていました」(津田氏)。

そう考えていた時に、グーグルに勤めている大学時代の友人から「ぜひ Google を受けてみないか」という誘いを受けたのが、Google に入社するきっかけ。津田氏が入社後に受けたカルチャーショックは「非常に効率良く仕事ができる」という点だった。

「社内では、メールのやりとりは Gmail ですし、スケジュール管理は Google カレンダーですし、社内エンジニアによって最適化されていて、非常に効率良く仕事ができる。昔の働き方は、今と比較していろいろな無駄があったと気づかされました」(津田氏)

また、ダイバーシティへの取り組みについても、Googleは非常に先進的だと話す。津田氏は現在、日本人のみならず、中国人やイタリア人、フランス人などさまざまな国の人が所属するチームで働いているそうだが、女性でそれも子育て中の管理職が非常に多いと言う。

Google は若い企業で、社員の年齢も若く、出産・子育てを経験する社員も多い。子供を産んだ社員がその後も気持ちよく働き続けられるようさまざまな工夫がされて、社員の意識もそういった社員に寛容で男性社員でも育休を取る社員が多いという。なかでも津田氏が驚いたことは、津田氏が2017年に出産のため産休に入った直後の昇進だったという。

「自分でもまさか産休に入った直後に昇進させてもらえるとは思っていなかったです。純粋にこれまでの仕事を評価してもらえて本当に嬉しかった」と津田氏は実感を込めて語ったが、その言葉からも、職場環境がいかに従業員にとって心地いいものか、ひしひしと伝わってくる。

品質の良いアプリを作ってもらうためにパートナーを支援

冒頭で紹介したように、津田氏がグーグルに入社したのは今からおよそ7年半前。当初は広告を担当し、入社2年半後に現在のチームに移動したという。現在所属するチームでは、これまでに「Google Now」や、アプリを検索に組み入れられる「App Indexing」などを担当した。

また、「Google アシスタント」の日本語化に際しては、社内でテストした結果をアメリカ本社や日本に常駐していたエンジニアにフィードバックするといったこともやっていたという。そして現在は、「Google アシスタント」の上で動くアプリ「Actions on Google」の、パートナー企業への技術的支援を主に行っている。

「ボイスユーザーインタフェース(VUI)は、誰もが初めて触るものなので、これまでWebアプリや Android アプリは作り慣れていても、(Actions on Google アプリは)企業にも知見がない。(VUIの)デザインをどうするかといった部分から一緒に作り上げていくということをやっています」(津田氏)

Actions on Google の技術支援においては、実装の手助けが主な内容となるが、最も大きな目的は「品質のいいアプリを作ってもらう」という部分にあるそうで、技術的に可能かどうかということだけでなく、VUIのデザインなどもアドバイスしているという。

「VUIデザインにはセオリーがありまして、ある程度セオリーにそったものにするだけで、ユーザーの使いやすさや印象が全然違ってくるんです。いかにシンプルに、人間の会話のような自然さを再現するかというところは非常に重要になってきます」(津田氏)

例えば、ユーザーがアプリを終わらせたい時に、ある人は「しゅうりょう」と言い、別の人は「おわり」と言うかもしれないし「やめる」と言うかもしれない。しかし、アプリ制作者が、終わりは「しゅうりょう」としか考えずに実装したとしたら、「おわり」では終われなくなってしまう。

「簡単な例ですが、終わりたいのに終われないのは非常にストレスに感じるんです。この部分は、終了に相当するフレーズをたくさん追加するだけなので実装は簡単なんです。そういった気づきをアドバイスすることで、品質を高めてもらうようにお願いしています」(津田氏)

また、Actions on Google にも Android アプリなどと同じようにポリシーが設定されているが、そのポリシーはやや厳しめになっているという。そこで、ポリシーをクリアするためのVUIのアドバイスも行っているそうだ。

「Actions on Google は基本的に会話でやりとりするので、アプリは "問いかけをした状態でなければマイクをオープンにし続けてはいけない"というポリシーがあるんです。そのポリシーに沿いながら、スムーズにやりとりを続けるために、例えば『お調べしました』で止めるのではなく、『お調べしましたが、どれがいいですか』とすれば、問いかけになってそのまま会話が続くようにマイクをオープンにできる、といった感じです。こういった部分をアドバイスしたりしています」(津田氏)

現在、Actions on Google をはじめとしたボイスアシスタントの分野は、非常に注目を集めている。

そのため津田氏は、「本当に急激に伸びているプロダクトで、未来があって、業界が盛り上がり始めたところですので、業界を牽引していく Google でそのプロダクトに携われているのは個人的に嬉しいですし、いい経験になっていると思います」と、非常にやりがいを感じているようだ。

