「シャープ」の記事

電子黒板の急成長に賭けるシャープ、成功の鍵は「4K」化

電子黒板の急成長に賭けるシャープ、成功の鍵は「4K」化

2019.04.15

シャープが電子黒板ラインアップの4K化を加速

実は将来にわたり拡大見込まれる有望市場

リーダーの立場を固め、成長の果実を多く取り込む狙い

シャープが、IWB(Interactive Whiteboard=電子黒板)市場で攻勢をかける。その切り口となるのが「4K」だ。5月上旬から、3つの画面サイズで、4K対応したタッチディスプレイ「BIG PAD」の新製品を順次投入する。今年度中には4K比率を約7割にまで一気に引き上げる。今後も成長が見込まれるIWB市場において、トップシェアメーカー自らが4Kシフトをリードし、さらなるビジネス拡大に向けてアクセルを踏み込むことになる。

4K対応したタッチディスプレイ「BIG PAD」の新製品

IWB市場で国内をリードするシャープ

シャープのBIG PADは、同社の液晶ディスプレイ技術を生かしたIWB製品で、2011年12月に投入した70V型/60V型タッチディスプレイ製品「PN-L702B」/「PN-L602B」から、BIGPADの名称を採用。2012年1月には、さらに大型化した80V型のBIGPADも投入している。その後も、基本的な機能を備えるスタンダードモデルに加えて、複数台を並べて設置するのに最適化したフルフラットモデル、PCとの接続が容易なワイヤレスモデル、ハドルミーティングなどに適したミドルサイズモデル、高精細表示を特徴としたフラッグシップ4Kモデルとラインアップを拡大。さらに、教育分野向けの機能を搭載したBIG PAD Campusも製品化するなど、様々なニーズにあわせた製品提案を行ってきた。

左が4Kで右がフルHDの画面

現在、国内IWB市場において、シャープは約6割のシェアを獲得。この分野をリードしている。

市場規模はまだ小さいとされるIWB市場に、シャープがことさら力を注ぐのは、これを成長領域と捉えているからだ。実際にIWB市場は、年々出荷台数が拡大している。

国内のIWB市場は、2018年の出荷台数が1万6,307台だったものが、2019年には1万9,110台と17%増の成長率を見込む。さらに、2022年には3万5,849台の出荷が想定され、年平均成長率は21.8%増と、高成長の予想だ。働き方改革の推進や、教育分野における電子黒板の導入促進といった世の中の流れも、これを後押ししている。

こうした成長は、世界的に見ても同様だ。

グローバルに見た2018年の実績は、155万9,000台と前年比34.5%増という高い成長を記録した。2022年度には197万7,000台の出荷が見込まれている。

なかでも、注目を集めているのが4Kモデルの出荷比率の上昇だ。

顕著な「4K」化の波をつかむために

全世界で2016年に9.5%だった4K比率は、2017年には21.1%に急拡大した。2018年には37.5%と、3台に1台以上にまで広がった。この背景には、IWBの最大市場である中国において、4K化の波が一気に進展していることがあげられる。

この4K化の波が日本に訪れているとは言い難いが、この流れを日本でも仕掛けようとしているのがシャープだ。

2018年における国内IWB市場の4K比率は9.9%。シャープはこれを2020年には約半分に引き上げようとしている。BIGPADの販売台数でいえば、約7割を4Kモデルにするという意欲的な計画だ。

シャープが今回発売した新製品は、高精細4K液晶パネルを搭載し、微細な文字や図表、設計図面を鮮明に表示することができるほか、最大4台までのパソコン画面をマルチ表示することが可能だ。4台接続時であっても、それぞれの画面をフルHDで表示できる。

また、パネルにはInGlass方式のタッチパネルを採用。タッチポイントを検出する赤外線が、液晶パネルに近接した位置を走査する「低ホバー設計」としているため、衣服の袖などに対する不要な反応などがなくなり、誤動作が減るほか、この仕組みにより本体のベゼル厚が抑えられ、スタイリッシュな外観を実現することにもつながっている。

シャープ ビジネスソリシューション事業本部 ビジュアルソリューション事業部 商品企画部の村松佳浩部長は、「赤外線遮断方式を採用している従来製品では、文字を書こうとして近くまでペンを寄せるとその段階で反応してしまい。書きたいと思う場所に文字を書き込めないという課題があった。InGlass方式によって1mm以下の近接状態で文字が書けるため、狙った場所にしっかりと文字が書ける」と説明する。

