ミドリムシで空を飛ぶ!? ユーグレナがバイオ燃料に見せる「本気」

ミドリムシで空を飛ぶ!? ユーグレナがバイオ燃料に見せる「本気」

2019.01.29

ユーグレナが「ミドリムシ」を原料にしたバイオジェット燃料を開発

2020年、日本初のバイオ燃料による有償フライトが実現しそう

ミドリムシ燃料は日本をバイオ燃料先進国に導くか?

東京2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催まで2年を切った。自国開催ということもあり、生で観戦しようとしている人も多いだろう。そこで1つ提案したいのが、東京2020の裏にある「技術」への注目だ。

世界から注目を浴びるオリンピック・パラリンピックは、企業各社が、自社技術を世界にアピールするための「技術の祭典」でもある。2018年の平昌オリンピック・パラリンピックでは、5Gの実証実験サービスが世界で初めて行われ、開会式ではインテルのドローンによる光のパフォーマンスが披露されたことも記憶に新しい。そして今、東京2020に合わせた先進技術のお披露目に向け、さまざま準備が進められている。

本稿では、2020年に合わせてANAらと協力し「日本初のバイオジェット燃料による有償フライト」を目指すユーグレナに注目。独自のミドリムシ培養技術を持ち、食品や栄養補助食品へと展開してきた同社が次に目指す、バイオジェット燃料開発の現状とその展望について話を聞いた。

今回話を聞いた、ユーグレナ バイオ燃料事業部 バイオ燃料事業課 課長の江達(こう・たつ)氏

ミドリムシ技術が生んだ、バイオ燃料の可能性

ユーグレナと言えば、「健康食品」というイメージを持つ人も少なくないだろう。同社が健康食品事業のほかに燃料事業にも力を入れていると聞き、意外に思う方もいるかもしれない。ユーグレナのバイオ燃料事業部 バイオ燃料事業課 課長の江達(こう・たつ)氏は、同社がバイオ燃料事業を手がける背景を語る。

「『ミドリムシでバイオジェット燃料を作る』と言うと、疑問に思う人も多いかもしれません。しかし、トウモロコシや大豆といった穀物を使ったバイオ燃料の開発はすでに活発に行われており、欧米では、それらを燃料とした飛行機の有償フライトも行われています。そう考えると、植物の一種であるミドリムシを用いた燃料の開発は、決して突飛な話ではありません」(江氏)

同社は、2010年よりバイオ燃料の研究開発に着手。2018年11月、実証プラントを稼働した。また、それに合わせて、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指し、その決意を「GREEN OIL JAPAN」として宣言した。同宣言にはANAホールディングスや伊藤忠エネクス、いすゞ自動車なども協力している。

2018年10月31日に竣工した実証プラント。神奈川県横浜市、AGC京浜工場内に建てられた。2019年春より本格稼働し、ミドリムシや廃食油を主原料としたバイオジェット・ディーゼル燃料の製造を開始する予定だ

バイオ燃料の原料にミドリムシを使用するメリットの1つは、その培養速度にある。同社が燃料の生産に使用するミドリムシは、環境条件が良ければ1日に倍増するほか、体積あたり30~40%の油を得られるといい、既存のとうもろこしや大豆などの植物と比較すると効率よく原料を生み出せるそうだ。

「穀物を用いたバイオ燃料の生産には、『(農地を使って作った)食材を燃料にするのはいかがなものか』という議論がありましたが、ミドリムシには農地は必要ないので、そういった問題がないことに加えて、既存の農場と場所を取り合う必要がなく、設備さえ整えればどこでも生産できるという点も大きなメリットです」(江氏)

「東京2020」「パリ協定」が追い風に

2020年、ミドリムシが原料のバイオジェット燃料を用いた有償フライトを行う――。同社がそう発表したのは、東京でのオリンピック・パラリンピックの開催が決定するよりも前のことだった。日本がバイオ燃料開発の取り組みで欧米諸国に遅れをとっている中、偶然にも世界中の注目を集めるオリンピック開催年にこうした取り組みが身を結ぶことは、幸運だったと言えよう。

さらには、2018年12月に行われた「COP24(第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議)」において、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の実施指針が採択されたことも後押しになっている。こうした状況を受け、同社では今後のバイオ燃料事業に大きな可能性を見ている。

