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「XC40」でボルボが二連覇! 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員に要因を聞く

「XC40」でボルボが二連覇! 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員に要因を聞く

2018.12.07

日本に丁度いいサイズ感、ボルボ「XC40」が大賞受賞

トヨタは「カローラ スポーツ」と「クラウン」がベスト10に

選考委員に聞く採点理由と「XC40」の評価

「第39回 2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」はボルボのSUV「XC40」に決まった。前回の「XC60」に続き、ボルボが二連覇を成し遂げた。トヨタ自動車の「カローラ スポーツ」は2位と健闘したが、得点を「クラウン」と分け合うような格好となった分、あと一歩、XC40には及ばなかった。

ボルボ「XC40」とCOTY受賞を喜ぶボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長

受賞で日本向け増産!? 「XC40」は2,000人が納車待ち

XC40はボルボのSUVラインアップで最も小さいクルマだ。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の受賞理由にも、「日本の道路環境にちょうどいい扱いやすいサイズ」の一文が入っている。COTYを受賞したボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、「XC40は日本で約2,000人のお客様に納車を待ってもらっている申し訳ない状態。この受賞をCEOのホーカン・サミュエルソンに報告し、必ずや、日本向けに2,000台の増産を勝ち取りたい」と笑顔で語っていた。

「2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終結果

COTYでは選考委員(今回は60人)が各25点を持ち、「10ベストカー」(今回はスバルが10ベストカー受賞を辞退したので全9台)に各自の評価基準で配点していく。その際、必ず1台に10点(最高点)を付け、残りの点数をほかのクルマに割り振るのがルールだ。今回、その「10点」を最も多く獲得したのが、トヨタのカローラ スポーツだった。

クラウンと点数を分け合わなければ、カローラ スポーツでCOTY受賞を狙えたような感じもするトヨタだが、広報に聞くと、この結果は「想定通り」とのこと。選考委員に聞いた話によれば、トヨタは最後まで、カローラとクラウンのどちらを“推す”のか、態度を鮮明にしなかったそうだ。どちらも自社のクルマなので、ひいきしなかったということなのだろう。

10ベストカーを受賞する「カローラ スポーツ」の小西良樹チーフエンジニア(右)と日本カー・オブ・ザ・イヤー 実行委員会の荒川雅之実行委員長

COTY選考委員に聞く選考理由とボルボ二連覇の感想

COTY表彰式では、選考委員を務めた数人のモータージャーナリストから話を聞くことができた。

諸星陽一さんは、「いいクルマが多くて悩んだ年」だったと振り返る。カローラ スポーツに10点を入れた理由については、「10年後に今年を振り返ったとき、『カローラが若返った年だった』と分かるクルマだったから」とした。XC40については「すごくいいクルマだと思う。サイズ的には少し大きいけど、ボルボの中では日本に合うサイズのクルマだし、クルマそのもののできもすごくよかった。獲るべきクルマが獲ったという側面もあるのでは」と納得の表情だ。

「イノベーション部門賞」はホンダの「クラリティ PHEV」が受賞

御堀直嗣さんはボルボ・カー・ジャパンの広報活動を評価する。情報発信を担当する社員が商品のアピールポイントをよく理解している上、「10ベストカー」の試乗会にはわざわざ最も安いグレードのXC40を持ち込み、商品の“素”のよさを訴求していた姿勢に好感を抱いたそうだ。

御堀さんが10点を入れたのはクラウンだった。その理由は、「欧州車などと競争できる操縦性を持たせながら、国内専用車として培ってきたクラウン独特の乗り心地、しなやかさというか、優しさというか、そういうものを併せ持っていたので」とする。

「エモーショナル部門賞」はBMW「X2」が受賞

森口将之さんはボルボの二連覇に「驚いた」としつつも、「ボルボのブランドは、一言でいえば“のってる”という感じ。海外のカー・オブ・ザ・イヤーやデザインの賞も受賞しているし、『XC90』から始まった新世代ボルボの商品が確実に評価されているのでは」と分析する。