シャープ ビジネスソリシューション事業本部 ビジュアルソリューション事業部 商品企画部の村松佳浩部長

より細い文字を書けることから、同梱のタッチペンは、両端にそれぞれ太さ2mmと4mmの2種類のペン先を備え、1本のペンで細字と太字を簡単に書き分けられるものになった。

細字と太字をかき分けられるタッチペン。3角形の形状は「転がりにくい」という利点がある

さらに、本体の内部部品の発熱に対して放熱構造に工夫を施したことで、通常の横置き設置に加えて、縦置き設置や斜め設置が可能になった。これにより、タッチ機能を活かした大画面サイネージとしての利用のほか、デザイン画や設計図のレビューといった用途にも活用できるようになった。

また、今回の製品の特徴のひとつが、コントローラーを内蔵し、ホワイトボード機能やモバイル機器とのワイヤレス接続機能といった、ミーティングで役立つ機能を標準装備したことだ。

たとえば、ホワイトボード機能は、必要な時にさっと立ち上げ、すぐに書き込め、簡単に書き込んだ内容を保存できるものだ。あわせてミラーキャスト機能により、パソコンやタブレット端末などのモバイル機器をワイヤレスで接続できる。面倒な配線の手間がなく、画面にパソコンなどの内容を表示できるため勝手が良い。

ミラーキャスト機能を利用して、PCの資料を直接表示できる

そのほか、同社が社内でも活用しているクラウド型テレビ会議システム「TeleOffice」と組み合せることで、遠隔地と資料を共有しながらの会議が容易となった。スマートフォンやタブレットと接続して、外出先や在宅勤務の社員とのコミュニケーションも可能だ。

特別だった4K、新製品で一気にスタンダードへ

今回の新製品は85V型の「PN-L851H」、75V型の「PN-L751H」、65V型の「PN-L651H」の3機種をラインアップしており、5月上旬から順次発売する。まずは国内だが、欧米、中国、アジアにも展開していくことになるという。

4K化の促進という狙いを持つことから、機能の大幅な向上を遂げながら、価格も戦略的な設定を行っている。市場想定価格は、85V型が130万円前後、75V型が68万円前後、65V型が50万円弱だ。

これは、主力となる75V型を例に取ると、現在市場にある70V型のフルHDのスタンダードモデルとほぼ同等の価格設定。つまり、4K化を図りながら、画面サイズを5インチ拡大し、さらにコントローラーも内蔵し、それでいて、価格は同じという、まさに戦略的な価格設定となっているのだ。

新製品によって、BIGPADの製品ラインアップ全体にも変化が起こる。

BIGPADは従来も静電容量型の4Kモデルを用意していたが、これを4Kハイエンドとして位置付け直す一方、これまでのフルHDのスタンダードモデル、ワイヤレスモデル、フルフラット画面モデルは今回の新製品へと統合。これを4Kスタンダードモデルとして展開する。BIGPAD全体をフルHDから4Kへと完全にシフトするという宣言だ。

そして、同社は明言していないが、今後は当然、教育分野向けモデルも4K化が進む。2020年までに教育分野へのIWBの導入が加速する情勢は、4K化を後押ししそうだ。

市場をリードしているシャープ自らが、販売台数の7割を4Kで占める意欲的な販売戦略で4K化へシフトするという構図だ。

「IWB市場においても、シャープが4Kの世界に一歩先に踏み出すことで、ビジネスを優位に進めたり、プロモーションでも先進性を発揮できたりする。また、今回の機能強化によって、コントローラーを内蔵したり、独自のIWBランチャーによって4Kコンテンツを利用しやすい環境を整えたりしており、この点でも他社をリードできる。BIGPADにより、4Kを取り巻くエコシステムも構築していきたい」(シャープ・村松部長)と意気込む。

さらに、これまでBIGPADは、サイネージとしての提案はあまり行ってこなかったが、外国人観光客の増加や2020年の東京オリンピック/パラリンピックの開催に向けて、サイネージ需要が拡大しており、タッチ機能を搭載したBIGPADをサイネージ向けに提案する動きも加速する。4K化と価格競争力、豊富なソリューションによって、サイネージ用途をBIGPADの新たな主要ターゲットとして展開していくことになる。

シャープは4K化の”次”に着手している?