「COP24を機に、各国における環境問題に向けた取り組みが、より熱を帯びました。二酸化炭素排出量が少ないバイオ燃料の需要は、今以上に増加することが期待されます。特に航空業界においては、今後の旅行者数の増加が見込まれる一方で、二酸化炭素の排出量の削減も求められています。そうした需要に対応するためには、バイオ燃料の需要が伸びることは確実でしょう」(江氏)

燃料事業は、ベンチャーの無謀な挑戦なのか

しかし、ベンチャー企業が中心になり、設備整備等に多額の費用がかかる燃料事業を進めるのは骨が折れることだろう。実際、一時は世界的にバイオ燃料開発を進める企業が勃発したが、資金面での問題から開発途上に終わった企業が多いとのこと。「ベンチャーなのに、そこまで資金のかかる事業をして大丈夫なのか?」と言われることもよくあるという。

そうした状況にある中で、ユーグレナが中心になり、ANAホールディングスや伊藤忠エネクス、いすゞ自動車などの大企業を巻き込み、バイオ燃料事業を推し進められたのは、「食品事業が収益の柱として確立している」ということに加えて、「当社の出雲社長、永田副社長らの熱い想いがあったから」と同氏は続ける。

「燃料事業を開始してから実証プラントの稼働に至るまでには、さまざまな苦労があった。例えば、ミドリムシの培養コストの問題、そしてプラントを稼働させるための人材の獲得です」(江氏)

同社が以前より行っている「栄養食品事業」であれば、それなりに高い単価で売り出せることもあり、培養にかかるコストがそこまで問題にならないが、燃料となるとそうともいかない。コモディティ市場であるために単価は上げられず、「大量に」「安く」生産する必要があるためだ。研究の末に培養コストは少しずつ下げられているが、今もなおその研究を続けているそうだ。

また、人材不足の問題には社長らが直接働きかけた。

「実証プラントを動かすためには、プロの技術が必要でした。しかし、その技術を持った人材の多くは、大手の石油会社にいる方達。当然、初めは我々のある種『無謀』とも取れる挑戦に共感してもらうことは困難でした。しかし、社長や副社長による説得の結果、当社のビジョンに共感してもらい、2年ほどかけて、ようやく8人の人材を集めることができました」(江氏)

「バイオ燃料先進国日本」実現へのホイッスル

「まずはバイオ燃料を多くの企業に使ってもらうことから始めたい」。江氏はこれからの展望についてこう語った。まだ実証プラントは試運転の段階にあるが、今夏からは本生産に移り、徐々にさまざまな分野へ展開していく考えだ。

「プラントではバイオジェットに限らずバイオディーゼルも生産されるため、いすゞ自動車と協力し、バイオディーゼルを用いたバスの公道走行などを開始していく予定です。まだまだ生産能力は高くなく、少量の提供にはなりますが、さまざまな企業に活用いただくことで、世の中にバイオ燃料を認知してもらうことが、直近の目標です。2020年には『陸・海・空』すべての領域におけるバイオ燃料の活用を目指しています」(江氏)

期限の迫った「2020年の有償フライト」については強気の姿勢を見せる。

「2019年の夏には、ジェット燃料を使用するために必要な国際規格の認証を受けられる予定です。生産量や供給体制等、未だに整っていない部分はありますが、2020年の有償フライトは『99.9%』実現可能だと考えています」(江氏)

将来的に、2030年をめどとして、現在のプラントの8000倍規模の生産量の実現を見込んでいる。現在の年間生産量は125kWであるため、ロードマップの通りにいけば、2030年には100万kWの燃料が生み出されることになる。

日本で100万Kの燃料を生み出せるようになれば、1つの産業として確立できることでしょう。2020年にANAと行う有償フライトは、あくまでスタート地点にすぎません。その出来事を、日本国民が環境問題について考える、さらには日本におけるバイオ燃料市場が成長するキッカケにできるよう、研究開発や周辺環境の整備はもちろん、プロモーション活動も含め、力を入れたいですね」(江氏)

2020年、日本が世界から注目を浴びるその時、「ミドリムシ燃料を用いたフライト」の実現がこの国をバイオ燃料先進国に導くホイッスルになるかもしれない。

コーヒーには”生産性を高める飲み方”がある? 専門家に聞いてきた

コーヒーには”生産性を高める飲み方”がある? 専門家に聞いてきた

2019.01.18

コーヒーで仕事のパフォーマンスを上げる方法って?