「スモールモビリティ部門賞」はダイハツ工業「ミラ トコット」が受賞

二連覇を成し遂げたボルボからは、ここ数年のマツダとの共通点を感じるというのが森口さんの感想だ。一時期、経営危機にあったマツダは、2012年にSUV「CX-5」を発売して以降、“新世代商品群”と称して次々に新商品を世に問い、評価を高めていった。実際のところ、新世代商品群からは「CX-5」「デミオ」「ロードスター」の3台がCOTYを獲得してもいる。

ボルボもCX90以来、新しいクルマの市場投入を続けており、今回、COTYで二連覇を達成した。経営危機にあったマツダと、一時期は伸び悩んでいたボルボ。その両社が、逆境にあっても守りに入らず、ものづくりをゼロから見つめなおした姿勢を評価したいと森口さんは話していた。

「0円タクシー」が都内で運行開始 日本の交通不全に挑むDeNAの野望

「0円タクシー」が都内で運行開始 日本の交通不全に挑むDeNAの野望

2018.12.06

DeNAが東京で「0円タクシー」をスタート

「日本の深刻な交通不全」にビジネスチャンス

AI活用も視野にタクシー業界の抜本改革を狙う

ディー・エヌ・エー(DeNA)が東京都内で「0円タクシー」をスタートし、話題になっている。

同社は12月5日、この0円タクシーを可能とするタクシー配車アプリ「MOV」の発表会を開いた。同社オートモーティブ事業本部執行役員/事業本部長 中島宏氏は、「日本は深刻な交通不全に陥っている」と指摘する。その課題解決に挑むと意気込む「MOV」の取り組みを探る。

MOVの新サービス「0円タクシー」。5日から都内を走行中

タクシーのビジネス革新で日本の交通不全に挑む

中島氏が指摘する「交通不全」とは何か。鉄道路線廃止営業キロ数が1,100km、渋滞による経済損失が年間12兆円、東京圏の鉄道平均混雑率が171%といった深刻な課題が並ぶ。「スマートフォンのOSアップデートを怠るとサービスが使えなくなることもあるが、社会についても同じ。社会にとってのOSである交通のアップデートを怠ると、即日配送などの機能が使えなくなる」(中島氏)。こうした課題を改善するために、「インターネットとAIの力で、仕組みそのものからアップデートする」(同)という。

DeNA オートモーティブ事業本部 執行役員 事業本部長 中島宏氏
日本には交通不全の課題が山積している

そこでまずは「最も身近な交通であるタクシーの抜本的な効率改善に繋げたい」(中島氏)として、DeNAが神奈川県タクシー協会と共同で、県下のタクシー事業者にタクシー配車アプリ「タクベル」を提供したのが今年4月のことだ。

タクシーの課題は、集約すれば「使いたいときになかなか使えない」という点だ。国内に比べると海外ではライドシェアが普及しており、スマートフォンアプリから配車するサービスが市民権を得ている。タクベルも同様のサービスだが、少し事情が異なるという。

「大前提として日本のタクシーは質が高く、ライドシェアは必要がない」と中島氏。問題は、各社のシステムがバラバラになっていて、従来の電話と新たなアプリによる配車で整合性がとれていないため、同時に配車されてしまうなど、「最適化されていない」こと。タクベルではこれを重点的に改善した。

これまでのタクシー配車アプリは、タクシーの無線システムと接続して使うことが前提だったが、タクベルでは、それぞれのタクシー乗務員がスマートフォンを持ち、そのアプリ同士が連携する「アプリ連携方式」を採用した。無線システムには繋がず、従来の電話配車のシステムと共存したことで、電話とアプリのダブルブッキングが発生しないようにした。さらにメーカーと組んで、タクシーメーター連携もできるようにした。