実は、シャープのIWB市場の仕掛けはこれだけではない。この分野において、さらに2つの隠し玉がある。

1つは、シャープが得意とする「8K」だ。

シャープは、4月9日から11日の3日間、東京・芝浦のシャープ東京ビルで、新技術および製品の展示会を行なっていた。もともとは社内向けのイベントだが、来日していた鴻海精密工業の郭台銘会長や、広東省の馬興瑞省長をはじめとする広東省の高官なども見学に訪れた。さらに、シャープの戴正呉会長兼社長の提案で、この内容は、一部報道関係者にも公開された。

その会場に展示されていたのが、8Kタッチパネルを応用した新製品だ。

約3318万画素の超高精細技術によりリアルな映像を表示する8Kタッチパネルに、8Kコンテンツビューワーを接続することによって、クラウドを通じて8Kコンテンツを配信する仕組みとなっている。この8K配信の実現には、クラウド型テレビ会議システム「TeleOffice」の基本技術を活用しているという。

これは、まずは美術作品などを鑑賞する用途を想定している。絵画などをタッチ操作によって自由に拡大して鑑賞できる。コンテンツの内部データには、60K相当の高解像度データを使用しているため、拡大しても画質を損なうことなく、鮮明に見ることができ、実際の絵画では見えにくい細かい部分まで拡大して表示することができる。絵画に込められた作者の意図などもより理解しやすくなるだろうとしていた。

この8K化は、BIGPADの次の進化として期待できる技術だ。

新技術および製品の展示会に参考展示された8Kタッチパネル。展示ではピーテル・ブリューゲルによる「バベルの塔」を8Kで表示
タッチしながら拡大すると細かい部分まで鮮明に見ることができる

もう1つは、マイクロソフトが提案している「Windows Collaboration Display」に対応した製品の開発だ。これは、昨年6月に台北で開催されたCOMPUTEX 2018でマイクロソフトが発表したもので、今年の1月には米ラスベガスで開催されたCES 2019において、シャープブースにさっそくWindows Collaboration Display対応製品が参考展示された。

Microsoft 365との連携を最適化しているほか、カメラやセンサーを活用して、会議室の人の動きや温度、湿度、照明などの状況を感知して、会議環境を適切にコントロールできるようにしている。例えば会議室に人がいないことや、新しく入ってきた人を認識し、それによって、会議室の予約をキャンセルしたり、会議に必要な情報を提供したりする。

CES 2019のシャープブースに参考展示されたWindows Collaboration Display対応の製品

参考展示されていた製品の発売時期は未定であり、これがBIGPAD(海外ではAQUOS BORAD)の名称で発売されるかどうかもわからないが、実はBIGPADと同じチームが手掛ける製品に位置づけられており、シャープのIWBの新たな提案のひとつになるのは間違いない。

シャープはIWB市場を成長市場として明確にし、積極的に手札を広げることで、この分野のリーディングカンパニーとしての存在感をさらに強化する考えだ。その始まりの一手が今回の「4Kスタンダードモデル」の投入ということになる。

シャープ、BtoB冷蔵分野で中国AUCMAと協業へ - 白物家電の提携も視野?

シャープ、BtoB冷蔵分野で中国AUCMAと協業へ - 白物家電の提携も視野?

2019.03.27

シャープが中国の冷蔵機器企業とBtoB分野で提携を発表

憶測を呼ぶ提携内容の本当の狙いは白物家電?

シャープと中国政府との関係にも影響する可能性

シャープの戴正呉会長兼社長

シャープは、中国の澳柯瑪集團(AUCMA)と、コールドチェーン関連製品の開発協力および生物サンプルなどの超低温保管システムに関して協業すると発表した。2019年3月25日に、AUCMAの李蔚董事長が大阪府堺市のシャープ本社を訪問。シャープの戴正呉会長兼社長などが出迎え、覚書の調印式を行った。

BtoBを発端に、将来的には白物家電も見据える?

AUCMAは、中国山東省青島市に本社を持つ企業で、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電、小売店舗に導入されている冷凍ショーケースなどのコールドチェーン関連製品、電動バイク、自動販売機などの開発、製造で実績を持つ。

1987年に設立し、2000年12月には上海証券取引所に上場。従業員数は約8,000人規模の中堅企業だ。

今回の提携は、コールドチェーン関連製品での協業が中心となり、BtoB領域での展開を強化するものになる。

調印式の様子。AUCMAの李蔚董事長と、シャープの沖津雅浩常務執行役員が調印した

シャープでは、「AUCMAは、コールドチェーン技術、設備における有力企業であり、また超低温の貯蔵分野においても世界有数の技術力を保有している。冷凍冷蔵庫や低温物流などにおける協業関係を構築することで、事業のさらなる拡大を図るとともに、今後も各国の政府機関や有力な企業との連携を進める」としている。

両社とも白物家電事業を有していることから、将来的には、生産や品揃え、販売といった点で、白物家電事業における協業も考えられそうだ。実際、シャープのコメントでも触れられているように、冷凍冷蔵庫に関する協業を視野に入れていることに言及している。

だが、提携内容そのものは、シャープにとっては、コールドチェーンや超低温保管システムという新たな事業への参入という側面が強い。

調印後、握手するAUCMAの李蔚董事長(左)とシャープの沖津雅浩常務執行役員(右)

既存事業との関連が薄い協業の理由は?