昼寝の効果を高める「コーヒーナップ」で生産性向上へ

適切なコーヒー習慣が「働き方改革」につながる理由とは

とりあえず、この記事はコーヒーでも飲みながら読んで欲しい。さて、読者のみなさんは、1日に何杯のコーヒーを飲むだろうか。

筆者は毎日、会社に来てすぐ、昼食後、そして夕方と3杯のコーヒーを飲む。そんな生活が何年も当たり前になっているのだが、果たしてこれは適切な量なのだろうか。ふと疑問に思い、専門家の意見が聞いてみたくなった。

まずは会社の「ネスカフェ」が目に留まったので、ネスレ日本に取材を打診してみたところ、「それならば」と、『カフェインの科学』なる著書を出している、医学博士の栗原久先生を紹介してもらうことに。早速お会いすると、先生から「コーヒー習慣」に関する多くの興味深い話を伺えたので、その様子をお届けしたい。

長年人類を支えてきたコーヒー

――今日はよろしくお願いします。早速ですが、私はここ数年間、毎日3杯ほどコーヒーを飲んでいます。もしかすると、これは飲みすぎで、体に悪い影響があるのではと思ったのですが……

栗原久氏(以下、栗原):いえいえ、そんなことはありませんよ。むしろそれは好ましいこととも言えるでしょう。コーヒーは仕事のパフォーマンス向上、かつ健康促進に寄与するものなのです。

栗原久 元東京福祉大学教授、医学博士。NPO法人 国際エコヘルス研究会副理事長・赤城自然塾理事。1996年日本神経精神薬理学会学術賞。著書に『カフェインの科学~コーヒー、茶、チョコレートの薬理作用』など

――安心しました。ところで、コーヒーが仕事のパフォーマンス向上に寄与するとはどういうことですか?

栗原:コーヒーに含まれるカフェインは中枢神経系を刺激し、脳を興奮させる作用があります。脳は常に100% の活動状態を保っている訳ではなく、時間によってパフォーマンスが変動するものなのです。コーヒーを適切なタイミングで飲むことで、上手に脳のパフォーマンスの変動をコントロールすることができれば、仕事の生産性向上につなげることが可能でしょう。

――「上手にコーヒーを使うこと」が仕事のパフォーマンスに影響するかもしれない

栗原:人類とコーヒーの出会いはとても古く、おそらく何千年も昔のことでしょう。そもそも我々人類は遥か昔、空腹をしのぐために、片っ端からさまざまな食材を試してきました。植物でも動物でも、口にできるものは一通り食べてきたことでしょう。その中で、コーヒー豆に含まれるカフェインを摂ったときに、脳の疲労が和らぐということを発見したのです。

そこから、座禅を組むとき、お祈りをするとき、夜間に作業をするとき、カフェインを意図的に摂取するようになった。さらには昼の作業時にもカフェインを摂るようになり、そうした流れが現代にも続いているのです。

――昔から人類はカフェインと上手に付き合ってきたのですね

栗原:はい。ただし、日本人にとってはそれが「お茶」でしたが。お茶は遣唐使、遣隋使あたりから入ってきた文化でしょう。その後、禅宗の普及と時期を同じくして、お茶は日本で広く普及しました。古くは嵯峨天皇(さがてんのう:第52代天皇。786年~842年)の時代に、京都で茶葉を栽培し、それが今の宇治茶の元だとも言われています。

本格的に日本にコーヒーが根付いたのは明治時代に入ってからのことです。江戸時代に、オランダとの交易でコーヒーの知識が入ってきて、長崎で初めて日本人がコーヒーを飲んだという記録が残っています。

余程のことがないと「カフェイン中毒」にはならない

――しかし、脳の活動に作用するコーヒーを摂取し続けると、悪影響を及ぼす可能性もあるのではないでしょうか? 「コーヒーを大量に飲むと、カフェイン中毒になる」と聞いたこともあります