タクベル(MOV)のシステム

実際、4月からタクベルがサービスを提供したところ、実績があったほかのサービスと比較して、「爆発的に(乗車を)伸ばすことに成功した」(中島氏)。結果として、5~6倍の乗客数を達成したという。

実車回数の推移。タクベル導入で一気に拡大した

競争は一層激化、MOVの勝算は? AI活用も視野

「アプリ連携方式とメーター連携で爆発的に数字が伸び、タクシー事業者の経営効率を改善できた」(中島氏)ことから、東京への進出を決め、サービス名称も「MOV」へと変更した。

ただ、「タクシー配車アプリは乱立の様相を呈している」という問題がある。各社がサービスを提供しているが、中島氏は無線機連携の方式ではタクシーの業務改善に繋がらないため、アプリ連携とメーター連携によるMOVのような配車アプリに優位性があると主張する。

また、中島氏は「ようやくシェア争いが始まった。2018年を皮切りに、2020年にかけて日本でもタクシー配車アプリ戦争が起きる」と、競争が本格化するのはこれから、という認識も示す。日本のタクシーは24万台ともいわれているが、どの配車アプリも数千台から1万台程度のタクシーしか対応しておらず、MOVとも大きな差はないというのが中島氏の認識だ。

そうした中でMOVの勝算は、タクベルでの実績だ。他社比で5~6倍という配車数に加え、月間6.5万件の乗車件数は「神奈川県という立地に限った件数では他社の追随を許さない。かなりの競争力がある」(中島氏)。

さらに、MOVに参加したタクシー事業者にはQRコード決済用のタブレットや、クレジットカードなどに対応した対面用決済端末もレンタルする。別途決済端末を用意する必要がなくなり、初期費用を抑えることもできる。決済手数料も、MOV参加事業者というボリュームを生かして低廉化できるため、キャッシュレス化にも貢献できるとしている。

レンタル提供するタブレット端末

「タクシー配車アプリ戦争」の武器としてAIにも期待する。今後はビッグデータ解析によって、乗客を拾いやすいルートをAIが提案するAI運行支援技術を提供する計画だ。現在開発中だが、来年後半にも提供を予定している。

この技術は、タクシーの配車情報などのプローブ情報と鉄道、天気、イベントなどの各種交通関連情報を組み合わせて解析することで、「この日この時間のこの場所にどの程度乗客がいるか」という予測をAIが行うものだ。この予測のみをタクシーの乗務員が活用するのは難しいが、さらに「今から5分間、最も営業収入が高くなる走り方」を分析し、それをルートとして地図上に表示するなど、加工して提供する。AIの言う通りに走れば、そこに乗客がいる、という訳だ。

タクシーのプローブ情報
各種交通情報などをビッグデータとしてAIで解析する
時々刻々と変わる乗客がいそうなエリアを道路ごとに表示できる
予測ルートを乗務員のスマートフォンに提供。ルートに従えば乗客が発見できる可能性がある、という

タクシー乗務員はベテランと新人で収入が倍違うこともある。経験が大きな差となるが、この差をAIで埋める。開発当初は「新人ドライバーにも負けるレベルだった」というが、現在までにAIアルゴリズムの改良を重ね、地元タクシーの平均収入程度までは稼げるようになっているという。

タクシー乗務員はベテランと新人で平均の収入に2倍の差がある
AIに従うと平均収入程度は確保できることで、特に新人にとってメリットが大きい
実際に試したタクシー乗務員の声

サービス拡大に関しても、京都、大阪、神戸エリアでのサービス展開を検討しており、すでにタクシー事業者数社からは協力の内諾を得ているという。一定のタクシー台数が必要なので、最低限のタクシー数が集まった段階でサービスを提供。来春にはスタートしたい考えだ。

MOVの取り組み、大きな目玉に「0円タクシー」

MOVではタクシーの新たなビジネスモデルも模索する。乗せたいタクシーと乗りたい乗客という2者のマッチングを行うのがタクシーだが、ここに第3者を組み込んで多者間でマッチングさせる。その端的な例として5日から始めるのが「0円タクシー」だ。