もちろん、調整が難しい部分もある。例えばActions on Google の品質として、Google 側が考えるレベルと、パートナーが考えるレベルに差がある場合があり、改善の調整が難しいという。そして、品質改善には、継続して開発するモチベーションも不可欠となるが、そのモチベーションをどこまで維持できるか、という部分も課題と津田氏は指摘する。

ボイスアシスタント分野の注目度の高さから、Actions on Googleに興味を示すパートナーも非常に多い。しかし現状では、Android アプリなどと違い、Actions on Google では収益化の要素が現状は存在しないため、開発モチベーションの維持が難しいのだ。

「新しいものにいち早く取り組むという部分をモチベーションとしてやっていただいています。しかし、我々としてはユーザーにとっていいものを出さないと使われなくなってしまうので、いいものを出した方がパートナー側にもいいと思っています。本来は、アプリのロンチ後も改善し続ける必要があるのですが、そこまでモチベーションを維持できるかという部分は難しいと思います」(津田氏)

新しいプラットフォームということもあり、まだまだ開発途上でActions on Google のプラットフォーム側にもバグがあるのも事実。

ただ、VUIという最先端のテクノロジー開発である以上、早急に対処が必要な重大なバグはともかく、とにかく世に放ってフィードバックを元に改善していくという手法が、Googleに限らず近年のVUIの目覚ましい発展に寄与している側面もある。一方で担当者の津田氏にとっては「パートナーからのバグの修正依頼との間で板挟みになることも多々ある」と苦労が耐えない様子だ。

そういった中でも、やりがいは非常にあると津田氏。

「日本のマーケットはこれだけ盛り上がっていて、Google としても日本には注力していますが、アメリカ本社の人たちは日本語がしゃべれないので、我々に頼ってもらわざるを得ないんです。我々がいなければこのプロダクトは日本で広がっていかないな、という気持ちはあるので、一人のメンバーとして貢献できているのは高いモチベーションになっています」(津田氏)

人々の生活の一部になり、当たり前に使われるように

津田氏に、Actions on Google を今後どのように使って欲しいか聞いたところ、「個人的なものですが」という前置きをしつつ、育児をしている人に使って欲しいとのことだった。

津田氏自身も、2017年に出産を経験しており、子供を抱っこしたり、授乳したりという育児の場面では、携帯やスマートフォンを操作出来ないと話す。そうした場面でも、Google Home であれば、声でテレビを付け、音楽を再生できる。「育児しているお父さんやお母さんにとって、Google Home は非常に便利なプロダクトと感じています」(津田氏)。

Google Home

また、現在0歳児の子供の育児を行っている津田氏らしい提案もあった。

「Actions on Google アプリに『育児ノート』というものがあります。おむつを取り替えたり、授乳したりというそれぞれの時間を声で記録できるアプリです。ノートに記録するにしても携帯に記録するにしても、とても面倒なんですが、声で記録できるのはとても便利だと思います。ぜひ使ってもらって、便利さをわかってもらえると嬉しいなと思います」(津田氏)

Google Home などのボイスアシスタントが今後どう進化していくのか。津田氏は、人々の生活の一部になり、当たり前に使うようになってほしいと願う。

「Android やiOSが登場したときには、一部の人が"なんだこれは、面白いな"と言って使っている感じでしたが、今は多くの人が当たり前のようにアプリを使ってショッピングしたり、チャットをしたりする世界に急激になっています。それと同じように、ボイスアシスタントが生活にナチュラルに溶け込んで、生活の一部になるぐらいまで持っていきたいと思っています。それにはパートナーさんがとても重要で、レストランや美容院を予約したいといったことをボイスでできるようにならないと、人々の生活をサポートするといったところまで持って行けません。パートナーさんには重要な役割があると思いますので、我々としてはパートナーさんをサポートして、質の高いアプリを出してもらって、人々の生活を豊かにするというところを一緒にやっていきたいと思います」(津田氏)

Google Home を代表とするボイスアシスタントは、昨年登場したときのような盛り上がりから比べるとやや一服した感がある。いわゆるアーリーアダプタへのアプローチが一巡したと言ってもいいだろう。

今後は、スマートフォンが普及したのと同じように、一般の人たちへどこまで普及させられるかが課題となるはずで、それには津田氏も指摘するように、Google だけでなくパートナー企業の取り組みも重要となってくる。しかし、津田氏のような考えで取り組む人がGoogle にいる限り、前途は明るいと言えるだろう。