栗原:確かに、「カフェイン中毒」というものは存在します。しかし、それは量的な問題です。疲れて集中力が落ち、パフォーマンスが低下してきたと感じたときに適切な量のコーヒーを飲む、つまりはカフェインを摂取するということは問題ではありません。

しかし、カフェインを過剰摂取しすぎると、脳が興奮しすぎて、手が震えてしまう、不安になってしまうといったの症状が出ることもあり、決して身体には良くありません。ちなみに、EFSA(欧州食品安全機関)はカフェイン摂取の安全性について、「1日400mg、一度に摂取する場合は200mgまでは特に問題はない」(コーヒー一杯140mlに含まれるカフェイン量は80mg程度)としています。

最近は気軽に多くのカフェインを摂取できる缶コーヒーやエナジードリンクも登場しているため、注意も必要でしょう。

カフェインを含むコーヒーやお茶などは本来、苦みや渋みがあり、「大人の飲み物」だったのですが、缶コーヒーやエナジードリンクなどではそこに甘味をつけ、苦みや渋みを感じさせないような味づくりがされています。そのため、子どもでも簡単に多く飲めてしまいます。大人と子どもでは、健康に悪影響を及ぼすカフェイン摂取量が異なるため、思わずカフェインを多量摂取してしまう可能性もあります。

脳の仕組みを知って、コーヒーと上手に付き合う

――仕事のパフォーマンスを向上させるための「適切なコーヒーとの付き合い方」について聞きたいのですが、先生はどのようなタイミングでコーヒーを飲んでいるんですか?

栗原:コーヒーの適度な飲用量は一日3~5杯程度と言われています。私はまず、朝に飲みます。人間の脳は睡眠で回復しますが、起きてすぐに100% 活動しているわけではありません。朝起きて、「もうちょっと寝たいな」と思うことがあるでしょう? そこで、脳の活動量を上げるために朝に1杯のコーヒーを飲む、というのが非常に効果的なんです。

カフェインの半減期は約4時間なので、脳のパフォーマンスが高い朝に飲み、その4時間後のお昼休み、さらにはそこから4時間後の15時、16時ころにコーヒーを飲めば、常に脳のパフォーマンスが高いまま、仕事ができるはずです。

……ところで田中さん(筆者)は今朝、夢を見ましたか?

――えっと、確か見たような気がします

栗原:夢を見ている最中に目を覚ましましたか?

――いえ、起きたときに夢を憶えていただけで、夢の途中で起きたわけではなかったと思います

栗原:実は、「夢を見ている最中に目覚める」ということは、睡眠の理想的な形なんです。夢は、身体が休息状態にある一方で、脳が活動して覚醒状態にある「レム睡眠」の状態に見るものです。

睡眠時、人の脳は90分周期でレム睡眠と、脳が休息状態にある「ノンレム睡眠」を繰り返しているのですが、レム睡眠時で起きると、脳の活性につながるホルモン「コルチゾール」の量が多いことが分かっています。コルチゾールの量は、起床時に多く、そこから下がっていく傾向があります。

――では、それに伴い脳の活動が落ちていくのですね

栗原:そうです。そこで、脳の活動が落ちていく時間に合わせてコーヒーを飲めば、その活動低下スピードを落とすことができるのです。

ちなみにこの90分周期の脳の動きは、起きている時間にも続いています。だからこそ、90分の間隔に合わせて適切な休憩をとるのが理想的です。8時半から仕事をする人は、10時に休んで、昼休んで、15時ころに休む、といったように適切なタイミングで脳を休ませることが、仕事の効率化につながると考えています。

パフォーマンス向上には「コーヒー×昼寝」が有効

――自分の脳の働きを理解し、適切な休みをとることができれば、仕事のパフォーマンスを上げられそうです

栗原:お昼に眠くなってしまう、というのも脳の活動が原因です。例えば保育園って、昼寝の時間が用意されてるじゃないですか。あれは脳の活動周期が影響しており、あの時間帯にどうしても眠くなってしまうんです。

特に子供の場合は顕著ですが、我々のような成人でも昼に一度脳の活動は低下します。スペインなどのように、昼食後に「シエスタ」と呼ばれる休憩をとる国もあります。

――日本でも先進企業などで、業務時間に「昼寝」を取り入れたところ生産性が増したという話を聞いたことがあります。そういえば、ネスレさんも「シエスタ」に似た取り組みを行っているそうですね