コールドチェーン業界を見ると、日本では、パナソニックやホシザキ、ダイキンなどが先行しており、産地から物流、小売、家庭までをつないで、鮮度の高い食材を届ける環境を実現している。

個別の冷凍製品で展開するよりも、コールドチェーン全体でのソリューション提案を行える企業の方が高い優位性を持つだけに、その点、シャープが今回の協業をきっかけに参入したとしても、コールドチェーン全体を網羅するには、品ぞろえの面からも、まだ時間がかかることになる。

また、超低温保管システムにおいては、医療分野での提案が対象と見られるが、シャープには、この分野での実績が少ない。

シャープには、ビジネスソリューションと呼ぶ、BtoB事業を行う領域がある。複合機や電子黒板、テレビ会議システムといった「スマートオフィス」ソリューション、マルチディスプレイやインフォメーションディスプレイなどの「スマートサイネージ」ソリューション、POSシステムやハンディターミナルなどの「スマートリテール」ソリューションを展開している。

だが、どれも、今回協業するコールドチェーンや超低温保管システムとの親和性はあまりないものばかりだ。

ほかにもシャープでは、事業ビジョンとして、「8KとAIoTで世界を変える」と掲げているが、やはり、コールドチェーンや超低温保管システムと、この事業ビジョンとの関連性は低い。

つまり、今回の協業の狙いは、既存事業との関連性という点では、不透明な部分が多いと言わざるを得ない。

シャープ本社を視察する関係者

官民あげて大々的に実施された調印式の意味

だが、シャープとAUCMAの両社がこの協業にかける意気込みは、並々ならぬものがある。

3月25日にシャープ本社で行われた覚書への調印式には、中国側からはAUCMAの関係者のほか、中国山東省、煙台市、青島市の政府高官など、約40人の訪問団が訪れた。

まさに官民をあげて、この契約を重視していることがわかる。

シャープの会長兼社長の戴正呉は、「山東省の龔正(きょうせい)省長とは鴻海で事業を担当していた頃からの縁があり、大変懐かしく思う。シャープはグローバルに投資を推進しており、これを機に、さらにパートナーシップを発展させていきたい」と語った。

そして山東省の龔正省長は、「山東省を重要パートナーとして捉えてもらったことに感謝する。山東省は急速に経済発展を遂げるなか、とくに、AIなどの次世代情報産業に注力している。シャープの今後の成長を全力でバックアップしていく」と語っている。

山東省の龔正(きょうせい)省長。省長は日本の行政でいう知事にあたる

訪問団のなかには、煙台市の陳飛市長、青島市の薛慶國副市長らも参加していた。

シャープの既存事業との関連性が薄いにもかかわらず、調印式にこれだけの力が入っていることを見ると、どうしても今後の広がりが気になる。

いわば、囲碁で言えば、「飛び石」ともいえる手の打ち方にも見える。

シャープの事業構造にまで影響が及ぶ可能性も

直接的には、コールドチェーンや超低温保管システムといったシャープにとっての新規事業を、日本およびアジアでどう広げていくのかが焦点だ。

しかし、今回の協業をきっかけに考えなければならないのは、シャープが中国政府との関係をどう強化していくのか、両社が取り組んでいる白物家電事業において、どんな連携をするのか、8KとAIoTとどう結びつけていくのかだ。そして、シャープは2017年度実績で13.6%に留まっているスマートビジネスソリューションにおけるBtoB事業の成長戦略を、どう描こうとしているのか。

今回の協業をきっかけにして、様々な憶測が成り立つ。中長期でみれば、ここから発展して、シャープの事業構造に変化を及ぼす可能性もある。

この「飛び石」の一手が、シャープの事業にどう広がっていくのかを注視しておきたい。

PC業界から東芝ブランドが消滅、低迷市場で新生「Dynabook」は復活劇を描けるか

PC業界から東芝ブランドが消滅、低迷市場で新生「Dynabook」は復活劇を描けるか

2018.12.19

東芝クライアントソリューションが「Dynabook」に社名変更

PC業界で歴史を持つ東芝ブランドが消滅する

新生Dynabookは「シャープ流」を採り入れ、ブランドの世界展開へ

PC業界で長い歴史を持つ東芝ブランドが消滅した――。

シャープが株式の80.1%を取得したことから、今後の動きが注目されていた東芝クライアントソリューション(TCS)。同社は事業戦略の転換に踏み切り、2019年1月より社名を「Dynabook株式会社」に変更すると発表し、「シャープ流」を採り入れることで事業拡大を図る姿勢を示した。

