「シェアリングエコノミー」の記事

クルマの在り方を変える? IDOMが始める個人間カーシェアの可能性

クルマの在り方を変える? IDOMが始める個人間カーシェアの可能性

2018.11.22

所有から利用へ、業界のトレンドに着目した新サービス

カーシェアリングサービスが抱える課題とIDOMの対応策

まるでマンション? クルマが投資対象になるかも

中古車の「ガリバー」や月額クルマ乗り換えホーダイサービス「NOREL」などを手がける株式会社IDOMは、個人間のカーシェアリングサービス「GO2GO」(ゴーツーゴー)を始めると発表した。2019年4月から東京、神奈川、大阪、埼玉、千葉でサービスを開始し、順次全国に展開する。この新たなサービスからは、クルマの在り方が変化する兆しを感じる。

貸し手・借り手ともにメリット大!

カーシェアリングは成長が見込まれる分野だ。IDOMによると、世界の市場規模は今後約20年で8兆円を超えるという。同社は“近所のクルマを安心、簡単、遠慮なく使える”をコンセプトとし、拡大する市場でシェア獲得を狙う。

カーシェアリングの世界市場予測。2035年には、新車販売で得られる利益を約2兆円上回る規模へと成長する見通しだ

「GO2GO」の仕組みだが、まず、クルマを所有するオーナーはアプリをダウンロードし、クルマの情報や共同使用料(価格は自分で決められる)などの必要情報をアプリに登録する。ドライバーは使いたいクルマに予約リクエストを送り、オーナーが承認すれば取引成立。あとは待ち合わせ場所を決めてクルマを受け渡し、利用後は互いを評価する。借り手がIDOMに支払った共同使用料(別途、自動車保険料も必要)からはプラットフォーム利用料の20%が差し引かれ、残りは翌月末にオーナー指定の銀行口座に振り込まれるという寸法だ。

利用時間は3、6、12、18、24時間単位(以降は24時間ごと)で選べるので、“チョイ乗り”から連日の利用まで、貸し手と借り手の都合・要望に合わせてクルマをシェアできる。加えて、全ての手続きはアプリで行えるので、スマホに慣れ親しんだ若者世代にとっては利用しやすい構造といえる。

貸し手側からすれば、クルマを使わない時間を有効活用できるし、得られる副収入を充てればクルマの維持費も削減できる。国産車や輸入車、キャンピングカーなども対象となっているので、借り手としては、目的に応じて幅広いラインアップの中から車種を選べる。価格は貸し手の設定にもよるが、おそらく、レンタカーなどよりは安く使えるはずだ。つまり、双方にメリットがある。

「GO2GO」について説明するIDOM 経営戦略室 兼 CaaS事業部 CaaSプラットフォーム推進責任者の天野博之氏

IDOMが掲げる初年度の目標は、登録車数1万台だ。アプリのリリース後も、スマートロック(スマートフォンをクルマのキーの代わりとする仕組み)による無人貸し借りをはじめとしたサービス拡充を図っていく。

また同社は、既存サービスである「ガリバー」「Gulliverフリマ」「NOREL」と「GO2GO」の連携によるシナジーも模索する。例えば、登録車両の充実に向けては、顧客が「Gulliverフリマ」に登録した車両を売れるまで「GO2GO」で運用したり、「NOREL」の車両をシェア登録したりといった手法を想定している。「ガリバー」店舗では、クルマの受け渡しを代行するなどのサポートを検討。これらは、IDOMならではの強みをいかした戦略といえる。

例えば「NOREL」でトヨタ自動車「プリウス」を借りて、「GO2GO」で週2日シェアした場合、実質、月間2万円でクルマを短期所有することが可能だとIDOMは説明する

愛車を貸し借りするゆえの課題とは?

いいこと尽くしに思える「GO2GO」だが、課題はいくつかありそうだ。例えば、クルマが持つ特異性ゆえのトラブルも考えられる。

近年はさまざまなモノを対象にシェアリングサービスが増えているが、トヨタ自動車の豊田章男社長の言葉を借りれば、クルマは「唯一、“愛”がつく工業製品」だ。そうであるとすれば、愛着のあるクルマを、すんなりと知らない他人に貸せるものだろうか。そういう人は、サービスを利用しなければいいと言ってしまえば元も子もないが、貸し主のクルマへの愛着が高ければ高いほど、返却時にトラブルが起きる可能性も高まりそうに思える。

また、保険の適用範囲も気になるところだ。万一の事故の場合、どこまで保険でカバーできるのか。また、悪意ある利用者による盗難のおそれはないのかなど、不安点も内包するのが個人間カーシェアというものの特性だ。

これらに対してIDOMでは、ローンチに合わせていくつかの対策を用意している。

クルマを貸し借りすることに対する心理的ハードルを下げてくれそうなのは、ユーザー間の相互レビューや、運転ログを使った運転評価だ。良い評価が多ければ、クルマの貸し主・借り主がどのような人物かを事前に把握できる。とはいえ、ローンチ直後はレビューが少なく、いわば受け身の対策となるため、これらの仕組みが効果を発揮するには時間を要するだろう。

保険はカーシェアリング専用のものを用意するとのことだが、現在は詳細を詰めているところだという。内容については、今後の発表を待って吟味したい。

安心・安全な「GO2GO」の利用に向けたIDOMの取り組み。ローンチ後も随時追加していくそうだ

投資用にクルマを購入する時代がやってくる?