今回、栗原先生を紹介してくれたネスレ日本 ウエルネスコミュニケーション室の福島洋一室長。取材にも同席してくれました

福島洋一氏(以下、福島):短く浅い昼寝は爽快感を生み、集中力の向上に役立つことが既に知られています。ネスレ日本の社内ではこれにコーヒーを組み合わせ、午後のパフォーマンス向上に役立てることを目指す、「コーヒーナップ」という取り組みを実施しています。

カフェインが脳に作用するピークは、摂取後20~30分後なので、コーヒーを飲んでから20分仮眠をとり、そこで目覚めれば脳の活動レベルが高い状態で仕事に戻ることができます。カフェインは集中力を持続させますので、コーヒーナップはただ昼寝をするだけよりも効果が高いのです。

神戸市の本社には、従業員のコーヒーナップ用の仮眠室を作りました。東京の拠点である天王洲オフィスでも、仮眠スペースの設置を試しています。

ネスレ日本 神戸本社に設置されている仮眠室。……うらやましい。編集部にも取り入れてほしい……

コーヒー1杯から始められる「働き方改革」

――「働き方改革」が話題ですが、コーヒーと上手く付き合うことによって、この問題を少しでも良い方向に進められるかもしれませんね

栗原:はい。人間は、働く中で良くも悪くも多くのストレスを抱えています。これは人に限らず、生物は「不安」が大きいと目先のチャンスへの踏み込みに躊躇してしまう傾向があります。

ある研究の話をしましょう。

空腹のネズミに餌を差し出し、ネズミがその餌をとろうとしたら、軽く電気ショックを与えます。そうすると、ネズミは空腹よりも不安が先立ち餌をとらなくなります。しかし、そのネズミに「抗不安薬」を与えると電気ショックを気にせずに餌をとって食べるようになりました。

これは極端な例ですが、実は臨床でも同様の結果が得られます。葛藤状態にある人の不安を取り除くことができれば、リスクを恐れずにチャンスに挑戦できるようになるのです。

カフェインの摂取量をコントロールすれば、抗不安薬と同様の効果が得られます。いつだって挑戦は人間の性。カフェインと上手く付き合うことができれば、仕事の効率を上げることができるほか、“新たな挑戦にもつなげられる”可能性があるんです。

***

「ちょっとコーヒーを飲みすぎかな」という疑問が、まさか「働き方改革」の話につながるとは思わなかった。

ちなみにネスレ日本の社員は、日本人平均の2倍以上に相当する、1日3杯以上のコーヒーを飲むそうだが、血圧やHDL-C(善玉コレステロール)、HbA1c(糖尿病リスクの指標)の正常者比率は高いのだとか。これは、コーヒーに多く含まれる「ポリフェノール」が影響しているという。他にも、適切なコーヒー摂取が脳卒中や糖尿病のリスクを下げるという研究もあるそうだ。

上手に付き合えば、脳のパフォーマンスを高いままに維持でき、健康にもつなげることができる――、普段何気なく飲んでいたコーヒーは、心強い仕事のパートナーだった。

「白くまくん」の日立アプライアンスが再生医療に参入、日本橋に拠点開設

「白くまくん」の日立アプライアンスが再生医療に参入、日本橋に拠点開設

2018.12.11

日立製作所の家電子会社が再生医療分野に進出

会社の第2の柱として積極的に投資を進める

新拠点のキーワードは製薬会社や大学との「協創」

日立アプライアンスは、再生医療分野向けに、クリーンルーム総合ソリューションの提供を開始する。これにあわせて、セントラル化した過酸化水素滅菌装置などを導入した再生医療技術支援施設を東京・日本橋に開設した。

日立グループで家電事業を手掛ける日立アプライアンスが、再生医療市場に参入する。2014年11月の再生医療法の施行によって、この分野に対する民間企業の参入障壁が低くなったことが参入のきっかけとなった。再生医療分野という特定領域における事業での成長を目指しており、再生医療分野における構造設備の市場規模は2021年度には約200億円を想定し、そのうち30億円超の事業規模を見込んでいる。