低迷の続くPC市場において、新生Dynabookは復活劇を見せられるのだろうか。

シャープ傘下の「Dynabook株式会社」として再出発する

「dynabook」ブランドを世界に展開

東芝PCの歴史は長い。1985年に世界初のラップトップ型「T1100」を、1989年には初代dynabookとなる「DynaBook J-3100」を発表した。パーソナルコンピュータの父とも呼ばれる科学者のアラン・ケイ氏が提唱した「ダイナブック」のビジョンに共感した東芝が、製品ブランドとして採用したのが始まりだ。

1989年発表の「DynaBook J-3100」

だが2019年1月にはTCSがDynabookに社名を変更(ブランド表記はdynabookを継続)し、PCから東芝のブランドは消えることになる。家電製品では中国の美的集団傘下の「東芝ライフスタイル」として東芝の名前が残ったのに対し、シャープは東芝の名前ではなくdynabookを存続させることを決断した形になった。

このdynabookブランドを、新会社は海外にも展開していく構えだ。TCSはPC事業の売上海外比率を2018年度の22%から2020年度には42%まで高める目標を掲げた。特に有望な地域としてアジアを挙げており、これはシャープを傘下に収めた鴻海のチャネルを活用できるためだという。

シャープや鴻海とのシナジーで海外展開を加速

だが、海外展開には大きな課題もある。TCSはdynabookを日本国内向けのブランドとして展開しており、海外ではほとんど知られていないからだ。主要な市場において商標の問題はクリアしているとのことだが、認知度を高めていくにはしばらく時間がかかりそうだ。

その先駆けとなったのが、2018年9月にベルリンで開催された見本市「IFA 2018」だ。シャープが出展したブースにはTCSのノートPCが並び、世界に向けてdynabookブランドをアピールしており、2019年からの新体制を見据えた布石になっていた。

世界に向けて「dynabook」ブランドをアピール(IFA 2018のシャープブース)

シャープのAIoTと組み合わせたソリューションが鍵に

当面の間、TCSの主力商品になるとみられるPCだが、世界のPC市場は低迷している。2018年第3四半期のPC出荷台数は米Gartner調べで前年比0.1%増、米IDC調べでは0.9%減となった。

特に個人向けPCは引き続き減少傾向にあるとされており、「リテールは非常に厳しいビジネスだ。売上は増えても利益は増えない。そこに勝算なく突っ込んでいくことはしない」とシャープ副社長の石田佳久氏は語っている。

一方、法人向けPCはWindows 10への買い替え需要が続く2020年までは比較的堅調とみられており、TCSもまずはB2Bを中心に展開するという。この点ではシャープがすでに持っているビジネスソリューションの販売チャネルを活用し、一定の売れ行きは見込めるようだ。

だが、その先を見据える上で重要になってくるのが、PC以外への製品ラインアップの拡大だ。すでにTCSはクラウドや教育向けなどさまざまなソリューションを展開しており、業務用デバイスとしては通信機能を搭載したドライブレコーダーなどを製造している。今後は、ここにシャープのAIやIoT技術を組み合わせていくというわけだ。

TCSによる損保会社向けドライブレコーダー製品

たとえばシャープは8Kの映像技術を活用したエコシステムを提唱している。8Kカメラと画像処理技術を組み合わせ、内視鏡や防犯、保守に活用できるという。カメラやセンサといったハードウェアに、クラウドやAIといったソフトウェアを組み合わせたソリューションの需要は世界中で高まっており、有望な分野といえる。

シャープの技術を組み合わせ事業領域を拡大

またTCSは、シャープによるAIを利用したサービス群「COCORO+(ココロプラス)」と連携したサービスの海外展開も目指すという。今後のスマート家電は単にネットにつながるだけでなく、人間に寄り添い支援する機能が期待されるだけに、日本のおもてなしやホスピタリティへの理解も相まって注目度は高い。

単純なハードウェアの開発競争では、スケールメリットを活かした中国メーカーの優位が続いている。Dynabookの生き残りには、シャープの技術を加えたソリューションを世界にアピールしていけるかどうかが鍵になりそうだ。