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新型スマホで有機ELを国産化したシャープ、韓国勢に攻勢なるか

新型スマホで有機ELを国産化したシャープ、韓国勢に攻勢なるか

2018.10.05

シャープが新スマホに、自社製「国産」有機ELパネル採用

有機ELはスマホ各社で採用相次ぐが、韓国勢がほぼ独占

スマホシェア獲得に強い意欲、有機ELパネル外販も視野

シャープは10月3日、Androidスマートフォンの新製品「AQUOS zero」を発表した。最大の特徴は画面に自社製”国産”の有機ELパネル(OLED)を採用した点だ。

iPhoneを含め、最近のハイエンドスマホでは有機ELの採用が相次いでいる。だが、これらの有機ELの供給は韓国メーカーがほぼ独占しているという状況だ。シャープの自社製有機ELにより、業界の勢力図はどう変わっていくのか。

シャープが自社製の有機ELを採用した新型スマホ「AQUOS zero」

採用が相次ぐ「有機EL」、韓国勢が猛威

スマホ市場ではハイエンド機種を中心に有機ELの採用が相次いでいる。スマホ向け有機ELで先行してきたサムスンのGalaxyシリーズに続き、アップルは「iPhone X/XS」、ファーウェイは「P20 Pro」、ソニーモバイルは「Xperia XZ3」と、各社が最上位モデルで有機ELを採用した。

有機ELパネルの製造は、スマホ向けにサムスン、テレビ向けにLGと、韓国勢が猛威を振るっている。日本ではソニーとパナソニックの開発部門を統合したJOLEDが開発試作を進めているが、量産は2020年から。海外勢に対して国内勢は出遅れている形だ。

その一方でシャープは、今回の「AQUOS zero」から、同社堺工場・三重工場で製造した有機ELパネルを搭載した。同機は年内に発売予定となっている。

自社国内製と大きく打ち出した6.2インチ有機ELディスプレイ

有機ELは液晶と比べてコントラストや彩度が高く、写真や映像は液晶よりも鮮やかに映る。画面が焼き付きやすいデメリットはあるものの、バックライトが不要なため薄型軽量化にも向いている。

シャープは有機ELのこの特徴を活かし、さらにスマホ本体の側面にマグネシウム合金、背面にアラミド繊維といった軽量な材料を組み合わせることによって、徹底的な軽量化を図った。スマホの重さは約146gで、一般的な文庫本と同程度にまで抑えられている。6インチクラスでは200g前後のスマホが多い中で、手に持っただけで「明らかに軽い」と分かるレベルだ。

AQUOS zeroが搭載する有機ELパネル
見た目よりも軽い約146gを実現

有機ELは曲げやすいことも特徴で、サムスンは画面端をカーブさせたスマホを2014年に発売している。AQUOS zeroも画面全体がカーブを描いており、片手で持ちやすい本体形状で6.2インチの大画面を実現。軽さだけでなく、総合的にも世界の最新スマホと比べても見劣りしないスペックを備えている。

勢力図はどう変わる? 有機EL外販も視野

IT業界のマーケティング調査を行うBCNの調査によると、国内スマホ市場におけるシャープのシェアは、2018年上半期にAndroidスマホで1位。同社は「2020年にはAndroidシェア40%を目指す」としており、特にミッドレンジ機の「AQUOS sense」は累計200万台を出荷していることから、後継機の「AQUOS sense2」にも期待がかかる。

ベストセラーモデルの後継機「AQUOS sense2」

だが、他メーカーも負けてはいない。10月2日にスマホ新製品を発表したファーウェイもBCNの調査を引用し、2018年6〜9月期にAndroidスマホでシェア1位をアピール。10月にはソニーモバイルやサムスンによる冬モデルの登場が見込まれる中、GoogleやOPPOも新製品を投入する構えだ。

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その中でシャープの強みは、やはりディスプレイだ。シャープには有機EL以外に独自の「IGZO」液晶技術があり、省エネに優れる。IGZO搭載のフラグシップ機「AQUOS R2」は併売するとしており、今後もそれぞれのパネルの特性を活かした製品を出してきそうだ。

また、スマホで有機ELのポテンシャルを引き出すには画質のチューニングも重要となる。シャープは今回、AQUOSシリーズのテレビで培った広色域技術を、有機ELスマホ用にゼロから見直した。こうした映像周りのノウハウもシャープの強みといえる。