東京・日本橋に開設した日立アプライアンスの再生医療技術支援施設

今回の再生医療技術支援施設では、米STERIS製の過酸化水素滅菌装置をセントラル化して、滅菌のグレードが高い調製室、脱衣室、着衣室、AL室の4つの部屋の一度に無菌化。調製室では、日立産機システムの再生医療用キャビネットを導入したほか、遠隔監視による予兆診断システムにより、空調システム全般の異常を検知するサービスを提供。加えて、空調機の保守点検や保全メンテナンスのトータルサポートなども提供する。

さらに、クリーンルーム内の壁には日軽パネルシテムが開発したフラットパネルを採用。一般的なパネルは目地幅が7mmであるのに対して1mmとし、ホコリや汚れが溜まりにくい構造にした。床と壁のつなぎ目も丸みを持たせたり、ガラス窓のつなぎ目もフラットにしたりといった工夫も施されており、清掃しやすさを追求している。

こうした設備全体とサービスを組み合わせて、同社は「クリーンルーム総合ソリューション」と位置づける。それを体験できるのが、今回解説した再生医療技術支援施設というわけだ。

家電の会社からソリューションの会社へ

日立アプライアンスは日立製作所の100%子会社で、2019年4月には日立コンシューマ・マーケティングと合併し、新会社を発足する予定だ。新会社は売上高5,000億円以上、従業員1万人以上の企業となり、家電、照明・住宅設備機器の開発、製造、販売、エンジニアリングおよび保守サービス、冷凍・空調機器の販売および保守サービスを展開することになる。

現在の日立アプライアンスの主力事業は白物家電であり、新会社になっても家電事業が売上高の約5割強を占める見込み。一方で空調システムの販売、保守などが4割強を占め、その多くがBtoBといえる店舗・オフィス向けエアコン、設備用パッケージエアコン、ビル用マルチエアコン、チラーユニットをはじめとする業務用冷凍・空調設備など。BtoBの空調システムでは、すでに多くの実績がある企業ともいえるのだ。

同社には、家庭向けルームエアコン「白くまくん」をはじめとする空調製品の開発、生産を、グループの日立ジョンソンコントロールズ空調に移管した経緯もある。2015年10月に設立した日立ジョンソンコントロールズ空調は、ジョンソンコントロールズが60%、日立アプライアンスが40%の株式を保有しており、ルームエアコンのほか業務用冷凍・空調設備、大型冷熱システム、圧縮機などの事業に取り組んでいる。

日立アプライアンスは、日立ジョンソンコントロールズ空調が開発、生産した空調関連製品の販売を行っており、今回の再生医療技術支援施設でも日立ジョンソンコントロールズ空調の冷凍機を使っている。

記事初出時、日立アプライアンスの会見での説明に従い、日立ジョンソンコントロールズ空調の製品をまったく使用していないと記載していましたが、その後、新晃工業の空調機の熱源に日立ジョンソンコントロールズ空調製の冷凍機を使用していることがわかり、本文を修正をしました。(2018年12月11日18時)

今回のクリーンルーム総合ソリューションは、前述のように米STERISや日軽パネルステムをはじめとする様々な企業の設備機器を導入し、再生医療用キャビネット、セルソーターといった調製に必要とされる各社の機器、さらには、日立ジョンソンコントロールズ空調の技術、日立アプライアンスのIoTソリューションであるExiidaによる監視サービス、そして、設備の施工までを組み合わせた提案となっている。同社が単なる機器販売から、ソリューション販売としての事業展開を開始するきっかけになる。

新会社の新たな柱に、単品売りからの脱却を目指す

今回のクリーンルーム総合ソリューションおよび再生医療技術支援施設では、注目すべきポイントを3つ挙げることができる。

1つは、2019年4月からスタートする新会社で、第2の柱にすると宣言していた「ソリューション事業の創生」における最初の製品として、このクリーンルーム総合ソリューションが位置づけられたことだ。

この「ソリューション事業の創生」では当初、具体的な取り組み項目としてスマートライフ事業の創生、スマートシティおよびスマートホーム事業の立ち上げを掲げていたが、新たに、今回のような再生医療分野向け製品が加わったことになる。