タクシーと乗客に加えて第3者もマッチングするプラットフォームを提供
「0円タクシー」のビジネスモデル

これは、広告を出したい企業が乗客の利用料金を負担し、その代わりにタクシーに広告を出す、という仕組みで、第1弾として12月いっぱい、日清食品がどん兵衛を使った「どん兵衛タクシー」を都内で走らせる。車外と内装をどん兵衛でラッピングして、後部座席のタブレットに広告を流すなど、どん兵衛をとことんアピールするタクシーとなっており、MOVアプリからのみ配車できる。

どん兵衛でラッピングされたどん兵衛タクシー

0円タクシーについて中島氏は、「初めての取り組みでどうなるか想像しきれない部分もある」としながら、すでに引き合いがあり、「継続して行っていく」見通しだという。今回のような広告モデルだけでなく、例えば学校や行政などとの異なるコラボレーションも見据え、「新たな体験、収益のあり方を実現」していくことが目標だ。

協業の幅をひろげ、単なる移動だけではない体験を提供したいという

国内では、Uber、Japan Taxiなどの配車アプリがある程度の存在感を出してきたが、それでも利用者は全体の1%程度だという。未だにほとんどは流しや電話配車になっており、諸外国との差は大きい。単に海外の配車アプリの仕組みを持ち込んでも効果は薄く、日本独自の仕組みが必要というのが中島氏の考えだ。

タクシー乗務員が仮に1日10時間勤務をした場合、乗客が乗っている時間は20~30%の時間、つまり2~3時間しかないという。第一に、この乗客が乗っている時間を伸ばすことが業務改善に繋がるとしており、これを「ドラスティックに改善していくことが日本のタクシー事業者にとって極めて大事」だと指摘する。

そうした点を武器として他社に対する優位性を確保し、タクシー配車アプリ競争の生き残りをかけた戦いに挑む。

「ES」と「UX」ではテイストが違う? 2台の新型車で見るレクサスデザインの今

森口将之のカーデザイン解体新書 第9回

「ES」と「UX」ではテイストが違う? 2台の新型車で見るレクサスデザインの今

2018.12.05

レクサスデザインは3世代に分けられる

「LC」からの流れを受け継いだ「ES」のエレガンス

「UX」は特殊なレクサス? 大胆なデザインになった理由とは

2018年秋、レクサスの新型車2台が日本に登場した。北米では1989年から販売してきたセダンの「ES」と、新型車のコンパクトクロスオーバーSUV「UX」だ。2台を眺めると、同じレクサスながらデザインのテイストが異なることに気づく。なぜ違うのか。レクサスデザインの変遷を振り返りながら考えた。

2018年11月27日に発売となったレクサスのコンパクトクロスオーバーSUV「UX」

日本でも世界でも好調のレクサス

1989年にまず北米で発売し、2005年の日本導入から今年で13年となるレクサスブランドが今、存在感を高めつつある。昨年はラグジュアリークーペの「LC」を登場させるとともに、フラッグシップセダンの「LS」ではモデルチェンジを実施。今年の秋にはESとUXを続けて発売した。

2017年に登場したラグジュアリークーペ「LC」。この画像は特別仕様車の「Luster Yellow」だ(画像提供:レクサスインターナショナル)

レクサスインターナショナルの澤良宏プレジデントは、11月27日のUX発表会で同ブランドの販売実績に言及した。2018年1月~10月の販売台数は、グローバルで前年同期比6%増の56万7,000台を記録。日本では、なんと35%増の4万6,900台を達成したという。いずれも過去最高だ。

3世代にわたるレクサスのデザイン史

レクサスをデザインという視点で見た場合、3世代に分けられるのではないかと個人的には思っている。

第1世代は2005年の日本導入時にデビューした「IS」と「GS」、その翌年に登場した「LS」、2009年に発表となったクロスオーバーSUV「RX」とブランド初のハイブリッド専用セダン「HS」、2年後に加わったハイブリッド専用ハッチバック「CT」だ。