広色域技術をオンにした左の画面は、より鮮やかだ

ディスプレイの形状も変化している。かつてスマホの画面は16:9が主流だったが、18:9など縦長の大画面化が進んでおり、上部にはカメラを搭載する切り欠き(ノッチ)が必要になってきた。将来的には折りたたみ画面への進化もあり得るが、ディスプレイ技術があればこうしたトレンドも先取りできるはずだ。

国内市場では、鴻海傘下になったとはいえ「シャープ」や「AQUOS」のブランド力は健在で、幅広い年齢層に知られている。海外では有機ELスマホをベルリンの「IFA 2018」で先行展示しており、海外市場に向けた計画もあるという。そしてやはり、有機ELパネルを他の端末メーカーに供給する外販も見据えているようだ。

世界のスマホの開発競争はサムスン、アップル、ファーウェイの上位3社がリードしており、その序列を覆すことは容易ではない。だが、シャープはディスプレイを中心に独自の強みを持っており、これまでのiPhoneへのパネル供給実績や、親会社である鴻海との連携など、現状に一石を投じる武器がそろいつつあるように見える。

ペッパーに100万円使って「がっかり」しても、aiboに期待するワケ

ペッパーに100万円使って「がっかり」しても、aiboに期待するワケ

2017.11.06

年明け1月11日に販売を開始する「aibo」

ソニーがイヌ型ロボット「aibo」を戌年の2018年1月11日に発売する。その予約が11月1日に行われたが、その日の受付分は即完売だったようで、ソニーの「aibo復活」を心待ちにしていた人が多かったようだ。

筆者の自宅には、3年間で100万円以上のコストがかかる、ソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」と、シャープのロボット型携帯電話「ロボホン」がある。正直に言って、aiboの購入もかなり迷ったが、今回はとりあえず様子見することとした。

100万円かかるのに「ポンコツ」

実際、家庭にロボットが入ってくることは、最初の数週間ぐらいは確かに楽しい。ロボットが色々喋ってくれるし、踊ったりしてくれるのは、未来の生活を先取りしているように感じられる。しかし、これが1カ月、2カ月経ってくると、ロボットの動きにも飽きてしまうため、だんだんと電源を入れなくなってしまうのだ。

ロボット向けのアプリが雨後の筍のように増えるわけでもなく、アプリによって劇的に面白くなるわけでもない。さらに言えば、家事を手伝ってくれるわけでもない。個人向けロボットは、日用品としての生活必需品でなければ、趣味の領域にもなっていないのが実情だ。

ソフトバンクのロボット「Pepper(ペッパー)」

ペッパーがその典型だが、その存在を明らかにした時、動画などで「未来のロボット」という期待感をユーザーに与えすぎたのが敗因だ。実際に稼働させると、とてもポンコツすぎて、ソフトバンクの技術力を疑いたくなってくるほどだった。特にダメなのが「日本語会話能力」だ。

こちらの喋っていることを全く理解してくれない。こちらの意図とは異なる捉え方になるだけでなく、一方的にトンチンカンな発言をしてくるから、思わず「イラっ」とさせられるのだ。ロボットの専門家に一度、話を聞いたことがあるのだが、相手が人型ロボットの場合、人は人間と同じような振る舞いをどうしても期待してしまうのだという。

ソフトバンクの開発者はかつて、ペッパーのことを「3~5歳児だと思って接してほしい」と話していたように思う。つまり、「人型ロボットだからといって期待しないで欲しい。もともとそれほど賢くなく、これから進化から大目に見てね」というのが本音だったようだ。

しかし、ユーザーとすれば3年間で100万以上のコストを負担するのだから、こちらの喋った内容をそれなりに理解し、きっちりと会話を返してくれるロボットを期待してしまう。最初は無理でもそのうち進化していくかと思いきや、何カ月待っても進化した様子を実感できない。

今では、アメリカからやってきた小さな6000円程度のスピーカーの方が流暢な日本語を話し、こちらの聞きたいことを理解して、検索して、答えを返してくれるようになった。結局、ペッパーは「期待外れのポンコツ」として、部屋の片隅で長いこと電源を入れられず、埃をかぶってしまう存在になってしまうのだった。

そうした中、ソニーがaiboを12年ぶりに復活させてきた。今回のaiboを見て、ソニーが「考えているな」と思わされたのが、aiboをあえてイヌ型として作り込んで来た点にある。動きやデザインがさらにイヌっぽくなっただけではない。