今回の発表の中で「確かに!」と気付かされたのは、クルマと不動産の共通項だ。マンションはクルマよりも高価であるが、賃貸用に所有して利益を上げている投資家も多い。

不動産業界との共通項を示したスライド

シェアリングという考え方が自動車業界に根付いた場合、例えば投資用にクルマを購入するなど、クルマの買い方にも変化が生じるものと思われる。この流れができれば、クルマ離れが叫ばれる現代において朗報といえるだろう。

また、投資目的のマンションにリフォームや家電リースなどのさまざまな業者が介在しているように、投資用のクルマにも、何らかの新たなビジネスチャンスが付随しているかもしれない。

IDOMから誕生する新サービス「GO2GO」が、今後の自動車業界にどのような変化をもたらすのか。期待しながらその続報を待ちたい。

Airbnbは、日本の伝統工芸の救世主となるかもしれない

Airbnbは、日本の伝統工芸の救世主となるかもしれない

2018.11.09

日本の伝統工芸に危機が迫っている

観光客との関わり方の変化から、突破口を見つける職人たち

Airbnbは「体験」サービスで新たな可能性を見出しつつある

漆に染物、能面、造園、提燈、つまみ細工――。日本には、長年受け継がれている幾つもの技術や美術、工芸がある。

そんな伝統工芸に危機が迫っている。伝統的工芸品産業振興協会の調査によると、生活様式の変化や、安価な輸入品の増大などが影響し、需要が低迷。昭和50年台のピーク以降、生産額は年々下がりつづけているという。企業数、従事者も減少に歯止めがきかない状況にあり、このままでは、日本の伝統工芸品はその多くが姿を消してしまう。

そうした状況の中、日本に救いの手を伸ばす企業がある。民泊で知られている世界最大級の旅行コミュニティプラットフォーマー「Airbnb」だ。「民泊と伝統工芸がなぜつながるか」と疑問に思う人も多いことだろう。もしかするとAirbnb自体もこうなることは予想していなかったかもしれない。

「伝統工芸品を知ってもらう機会が増えたんです」

2018年6月の住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行から数か月、Airbnbは、ホームシェアに関する情報提供と新規ホストの育成を目的として、国内10都市を巡る全国キャラバンを開始した。

キャラバンの初回となる京都では、京都で提灯を作る「小嶋商店」の小嶋俊氏、同じく京都で髪飾りや小間物などを作る「京都おはりばこ」の北井秀昌氏、Airbnb 執行役員の長田英知氏が参加するトークセッションを実施。

Airbnbの「体験サービス」(現地に住む人がホストとなり、その地特有の体験をゲストに提供するサービスのこと。Airbnbは2018年7月30日より、この「体験サービス」の提供地域を全国へ拡充している)を提供するホストが自身の体験と、今後のAirbnbに求めることを語った。

Airbnbのキャラバンカー。この車が全国をまわり、Airbnbに興味がある人と、既存ホストがコミュニケーションをとれる機会を提供する

「Airbnbのおかげで、外国の人たちに伝統工芸品を知ってもらう機会が増えました。私はもともと、旅行客に空部屋を提供する宿泊ホストとしてAirbnbを利用していたのですが、そのときに感じたのは、Airbnbを利用して日本に来る人は、『知的好奇心が高い』ということ。そのため、クリエイターの方の割合が高く、私たちのものづくりに興味を持ってくれる人が多くいました」(北井氏)

Airbnb、体験ホストによるトークセッション。左から提灯職人の小嶋俊氏、つまみ細工職人の北井秀昌氏、Airbnb 執行役員の長田英知氏

伝統工芸品の需要が低迷している今、職人達には”新しいこと”を始め、新たな需要を創出することが求められている。経産省も「観光業などの異分野との連携、海外への展開」などを勧め、そこに補助金を出すなどしてサポートしているが、職人にとっては、申請が面倒であったり、なによりこれまでに経験のない挑戦であったりと、なかなかとっつきづらかった。

そこにうまくはまったのが、「人と人」をつなぐプラットフォーム、Airbnbであったというわけだ。これまでの観光客は、指定されたツアーに行ったり、自分の行きたい場所をあらかじめ調べて置いたりと、”一定のルート”を辿りがちであったし、そもそも日本人は英語を積極的に話そうとしない傾向にある。これまでの観光客は主要な観光地を巡り、満足して自国へと帰っていた。

しかしAirbnbは、同社の掲げる「暮らすように旅をしよう」というメッセージからも伝わるように、宿泊ホストにお勧めの場所を聞いたり、体験ホストとその地でしかできない体験を共有したりと、現地の人々の暮らしを体験できるようなサービスを提供している。その結果、外国人ゲストとの関わりが増えた職人たちは、自身のものづくりを知ってもらう機会が増えているのだという。