日立製作所 生活・エコシステム事業統括本部長 兼 日立アプライアンス社長の徳永俊昭氏

日立アプライアンス社長(日立製作所 生活・エコシステム事業統括本部長を兼任)の徳永俊昭氏は、「日立グループでは、世界中の人々のQoL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させる取り組みを重視している。それは家電事業もソリューション事業も同じ」と前置きし、「スマートシティやスマートホームも、直接的な取引相手は企業だが、その先にいる人々の生活を豊かにするビジネス。再生医療分野も製薬会社や病院、研究所などが対象のビジネスになるが、その先には人がいて、人々の健康に貢献できる。つまり、QoLを高めるために重要な取り組み」と説明している。

2つめは、単品売りからの脱却という、新会社が目指す方向性に則ったビジネスであるという点だ。

プロダクト事業の強化および拡大は、新会社でも引き続き重視はするものの、目指すビジョンは「生活ソリューションカンパニー」だ。サービスとの組み合わせや、日立グループの企業、外部企業との連携による新たなソリューションの創出によって、これを実現しようとしている。

クリーンルーム総合ソリューションは、日立アプライアンスや日立グループの企業が開発、生産した製品を販売するというよりも、他社製品を組み合わせた提案や、日立アプライアンスが持つ遠隔監視サービスなどを組み合わせた運用および保守などの提案が柱になっている。実際、再生医療技術支援施設では、「HITACHI」のロゴが入った機器をほとんど見かけない。

米STERIS製の過酸化水素滅菌装置
新晃工業製の空気調和機
調製室には、非接触型の生体認証システムを採用
滅菌グレードに応じて部屋を色分け。扉も確実にロックできる構造を採用
作業を行う日立産機システムの再生医療用キャビネット
ソニー製のセルソーターを導入

「細胞操作や培養などの作業品質の安定化と、安全性を追求した環境を、ソリューションとして提供することになる」(日立アプライアンス 空調サービスシステムエンジニアリング本部 東日本システムエンジニアリング部の佐藤祐一担当部長)とし、機器販売のビジネスではなく、ソリューション型ビジネスであることを強調する。

これも、日立アプライアンスにとっては、これまでにあまり例がなかった新しいビジネスの形だといえる。

キーワードは「協創」、施設の立地にも意味がある

最後の3つめは、「協創」を重視した拠点づくりをしているという点だ。

今回の再生医療技術支援施設は、236平方メートルの面積を持ち、最新設備の導入などに約2億円を投資した。それを製薬会社のほか、大学や研究所などのアカデミア分野、関連学会や団体などが無料で利用できるようにしている。東京・日本橋という立地を選んだのも、製薬会社が集中しているエリアだからだ。

すでにアカデミア関係で約20社、製薬会社で約5社、学会による見学申し込みが2件あるなど、あわせて30件程度の問い合わせがあるという。

日立アプライアンス 空調サービスシステムエンジニアリング本部 東日本システムエンジニアリング部の佐藤祐一担当部長

「利用はすべて無料。再生医療に必要な環境を確認したいという導入見込み顧客の利用だけでなく、空いていれば、実際に培養などの作業を行いたいという要望に対しても、無料で貸し出すことを考えている」(日立アプライアンスの佐藤担当部長)としている。

最新の設備が整っている施設だけに、製薬会社や研究機関に、有料で貸し出すことも可能だといえるが、あくまでも、「儲けない施設」というのが基本方針だ。

「顧客の声を収集して、それを製品やサービスの創出に反映。さらに、実験を繰り返すことで、最適な除菌のサイクルを導き出したり、国内外のメーカーの機器との組み合わせやサービスとの組み合わせなどによって、新たなソリューションを生み出すための協創の場として、積極的に活用したい」(同)と語る。

総合すると相当な規模の投資になっており、再生医療分野における「協創」にかける日立アプライアンスの本気ぶりが伝わってくる。

再生医療分野への取り組みは、「生活ソリューションカンパニー」を目指すとした日立アプライアンスにとって、その枠から離れているように見えるが、ストライクゾーンのひとつに位置づけた。再生医療技術支援施設への積極的な投資姿勢からもそれは明らかだ。

日立の家電会社が目指すソリューションビジネスの新たな姿のひとつが、公けになったといえる。