日本導入当時、レクサスは「微笑むプレミアム」というキャッチコピーを使っていたと記憶している。強烈な押し出しでアピールする欧米のプレミアムブランドに対抗するためのメッセージだった。この言葉を反映し、ISもGSも優しさを感じさせる造形だったという印象が残っている。

ところが、2012年1月に発表された現行「GS」から、イメージが変わりはじめた。最大の特徴は、バンパー上下のグリルをつなげ、中央から上下にいくほど幅が広くなる「スピンドルグリル」の採用だった。それ以外にも、前後のランプは「L」をモチーフとした大胆な造形になり、サイドやリアのラインもシャープになっていた。このクルマを機に、レクサスのデザインは第2世代に入ったと見ている。

「GS」からスピンドルグリルを採用した(画像は2015年11月に発売となったマイナーチェンジモデル、提供:レクサスインターナショナル)

翌年モデルチェンジしたIS、このISをベースとしたクーペの「RC」、2014年に新登場したクロスオーバーSUVの「NX」、その翌年に日本初登場となったフラックシップSUV「LX」と現行RXが、この第2世代に属すると思っている。

特にNXは、ブランニューということもあって表現が明確で、スピンドルグリルは上下に大きく開き、ヘッドランプは吊り上がり、SUVらしい力強さを表現する前後のフェンダーラインは角張っていて、とにかくシャープという印象だった。

2014年7月に発売となった「NX」(画像提供:レクサスインターナショナル)

その流れが変わったという印象を抱いたのが、2017年3月発売のラグジュアリークーペ「LC」だった。レクサスは2012年のデトロイト・モーターショーで発表したコンセプトカー「LF-LC」を量産化するという意図でLCを開発。市販の予定がなかったコンセプトカーを商品化するにあたり、2mを超えていた全幅、極端に低かった全高を常識的なレベルに収めつつ、オリジナルを忠実に再現するためにGA-Lプラットフォームを新たに用意した。

今のレクサスを築いたラグジュアリークーペ「LC」

LCの特筆すべき点はエクステリアデザインで、豊かに張り出した前後のフェンダーを含め、キャラクターラインはほとんどなく、複雑な曲面でフォルムを構築するという、それまでの日本車にはあまり見ない造形を実現していた。前後のランプも形状は個性的でありながら控えめで、必要以上に威圧感を与えることはなかった。

レクサスのラグジュアリークーペ「LC」

LCはインテリアも一新していた。クーペというと、どうしても躍動的なデザインになりがちなところ、LCは水平基調のインパネに小ぶりなメーターパネルで落ち着いた世界観を表現。ドアトリムを走るラインもゆったりした曲線で、大人っぽさを印象づけていた。

2017年10月に登場した現行LSも、同じGA-Lプラットフォームを採用している。フラッグシップセダンだけあってインテリアは凝った意匠で、例えばドアトリムのオーナメントは、切子細工をモチーフとした繊細な造形が特徴的だった。一方、エクステリアはプレスラインを最小限に抑え、「6ライト」(前後ドアとリアウインドーの間にも窓がある)のサイドウインドーによるエレガントなシルエットを強調していて、LCからの流れを感じさせた。

レクサスのフラッグシップセダン「LS」(画像提供:レクサスインターナショナル)

優雅なルーフラインの「ES」

そして、2018年10月に発売となった「ES」もまた、スピンドルグリルやヘッドランプで個性的な表情を出しつつ、ボディサイドについては無駄な装飾に頼らず、ゆったりしたカーブを描くクーペのようなルーフラインで優雅さを強調している。インテリアについても同じで、水平基調のインパネと小ぶりなメーターパネル、柔らかいラインのドアトリムなどは、LC以来の流れを受け継いでいる。