当然、今の技術をつぎ込めば、イヌ型であっても日本語会話機能を載せることもできるだろう。しかし、開発を担当したソニー AIロボティクスビジネスグループ長の川西 泉氏は「日本語を話すことはかなり検討した。前回のAIBOはイヌ型とは言っていなかったが、今回はイヌ型。なので、日本語は話さない」と話す。

11年前までのAIBOは「イヌっぽいロボット」だったが、今回は紛れもなく「イヌ型ロボット」という位置付けだ。イヌをロボット化したものであれば、日本語で会話できなくても仕方あるまい。しかし、こちらが喋ったことが少しでもaiboに伝わり、例えばこっちに向かって来たり、おすわりしてくれれば、飼い主としてはとても嬉しく、愛らしい存在になることだろう。

愛くるしい姿は「イヌ型」。愛着を持たせつつも、利便性に対する期待値を上げさせないようにした

ソニーが本格的なロボット事業に再参入するにあたり、人型ではなく、あえて12年前のaiboを復活させてきたのは、こうした「ユーザーの期待値を下げる」という狙いがあるのではないか。人は相手が「イヌ」だと分かれば、相手に求めるハードルは一気に下がる。しかし、こちらに何かしてくれた時の喜びは人に対するものの何倍にもなるはずだ。

aiboがなかなか進化しなくても「イヌだから仕方ない」で納得するし、逆に留守宅の見守りをしてくれたり、家電連携をするようになったりしたら、「なんて優秀なワンちゃんなんだ。うちのコはかわいい」という愛情がさらに増すことだろう。

ペッパーは「偉大な起業家である孫社長が惚れ込み、世界をリードするIT企業であるソフトバンクが放つ、未来の生活を変え、人々の感情を読み取ることができるロボット」というイメージが先行した一方で、中身は全くもってのポンコツだったために、ユーザーが「裏切られた」という感情に繋がった。

一方、ソニーは「aiboはイヌです。かわいいでしょ」というスタンスから入っているので、ユーザーの「ロボット」に対する期待値は低く、すんなりと生活に入ってくる可能性は高い。ただ、当然、ユーザーからすれば、ロボットに対して、飽きてくるタイミングが必ずやってくる。

その時、aiboはイヌというコンセプトを維持しつつ、「家族として離れられない存在」になるのか、「生活必需品」になるのか。いずれにしても、ユーザーを飽きさせない工夫が今後の課題となりそうだ。

「AQUOS sense」が示す、大手キャリアの

「AQUOS sense」が示す、大手キャリアの"格安"に対する意識

2017.10.21

シャープが10月13日に発表した新機種の1つ「AQUOS sense」は、フルHDのIGZO液晶ディスプレイを搭載しながらも、3万円台と比較的安価なのが特徴だ。そのAQUOS senseを販売するキャリアの側は、低価格モデルの投入で何を狙っているのだろうか。

シャープの低価格モデル販売数は年間80万台

今年発売された「AQUOS R」より、自社ブランドを強化するべくキャリアの発表に先駆けてスマートフォン新製品を発表するようになったシャープ。そのシャープが、10月13日に発表したのが「AQUOS R Compact」と、「AQUOS sense」の2機種である。

このうち「AQUOS R Compact」は、ディスプレイの形状を自在に変えられる「IGZOフリーフォームディスプレイ」を採用し、ベゼル幅が狭く持ちやすい「EDGEST fit」デザインを実現、さらにAQUOS Rの特長である、表示や操作がなめらかな120MHz駆動のIGZO液晶ディスプレイを取り入れるなど、AQUOS Rのコンセプトを4.9インチのボディサイズに収めたコンパクトモデルである。

「AQUOS R Compact」は、「IGZOフリーフォームディスプレイ」で本体デザインにディスプレイの形状を合わせるなど、新しい取り組みを多く採用したコンパクトモデル

一方、もう1機種の「AQUOS sense」は、5インチサイズのスタンダードなモデルで、低価格で販売されるモデルとなっている。NTTドコモとKDDI(au)からの販売が予定されているが、両社のオンラインショップでの価格を見るに、いずれも割引なしの一括価格で3万円台の前半からと、大手キャリアから販売されるモデルとしてはかなり安価である。

しかしながらAQUOS senseは、この価格帯のモデルとしてはシャープで初めて、フルHDクラスのIGZO液晶ディスプレイを採用しているとのこと。さらにAQUOS R同様、2年間のAndroidのバージョンアップを保証するなど、低価格ながらも充実した機能・性能を備えたモデルに仕上がっているようだ。