ブレイクスルーに必要な”新しい視点”

提灯職人の小嶋氏は、まだAirbnbのホストとしての経験はなく、これから体験サービスを提供していく予定。まだホストになるための手続きを終えたばかりで、サービスの開始には至っていないそうだが、同氏はすでに広がる未来を見据えている。

「外国の人たちは、見慣れない提灯を見て、日本人とは変わった視点で評価してくれます。伝統工芸品、というよりはむしろ『芸術品』として見てくれて、実際に購入していく人も少なくない。これまで私たちの提供する提灯は、日本の神社や仏閣、お祭りで飾るものがほとんどでした。でも、その反応を見ていると『もしかすると海外でも売れるのでは』と考えるようになりました。これから体験ホストとなることで、外国人ゲストと交流していくことは、私たちのものづくりにいい影響を与えていくでしょう」(小嶋氏)

小嶋商店では、これまでの提灯のあり方を見直し、提灯にプロジェクターで映像を映し出すといった見せ方の工夫を試みたり、夜の鴨川を散歩する外国人客用に提灯を貸し出したりと、積極的に新たな需要を生み出している。

内外の建築家とのコラボも考えているそうで、「Airbnbがそういった、外国の職人(クリエイター)達と出会える場となれば」と、今後の体験ホストとしての活動への期待を語った。

人と人が繋がり生まれる、小さなオープンイノベーション

日本には、長年受け継がれている幾つもの技術がある。しかし、需要が減少し続けている今、店をたたんでしまったという職人たちは多い。歴史の長さが故、新たな需要を作り出すという視点に切り替えにくいことも原因だろう。

血液循環が悪くなってしまった企業を救うのが、その技術に可能性を見出した異業種、異分野の大学や企業、自治体などとのオープンイノベーションであれば、日本の伝統工芸(ひいては職人達)を救うのは、外国人クリエイターをはじめとした、外からの目線と技術による”小さなオープンイノベーション”かもしれない。

民泊から始まったAirbnbは今、そこに「体験」のサービスが加わったことにより、眠っていた観光資源に脚光を当てただけではなく、日本の伝統工芸の復興という新たな可能性も見出しつつある。

Airbnbは、日本の伝統工芸を後世に残すキッカケを作り出すかもしれない

これはAirbnbによって紡がれたストーリーの1つにすぎない。Airbnbは人と人をつなぐプラットフォームであるが故に、その地にいる人が、新しい視点を持った人とコミュニケーションをとることによって、課題点の突破口を見出すキッカケとなる。日本でのキャラバンは全国10都市で行われる予定で、まだ始まったばかり。

急速に広がるAirbnb経済圏は、 これからも各地に眠るさまざまな資源を掘り起こすキッカケを作り出しそうだ。

Airbnbキャラバンカーは京都(10月26日)を皮切りに、全国10都市をまわる予定
トヨタ自動車が国内メーカー初の「クルマ定額乗り放題」 来年から

トヨタ自動車が国内メーカー初の「クルマ定額乗り放題」 来年から

2018.11.02

トヨタが国内勢初のクルマ定額乗り放題サービスを発表

2019年初頭の開始目指し、月額料金など詳細は検討中

サービスの背景に「若者のクルマ離れ」への危機感

トヨタ自動車は、一定の月額利用料を払うサブスクリプション方式で、乗りたいクルマを自由に乗り継げる個人向けサービス「KINTO」を2019年初めをめどに開始する。当初は東京地区の販売店でトライアルを実施する予定。類似のサービスはポルシェやBMW、メルセデス・ベンツらが主に海外で展開しているが、国内メーカーでは初の試みだ。

同社の豊田章男社長は本サービスについて、「クルマが欲しくなったら簡単にクルマライフをスタートし、違うクルマに乗りたくなったら乗り換え、不要になったら返却する。必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる、まさに『筋斗雲』のように使っていただきたいと考え、『KINTO』と名付けた」と話している。

KINTOは、月額換算では車を普通に購入するよりも割高になる見込みだが、毎月の支払いに税金や保険、車両のメンテナンス等も含めて一定料金とすることで、利用開始のハードルを下げる。利用料金や選択できる車種などが未定で、詳細は検討中というが、「気軽に申し込め、クルマを自由に選べる」サービスになるという。

背景には、若い世代ほど所得が不利になる環境が続いたことや、ライフスタイルが多様化するなかで、クルマが昔ほど消費の優先順位を維持できなかった、いわゆる「若者の車離れ」と表現される国内新車販売の低迷と先細り懸念がある。実際、新車の国内販売台数はここ十年来、およそ500万台前後で頭打ちになっており、一方で車を所有しないカーシェアリングの会員数は急成長し、2018年には130万人を超えたという調査がある。

月額利用料の負担感をどれだけ引き下げられるかが、最初の課題になりそうだ。