「LC」からの流れを感じさせる「ES」のデザイン(画像提供:レクサスインターナショナル)
「ES」のインテリア

ところで、このESは、市販車としては世界で初めて「デジタルアウターミラー」を採用したことでも話題を呼んだ。サイドミラーの形状を一変させるので、当然ながらクルマのデザインにも影響を与える装備だ。筆者は先日、試乗会で実際に体験してきたので、印象を簡単に報告する。

2016年の保安基準改定により、サイドミラーに鏡以外を用いることが可能になったことを受けて開発が始まったデジタルアウターミラー。ESのデビューが近づくタイミングで実用化のめどがたったので、初めて搭載したのだという。

「ES」が市販車として世界で初めて装備したデジタルアウターミラー
外から見るとこんな感じだ

後付け感のある左右のディスプレイは、こうした経緯を象徴したものである。今後は設計当初から採用が決まるので、一体感が高まっていくだろう。ディスプレイの場所についても、現在はミラーに近い場所に置いているが、二輪車にも乗る筆者の感覚としては、メーターパネルの左右でもいいのではないかと思った。

実際に使ってみると、ディスプレイの解像度をもう少し高めて、遠近感が分かるような3D的な表現を盛り込んでほしいという要望を抱いたものの、天候や周囲の明るさに関わらず、クリアな画像が見られるところはありがたかった。

さらにデジタルアウターミラーは、状況に合わせてズームしてくれる。例えば右左折時、ウインカーを出すとカメラは望遠から広角になり、周囲の状況をより広く映し出す。デジタルならではの機能で安全性も高まりそうだ。

「UX」のカタチが第三世代のデザインとは異なる理由

そんな体験をもたらしてくれた試乗会から2週間後、今度はコンパクトクロスオーバーSUVの「UX」が発表となった。発表会場で見たUXは、LCからESにかけての流れとは少し異なるデザインを身にまとっていた。

レクサスデザインの潮流とは立ち位置が違う印象の「UX」(画像提供:レクサスインターナショナル)

顔つきは他のレクサスと共通しているものの、前後のフェンダーは力強く張り出し、ボディサイドは2本のキャラクターモールがリアに向けて跳ね上がる。黒いフェンダーアーチモールやリアコンビランプが、空力特性を考えた形状である点も目立つ。

でも、レクサスのデザインがここから再び変わっていくわけではないと筆者は思った。UXのコンセプトは「Creative Urban Explorer」。新たなライフスタイルを探求する「きっかけ」(英語ではcue、コンセプトの頭文字とかかっている)となることを目指すクルマだとレクサスは位置づける。その大胆なデザインは、コンセプトに合わせたものなのではないだろうか。

「UX」の大胆なデザインは、コンセプトを体現したものなのかもしれない(画像提供:レクサスインターナショナル)

輸入車でも、似たような考えのもとに生まれたクルマがある。ボルボのコンパクトSUV「XC40」だ。デザインの基本的なフォーマットは上級SUVの「XC90」と「XC60」から受け継ぎながら、2トーンカラーや台形を強調したキャラクターライン、プレーンなリアパネルなど、兄貴分にはない斬新なディテールを取り入れている。

ボルボ「XC40」は同社SUVシリーズの末っ子だが、兄貴分とはテイストの違うデザインを採用している

少し前にも紹介したが、BMW本社で唯一の日本人デザイナーである永島譲二氏も、SUVはデザイン面で「冒険しやすい」クルマだと話していた。ドイツ車が中心になって築いてきた、上から下まで同一のデザインでそろえるというブランディングに飽きがきているからこそ、BMWやボルボは多様化を認める路線にシフトしつつあるのだろう。

この予想が正しければ、最近登場したレクサスの2台、セダンのESとクロスオーバーSUVのUXが、異なるテイストのデザインをまとっているのは当然だ。多様な見せ方を試みるレクサスは、最新のトレンドをよく理解していると感じる。次のレクサスはどんな方向で攻めてくるのか。カーデザインには想定外の驚きがあったほうが楽しい。