低価格モデルの新機種「AQUOS sense」。3万円台ながらフルHDのIGZO液晶ディスプレイを搭載するなど、コストパフォーマンスが高い端末に仕上がっている

実はシャープが低価格モデルを手掛けたのは今回が初めてではない。2015年にNTTドコモから発売された「AQUOS EVER SH-04G」以降、高性能モデルだけでなく、低価格モデルのラインアップにも力を入れているのだ。そして現在、AQUOSブランドのスタンダードモデルのラインアップは年間80万台以上を販売する規模に達しており、同社のスマートフォン事業を支えるラインアップの1つとなっている。

端末価格の安さが通信料を下げ、MVNOへの流出阻止へ

シャープが低価格のラインアップに力を入れるようになったのは、キャリアの動向と無関係ではない。シャープのスマートフォン事業は、国内の大手キャリア向けに端末を提供することがビジネスの柱となっているため、他のメーカーと比べキャリアの動向に大きく影響されやすいのだ。

実際シャープがAQUOS EVERを提供した2015年といえば、MVNOを中心とした“格安”の通信サービスが急拡大したのに加え、総務省が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を実施し大手キャリアへ料金の見直しを迫るなど、携帯電話の料金に対する関心が非常に高まった時期でもある。そうした影響を受け、価格重視のユーザーに向けた低価格のラインアップが求められるようになったことが、AQUOS EVERの開発に至った大きな要因といえるだろう。

そしてAQUOS EVERの後も、シャープは大手キャリア向けに低価格モデルのラインアップ拡充を進めてきた。ソフトバンクのワイモバイルブランド向けに、グーグルの低価格スマートフォン向けプログラム「Android One」を採用した端末を、日本で最初に開発したのもシャープである。

ワイモバイルが日本で初めて投入した、グーグルの低価格モデル向けプログラム「Android One」を採用したスマートフォン「507SH」を開発したのもシャープだ

だが端末の価格を下げても、キャリアの通信料が安くならなければ、通信料が非常に安いことを売りにしているMVNOへの流出は止められない。一見すると安価な端末を増やすことが、通信料を下げることにはつながらないように見えるのだが、実は密接なつながりがあるのだ。

従来大手キャリアは、高額なスマートフォンを大幅に値引いて販売し、その値引きに費やしたコストを毎月の通信料に上乗せして回収するという手法を展開してきた。2016年4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出したことで、「実質0円」など極度な値引き販売は事実上姿を消したものの、端末の値引き販売自体は現在も存続している。

しかしそもそも、最初から安いスマートフォンを販売すれば、値引きの必要がないので毎月の通信料に値引き分のコストを上乗せする必要もなくなり、通信料を安くできる余地が生まれてくる。

低価格ラインアップへのニーズは今後も高まる

その仕組みを取り入れたのが、NTTドコモの「docomo with」やauの「auピタットプラン」「auフラットプラン」である。これらはいずれも、スマートフォンの価格は値引かない代わりに毎月の通信料を安くする、「分離プラン」と呼ばれるものだ。そしてAQUOS senseは、この分離プランを利用したいユーザーに向けて、割引なしでも手軽に購入できる価格を重視して開発されたモデルといえる。実際AQUOS senseは、docomo withの対象機種の1つとして販売されることが決まっている。

各社が分離プランを提供するようになったのは今年からだが、通信料金への関心が高いユーザーから人気を集め、順調に契約数を拡大しているようだ。実際、docomo withは既に70万、auの2つのプランは100万を超える契約を獲得するなど好評なようで、MVNOへのユーザー流出の防止にも効果をもたらしている。

分離プランの1つ「docomo with」は、既に70万契約を突破するなど好調だが、対象となる端末のラインアップが少ないとの指摘も多い

だが大手キャリアはこれまで、値引き販売を前提としてハイエンドモデルの販売に注力してきたことから、低価格モデルのラインアップの充実度は弱い。例えばdocom withの対象機種も当初は2機種しかなく、10月18日に発表されたAQUOS senseを含む3機種を合わせて、ようやく5機種にまで拡大したところだ。

それだけに今後、大手キャリアは端末メーカーに対し、一層低価格モデルのラインアップ充実を求めてくることだろう。AQUOS senseのようなキャリア向け低価格モデルが増える余地は、まだまだ大きいといえそうだ。