「キャッシュレス」の記事

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

大盤振る舞いのPayPay、「200億円還元」が導いたビジネスの勝機とは

大盤振る舞いのPayPay、「200億円還元」が導いたビジネスの勝機とは

2019.05.18

PayPayの100億円キャンペーンが終了

「〇〇ペイ」が乱立する中、PayPayの立ち位置は?

6月には新キャンペーンを実施、「決済No.1」への道筋とは

前代未聞の「20%還元」で話題を呼んだPayPayが、第2弾の100億円キャンペーンを5月13日に終了した。だが6月以降には新たなキャンペーンが始まり、まだまだその熱は冷めそうにない。

ソフトバンクグループの資本参加など、PayPayを取り巻く環境は急速に変化している

派手な還元策が注目されるPayPay。今後のビジョンとして打ち出したのは「決済No.1プラットフォーム」を目指すことだ。最近のPayPayを取り巻く状況を振り返りながら、次の展開を予想してみたい。

PayPayは「認知No.1の維持が重要」

4月25日のヤフーによる決算説明会では、PayPayに関する最新の数字として、登録者数は600万人、加盟店は50万店、決済回数は累計2,500万回を突破したことが明らかになった。さらに登録者数は10連休後には700万人に達するなど、順調にその数を伸ばし続けている。

PayPayの累計登録者数が700万人を突破(5月8日のソフトバンク決算説明会にて)

現状、名称認知やサービス理解ではPayPayがNo.1を維持している(PayPay調べ)。これから先、スマホ決済がマジョリティ層に広がっていくにつれ、まずはNo.1のサービスから始めようと考えるユーザーは増えていく。とにかく、認知度No.1を維持していくことが重要というわけだ。

PayPayによる調査では認知度No.1をキープ

100億円キャンペーンの第2弾は終了したが、同社は新たに「次の20%還元」として、6月からはドラッグストアで最大20%を還元するなど、月ごとにジャンルを限定して実施するという。またキャンペーンとは別に、通常の還元率も最大3%に引き上げている。

まだまだPayPayの大盤振る舞いは続きそうだが、店舗側が払う決済手数料は場合によっては0%であるほか、売上金の入金手数料も無料期間を延長している。こうした間にもユーザーへの還元は続いており、PayPayが使われるたびに損失は膨らむ計算になる。

そこで改めて注目されるのが、「どうやって儲けにつなげていくのか?」というビジネスモデルの視点だ。ヤフーやソフトバンクの決算説明会からは、その将来像が明らかになってきた。

PayPayが「プラットフォーム」として本格始動?

ヤフーが決算説明会で示したPayPayのビジネスモデルとは、決済データやPayPay残高の活用だ。蓄積された決済データから個人の消費行動を分析すれば、店舗への送客や広告に利用できる。PayPay残高を利用すればさまざまな金融商品の販売が可能だ。

PayPayのビジネスモデル(4月25日のヤフーの決算説明会資料より)

近未来を描いたイメージビデオでは、PayPay残高が足りないときに利用できる「後払い」、近隣店舗の商品在庫の表示や送客、PayPay残高による投資信託や保険の購入、デリバリーやレンタカーといったサービスを利用する様子が描かれていた。

最近では、楽天やLINEに続き、KDDIもアプリを入り口としてコード払いや資産運用、ショッピングやサービス利用にポイントを循環させていく構想を打ち出している。PayPayが目指すビジネスモデルは、そこに真っ向勝負を挑むものとみて間違いなさそうだ。

続々と強化されるPayPayアプリ。今後は金融サービス連携も?

ヤフーはPayPayのオンライン対応を進めており、6月以降にYahoo!ショッピングとヤフオクに対応する予定だ。特にヤフオクの売上金をPayPayで受け取れるようになる機能は、メルカリの売上金を利用できるメルペイに対抗する動きといえる。

また、ソフトバンクはガラケーからの移行にPayPayを活用する。ガラケー利用者向けの「スマホデビュープラン」では合計6,000円相当のPayPayボーナスを付与すると発表している。PayPayに関心を持ち始めたガラケー利用者に向けて、スマホに移行させつつPayPayユーザーとして取り込む、一石二鳥のアプローチだ。

PayPayを取り巻く体制も変化している。ソフトバンクグループはPayPayに460億円を出資する一方、ソフトバンクはヤフーを子会社化することで効率化を図るなど、グループ全体でのシナジーを追求していく構えだ。

PayPayを中心にソフトバンクグループ全体とのシナジーを追求

スマホ決済の中でも飛び抜けて勢いのあるPayPayだが、アプリ起動やコード読み取りの手間を嫌う声は多い。還元キャンペーンの間だけ盛り上がる一過性のものと考えていた人も少なくないだろう。だがここに来て、ソフトバンクとヤフーはPayPayを本気で「No.1」にする戦略に着手したといえそうだ。

スマホ決済が普及しつつあるなか、なぜ仮想通貨決済は広がらないのか

スマホ決済が普及しつつあるなか、なぜ仮想通貨決済は広がらないのか

2019.05.16

盛り上がりを見せる「スマホ決済サービス」

ブームで終わり普及しなかった「仮想通貨決済」

両者は何が違ったのか、考察してみた

スマホ決済サービス「PayPay」が2018年末に実施した「100億円還元キャンペーン」の影響もあってか、にわかに「スマホ決済」が盛り上がり始めている。コンビニやファーストフード店など、わずか数カ月のうちに利用可能店舗数は爆発的に増加した。

その一方で、2017年に盛り上がった「仮想通貨」は、ここのところ話題として触れられる機会が減ったように感じる。旅行業者の「エイチ・アイ・エス」や、家電量販店の「ビックカメラ」をはじめ、いくつもの小売店舗が仮想通貨決済を導入したが、一般的に普及したとまでは言えないだろう。

爆発的に利用可能店舗数を伸ばした「スマホ決済」と、未だに普及していない「仮想通貨」は、何が違うのだろうか。

わかりやすいユーザーメリットが普及の一歩目になった

両者の目立った違いは、わかりやすいユーザーメリットを提示したか否かではないだろうか。先述した「PayPay」の100億円還元キャンペーンのように、話題性のあるユーザーメリットを提供することで、多くの認知とユーザーの獲得につながったのだ。特にこのキャンペーンは支払い時に発生するものであり、「キャッシュレス決済する」という行動に直接結びついた。

仮想通貨取引所でも「口座開設で1000円をプレゼント」といったキャンペーンを実施しているところもあるが、性格は大きく異なる。そもそも、取引所で仮想通貨を購入する場合は投機目的になりがちで、決済にはつながりにくい。キャンペーンも、あくまで自社で仮想通貨の取引を促進させるにとどまる。

ビットコインなどが、スマホ決済のように民間企業の開発したサービスではないことも大きな原因だろう。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が仮想通貨「coin(仮称、発表時はMUFGコイン)」を開発中であるなど、民間企業も仮想通貨ビジネスに着手してはいるが、まだ実用段階には至っていないため、PayPayのようなキャンペーンを打つことができていないのだ。

システムの分かりやすさが普及率の差に関係

また、スマホ決済システムのほうが消費者にとって、より親しみ深いものであったという点も、大幅に普及した要因の1つだろう。

スマホ決済は、自分の銀行口座やクレジットカードを登録し、それらを経由して支払いが行われるというシンプルなものだ。資金の動きをスマホで容易に確認することもできる。

一方で仮想通貨の場合、自分の保有通貨がどのように動いていくのか理解している人は、そこまで多くないのが現状だろう。

そもそも、仮想通貨とは何か。仮想通貨取引がどういうもので、どんなメリット・デメリットがあるのかを一般の消費者が理解していないことは、決済の普及を阻害する要因になり得る。まずは、仮想通貨決済を普及させるために、仮想通貨に興味を持ってもらい、リテラシーを向上させるような環境づくりが必要かもしれない。

さらに言えば、スマホ決済がここまで普及したあとに、わざわざ仮想通貨取引に変えるメリットはどこにあるのか。ひと手間かけて資金を移行してまで、「仮想通貨で決済してみよう」と消費者を動機付けるのは、かなり難しいといわざるをえない。

スマホ決済加盟店の導入障壁を下げる事業者の取り組み

増殖したスマホ決済サービス

次に、加盟店の業務負担の差について考えてみよう。スマホ決済の場合、キャンペーンでユーザーが増えれば、「自店で決済できないことを理由にお客さんが去っていく」といった機会損失を防ぐためにも、小売店舗の導入意向が強くなるだろう。しかし、導入のハードルとして、現状、キャッシュレス決済ではいくつものサービスが乱立しているため、業務フローが煩雑になっていることが挙げられる。

QRコードを読み取るだけとはいえ、サービスの多さによる混乱はあるはず。特に、外国籍のアルバイトが増えているコンビニであれば、なおさらだ。

そのような課題に対して、2019年3月27日には「メルペイ」と「LINE Pay」が業務提携を発表した。内容は「メルペイ」か「LINE Pay」のいずれか一方の決済方法を導入した加盟店は、両方の決済サービスを利用できるようになるというものだ。まずは、キャッシュレス決済における加盟店負担を減らすべく、一見するとライバル関係にありそうなサービス事業者が手を組んだ形である。

仮想通貨の場合、例えばビットコインの支払いに特化した店舗であれば、ビットフライヤーが提供している特定の決済サービスなどを導入することで、QRコードの読み取りによる決済を行うことが可能だ。自動で売却し、日本円の状態で受け取れるため、店舗側が仮想通貨の価格変動リスクを負う必要はない。

しかし、仮にビットコイン以外の通貨で決済をしようと考えた場合には、店側が対応通貨の取引を行える自分のウォレット(仮想通貨の口座のようなもの)を持つ必要がある。通貨を売却して日本円に換金する手間が発生するほか、仮想通貨の価格変動リスクを負う必要も出てくるのだ。

「ペッグコイン」が仮想通貨普及のカギになるか

現状の仮想通貨では、ユーザー数がそこまで多くなっていないため、店舗側はわざわざ手間をかけてまで決済サービスを導入する必要がないと判断しているはず。キャッシュレス決済は、政府も促進させようと躍起になっていることもあり、まだまだ普及が続くだろう。

仮想通貨のメリットは、国際送金や投げ銭をする際、手間や手数料がほとんど必要ないことだ。一般的な決済手段とは利用シーンが異なる。しかし、先に述べたMUFGが開発している仮想通貨は、日本円の価格に連動するように設計されている「ステーブルコイン(ペッグコイン)」と呼ばれるもの。設計通りに実装されれば、仮想通貨ではあるが電子マネーのような感覚で使うことができるようになる。

そのうえで、PayPayのような大規模キャンペーンが打ち出されれば、消費者の仮想通貨への考え方が変わる可能性があるだろう。

課題は多いものの、まだ伸びしろのある仮想通貨。仮想通貨のメリット・デメリットが世間に広がり、適した利用シーンでのサービスが生まれ、利用者が使いたいと思えるようなインパクトのあるキャンペーンが展開されれば、スマホ決済のような波がやってくるかもしれない。